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帰ってきた「プロデュースおじさん」〜ギーク・ハスラー・ヒップスターの分業論〜(全8記事)

直観タイプと客観タイプはどう共存すべき? 「プロデュースおじさん」が説く分業の秘訣

2018年で開催6年目を迎える「Tokyo Work Design Week」は、“働き方の祭典”として、のべ2万人が参加。今回は渋谷をはじめ、横浜・大阪・韓国でも開催されました。本セッションには、「ソーシャルデザイン」の概念を日本に定着させたNPO法人グリーンズのビジネスプロデューサー・小野裕之氏、人気ECサイト「北欧、暮らしの道具店」を運営するクラシコム代表の青木耕平氏、異例のベストセラー『発酵文化人類学』の著者である発酵デザイナーの小倉ヒラク氏の3名が登壇。昨年に続き「プロデュースおじさん」として、働き方・組織論・分業論などについて語ります。本パートでは、組織における分析と直感のバランスの取り方について議論しました。

最初に手を挙げる人は責任感、2番目に手を挙げる人は冒険心の持ち主

青木耕平氏(以下、青木):いや、(最初に質問をしようという)責任感が素晴らしいよね。ありがたいです、もう本当に。それで、次は2番手になってくると、責任感から冒険心とかがある人が(手を上げる)。

小野裕之氏(以下、小野):出てくる前から、分析しない(笑)。

青木:(笑)。出てこいやーって。

小倉ヒラク氏(以下、小倉):さて、なんか……。

小野:次のご質問……。

青木:質問じゃなくても、なんか言えばいんだよね。

小野:でもね、今、聞きながら思ったんですけど。

小倉:外からの足掛かりがないと、プロデュースおじさん、一歩も動けない(笑)。

(会場笑)

青木:ぜひ、この時間を取り返すためにね。それで、こういたたまれない空気になると、手を挙げちゃう人いるんだよね(笑)。

小野:(笑)。

青木:これ、絶対いるのよ。

小倉:さて、どうでしょうか。あー、いらっしゃいました。ありがとうございます。では、こちらへどうぞ。

(会場拍手)

小倉:ありがとうございます。拍手が温かい。

青木:どうも初めまして。

質問者2:初めまして。私、実は今日、夕方5時前ぐらいに、友達が病気になって行けないからって、急遽代わりに来たんです。

青木:おー。じゃ、意味わかんないでしょ。

(会場笑)

小倉:いやー、意味もわからず闇鍋に来た(笑)。災難でしたね、それは。

質問者2:いやいや、そんな、ありがとうございます。それで、(お聞きしたいのは)なんでこの会をやっているのか、というところで。主催者がこのテーマでやってくれ、という話だったんですか? それとも3人でなんか話そうよ、というかたちでやってるんですか?

青木:いやいやいや。経緯? 経緯はモデレータが。

小倉:これの経緯はなんなの?

青木:おれも、よくわかんない。

小野:経緯は……まあ、なんか僕が毎年出てるからですかね(笑)。

青木:あ、違う、最初は福岡で。

小倉:あ、僕だ。この3人が仲良しで、いつもいろいろなところを旅してるんですよ。それで、僕がちょうど福岡でなんか仕事してて、そのときに、おもしろいイベントとかやりたいなって話になったんです。そのときに、いつも仲良しの3人が、福岡で一緒にご飯を食べて遊べる機会がほしいと思ったので、イベントにしちゃった、っていうところから始まって。

それで、イベント名をどうしようかってなって。僕、学びがありそうなイベントって嫌いなんですよ。なんていうんだろう、学んだということで満足しちゃうからね。だから僕は、なんだかよくわからなかったな、というイベントがすごく好きで。そのときに、なんかよくわからないイベント名にしようと思って、「プロデュースおじさん」というタイトルが閃いたんですよね。

こっそり検索しているカタカナ語や英語の略称

質問者2:そのときは、おじさんじゃなかったんですか?

小倉:もう、おじさんですね、バリバリ。

小野:3年ぐらい前。

小倉:2年ぐらい前? それで、ノリで「プロデュースおじさん」って名前つけたら、意外に好評で。あとはそのまま続いてる感じですかね。

青木:そうですね、場所を移して。本当に、こちら側にはとくになんのコンセプトもなくて。まあ、お座敷がかかって、この3人で同じタイトルでやってくれ、というふうにお誘いいただいて。じゃあ、という感じでやっているのが、本当のところなんですよね。

質問者2:じゃあ、なにか「今日持ち帰ってほしいものはこれです」とか「覚えておいてほしいものはこれです」とか。そういうのはとくにない?

