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日本の課題(全4記事)

出口治明氏が教える“根拠なき哲学”の貫き方 「世界を変えるのは若者、馬鹿者、よそ者」

2018年8月30日、人事の本質的な課題を識者とともに考える「HR Cafe’研究会」が開催されました。同日のテーマは「日本経済は企業の意思決定の総和」で、セッション「日本の課題」には立命館アジア太平洋大学(APU)の学長・出口治明氏とフリーランス通訳の田中慶子氏が登壇。本パートでは出口氏と田中氏が、参加者からの質問に答えました。

年金をもらえないのは「100パーセント間違っている」

司会者:他にはございますでしょうか。

質問者5:はじめに出口さんがおっしゃっていた「All supporting all」。年齢に関係なくみなさん支え合おうということをおっしゃったのですけど、僕はソースが理想論過ぎるなと思っています。

例えば、「定年後に退職された方が、また職場に戻ればいい」っておっしゃったんですけど、それによって、たぶん労働環境は僕は悪化すると思っていて。やっぱり年功序列の恩恵をすごく受けてきた方々なので、恐らく若者たちがぜんぜん伸び伸びできないんじゃないかなと思います。

実際に僕の同期とかも働いているんですけど、新しいことをしようとすると、今までそれで動いてたのになんで変える必要があるんだといって抑えられることがすごくあって。2、3年経つとみんな新しいことが言えなくなってしまうという話をたくさん聞きます。

また消費税を上げるとおっしゃいましたけど、若者にとってすごく不利だなと思ってしまいます。年金は僕らの時にはたぶんこのままではもらえないですし、お金払っているだけなので。僕は先週までずっとドイツに留学していたんですけど、授業料が完全に無料であって、本当に30代、40代の方も大学にたくさんいました。

なので消費税を上げるなら、まずは、博士とか修士の学生の給与がきちんと出たり、そういうことをしないと、若者にとっては本当に良くないなと思っています。

出口治明氏(以下、出口):その2つでいいですか?

質問者5:はい。年功序列を廃止したほうがいいと思いますし、若者に対して教育にもっとお金を回してほしいなと感じています。

出口:はい。まずこの後で名刺を渡しますから、僕にメール打ってもらっていいですか? 

(会場笑)

それはなぜかと言えば、若者が年金をもらえないというのは100パーセント嘘っぱちです。若者は年金がもらえるので。ちゃんとデータを示して僕が論文を書いているのでそれを読んだほうが早いので、ここでは詳しく説明しませんが、まず年金保険料を払うなんて若者が損しているという考え方は「young supporting all」を前提にしているからで、100パーセント間違ってます。

税金問題は「中負担中福祉」「大負担大福祉」が解である

出口:世界中の年金学者で年金が破綻すると考えている人は日本を除いて1人もいなくてその根拠も丁寧に書いてあるので、後で送りますから読んでみてください。

それから最初の年功の話は、定年を止めたら年功はなくなるわけですが、君の意見で1つ抜けているのは、働き始めたおじいさんが松坂大輔ではないと。俺はこんな記録を持っているんやと威張る人やったら、社会の雰囲気が悪くなってくると言っているんですよね。

では、なんで君らが「それはあかんで」と、そのおじいさんに「松坂大輔とは違うで」となんで言わないんですか? 松坂大輔みたいに行動しないおじいさんは、社長に言ってクビにしてもらったら終わりじゃないですか。なんで変えようとしないんですか? そんな人が入ってきたら雰囲気が悪くなるというのは、自分事他人事で他人事でしかモノを考えていないからそうなるので。

自分のところにおじいさんが入ってきて、松坂大輔じゃないんだったら、「松坂大輔のようになってください」と言えばいいじゃないですか。なんで自分で変えようとしないのかだけだと思いますけれどね。

消費税の話については、これは数字で明らかです。これを見てください。OECDの平均と比べた時にこれが日本です。ぜんぜん税金払っていない。じゃあ給付の大半を占める社会保障はどうなっているんだと言えば、見れば明らかですよね。

OECD平均よりはるかに上です。これでは持つはずがないでしょ。ちょっとしかもらわなくてたくさんお金を払っていたら、この差は借金で賄うしかないので。これは世界中の経済学者が全員言っていますが、日本は税金を上げて中負担中福祉にするか、大負担大福祉にする以外に解はないんですよ。

