2024.10.10
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第1部 小巻亜矢氏 基調講演「人生100年・働く50年時代のキャリア」(全1記事)
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竹之内幸子(以下、竹之内):みなさま、今日は暑い中、Woomax公開セミナー【Woomax公開セミナー】人生100年・働く50年時代のキャリアにご参加いただきありがとうございます。
基調講演をお願いした小巻さんとは10年以上前からのお付き合いで、お仕事なども一緒にさせていただいているのですが、小巻さんが館長になられてからのピューロランドの改革が非常にすばらしく、パレードや今年リニューアルしたメルヘンシアターのKAWAIIKABUKIの中にキティちゃんの女性リーダーならではのリーダーシップが反映されていて小巻さんのダイバーシティ・マネジメントが活かされていることを実感します。
今回はそんな小巻さんのキャリアについてお話しいただこうと思っています。どうぞよろしくお願いいたします。
小巻亜矢氏(以下、小巻):みなさまこんにちは。今日はよろしくお願いします。
このような機会を頂戴しまして、心より感謝申し上げます。ありがとうございます。そして、このあとみなさまがもれなくピューロランドに行ってみたいと思っていただけたら、大成功だと思っております。
ただ、今日はピューロランドの話をいろいろするというより、今日のテーマは「人生100年・働く50年時代のキャリア」ということですので、キャリアという視点からいろいろなお話をさせていただきたいと思います。
貴重な土曜日の午後に私のつたない話を聞いていただくのは恐縮ですが、皆様にとってのきっかけを、なにか1つか2つでもお渡しできたらなと思います。
一生懸命お話をさせていただきますが、私はついつい思いが募って、お聞き苦しいことが多々あるかと思いますが、お許しくださいませ。
小巻:(スライドを指して)今日は7月7日、七夕ですね。星の子ということで、今日はスライドにキキララちゃんを使ってみました。
そして、虹というのがピューロランドのシンボルでもあるんですね。いろんなものの架け橋になっていきたいという思いを込めて、こんなデザインを作ってみました。
いまお手元にもあると思うんですが、プロフィール=キャリアでもございますので、みなさまに私のプロフィールを簡単にもう一度お話をさせていただきたいと思います。
現在はサンリオピューロランドというテーマパークの館長をやっております。自分の人生で、テーマパークの館長をやる日がくるなんて、それこそ夢にも思っていなかったので、本人が一番びっくりしてるような状況なんですが。
そのほかにも、先ほど竹之内さんからご紹介あったように、10年前に出会ったのは、(スライドを指して)次に書いてあります、NPO法人ハロードリーム実行委員会というですね。
このNPOは、子どもたちの夢をいきいきと描く社会にしていこうということで立ち上げたNPOです。これも現在引き続き代表理事をしております。
ピューロランドの仕事がメインでございますので、活動そのものはなかなかできていない状況ですが、子どもの夢をいきいきと育めるような社会にしていこうということで。
おもに子育て支援だったり、三世代だったり、子どもの発達心理学をお母さんたちにわかりやすく伝えていく子育てコミュニケーションだったり。幅広く老若男女、一人ひとりがまず自分のことを知ることから、ということで、クラスアイという、自分を知るプログラムをやったりということで。
おかげさまで全国47都道府県に支部ができまして、私はなかなか自分が講師としていくことはできないんですけども、担い手が1,500名ほどの状況です。
そして子宮頸がん予防啓発プロジェクト、ハロースマイルの副代表をしておりますが、、これはまたあとで詳しく1つ1つ触れていきます。
私自身実は乳がんの罹患の体験がございまして、その経験から……。乳がんというとみなさんご存じかと思いますが、40代くらいから罹患が増えていく病気なんですけども。
自分の乳がんの体験から、もっともっと若いうちから、自分の体にもっとコンシャスになってもらいたいなという思いで、20代、30代の女性には、子宮頸がんが今すごく増えているということで、その活動を始めたのが2010年ですね。
