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第1部 パネルディスカッション「本業と副業の相乗効果とは?」(全3記事)

本業=雇用、副業=契約社員で手取りを最大化 実体験から導き出した複業ハック

2018年11月28日、TRAVEL HUB MIXにて「ワカマセミナーVol.2 『本業と複業の相乗効果とは?』」が開催されました。副業を解禁する企業も少しずつ増えるなか、自身の能力を活かして副業(複業)を始める人が増えています。副業で得られた経験を本業に活かせたり、本業では得られないスキルを身につけることができるなど、結果的に本業に還元できるという好循環も生まれるといわれていますが、実際のところはどうなのか。このイベントでは、本副業の相乗効果を実感しているゲストを招き、その関係性を紐解くセッションが行われました。本記事では、第1部のパネルセッション「本業と副業の相乗効果とは?」の本題に関するエピソードを中心にお送りします。

サイボウズの働き方に「いいね!」

平田麻莉氏(以下、平田):じゃあ(中村)龍太さんはどうでしょう。にんじんを扱ったきっかけが知りたい方もいらっしゃるようです。

中村龍太氏(以下、中村):(笑)。それも喋りたいんですけど、僕の5年間の副業のなかの1つなんで、きっかけだけちょっと話をすると……というか、みんな素敵なスタートですよね。実は副業する前、今白木さんがいる会社にいたんです。日本マイクロソフトですね。

当時40代で、こんなこと言っちゃいけないんですけど、めっちゃ大変なんですよ。(白木さんに)もうね、大変。

白木智幸氏(以下、白木):大変です。

中村:大変ですよね! 給料もいいんですけど、ものすごい大変なんです。50になったらちょっと厳しいなと思っていて、何かきっかけがあればなと思っていて。Facebookで、マイクロソフトに行ってサイボウズに転職した人が、「サイボウズってこんな働き方あるよ」というのをシェアしてたんです。それについ、「いいね!」ボタンを押しちゃったんですね(笑)。

そしたら、「久しぶりに飲みに行こう!」みたいな話になって、京橋に飲みに行ったのを思い出します。そこで「クラウドサービスでこれから社会変えるかもしんないね!」と盛り上がっちゃって。「うちの社長は青野というんですけど、彼も同じこと言ってるから、一緒に飲まない?」という話になって、たぶん3日後ぐらいに居酒屋に飲みに行ったんです。

そしたら「サイボウズはおもしろいから来てくんない?」なんて話が冗談めかしてありました。転職しようとまでは思ってなかったんですけど。

「本業:雇用」「副業:契約社員(業務委託)」で、手取りを最大化

平田:だいぶロックオンされてたんですね。

中村:「いくら出せば来てくれるの?」と聞かれたんで、金額を言ったら社長の青野さんが「僕よりもらってるんですね」みたいな話になって。「えっ、俺社長よりも……給料高いんだ」みたいな感じになったんです。

ちょっとおもしろい会社だったので、行ってみたいなと思ったんですけど、当時大学生の子どもが2人いまして、お金が必要だったんですよ。嫁に説明責任を果たせないと転職もできないので、どうにか貯金を崩さずにできないかという話で、「副業制度ってあるんだけど」という話を聞いたときに、「じゃあもう1社、ちょっと探して来ます」みたいな。

それで、IT会社を探したんです。無事にそちらも契約を結べることになったので、同時にサイボウズとIT会社に転職しました。

平田:それは2社とも雇用だったんですか?

中村:これがまたおもしろくて。ちょっと気の利いた友だちに税理士さんがいたんですよ。雇用と雇用、それから雇用と契約社員、契約社員と契約社員。どれが一番手取りが増えるのかというと、雇用と契約社員だと。この話になるとベラベラ喋りますが、これが一番手取りが増えます。

平田:ケースバイケースとかではなく、一般的に?