だから税金を上げるのはけしからんというのは数字の議論ではなくて、ただの感情論です。僕も税金とか大嫌いですよ。でも数字のデータで見てみたら、他に解はないんですよ。全世界の学者がIMFや世界銀行を含めて、日本の一番の課題は税金を上げることだと。それで答えになりますよね。

なんとなかなるではなく、ちゃんと心配できるようになる安心感

質問者5:税金を上げて若者にとくに博士学生にしっかりお金を回してほしいというか。

出口:そういう政治家を選挙で選べばいいんですよ。

質問者5:どなたがいらっしゃいますか?(笑)。

田中慶子氏(以下、田中):立候補されたらどうですか?(笑)。

出口:そうですよ。ある外国人が言っていました、日本の若者と議論したり飯くったりすると、「年金もらえるかわからへん」とか、「年寄りは威張っていて、けしからん」とか、ものすごい問題意識を持っていると。こんなすごい国民だったら投票率100パーセントに違いないと思って、投票率を見てみたら50パーセントで、先進国で一番低いと。

どうなってんねんという話ですよね。これが日本の問題ですよね。みんな賢くていろんなことを言うんだけれど自分で行動しない。他人事になっている。

質問者5:じゃあ、メールください。お願いします。

(会場笑)

出口:はい。メール送ってください。君のメールアドレスがわからないので。

質問者5:はい。わかりました。

出口:そうしたら年金の論文を送りますから。

田中:恐らくメール送ってもらって、その年金の話を出口さんから受け取ると思うのですが、出口さんの書かれた『日本の未来を考えよう』という本に、すごくよくわかりやすく書いてあって。

日本の未来を考えよう

年金の話だけではなくて、いろんなことが、女性の活躍の問題とか教育の問題とか、すごくわかりやすく書かれているので、私は出口さんの本をいつも拝見すると、すごく楽観的な気持ちになるというか。

楽観的というのはなんとかなるというのではなく、ちゃんと心配しよう。心配することをきちんと考えようと。でも、ものすごくあやふやに未来が暗いとか、そういうような気持ちは少し整理がつくようなこともありますし。

あと、もっともっといろんなことを知りたいなという気持ちになりますので、出版社の回し者ではありませんけども、おすすめでございます。

すべてのスタートは生産性を上げるということ

質問者6:お話ありがとうございます。出口さんも企業経営に長らく携わっておられた立場から、例えば、消費税を上げるとか税金をもっと上げるべきだということに、私もやっぱりそれしか道がないというふうに思うのですけども。

税金を払ってもいいけど、日本の今の給与水準というのが、やっぱり他の国と比べて伸びていないのではないのかと。もっと稼ぐ力を付けて、もっとみんなが分前を取り合うというか、きちんと給与水準を上げられるような企業を増やしていく必要があると思ってまして。

出口:100パーセントその通りです。

質問者6:それを出口さんが他の企業のトップの方にアドバイスを求められることもあると思うのですが、どういうアドバイスをしてますか?

出口:簡単で、生産性をガンガン上げて給与をガンガン増やすこと以外にないですよね。生産性を上げるためには考えなければいけないので、日本のように、のんべんだらりと長時間労働していても給与が上がるわけではありません。

先進国の中では労働生産性は、1970年以来ずっとG7の最下位ですよ。(デービッド・)アトキンソンさんは「悔しくないですか」と言っている。「僕は外国人だけど悔しい」「日本人はそんなものじゃない」とアトキンソンさんも言っているので、やっぱりこの悔しいという気持ちが原動力になるべきですよね。

質問者6:今、企業の内部留保がけっこう積み上がっていると思うのですけども、それを次の投資に上手く回せていない。新産業になかなか上手く回せていないんじゃないかと思うのですが。

出口:これは某麻生さんとかも一所懸命言われていますが、でも内部留保があって投資しないということは、よく考えるとリターンが出る投資機会を考える力がないということを意味するので、投資して儲かるんだったらみんな投資するでしょ。

だから内部留保が積み上がっているのは「企業が悪い」「ケチでお金を貯めているだけやで」という麻生さん流の考えじゃなくて、むしろ問題はもっと深刻で、貯まる一方のお金を有効に使う方法を政府にも企業にも考える力がないことが真の問題やと考えるべきですよね。