青木:ないんですよ。

質問者2:いいじゃないですか。

(会場笑)

青木:どうもどうも。逆に、最近興味あることってなんですか?

質問者2:興味?

青木:興味というか、自分の中でこのテーマがなんとなく頭を(占めているとか)、いつもこの辺にあるんだよね、ということとか。ちっちゃいことでもいいんですけど、悩みとか。そういうものは何かないですか?

質問者2:そうですね。あんまりないか……、どうですかね? 私、普通にサラリーマンなんですけど。

青木:なにしてる人なんですか?

質問者2:私は、事業企画室みたいなところで働いていて、アウトドアをもっと世の中の人に伝えていこう、という仕事をしているんですけど。

青木:へえー。

質問者2:若い人たちが、昔も、昔っていうか、まあどの年代になってもそうなのかも知れないんですけど。言葉が、カタカナが多くって。(今回のイベントの)3文字の、なんかわからないんですけど。

小野:(注:後ろのプロジェクターのイベントタイトル「帰ってきた『プロデュースおじさん』〜ギーク・ハスラー・ヒップスターの分業論〜 」を指さして)

質問者2:ああ、そう。ああいうのとかね。

(会場笑)

青木:ああいうのね、よくないねー(笑)。本当によくない。

小倉:すみませんねー、本当に(笑)。

青木:なんか、PDCAとか。

質問者2:そうそう(笑)。そういう、頭文字系とか。それは本当に、みんながそうやって普通にしゃべってるのをすごいな、と思いながら、検索して、なるほどっていうふうなところで。

青木:けっこう、こっそり検索しますよね。俺、最近検索したのって「SaaS」。

小野:サースね。

青木:SaaS。絶対1回は検索してるはず。

小野:(笑)。

小倉:僕、最近(検索)したのって「SDGs」。

青木:あー。せざるを得ないですよね。あれ、でも、言ってること一緒じゃん、みたいなことあるじゃないですか。前はこういう言葉で言ってたって。

小倉:あ、この足掛かりでもうOKなの?

小野:(笑)。

小倉:もうちょっと聞く?

青木:あー、そう。ああ、ああ(笑)。

小倉:せっかくだから、もうちょっと聞こう(笑)。

(会場笑)

分析してわかることよりも、直観を活かしたほうがいいこともある

小野:(笑)。それで、カタカナが多くて。

質問者2:そう、カタカナをいっぱい使ってしゃべってると、その言葉もわからないなと思いながらも、なんか妙に立派なことを言ってるように聞こえる、というふうなところに。若干、まだまだ自分も修業が足りないな、と思うことはあるのと。そのぐらい……、そうですね。あと、みんな分析が得意というか。

青木:あー(笑)。

小倉:あー、いや今ね、おじさん的にはいい足掛かりもらったよね。

小野:分析が得意というのは、裏返すとどういうことですか?(笑)。

(会場笑)

青木:本当に言いたいことは、そこじゃないよねと。

小野:みんなも思ったでしょ、みんなも思ったよね、今ね?(笑)。

青木:そこじゃないだろ、言いたいことは、と。

質問者2:例えばブレストとかで、別に結果が出なくっても、どういうかたちで進めて、このことをやるべきかどうかとか含めて話をしているだけなのに、それをこう、グラフに書いてみたり。それってどういうカテゴリでどうのこうのとかって、分析するわけじゃないですか。

そうしたら、まるでそれがすべてのような雰囲気になると。そういうふうに理論的だったり、合理的に物事を考えられなくて、でも直感的には、絶対こっちの方がいいのになって思うことが、採択されないようなところがあるのは、なんとなく恐ろしいなと。

青木:恐ろしいですよね。「お前、気がついたら分析しかしてなくね?」っていうやついるじゃないですか。それこそさっき、ラジオの方がいらっしゃいましたけど。「ラジオ、ああなるほど、つまり電波媒体ですね」とか。いやいや、それわかってるよって。

小野:(笑)。

(会場笑)

青木:それ言い換え、みたいなね(笑)。あるんですよ。

小野:言い換え要員みたいな(笑)。直感的な人を、もうちょっと活かした方がいいよな、っていうところが若干あるということですよね。

質問者2:そうですね、それだけじゃいけない。さっきのギーク・ハスラー・ヒップホップ?

青木:ヒップスター。もうそれでいいっす(笑)。確かめる価値ないんで。

小倉:ヒップホップ。YO!