中村:一般的に、です。例えば、家の六畳一間が僕のオフィス。見た目はオフィスじゃない、普通の部屋ですが(笑)。これって、借りている部屋全体のオフィス分が費用になるんです。経費になるんですよね。そうすると、税額控除という話になるわけですよね。

そんなことをいろいろやっていくと、経費として落として収益が減るという話なんで、最終的な確定申告のときに、もしかしたら戻ってくるかもしれないし、税金が減るかもしれないという裏技が、あるんですよ。

平田:きちんと法的に則ってですよね。雇用 × 契約社員じゃなくて、雇用 × 業務委託でも、同じふうになりますね。

中村:同じですよね。ここメモするとこですよ(笑)。なので、そうしていただくと最大限の法的に許される収入が得られるという。

平田:ですね。節税ですね。

中村:というのが始まりです。

工夫次第でいかようにも節税できる

平田:なるほど。今のお話はけっこうおもしろいなと思うんですけど、業務委託とかで受けた仕事の分って、自分で確定申告をして経費を詰める……詰めるという言い方がいいのかはわからないんですけれども。工夫次第でどうにでもできますし、政府の方も「脱税はダメだけど節税はいいんですよ」とおっしゃってくださるので。

中村:そうなんですか? へー。

平田:フリーランス協会でも、毎年年末や2月は節税の確定申告セミナーをしますので、興味がおありだったら(笑)。

中村:いや、行っておいた方がいいですよ(笑)

平田:最初はサイボウズさんとIT企業さんで、今にんじんに行き着いたのは、どういう(経緯ですか)?

中村:(笑)。いいんですか? この話。 にんじんは、僕の嫁が農家の娘なんです。今自宅が千葉県印西市で、これから帰るんですけど、嫁さんの実家に住んでいます。マスオさんという言い方、わかりますかね。サザエさんの夫ですけれども、そういう生活をしてます。

目の前に、嫁さんの両親が営んでいる畑と、田んぼがあります。使えるといいなあ、みたいな感じに思っていました。マイクロソフトに農業クラブってあるんですけど、その副会長をやっていました。今もあるんですけど、よければ、入ってくださいね(笑)。そんなのがありまして、ときどきマイクロソフトの社員が来て、今でも野菜の栽培しています。

そのようなきっかけで農業をはじめましたが、自分でやるんだったら、うちの義理の親と違う農業をやりたいなと思っている自分がいました。そんな時、クラブ員からNKアグリという会社とのご縁をもらい、農業を仕事にするきっかけができました。

農業×IoTのクラウドサービス事例を作った

中村:最初、ダメもとで「サイボウズのkintoneというクラウドサービスを使えませんかね?」みたいな話をしたら、「使えないよ!」って言われたんですけど、なにやら試用期間で使ってる雰囲気があって、「ちょっと来て教えて!」という話になったんですよ。本社のある和歌山まで行った後、レタスの収穫時期を予測するツールとして使い始めましたと。

1年後、「今度、にんじんやるんですよ。にんじんは自分のところで作らずに、全国の50の農家さんで作るんです。しかもリコピンにんじんという、機能性表示野菜です」「え、おもしろい野菜ですね」みたいな話になりました。

ポイントは、彼らはここでも収穫時期を予測できると言うんですよ。どうするかというと、積算温度というのがあって、ある時期からの積算温度が何度になると、もうリコピンにんじんは、リコピンを最大限に持っているにんじんになりますというのを、彼らは科学的な根拠を持ってたんです。

「北海道から九州までの積算温度だけ見ていれば、収穫時期が予測できるんです」と言うんです。「えー!? ほんとっすか!?」みたいな。「ほんとっすか!?」が僕は好きなんですけど(笑)。「じゃあ僕、にんじん作りますわ。僕を社員にして、作ったにんじんを買ってください」と言ったら「いいよ!」と言ってくれたんで、「やべっ」と思いながらも始めたのがにんじん作りですね。

自分のところにセンサーを置いて収穫時期を予測してみよう、という感じで始まりました。

平田:kintoneも使ってるんですよね。

中村:はい、その予測アプリとしてサイボウズのkintoneも使ってます。

平田:まさに本業ともシナジーというか。

中村:そうなんですよ。IoTの機器を使って全国の農家さんの収穫時期を予測するという成果を、僕がNKアグリに提供した。サイボウズにとっては、農業×IoTのクラウドサービスの事例を作った。実は社長室って、そういう事例を作るミッションを持っているところなので、1つの成果物が2つの会社に行き渡ったと。