大学の学長会議ってあるんですよ。この前、55人ぐらいの学長が集まって議論したのですが、何をテーマに議論するのかと言えば、18歳人口が減ってどうしようということがテーマになっているんですよ。それで18歳人口が減ってどうしようという問題設定をしたら、みんながっかりするしかないわけですよ。

結局、大学の合従連衡とか数減らすとか、そんなしょうもない話になってしまうので、僕は、新米学長で初めて行ったのですが「ちょっと発言していいですか」と言って、世界的に見たら大学って成長産業ですよと。インドのモディ首相が「インドには1,200校、新しい大学が必要だと言っているんですよね」と言ったら、みんながキョトンとしているので、だからやっぱり問題設定の方法を考えるべきですよね。

どんな教科書にも書いてありますが、生産性をがんがん上げて給与を上げてもらうという以外に解はないので、すべてのスタートはやっぱり生産性を上げるということですよね。やっぱり1970年以来、連続してG7の最下位では格好悪いですよね。

質問者6:ありがとうございます。

大学選びで重要なのは「考える力」

出口:次の方どうぞ。

質問者7:ありがとうございました。IT企業に勤めております。今ちょうど大学の学長の話が出てきて、日本の低学歴化みたいなお話と、一方で、GAFAとかマイクロソフトとかIBMとか、採用基準から学歴を完全に外すという企業が最近出てきてまして。

その中で新たにアカデミックに入られる出口さんから見て、日本の大学に足りないものとか、これからどういうふうに変わっていけばいいかとか、われわれが大学を選ぼうと思ったら何を見たらいいのかとか。

出口:圧倒的に考える力でしょうね。Googleは「学歴なんか見やへんで」とか言っているんですけど、じゃあ中卒を採用するかといえば、元Googleの僕の飲み友だちのトップは何と言ってきたかと言えば、うちは東大の大学院のトップクラスでも、「15人面談して1人採るぐらいが関の山やで」と言っているんですよね。

Googleは別に学歴がなくても社員や候補者の能力や意欲は徹底的に見ると言っているので、それは日本が低学歴であるということや低学歴でも良いという話とはまったく関係がない世界だと思いますがね。

Googleはレベルの高い人の採用に自信を持っているので、「もう学歴なんか見やへんで」と。人事部がもう学歴のデータを全部外したのと同じように、「君がどんな大学を出ているかはどうでもええで」と。君は何を勉強してきて、どんなことを考えているんやということを徹底して見て選ぶ自信をつけたということを意味しているので、それは低学歴とは何の関係もない話だと思いますが、それでいいでしょうか。

質問者7:ありがとうございます。ということは、大学を選ぶ時には考える力をつけさせてくれるような大学を選ばないといけないということでしょうか。

出口:そう思いますよね。

質問者7:APUのような。

出口:はい。APUもちゃんとできているかどうかは自信がないのですが、この前、京大の松本(紘)前総長と話をしていたら、京大生の英語力は入学時がピークで卒業時は2割ぐらい落ちているという話をされていて。

これでは国民も怒るわなとおっしゃっていたのですが、そりゃそうですよね。高い授業料を払って、卒業の時に能力が落ちているのでは、何のために大学やってんねんという話ですからね。

田中:恐ろしい話ですよね。

自民党の文書で「all supporting all」が使われた

出口:はい。どうぞ。

質問者8:APU卒業生です。出口さん、ご無沙汰しておりました。私は今個人事業主のフリーランスでいろいろやっているんですけども。その理由としては前に働いていた会社はすごい好きだったんですけども、副業を許してくれなかったので辞めて。今いろいろやっているんですけども、まさに副業について聞きたくて。

出口:今、副業を政府も認めようとしているでしょ。

質問者8:でも、まだ企業は「副業してもいいですか?」って聞いたら、そういうのはしょっちゅうあるんですけども、これは出口さんが考えるには理由はなんでですかね。

出口:そういう企業は衰退していくでしょうね。

(会場笑)

この前の学長会議で自分がおもしろかったのが、某大学の学長が今の大企業は5年以内に全部消えてしまうという、爆弾発言をされたのですが、今日したようなほとんど同じ話を、実は3月に自由民主党の政務調査会でもうちょっと過激に話をしたんですよ。

