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doの肩書き、beの肩書き 〜あなたの肩書きを改革する〜(全4記事)

中学時代から「どの職業にも興味がなかった」 コルク佐渡島氏が語る、自分の軸の見つけ方 

2018年で開催6年目を迎える「Tokyo Work Design Week」は、“働き方の祭典”として、のべ2万人が参加。今回は渋谷をはじめ、横浜・大阪・韓国でも開催されました。本セッションには、勉強家/京都精華大学人文学部 特任講師/「スタディホール」研究者の兼松佳宏氏、株式会社コルク代表取締役 会長の佐渡島庸平氏、株式会社ツクルバ 代表取締役 CCOの中村真広氏の3名が登壇。「doの肩書き、beの肩書き 〜あなたの肩書きを改革する〜」のパネルディスカッションのパートをお送りします。今回は「beの肩書き」について意見を交わしました。

「beの肩書き」の意外な活用法

兼松佳宏氏(以下、兼松):Tokyo Work Design Weekの1日目の最後ということで、昼からずっと聞いていた方は、参考までにどれくらいいます?

(会場挙手)

ごくろうさまです。これが最後ですので、よろしくお願いします。TWDWには2年に1回くらい出させていただいていて、去年も「beの肩書き」の話をさせていただきました。

それをきっかけに、今日もお越しいただいているみたむら(さやか)さんが、今日のゲストの佐渡島さんが主宰されているコルクラボでワークをやっていただいたり、組織づくりのためのbeの肩書きワークショップのご相談をいただいたり。こうしてお話をさせていただくことで、どんどん広がりを感じています。

1年前がスタートだとして、今日はこの1年どういうふうに考えが深まってきたのかを振り返る絶好のタイミングだと思っています。

改めて、2人のゲストについてご紹介します。まず中村君はツクルバという会社のCCOをやられていて、ツクルバでは社内のSlackでbeの肩書きを表示できたり、名刺の裏面に入れることができたりするんです。

そのエピソードが興味深くて、グリーンズの学校で「beの肩書き探求クラス」を開いたときにゲストにお呼びし、そのインタビューが『beの肩書き』の本に掲載されています。

新卒じゃなく中途で入っていただいた方にも、beの肩書きを考えてもらうようなワークショップをやってるんですよね?

中村真広氏(以下、中村):ワークショップをやっています。

兼松:そういうふうにbeの肩書きを使っていただけるんだ、というのは僕の想像の斜め上を行く展開で。今日はそのあたりをお話しいただけたらと思っています。そしてもうひとかたの佐渡島庸平さんは、実は今日がはじめましてなんですが、こちらの著書『WE ARE LONELY, BUT NOT ALONE』を5月くらいに出されて。

WE ARE LONELY, BUT NOT ALONE. 〜現代の孤独と持続可能な経済圏としてのコミュニティ〜 (NewsPicks Book)

佐渡島庸平氏(以下、佐渡島):5月前半です。

佐渡島氏の「be」は編集者・探検家・経営者

兼松:その中で、自分の肩書きじゃなくて、beの肩書きで自己紹介するおもしろいやり方があるんだ、と紹介していただいて。たぶん他のメディアでインタビューを受けていらっしゃる時にも、そのことをご紹介いただいて。僕はエゴサーチが大好きなので、「beの肩書き」で調べていた時に「なんか佐渡島さんが言ってくれてる! でも、肩書きの「き」がない!」とか思いながら(笑)。

(会場笑)

そのへんの揺らぎに「ウー!」って思いながらも、すごく嬉しかったんです。どんなふうに興味を持っていただけたのか、改めてお聞きしたいなと、今回お願いさせていただきました。

あとで詳しい自己紹介と、beの肩書きを考えるために大切にしたい3つのキーワードについてお話しさせていただきたいです。さっそくですが、先ほどのミニワークで、佐渡島さんと中村さんがどんなものを選んだのか。まず、佐渡島さんから聞かせていただいてもいいですか?

佐渡島:基本的には、僕は編集者という仕事自体が天職だなと思っているので。自分の趣向や行動パターンを象徴する肩書きというのは編集者ですね。

その次の自分の中の幸福感を象徴していそうな肩書きなんですけども。社会を作って、職業というものがあって、働くという状態自体が、動物から人間を見たら、すごく不自然な状態だなと僕は考えていて。

beにしてもdoにしても、肩書きがないといけないっていう。そういうのがそもそも不自然だと思っていて。なんにもないほうが幸せだなと思ってるんですね。

兼松:いいですね! 「なし」と書かれてるんですけど、そういうことだったんですね。

佐渡島:そうです。それで、自分の好奇心を象徴していそうな肩書きというのは「探検家」ですね。僕は就活する時に、出版社とNHKエンタープライズを受けたんです。NHKエンタープライズは、NHKの特別番組で世界中の秘境に行って、ずっとドキュメンタリーを撮ったりしているので(笑)。