平田:そうですね。ご実家にも貢献されていますしね。みんなハッピーですよね。

にんじんの栽培から、試験圃場へ

中村:ちょっとできすぎた話に聞こえますけど。まだ副業を始めてから5年しか経ってないんですが、こんなこともあって、最近では農水省から呼ばれたりしました。にんじんは3年目ですが、最初の1年目は普通のにんじんを作って売ってたんです。でも、やっぱり副業でやるとつらいんですよ。最後の商品化のパッケージとか、きれいに磨くところとか、「できない!」ってなって。

圃場が都内に近いので、バイヤーさんに来てもらえる広報用の圃場の仕事はどうですかと提案したら、じゃあ業務委託しましょうと。今年はどうしてるかというと、さらに進んで試験圃場をしましょうと。NKアグリが直営農場を持ってなかったのでそうなりました。

結果的に、その試験圃場の担当をして、土を4つに分けてそこににんじんを植えてみて、どうしたら害虫が減るのか増えるのかみたいな実験をやって、それでお金をもらっています。

中身がどんどん変わっていってるんですけど。まあそんな、楽しい経験をしています。でも今年は台風が来たり、いろいろめちゃめちゃ神経を使いました。ということでよろしいでしょうか。

平田:はい。きっかけは収入の補填だったけれども、今はそういうシナジーも生まれているよということですね。

中村:本当ですね。わかんないもんですね。

副業が損になることはない

平田:白木さんは先ほど、プロボノだけれども人脈が得られたり、そういった効果があるというお話がありましたけれども。本業にもなにかいい影響ってあったりしますか?

白木:そうですね。もともと僕はプロダクトマーケティング、いわゆる製品の企画でした。(マイクロソフトの社員である僕が)あんまりそういうこと言っちゃいけないんと思うんですけど、ソフトの使い方ってあんまり得意じゃないんですよ。みんな得意なように思われますけどね。

でも例えば、LINEとかって、みんな普通に使われてらっしゃると思うんですけど、その中でメンション機能とか使ったことありますか? (僕は)使ったことなかったんです。「なんなのこれ」みたいな。

グループに100人もいると、ものすごい勢いでタイムラインが流れていくんで、誰になにを投げたのかわかんないようになってくる。だかえあメンションがあるといいんですよね。ズバッとわかるんですよ。そういうのも、「あ、今なんかそういうの流行ってますよ」とかいう感じで、みんな教えてくれるんで、「へー」ってなると。

平田:仲間がですか?

白木:はい、仲間が。こうやって使えばいいのかと使ってたら自然に。「○○さん」じゃなくて、メンションするんですよね。マイクロソフトの製品にもそういうのはあったりするんですけど、そういうところに繋がったりだとか。

あとは、実際にこういう場に呼んでいただけるのもそうですね。普通、会社でなかなかこういうチャンス恵まれないよなってことも、けっこうあると思うんです。そういったところに行って得られたことって、違う場面でお話しするときに、深みのある内容になるんですよね。

たぶんみなさんも、そういう経験をこれからされるんじゃないかなと思うんですよ。だからぜひやっていただいた方がいいと思います。損することがないんですよね。

複数の仕事を抱えることで、ベストプラクティスを導ける

平田:そうですよね。副業を始めることによるリスクはないですからね。

白木:リスクはないですね。はい。お金を稼げる稼げないというのは、別問題です。やっていることといえば、「今日はこうやってお話をしました」「みなさんと出会いました」「そこでこんなおもしろいことしてる人がいました」、じゃあ次に「今度こんなイベントがあるんですけど、なんかやりません?」みたいな話で、どんどん繋がっていくんですよね。それがおもしろいんですよね。

平田:おもしろいですよね!