子宮頸がんに関しては、ワクチン問題だったり、いろんなことが取りざたされましたが、ハロースマイルという活動としては、ワクチン云々ということではなくて、まず病気のことを正しく知ろうということと。
子宮頸がん、子宮というと、ともすると見たくない、耳をふさぎたくなるような、子宮の病気みたいなところがあると思うんですが。
そのことを正面から、キティちゃんはじめ、サンリオキャラクターに応援してもらいながら、正しい情報をしっかりと広めていきたいなということで立ち上げたのが、このハロースマイルです。
ぐーっとさかのぼって、まず私のファーストキャリアから。1983年、まだ男女雇用機会均等法がない時代ですね。大昔ですが、株式会社サンリオに入社しました。
そのあと結婚退社、出産、子育てを経て、30代後半で化粧品の仕事で社会復帰をしました。そのときにいろいろな女性と出会いまして、女性支援という、もともと自分の中にあった思いの種に火がついたような状況でしょうか。
そこから女性の、化粧品でキレイにするのではなくて、心持ち、メンタルのところから、もっと女性たちがイキイキするためにはどうしたらいいんだろうということで、いろいろな学びをして。
化粧品からではなくて、女性が軸のところから、いろんな意味で自立をしていくということを応援したいなということで、2008年にサンリオの中で企業内起業ということで、女性が笑顔に「なる」、なりたい自分に「なる」というような思いを込めて、株式会社Nalという会社を立ち上げました。
同年に先ほどお伝えした、教育支援のNPO、ハロードリームも立ち上げております。
2008年当時、私が49歳のときなんですが、まあ本当に、思いが毛穴のすみずみから溢れたような、そんな時代だったなと、先ほど振り返ったとき思ってました。
ですから今日ですね、「人生100年、働く50年」ということですけども、だいたい50歳くらいから本当にやりたいことが、いろんなことを経て浮き彫りになってくるんじゃないかな、なんていうふうに思ったりしております。
2010年に、先ほど言ったハロースマイルを立ち上げました。このハロースマイルという活動はNPOにもしてませんし、財団とか、法人化をしてないんですが、いろいろな企業が集まって、この子宮頸がんのことをみんなに啓発していこうという活動になっております。
活動を通して、例えば国連とのつながりができたり、東京FMというラジオ局で、4年半にわたってパーソナリティをさせていただくなど、幅広い経験をさせていただいたなというのが、このハロースマイルで。
ラジオの仕事は、ピューロランドの仕事があまりにも多忙を極めているので、ラジオのパーソナリティは降りましたが、ハロースマイルの活動そのものは現在でも続けております。
そしてその次になにを血迷ったか、東京大学大学院の教育研究科に行ったと。これもまたのちほど詳しく話しますが、なにかをやるとそれに向けて知識が欲しくなる。私は研究欲求が人一倍強いんですよね。
「自分と仲良く」という言い方を私はずっとしてるんですが、みんなと仲良くする前に、まず自分と仲良くするためには、どういうふうに自分を理解して、どういうふうに自己実現に向けて、どんなものをどういうふうにしていったらいいんだろうという研究がしたくて、大学院に行きました。
この間ずっと仕事は続けていたんで、もう恐ろしい毎日でしたが、大学院の2年間、自分にとってこんな贅沢な時間はなかったなというような、至福の2年間を過ごさせていただきました。
そのあとに、さていよいよ教育のほうに自分の仕事をシフトしていこうと思った矢先、ひょんなことからサンリオピューロランドに赴任ということで、現在につながっております。エンターテインメントとまったく無縁なキャリアをしてきた私が、現在サンリオピューロランドの仕事をさせていただいているわけです。
(スライドを指して)今のキャリアをこんなふうにもしてみました。これザクッと見ていただければと思うんですが、今私がちょうど60歳手前、来年還暦です。
50代があまりにも濃くて、ここの幅が広くなってるんですが、今まで振り返るとこんなことでした。
新卒で入社したあと、白い丸のところは結婚、25歳で結婚をしました。そしてグリーンピースみたいな緑の丸い3つ、これが子どもです。出産、男の子3人ですね。29歳のとき、32歳のとき、36歳のときに出産をしました。