(会場笑)

「考えること」と「悩むこと」はどう違うのか

質問者2:(笑)。そういう感じで、いつも直感的なだけでは絶対いけないと思うんですけど。でもそういう人たちが、表で活躍できなくなるのもいやだな、寂しいなとは思います。

青木:なんかね、手前味噌なんですけど。ちょっと前に我々の媒体で、クリエーターの水野学さんっていう方と我々のスタッフと。

小野:「good design company」の(代表取締役でクリエイティブディレクターの)。

青木:そうですね。対談記事が載ったんですね。その中で水野さんが「考えることと悩むことは違う」と。「考えるということは行動を伴う行為だから、行動が伴ってないんだったら、それは悩んでるだけだ」っておっしゃってたんですね。

なぜ行動が伴わないと考えられないかというと、考えるための材料が生み出されないから。だから、ある意味では、分析するのは考えるための材料作りじゃないですか。なので、分析したら、たぶん考えなきゃいけないわけですよ。考えるということが、結局なんらかの行動に結びつくので「行動しよう!」という。たぶん(そういう)話なんだと思うんですよ。

でも多くの場合、分析したところで止まってるということは、分析したところから考えてたはずが、悩みモードに入って「どうする?」「え、わかんない。どうする?」みたいな。「いやいや、どうする?」「もう1回分析する?」みたいな。「じゃあもう1回ちょっと分析しようか」ということが起きてるってのはよくあって。

小野:(笑)。

青木:だから、よく僕の会社の中で「もう、やらんとわからんから、やろう!」って言って。やったらわかる、という。よく言うのは、自転車に乗るということを、自転車に乗れる(ようになる)前に、自転車の乗り方を一生懸命勉強してる。意味わからないじゃないですか。

でも、乗っていった瞬間にすべてがわかるじゃないですか。「あー!」って思って、もう何十年経っても忘れない。でもその前に「いやこれはジャイロ効果っていうのがあってね。補助輪がなくても、こういう物理法則によって倒れないんだ」とかっていくら勉強したところで、あまり意味がないので。

だから、そういう意味では、分析ってとても大事なことだと思うんですけど、そこで止まると、考えていたはずが、気がついたら悩んでいるだけになっちゃう。考えるためには、次に分析して何するかで、それが失敗でも成功でも、考える材料がまた新たに生まれて「俺、失敗したね。なんでだったか分析しよう」という。分析って、これでいいんだと思うんですよ。

分析して「こうだったから、じゃあ次こうかもしれない。やろう」みたいなことになっていく。そうすると、たぶん分析というものが活きてくるかなと思うんですよね。

企業が分析をしたがる背景にあるもの

小倉:僕は微生物の専門家になる前は、普通にデザイナーだったんですよね。その時に、いろいろな大企業とも仕事をして、いろいろなところを見ていったんです。その時に、今の「じゃあなんのために分析するのか」とか、「なんでこんな分析ばっかして行動しないのか」という話って。

企業が求めてるものというか、組織が求めているものが、結果を出すことではなくて、リスクを割り出すための、なにかしらの後ろ盾を求めてるというふうに、ちょっと文脈が違うんじゃないかと思っていて。

分析地獄ってけっこうあるじゃないですか。マトリックス作り地獄とか、レポート地獄とか共有地獄とか、いろいろな地獄がありますけど(笑)。仏教の八十八地獄みたいなね。ビジネス界のね、そういうのあるんですけど。

小野:(笑)。あるの?

(会場笑)

小倉:ないかな? でも、そういうのって、結果を出すためには絶対に、なにかしらの損を取らなきゃいけないので。その損を出した時の話って、結局、超ヤバいコンプライアンスに差し障る人種差別とかじゃなければ、事後報告でいいはずなんですよね。

僕の知り合いの会社で、ベンチャー期ですごく伸びてる会社は、やっぱりそこって意識的なんです。なんかこう、新しいことにチャレンジする時、究極、もう割り切った話だけど、ある程度やることだけ、大きな枠組みだけを決める。それで、あとは「これをやるか、やらないか」はいちいち自分に聞くなと。

それで、「『やってうまく行きました』『うまく行きませんでした』という事後報告だけちゃんとせい」と。それで、やるまでの意思決定に対する過剰な共有は、邪魔だからやめとけ、みたいな話。