それで自分の表現方法を象徴しそうな肩書きというのは、これはもう編集だなと。もう一つ、自分の使命や天命を象徴していそうな肩書きというのは、この中になかったんですが、経営者かなと。

兼松:「経営者」がそこに入るんですね。

佐渡島:かなと思ってます。コンテンツ好きでありながら、会社経営に対してすごく興味を持っている人が少ないなと思うので。その2つを掛けあわせた価値というものを発揮したいなと思います。

ツクルバ中村氏の「be」は場づくり

兼松:つづいて、中村君もお願いします。

中村:僕は1枚目のシートでチェックをつけていったら、けっこうな量になっちゃって。

兼松:あ、けっこうな量ですね。

中村:いろいろ浮気性だなと思ったんです。2枚目に入れこんでいこうと思ったら、けっこう同じものがどんどん入っているなと思って。問1(自分の思考や行動のパターンを象徴していそうな肩書きは?)のところには、ペンション経営とカフェオーナーですね。

兼松:いいですね。

中村:ツクルバなので、やっぱりツクルバなんだなと思ったんですけど(笑)。場所のオーガナイズみたいなものかなと思って。問2(自分にとっての幸福感を象徴していそうな肩書きは?)は、中二病でミュージシャンになりました。

兼松:中二病で。

中村:中二病で。コール&レスポンスがほしいと思ったんです。

兼松:すごく大事なことですよね。

中村:ちゃんとコミュニケーションしなきゃいけない。問3(自分の好奇心や情熱を象徴していそうな肩書きは?)からは時間がなくて書いてはいないんですけれど、問3、問4(自分らしい表現方法を象徴していそうな肩書きは?)、問5(自分の使命や天命を象徴していそうな肩書きは?)は、全部ペンション経営とかで方向性は同じだなと思いました。

兼松:ペンション経営はかなりピンときているんですね。

中村:たぶん、やっぱり場づくりがやりたいんでしょうね。

兼松:ワークの共有はここまでとして、もう少し質問させていただきたいのですが、佐渡島さんは、beの肩書きの話をきちんと聞いていただいたのは初めてだったと思うんですが、本に入れていただいたものも含めて、どの辺りが引っかかったか、教えていただけますか?

自分の軸を持ちながら、信頼できるものには流されてみる

佐渡島:自分が仕事をしている時は、世間の人にしても同僚にしても、アウトプットとしてその人を見るわけです。どれくらいアウトプットがあるのかないのか、というところで見ていて。そのアウトプットから、その人を推測していくわけじゃないですか。それに対して、僕の会社の社員やコルクラボのメンバーを見ていると、みんな、すごくふらふらしているんですよ。

兼松:ふらふら(笑)。

佐渡島:はい。先ほど、みんな職業をマークするのに時間がかかっていたじゃないですか。僕は、もう中学時代くらいからどの職業にも興味がなかったんです。ぜんぜん働きたくなかったです(笑)。

(一同笑)

山に登るとか、海に行くのは好きだけど。だからって、「それを職業にはしたくないわ」とも思っているし。教授のようなかたちで、大学に引きこもってずっと本を読んでいたいとか。ほとんど仕事って興味なくって。

それで本が好きで、編集というものに興味があるというので、中学くらいというか、もう10歳くらいから、ある意味、自分のbeみたいなものは1つも変わってないんですよ。ずっと、その変わっていない中で行動してきているんですね。それでみんなを見ていると、「こういうふうになりたい」「これが幸せだ」ということが、しょっちゅう変わるんですよね。

兼松:すごくわかります。

佐渡島:そう。3〜6ヶ月くらいで、「これが大切だ」と言っていたのが違うことを言ってるね、という。その根っこのところは、早く見つかるほうが幸せだなと思うんですけど、みんな見つからないから、しょっちゅう変わっているのかなと思ったら、深く考えたことがないから変わっているんだな、と。

僕は本を読んでいて、それをずっと深く考えてたどり着いたわけですけれど、意外とそんなふうに本を読んだりしていないんだなと思って。ワークショップによって、それを見つけるのは、けっこういいのかもと考えてました。

兼松:レーシック手術をしたのは「探検家」としての……何か関係はありますか?