そのあとの白い丸が……。人生ってなにが起こるかわからないんですね……。このグリーンピース、3つ並んでる真ん中の子どもを事故で亡くしまして、そんなことがありまして、夫との向き合い方にいろいろと課題が生じて、人事異動と。はい、離婚しました(笑)。
でも元の夫とは非常にいい関係性で、お互いサポートしあえるような関係の、いい離婚だったなと。いい離婚てあるんだなと思いますけども、そんなかたちで離婚をして。
そのあとには、自分の足で生きるということに対して、あるいは子どもを亡くしたことをきっかけに、命の尊さとか、「生きるってどういうことだ」とか、「人間は死ぬときはなにも持って死なない、じゃあ人生ってなんなんだろう」ということを、非常につきつけられて。
そのあとやはり、守られて生きていくということではなくて、自分の足でしっかり立つという、自立ということに、なにかすごく揺さぶられるものがありまして、仕事に復帰しました。
化粧品の仕事で復帰をしたんですが、先ほど触れましたが、化粧品の仕事をしていると、いろんな女性のいろんな悩みにぶつかるんです。お肌の悩みは心の悩みなんですね。
眠れない、夫との関係が、姑が、借金が、子どもが、ママ友のいじめが、とかですね。ある地方に行ったとき、親の借金を返してる女性が多くて驚いたことがありました。
私は東京で生まれて東京で育って、私立の中高を出てという、当時自分では特に恵まれてるという感覚はなかったんですが、世間に出て、地方に行っていろんな女性の悩みを聞くにつれて、どのくらい自分が守られて、恵まれて育ったかということがよくわかりました。
いろんな女性の悩みを聞くにつれて、女性をキレイにするのは、もちろん……、今日化粧品関係の方いたら申しわけないんですが、化粧品ができることは保湿だけ(笑)。
(会場笑)
今はだいぶ機能が改善されてますから、ポーラさんのシワに効くとかですね、美白とか、どんどん開発されているのでいろいろ使わせていただいてますが。
そのときに強烈に思ったのが、やはり女性がキレイに生きるというのは、なにをおいてもいろんな意味で自立してることだなと強く思いました。それと同時に、悩み相談も、いろんな女性からかなりされました。
ですが、そのつど良かれと思って、新幹線の最終を逃すことも何度もありましたが、真剣に、本当に親身になってお答えはするんですが、次にいくと結局なにも改善されていない。
これはなんかすごく虚しさも感じまして、結局私の「よかれ」は、その人の「よかれ」じゃない。そのときに、「答えはあなたの中にある」というコーチングのなにかのフレーズを新聞で見たときに、「これだ!」と思って。
答えは一人ひとりの中にある、それを、「私はこう思う」を押し付けてても、なんの改善にもならないなということを知りまして。
そのときに、キャリアカウンセリングとか、コーチングとか、心理学というものを学び始めました。そして学んで学んで。
自分のやりたいことも化粧品のマーケティングだったり化粧品のプロモーションもおもしろいんですが、そっちじゃなくて、やっぱり私はメンタル面から女性を元気にしたいなということで、2008年に、ピンクの丸、株式会社ナル、そしてNPOのハロードリームを設立しました。
その手前の白丸は乳がんの罹患ということで、びっくりしましたね、自分が乳がんになったときは。
おかげさまで、みんなに妖怪と言われるんですけども、不死鳥のようにすっかり元気になりまして、私の場合は……、今日男性もいるので、お聞き苦しかったらごめんなさい。左の胸を全摘したので、こっちはフェイクなんですが、命をとるということで、ガッツリとってもらいました。そのおかげですっかり元気で、こうしてバリバリ仕事ができております。
2008年に会社とNPOを設立して、次の白丸は……。そうなんですよ、乳がんやったあとに、今度また子宮を全摘するという病気をしまして、おっぱいと子宮と、女性のシンボル的な臓器というか、立て続けに失いまして……。よく子宮をとると女じゃなくなるとか、女は子宮で考えるとか、あれ嘘です。
(会場笑)
私はおかげさまで元気にはなりましたが、女性らしくないとは前から、中にオヤジが入ってるでしょとは言われるんですが。子宮をとったからといってすごくなにか思考に変化があったかというと、そんなことはまったくありませんでしたので。