企業の規模にもよるんだけど、本当に結果というものを考えていった時って、その共有を事前にするのか、事後にするのかみたいなのって、けっこう大事な話だと思っていて。

(意思決定についての共有は)事後に倒した方が、ポカもいっぱいあるけど、結果は出やすい。だから、結果を本当に出そうと(するときには)、ある種の優れた組織や失敗しない組織というもの(理想)を剥ぎ取ったほうがいい。とにかくこの目的に行こうという時は、過剰な共有はたぶんガンだと僕は思う。

でももし、今お姉さんがいる会社が過剰な共有みたいな(ものが求められているとしたら)。だから分析しちゃうと思うんだけど。それが求められるとしたら、組織としてそもそも何を求めてるかという根本のフェーズが、もしかしたら不健全かもしれない。

分析は、成功するためというよりは真理に近づくためのもの

質問者2:一応、会社の名誉のために言うと、そういうことはぜんぜんなくって。相談するから、きっとみんなが分析したがるんだな、とは思うので。だから、そういう意味では変に共有したりとか(はしていないです)。でも、その一方で「自分じゃなかったらどういう考えになるんだろう」ということは気になるし、教えてほしいから、まあちょうどいいというのはあるかもしれないんですけど。

小倉:なるほどね。なるほど、じゃあ、いいんだ。

小野:(笑)。

質問者2:そう、だから、いいと思う。

青木:ぜんぜん、いいよ。

(会場笑)

小倉:いい会社だよ。

青木:いい会社だ。

質問者2:ごめんなさい(笑)。そう、いい会社だと思います、はい。

青木:いい働き方だよね。

小倉:だって、分析しないよりは、した方がいい。

青木:そうそう、分析は大事ですからね。ただやっぱり、分析する目的が、失敗しないためにやるというのは、あまりいいことじゃないなって思っていて。すべての仕事などをうまくいかせるための目的設定を「成功する」ということに置くとたぶん成功しなくて。

なんか、真理に近づくと思った方が、僕はいいなと思っていて。真理に近づくためには、結局考えていかなきゃいけない。考えていくためには、たぶん仮説も消していかなきゃいけない、となったら。

失敗した時も仮説が1個消えて、可能性が10個あるうちの1個が消せたじゃんという。9個にフォーカスできたじゃん、ということは間違いなくあるので、やっぱり、やるって、うまくいっても失敗しても、大成功か小成功かの違いで。

どっちでも、成功といえば成功なんだよね、とは思ってて。まあ唯一、即死しないようにやろうね、というのはあるじゃないですか。「いや、お前アホか」みたいな(笑)。1回失敗したら即死みたいな感じでやってたら大変だろ、というのはあると思うので。じゃあ、いい感じになったところで。

小倉:じゃ、小野っちですね。

青木:そうですね。

小野:(笑)。

青木:しゃべろう。

小倉:今日はもう、小野っちしゃべっちゃダメ、って縛りがあるからね。

直観と客観をバランスよく取り入れると、仕事はおもしろくなる

小野:(笑)。でも「直感対客観」って、どうしても組織でやる上では、客観の方が重要視せざるを得なくて。共有できちゃうから、そっちの方を重視しちゃう。でも仕事としては、直感を証明するための客観にした方が本当は楽しいですよね。

さすがに思いつきはダメで、思い付きは言うなよ、みたいな(笑)。偉い上司ほど「これ直感だ!」みたいなことをやりがちなんですけどね。「それ思いつきだろ!」みたいな。

(会場笑)

そういうことをやりがちなんですけれど、みんなが直感的であることのサポートを、客観性が高い人たちがやるようにした方が、たぶん職場や仕事のおもしろさは生まれやすいんですよね。

それを全員でもうちょっと共有できたら。直感と客観の役割の差みたいなことを共有できると、もっともっとドライブしそうな。だから、「思いつきに近い直感」は言ってもよくて。ただ、説明できちゃう客観の方が、絶対尊重されちゃうのは世の常です(笑)。

(会場笑)

小野:だから、ちょっとそこだけ間引いて、直感の方をちょっと盛ってみんなで話すと「けっこう噛み合うよね」というところに最終的に着地できると。今、プロデューサーおじさんっぽいしゃべり方をしているんですけれど(笑)。

小倉:今初めて、ちょっと学びがある感じになりましたけど。

(会場笑)

青木:今日、初めて。

小野:いや、直感と客観。おもしろいテーマを(ありがとうございます)。

青木:いやでも、本当に助けていただいて。

質問者2:すっきりしました(笑)。

青木:いやいや、ありがとうございました。

小倉:ありがとうございます!

(会場拍手)

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