白木:これってけっこう一般的な話かもしれないんですけれども、挙げたらキリないんです。主にそんなところです。ITにちょっと強くなるとかもですね。

平田:さっきおっしゃっていた、リテラシーが上がるって、地味ですけどすごい効果があると思っています。

白木:ありますね。

平田:私も、広報の仕事だけでもいろんな人と付き合えます。でも、それ以外の職種の仕事もしていると、やっぱり会社とかコミュニティによって、使ってるインフラとかルールとかがぜんぜん違うんですよね。複数同時にできると、一番いいベストプラクティスはこれだなと見えてきたり、そういうのがまた本業に還元できたりということはきっとあると思いますね。ちなみにライターのお仕事はどういうご縁ですか?

白木:前職はHPという会社だったんです。パソコンを作ってる会社なんですけどね。そこでエバンジェリストというものをやってみようということになったんですね。マイクロソフトにはエバンジェリストの方がいて、僕はちょっと憧れてたんです。それで、自社で立ち上げましょうみたいな話をいただいたときに、メディアの方にいろいろプレゼンをして、ちょっと記事なんか書けないかという交渉をしてみよう、という話をしました。

ACアダプタへの偏執的なこだわり

白木:そのときに、ちょっとマニアな話でなんですけど。こんなマニアな話を深掘りしていいのかわからないんですけど、ACアダプタってありますよね。

平田:電源ですよね。

白木:電源デバイスですね。みなさん、わかります? どうでもいいものと思われているかもしれないんですけど、けっこうこれが重要なんですよ。やつがいなくなると、パソコンがただの箱になっちゃう。

平田:そうですね。戦闘力が0%になる。

白木:こいつをいかにきれいに作るかというのにこだわってて、マニアだったんですね。そのことをメディアの方に言ったら、「めちゃくちゃおもしろいですよ、白木さん! こんなにACアダプタに精通している人、初めて出会いました! これぜひ記事にしましょう!」みたいな。

「まじですか!?」と。こんなにウケると思わなかったんですけど、それで記事化したら意外に受けて。「続編もできないかな」みたいな話になり「じゃあやりましょう!」ということで、続々とやらせていただきました。最終的にYahoo!ニュースとかにも転載されたりして、アクセスも伸びています。

平田:後半にいらっしゃる箕輪厚介さんから「熱狂が大事」というキーメッセージを出されると思うんですけど、まさに、偏愛とかマニア・熱狂ってエッジになるというか、人の関心を引いたり、それがご縁になったりというのはありますよね。

白木:ACアダプタのような誰も注目されていないところ、つまり脇役にすごい光を当てた人、みたいな感じになりましたね。

平田:おもしろいですよね。ありがとうございます。

本業だけでは視野が狭くなる

平田:西野さんは、本業とのシナジーみたいなものはありましたか? 

西野真梨氏(以下、西野):けっこうベタな話になりますけど、やっぱり本業だけずっとやってると、視点ってすごく偏ってくるかなと思うんです。

本業では飲食の現場で働いてる料理人だったり、店長だったり、そういう方の人材紹介をやっているんですが、ここで働いていてもその人たちの現場でやってることって理解できないもんなんですよね。それを現場でやってみることによって、現場の仕事を理解できるようになり、話の幅が広がるというのはひとつあるかなと思います。

あと、実はもうひとつ、これからやろうかなと思っていることがあります。白木さんもやっていらっしゃいますけど、私も今、趣味で恋愛コラムを書いています。

平田:ご自身のブログとかで?

西野:はい。今はクローズドなコミュニティだけで読めるようにしています。自分で言うのもなんですけど、けっこうそれが好評でして、そろそろ世に出そうかなと思っています(笑)。

ある会社さんからお声かけいただいてるんですけど、プロの目で見てもらうことによって、自分のライティングのスキルも上がっていくと思うので、それを本業で立ち上げたメディアでのライティングに活かせるかなと。本業と副業の相乗効果みたいなものを感じます。

平田:世に出すということは、出版するということですか?

西野:いえ、出版まではいきなりは難しいかなと。

平田:公開されているメディアということで? それは趣味で書いてたら見つけてもらったみたいな感じなんですか?

西野:いえ、きっかけはこちらから応募したことですね。

平田:おもしろいですね。ありがとうございます。

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