もしこの中に、今日は大勢女性いらっしゃいますが、そういうことで悩んでいらっしゃる方がいるとしたら、やはり自分が生きるということを選択していただいて、適切な治療に踏み切っていただきたいなと強く思いますが、そんな経験もあったので、子宮頸がんの予防啓発プロジェクトも立ち上げました。
これを、どういう経緯でというと、また話すと長くなるので、今日は割愛させていただきますが。
(スライドを指して)そのあとのオレンジ色の(学びの)丸が、女性を笑顔にする子育て支援、子どもたち、子育てで悩んでるママたち、三世代のコミュニケーション……。
いろんなことを活動する中で、やっぱり人は、まず自分のことを好きじゃないと周りの人を笑顔になんかできないよねという自分の体験がありました。
その中で、化粧品の仕事をしてるとき、こうして人の前でお話をするとき、家へ帰って子どもと向き合うとき、自分の母となんとなくギクシャクしながら、反抗してるまだ幼い自分がいたりとか、いろんな自分がいて、葛藤が諸々あったんですよね。
でも、たぶんみなさんも同じだと思うんですが、人はどうやって自分を理解して、自分と向き合っていくのがいいんだろうということを研究したくて、大学院に行きました。
そこで対話的自己論、自分の心の声を聴くという心理学と出会いまして、それを掘り下げて2年間研究をしました。研究のテーマが……、またこれもこれだけ語ると1日かかるんですけど。
「本当の自分だったら」という問いを、何人かの方は、自問自答したことがあるかもしれないですよね。「本当の自分ってどうなんだろう?」「本当の自分だったらなにをやりたいんだろう?」「本当の自分ってなんだろう?」と思うんですよね。
コーチングでもそういう問いがあるんですよ。「本当の自分だったらなんて言ってあげたいですか?」。
私はコーチングをとても使えるコミュニケーションだと思って、3年間けっこう深く勉強しましたが、「本当の自分だったら?」という問いが、すごく居心地が悪くて、違和感がありました。
「本当の自分って一人なの?」って、それがあったんですよね。自分というものに対して、どういう定義をしているんだろうとかですね、根が理屈っぽいというか探求心があるといいますか、そういう性格がありますので、そこを掘り下げるために研究をしました。
たった1つ、研究についてみなさんにお伝えすると、本当の自分、例えばなにかを迷ったときに、「これだ!」という答えを知っていて、自分の人生のすべての答えをみんなわかっている、たった一人の神さまみたいな自分がいるわけではなくて。
そのときどき、いろんなものに出会ったり、こんな影響を受けたり、傷ついたり悲しんだり、いろいろ感情が揺れ動いて、その中でそのときどきに立ち現れては消えていくその感情、その表れこそが、自分だという定義だと。
難しかったですかね? 要は、自分というのは常に変わっている、そしてこの人の前とこの人の前で違うなって思ったときに、それは悪いことではなくて、自分が椅子の位置を直すかのように、みんなそのときそのとき、実はベストな選択をしているというところで、1つすごくスッキリしたんです。
また機会があったら、対話的自己論の講演ができたらいいなと思っておりますが。
そんなこんなでこっち(研究)のほうにいこうと思い、対話的自己論の本も書いて、自分を1台のバスに見立てて、「あなたというバスにどんな自分が座ってますか」みたいな対話的自己論のプログラムを作って。いよいよ自分はこれをライフワークにするんだと思ったときにやってきたお話が、ピューロランドのお話でした。
ピューロランド、2014年からやらせていただいていて、4年経ちますが。今年の3月に介護、うちの母が腰の骨を折りまして、いきなりの介護ということも入ってきました。
女性の一生って……、男性も同じですよね、きっと。こんなふうにいろいろなライフイベントがあって、いろんなことがあって。これから何年まで、何歳まで命をいただけるかわかりませんが、こうやってキャリアというものが続いていくなと。
いくつになって仕事を辞めるかまだ決めてません。ピューロランドはいくつまでやれるかわかりませんが、たぶん命が終わるときまで私は何かをしてるんじゃないかなと思っています。
ここに、人生で得られる自己資本ということを書かせていただきました。これは、なんだって話なんですけど、「一生っていろんなものを得ていくな」ということなんですね。