そうしたら5月29日に小泉進次郎事務局長がまとめた政務調査会の提言の中には、この「young supporting old」の世界から、「all supporting all」の世界に変えなければいけないという僕の発言がそのまま載っているんですよ。これ自由民主党の文章です。

そこには、定年のない世界を目指していくということも書いてあるので、逆にあれだけ保守的な自由民主党ですら、やっぱり日本の状況にはものすごい危機感を持っていて、むしろ企業より進んでいるところがありますよね。

この「young supporting old」というのは、どこから取ってきた言葉かと言えば、若者が高齢者を支えるというのを格好よく英語で言ったらどうなるのかを、前の会社の帰国子女に聞いて教えてもらったので、それからそれを使っているんですけれど。

僕が勝手に作った言葉が自民党の正式文書に載るぐらいに、やっぱり政府のほうが危機感を持っていますよね。だから世間の変化ってけっこう早いかもしれません。

APUの教師陣のストロングポイント

質問者9:ありがとうございます。田中さんもお見えになっているので、私は今のお話の中で横を見るという話があって、要は日本以外の外国のみなさんとコミュニケーションを取るということが、自分のこれからの……これからと言っても、年齢はけっこう上なんですけど、これからのことにすごい必要だと思っていて。

どうしても英語力をつけて、自分でコミュニケーションをとっていきたいとすごく思っているんです。

ただ、年齢ってどうしても体力が落ちたり、覚える力が落ちたり、そういうことでけっこうダメージがあったりもするんですね。50歳になっても、もしくはその上になっても、新しいことを勉強するために、もしくは一番言いたい語学なんですけど、語学をもっと習得したいという人に、非常に個人的なことで恐縮なんですけど、檄(げき)というか。

本当に横にどうしても広がりたいんです。でも覚える力というか、なかなかできなくて、けっこう落ち込むことが多いです。そんなまだまだ勉強したい高年齢者に対して檄を飛ばしていただければと思います。

出口:ファクトだけ言えば、APUは先生方も半分以上が外国人なんですよ。学部は2つあるんですが、国際経営学部の学部長は日本人ですが、副学長はドイツ人、カナダ人、バングラディシュ人、フィリピン人です。アジア太平洋学部は学部長が中国人で、副学部長は日本人、アメリカ人、イラン人なんですよ。なかなかおもしろい組み合わせでしょ。

これでマネージしているので、会議は全部二言語でやっているんですよ。英語と日本語で。僕はぜんぜん英語がでけへんので困っています。それで毎週、外国人の先生に来てもらって、叱られながら英語を勉強しているのですが、でも「もう15コマも進んだのに、ぜんぜん上達しませんね」とか言われているのですが。

(会場笑)

何かをやろうと思ったら、今日から始めよ

出口:それでもちょっとはマシになりましたとは言ってくれるので、そんなものですよ。そんなに簡単に上達しないので。でも、いくつになっても明日になれば1日歳をとるので、今日が一番若いので、何かをやろうと思ったら今日から始めるのが一番いいんです。そんなもんで、人間そんなに簡単に勉強できたら苦労しませんよね。

田中:でも、本当に年齢ということをやっぱりみなさん気にされますけど、私の先輩で60歳過ぎてから訓練して同時通訳者になった人もいますし、本当にチャレンジって年齢はまったく関係ない。

とくに通訳者なんてみんなフリーランスなので、好きに勉強して好きにスキルアップして、そしてキャリアアップしていくという感じなんですけども、あとなかなか覚えられないということですが、これ年齢関係なくなかなか覚えられないと思います。

あと、私も本当にもともと英語なんてぜんぜんできなくて、本当に不登校だったような、そんな人間なんですけども、英語を勉強する中でいろいろ経験したことの1つに、覚えられないものは覚える必要はないということなんですね。

必要だから覚えるんですよ。だからスマホの使い方も使わない機能は覚えられないじゃないですか。なので、覚えられないということは必要がないんだなということで、別にそれは自分の頭が悪いとかそういうことではなく。

そうではなく、じゃあ必要になるような機会をどんどん作っていくとか。やっぱり英語が使いこなせないというのは、それは使ってないからであって、使いこなせるようになるには、それを使うということが必要なので。

どんどん使えば、必要な単語とかも増えるので、必要になれば必ず覚えますから、だから年齢というのはまったく関係ないと思いますし、ぜひ一緒にがんばりましょう。私も毎日勉強しています。