佐渡島:レーシックはね。僕は基本的に信頼している人が良いと言っていたら、考えずにやってみるようにしています。例えば、堀江貴文さんがレーシックがいいと言っていたら、もうそれでいいやって。

兼松:その行動パターンが、何の職業的なものを象徴しているかがおもしろいですね。

佐渡島:でも、基本的に流されるようにしています。

兼松:へえ、意外。

佐渡島:話を聞く人は決めておく。そこにはとてもこだわりがあるんだけど、その人たちが言うことには全部流されるようにしています。

兼松:おもしろいですね。最近、流されそうなことってありました?

佐渡島:はい。例えば1つ、会社での仕事の仕方で。僕自体の会社の役割で流されましたね。

兼松:軸として持っているすごく強いところと、流されるところのバランスが佐渡島さんらしさなのかもしれないなあ、とうかがっていて感じました。ありがとうございます。続いて、中村君はbeの肩書きの何がよかったですか?

「beの肩書き」は自分のありたい姿

中村:さっきの自己紹介の時間でもそうだったんですけど、beで出会った人とdoで出会った人って、仲良くなり具合がぜんぜん違うなと思ったんです。

ツクルバのメンバーは新卒もいますけれど、中途がメインなんですね。前職の環境でのいろいろな「垢」を身に背負いながら転職してくるわけですけど、1回その「垢」をとって、まず「あなたはどんな人なの?」というところを知る。みんなでその部分を話し合うと、わかり合える時間が一気に短くなるなと。ワークショップを見ていたらすごくいいなと思って、ジョインするタイミングで開催してるんですよね。

兼松:とはいえ、社員側にしてみたら「え、なんですか?」ってなったりしませんか?

中村:なりますね。戸惑う人もいます。doの部分だけで生きている人がけっこう多いじゃないですか。そんな中で、何をやりたいんだとか、あなたのありたい姿ってどんな感じ、って(聞かれる)。改めてそれに言葉を与えるのはけっこう大変ですよね。

大変なんですけど、暫定版でもいいんじゃないかと思います。名刺なので半年くらいは使わないといけないけど、名刺がきれたら、もう1回自分で再定義しようとか、そういうふうに思えているので。

兼松:そのときは、本に掲載されている肩書きリストから選ぶ、というような工夫がなかったので、一から考えるのは難しいかもしれませんね。

中村:そうですね。だから、変な肩書きが多いですよね。

兼松:例えば?

中村:名刺の裏を見てみたら、「ハンバーグのつなぎ」と書いてあったり。これって肩書きになってるの? というものが、けっこうあって。「その心は?」って聞きたくなる(笑)。

兼松:そうですよね。たぶん、その人にとっては深い意味があるんでしょうね。遊び感覚の軽さと、少しずつしっくりくる肩書きを見つけていく深さを大切にしたいと思っています。名刺にも印刷するとなると、飽きても、なかなか変えられませんからね。

中村:お客さんも見ますしね。

理想は本来の自分を発揮できる、新しいdoを見つけること

兼松:そういうメタファーを使って、じわじわとお互いを知っていく技法が、経営と相性がいいというのは目からウロコでした。ちなみに、beの肩書きのワークをやった結果、ツクルバを辞めたいという人も出てきたとか。

中村:そうなんです! 辞めそうだったんです。

兼松:パンドラの箱を開けてしまって(笑)。

(会場笑)

中村:ちょっと待って! みたいな(笑)。「beを発揮できる場所はうちにもあるから」って、なんとかとどまってもらったんです。

兼松:beを解放しちゃうと、器が問われる。

中村:解放しちゃいますからね。

兼松:コルクはどうですか? 解放は?

佐渡島:コルクというか、コルクラボのほうでそれをやってるんですけど。この2年間くらいで200人くらいのメンバーが集まってるんですけど、かなり多くの人、2~3割が転職しているんですよ。

兼松:なるほど(笑)。

佐渡島:こんなに転職するの?! って(笑)。この前、6〜7人で集まって話しているときに、働いている人が2人しかいなくて。あとは全員ニートというか転職中で。転職を決めてからじゃないから、ちょうど空いているとか、そんな感じで。働いているほうが異常かも、という気持ちにさせられました(笑)。

(一同笑)

中村:doがないってことですね(笑)。

兼松:あまりbeを押し出しすぎるとdoがよくない、というふうになってしまいますが、僕の中では「do×be」が1番おもしろいと思っているんです。本来の自分を発揮できる新しいdoを見つけていく、っていう。そもそもなんで働かないといけないのかというのは、確かにさらに深い部分になりますね。

とにかく、ふだんはbeの部分、あり方の話をする機会がなさすぎる、というのが僕の問題意識なんです。今日はお二人にキーワードをたくさん出してもらったので、どうやったらbeの肩書きが見つかるんだろうか、ということを聞いていこうと思います。

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