わかりやすいのは、人生で得られる資本のところでいうと金融資本。貯金ができていったりお家買ったり、別荘買ったり車買ったり、いろんなものを手に入れていくと思うんですよね。
社会資本は家族とか知人とか、ネットワーク、会社の仲間とかですよね。この部分は広くも浅くもいろんなネットワークが自分の資本、財産ですし、コアなところで深掘りしていって、深く深くそこのネットワークを掘り下げていくことも、大切な財産だと思います。
そして、人的資本、健康に対する知恵、体力。本当のこというと体力そのものは日とともに若干失っていくものもありますけども。健康に対する知恵だったり、知力、経験、そしてなんといっても信頼という人的資本、こんなものが人生で得られる自己資本だなと思います。
キャリアアッププランを作っていく上での土台となる資本ですよね。こんなふうに思っています。そして、人的資本のところなんですけども、たぶんこれは、1つなにかを乗り越えるたびになにかが積まれていくような気がいたしております。
なにかにぶつかったり病気になったり、大切な人を失ったり、それを乗り越えたときに、「成長の証」的な感じですね。「成長の証」として、すごくいろいろな、自分の中に財産が積まれてきたんじゃないかなと思います。
本当にこの部分というのは、努力とか我慢とか、「不遇なときをどう乗り越えるか」っていったような、1つ乗り越えるとそれが知恵となって次のハードルを乗り越えやすくしてくれてるなと。58年生きていると本当にそれをすごく実感します。
この人的資本っていうのは、どんどん積み重なっていくと。そしてこの両方。社会資本と金融資本と、人的資本と金融資本というのも、例えば社会資本を作るたびに金融資本を投資する場合もあるし、ネットワークによって金融資本がもたらされる場合もありますし、人的資本もそうですよね。
例えば私が学校に行ったように、学費という投資もあるし、それをすることによってまた仕事の幅が広がって、金融資本をもたらす。そんなサイクルも人生ではあるなと思います。
唐突ですが。……ピューロランドの4年間の部分をお話すると、それはそれですごく時間がかかってしまうんですが……。そんな私が2014年にピューロランドに赴任というか、「ピューロランドやってみて」と社長に言われたときに、どんな状態だったかと。
そこでなにをしたかというよりも、私のキャリアがどこにどう活かされてきたかという、そういう視点で今日はお話をしようかなと思います。
ピューロランドに行かれたことある方、手を挙げていただけますか?
(会場挙手)
ああ、けっこうな方が。いつ頃ですか?
参加者:20年くらい前です。
(会場笑)
小巻:ですよね、いえいえ、そうなんですよ。そういう方がほとんど。自分が小さいときに連れてってもらったという女性の方、それから男性の方は、娘が小さいときに行ったことがある。
あるいは最近は、まだ1回も行ったことのない方は、「行ってみたいんですけど、女の子いないんで……」みたいなですね。
それがたぶんピューロランドのイメージなんですよね。「小さい女の子のいるファミリーが行くテーマパーク」、それがおそらくピューロランドの一般的なイメージなんだと思うんですね。
そして私が行った2014年。ピューロランドがどういう状態だったかというと……。
ピューロランドって1990年にできたテーマパークなんですね。ですから28年経っています。オープン当初2年間くらいは、オープン人気でガーッと良かったんですけど、そのあとガクンと下がりまして。
1回キティブームというのがありまして、けっこうアイドルの方とか、海外のセレブの方たちが、キティちゃん好きということで、キティちゃんの人気が再燃した時期があるんですね、1998年頃。
その頃もう1回、ピューロランド人気もあったんですけど、それが収まるとともに下火になって、低迷をしていた時期がずーっと長かったんです。
ですから2014年、私が行ったときに、緊急課題山積、良くなるしかないという状態でしたね(笑)。
スタッフが悪かったということではなくて、いろんな複合的な要因で、負の連鎖が起きていたなというのが正直なところです。
コンテンツ面、インフラ面、サービス面、プロモーションの部分、すべてにおいて課題山積だったので、どんな課題があって何から手をつけようというところで、呆然としたような状況でした。
そして私自身がエンターテインメントの経験がなかったので、まさに本当に、いったいどうしたものかと思いました。