質問者9:ありがとうございます。

学歴と権力と法で複雑化する医療業界

司会者:すみません。お時間の関係で最後の質問とさせてください。

質問者10:私は今、医療を学んでいる学生です。話がそれてしまうかもしれませんが、医療を考える上で医師だとか他の医療従事者の方という存在があると思うんですけど。

日本の医師の方って権力が……先ほど学力と学歴の話があったと思うのですけど、学力であったりプラススキルだとか、そういったものが医療の世界って、他の企業と違った概念が入ってきているのかなって。

医療って少し特殊な世界かなと私は思っていて、その中で医師の方が権力のあるプラス法律などで守られている。もちろん命を預かっているからだとは思うのですけど。

その中で他の医療従事者の方がもっと医師方のために負担を減らそうとか、そういう取り組みがされているんですけど。どうしても医師の方にスキルがあって、権力も強くて、そういうものがあるから何も変えられないんじゃないかなとか。

そういう悪循環プラスマインドが、すごいダラーッとしたマインドが、すごい医療界に広がっていると私は感じていて。そういう中で出口さんにお聞きしたいのは、医療というそういう特殊な世界で、他の医療の方がチーム医療というかたちで、どんどん医師の方に手伝ってあげようみたいな空気があるんですけど。

その中で医師の方に対するマインドチェンジではないんですけど、やっぱり法律で守られている権力プラスやっぱり学力というものもあるので。

そういう人たちのマインドチェンジさせていこうみたいなものって、いろんなものが絡みついていて複雑化しているので、出口さんの話にあったのは、もっとシンプルに考えて答えをくれるようなイメージがあったので、出口さんが考えるシンプルな意見だとかというのがあればお聞きしたいなと思ってます。

若者、馬鹿者、よそ者が変えていかなければならない

出口:じゃあ、実例を話したほうがいいですよね。東京大学の医学部の某眼科にものすごい先生がいて、ヒポクラテスを信仰していて、医者は全人格的に患者に当たらなあかんと。だから視力検査から全部医者がするという哲学を持っておられたらしいんですよ。

だから他人に任せたらいかんと。若い先生方はみんな、そんなことをしていたら研究もでけへんと。でも先生があまりにも怖すぎて、その医局ではずっと全員が疲弊困憊して働いていた。

それで僕の友人がこれ以上やっておられないと思って辞めたんですよ。初めて1人が辞めたらどうなったかと言えば、辞めてもいいんだということがわかったので、みんながどっと辞めて。

その医局は視力検査をする技師とかがいなければ回らなくなったので、やむなく分業体制になっていった。結局1人が行動することによって、合理的でない先生は、根拠なき哲学、精神論を貫くことができなくなったんですよね。

これは本当にあった話です。だからどんな社会でもやっぱり勇気を持って、行動することですよね。おかしいことはおかしいと。まっとうでないことは、まっとうにしたいと言い続ける人がいて初めて、世界は変わっていくんです。

世界を変えるのは、若者、馬鹿者、よそ者って言うでしょ。賢い人は世界を変えないんですよ。なんでかと言えば、(ジョージ・)バーナード・ショーというおじさんがいるのですが。賢い人は空気を読んじゃって、どうやれば良い子になれるか、瞬時にわかっちゃうから、すぐにその世界に合わせてしまうから、世界が変わらないんですよ。

でも、馬鹿者は空気を読めないので、「おかしいですよ」と言い続ける。次に若者は経験がないのでわからないので、おかしいと言う。よそから来た人もその社会がわからないので、おかしいと言う。

だから、よそ者、若者、馬鹿者しか世界を変えないということは昔からずっと言われているんですよ。だから絶対に行動です。時間が過ぎたので質問はできないということですが、僕は本を書いています。けっこうたくさん。大きい本屋に行ったらだいたいあるので、立ち読みしてください。

(会場笑)

それで、前書きと後書きを読んでもらったら、必ず僕は双方向で意見がほしいので、個人のメールアドレスをオープンにしています。だから、そこだけ写して質問していただいたら、2、3日のタイムラグを考慮していただいたらお返しできると思いますから、いつでも質問してください。

司会者:はい。では、すみません。予定のお時間がありますので、出口様、田中様、貴重な講演ありがとうございました。

(会場拍手)

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