途方に暮れましたし、なにかを提案をしても、「小巻さんは知らないからね」って、ニヤっと笑われて終わるみたいなこともあったので、行ってしばらくは、泣きながら帰ることも多々ありましたが(笑)。
何からやるか、というところでいうと、まあできることからやるしかないというところで。
自分の今までのキャリアを活かして、こんなことからやってみましたというところで、まずは人のところですね、サービスの改善というところ。
あとは連動。会社の中の連動が非常に(無くて)。それぞれの部署、ショーはショー、イベントはイベント、グッズ開発はグッズ開発、売り場は売り場。それぞれが本当に点でしかなかったんですね。
そしてターゲット別のビジュアル戦略がなかったというところ。
私は女性の中で仕事をしてきましたので。ピューロランドはお客様の9割が女性というテーマパークですから。そこにさらにお子様を……。小さい女の子がいなくても、大人の女性が楽しめるような、あるいはカップルで楽しんでいただけるような……。
というふうに思っているのであれば、「そこに刺さるビジュアルって、どういうビジュアルなんだろう?」ってことだったり。
連動という、全社をあげて、1つのイメージを打ち出していくこととかは、私が「人とどう向き合うか」というところで研究したことで。
やっぱりコミュニケーション。自分自身がどんな思いを持ってみんなが仕事をしているかということを全体で共有する。
「対話する」だったり、繰り返し繰り返しサービスの基本を短時間で毎日学んでいく朝礼のシステムだったり、マニュアルを作ることによって。
みんなモチベーションはなくはなかったんですよね、ピューロランドをよくしたいという思いもあった。ただそれをどうやって、何からやっていいかというところで、足踏みをしていた状態だったんですね。
ですからマニュアルを作るとか、見た目で変わったなと思うために、スタッフのコスチュームを新しくしていくとかですね。
経営状況が厳しいときというのは、なかなか教育とか研修に予算をかけられない。だからまた、くすんでいってしまう。
という負のスパイラルに陥ってた状況から、そこを思い切って予算をつけて、教育・研修を徹底的にする、というところで、竹之内さんにもご協力をいただきましたが、そんなことから始めました。
逆にいうと、そういうことからしか、自分としては力を発揮できないなと思いましたので、そんなところからやらせていただきました。
もうあっという間に1年1年が経っていきまして、時代の後押しもありまして、2014年あたりからピューロランドがぐんぐんとよくなってきました。
時代の後押しというのは、やはり国としてもポップカルチャーを世界に発信していくとか、かわいい文化とかですね。「かわいい」という言葉がいろんなところで聞かれるようになってきた。
そして大人の女性がキャラクターを持って歩いたり、今では男性も。「サンリオ男子」という言葉も、サンリオ本社のコンテンツの影響もあったせいか、男性であってもキャラクターのものを身につけることが増えて。ちょっと前だったら変わったやつと思われたと思うんですが。
そんな文化が後押しをしてくれたのもあって、2014年、2015年くらいから、ピューロランドは非常に元気になってきました。
そして2018年、こんな感じ。インスタ映え過ぎるテーマパークとも言っていただけるんですけども、それぞれのターゲットに刺さるコンテンツが充実してきたなと思っています。
パレードは、先ほど竹之内さんも言ってくださいましたが、ピューロランドって全天候型、屋内テーマパークですね。ですから館内で、朝、昼、夕焼けとか、夜とかを演出できるんですね。
ですので、真っ暗な中で、昼間でも夜を演出して、その中でイルミネーションを、LEDのライトを駆使したパレード。ここでサンリオの理念である「みんな仲良く」ということをお伝えするパレードをやったり。インスタ映えするメニューだったり、インスタ映えするフォトスポットだったり。
あとは『KAWAII KABUKI』と書いてありますが、松竹様とコラボレーションをして、ポップカルチャーと伝統文化の融合ということで。この歌舞伎で絶対みなさんに見ていただきたいのは、ダイバーシティなんですね。
この劇の中で、キティちゃんをはじめキャラクターたちが、ピューロランドならではのダイバーシティのメッセージを、感動と泣けるようなストーリー仕立てでお伝えしてる『KAWAII KABUKI』。
こちら本当に3月からオープンしまして、毎回平日3回、土日で6回から7回公演させていただいてますが、毎回満員御礼ということで、非常に人気になっております。
このほかにも、写真が間に合わなかったんですが、先週からネルケプランニングさん。『テニスの王子様』とかを手掛けている、2.5次元ミュージカルのプロダクションとコラボしまして、イケメンミュージカル、『想い出を売る店』というミュージカルもスタートしております。
『想い出を売る店』で伝えたいメッセージは、「想い出というのは誰にでもある。でも見たくない想い出、チクッとする想い出もある。だけど、あとで振り返ったときに、こんな想い出(なんて)と思うのではなくて、美しい絵ハガキを見るような気持ちで思い出せるように、一日一日を大切にしてね」というようなイメージを発信しています。
こんなことを、こんなに自分が楽しそうにいえる日がくるなんて思ってなかったですね(笑)。
4年前は正直にいって、「みんなピューロにきてね!」って、なかなか堂々といえるような状況じゃなかったです。スタッフの笑顔がなかったり、館内のいろいろなインフラ的なものだったり、いろいろです。いろいろ課題がありました。
でも今は「絶対きてね!」と。本当にきていただきたいです。見ていただきたいし、スタッフを見ていただきたいし、「こんな可能性があるんじゃないか」という目でも見ていただきたいなと思います。
働いてる私がこんなにワクワクできる職場にいられることは本当に幸せに思うんですが、数字で見てみますと、こんな感じで、2014年から、グングングンと。
よくね、「小巻さんが行ってから(良くなったね)」って、さっきも竹之内さんがいってくださったんですが、私が行ってから良くなってはいるんですが、それイコール、私がすごくみんなを引っ張っていって、「私が行ったからこういう施策ができました」ということではないんですね。
たまたまずーっと低迷していたので、スタッフ一同なにをやったらいいかはわかってた。だけど、「こんなこと言っちゃダメじゃないか」「これやるとお金がかかるかな」となってた、そこをちょっとだけ私が背中を押したというだけなんですね。
そして2015年、グンとここでジャンプしたのは、デジタル変革といわれる、いろいろなものをデジタル化すると。
プロモーションの部分も時代に合ったものにしていく。テレビCMをやめて、ネット上のプロモーションを多くしていくといったようなことだったり、今はスタッフそのものの一人ひとりのパフォーマンスがすごく上がってますので、そういったことの相乗効果で、おかげさまでグングングンと、上がってきました。
そして、それぞれ2014年、2015年、2016年、そして去年、いろんな施策を打ってきたんですが。2018年、いよいよ私が本当にやりたかった本丸に踏み込んだというか、ダイバーシティマネジメントのプログラムが、今年からスタートしています。
お客様の9割が女性のピューロにおいて、女性社員の能力を最大限に引き出そうということで、このダイバーシティマネジメントをスタートいたしました。
ここでも力を借りながらやっていきたいなと思っていますが、本当に時代はここだと間違いなく確信しておりますので、ようやく私の一番の引き出しがたくさん生かせる、貢献できることがいよいよ始まったなと思っております。
(スライドを指して)そして本丸の②、「社員の気持ちを見える化して組織を強くする」ということで。
いろいろなコンテンツ、ショーとかイベントとか、フード、オリジナルグッズ。いろいろ動員のモチベーション、来場動機になるものはあるんですが、なんといってもそれをやってるのが人なので。その人の部分、ここの気持ち、社員の気持ち、感情というものが、なんといっても大きな経営資源なんですよね。
ですから、一人ひとりの社員の気持ちを、日々のコミュニケーションを通してお互いに知ることももちろん大切なんですが、今ならではのデジタルツールを使って、社員のエンゲージメントを計っていこうということで、これも今年から導入をさせていただきました。
社員の気持ち。どこの部署でどんな課題があるかということを早期に発見して手を打っていく。まさにがんの検診、早期発見早期治療ととっても似てるんですけど、やっぱり人のところはなんといっても財産ですから、スタッフの気持ち、そこを常に見ていけるシステムを今年から導入していこうと思っています。
いろいろ、それ1つ1つも説明をすると、きっとみなさまとなにかディスカッションすることができるところがあると思うんですけど、今日はキャリアという視点からですので、次にいきたいと思います。
私の話の中にたくさん答えがあるわけではなくて、冒頭申し上げましたが、これは私なりのやり方でここまできてます。
でも、みなさん一人ひとりのやり方、しっくりくる表現だったり、しっくりくるキャリアの積み方というのは、一人ひとり違うと思いますので。このキーワード、今から説明させていただきますが、これは私なりの自分のキーワードということでお聞きいただければと思います。
今日のメインテーマが、「人生100年、働く50年」ということですので、キャリアという視点でこのキーワードをお話させていただくんですけど、まず展開型というキーワード。私は本当に「テーマパークの館長になりたかったです」と思ったことは1回もないんですよね。
ですから巡りくるいろいろな体験から、キャリアが変わっていったということで。この言葉は実は竹之内さんから、「小巻さんってビジョン型じゃなくて展開型ですね」って言っていただいたのがヒントになってるんですけども。巡りきたものを断らずに、拒まずに受け入れてやってきたと、そんな感じなんですね。
いろいろとこれを頼まれる、どうしようかなと思う、やってみる。その想定外が自分の枠を広げると書かせていただいてますが、本当に想定外のことだらけですよね。
なにが想定外って、ピューロランドというのも想定外ですけど、やっぱり自分の人生でがんになるというのも想定外でしたが。
これをお話しするのはどうかなと思ってた部分もありますが。キャリアという視点からいうのであれば、やはり自分が子どもをもつということは、想定内でした。結婚してお母さんになって、っていうことしか考えてなかったです。結婚したときは。
私がこんな仕事をするようになるなんて家族一同誰も思ってなかったんで、口あんぐりな状態なんですが。
もう一度仕事に復帰することも想定外ではありましたけど、やはり人生の一番の最大の想定外は……、子どもを亡くすという経験を自分がすることは想定外でしたね。
たいていの経験はポジティブに捉えています。昔からわりとそうでした。このことが私に何を教えてくれてるんだろうなと。がんになったときもそう思いました。
これで私は女性の痛みを1つ自分が体験することができたなと思ったぐらい。けっこうポジティブに変換することができるんですが。
子どもを亡くすという経験が、この中でその経験がある方がいないことを祈りますが、やっぱり母親としてそれをポジティブにもっていくことは、ほぼたぶん死ぬまでできないんじゃないかなと思います。
ただ、何年か経って今自分が思うのは、その体験そのものがポジティブにはならないんですが、たった2歳で亡くなったんですけども、「じゃあ2歳で亡くなるとわかっていたら私のもとに生まれなかったらよかったか」って。
そんなことはなくて、やっぱりいてくれて貴重な2年間を私のもとで過ごしてくれたことには、感謝以外の何物でもないんですよね。
人生っていろんなものを失っていくんですけど、若さとか、希望とか体力とか、いろいろ失ってボロボロ失っていきますが。「失う」ってことは、「あった」ということだなという考えを、そのことによって私はその体験から学んだなと今思っています。
ポジティブには考えられないけど、やっぱりそこに神さまからのギフトがあるとするなら、失うということは、あったということなんだよということを教えてもらったかなと思っています。
そんなこんなで。しんみりしちゃってごめんなさい。想定外がすごく自分の枠を広げてくれたなと思っています。
そのことがなければ今の自分はない。どの1つの、こんなちっちゃいこと、こんな大きいこと、どの1つが欠けてたとしても今の自分はないので、いろんな想定外が自分の枠をどんどん広げてくれたなと思っています。
お試しで、想定外の案件がきたときに、まずやってみたと。楽しむというか、客観視して、自分の人生の中でこんなカードがきたのか、じゃあこれをどうする。
何年か前のコマーシャルで、「どうする自分?」ていうのありましたけど(笑)、まさにそんな感じで。ピューロランドの館長、どうする自分、やる? やらない? やってみようと、お試し。
よくキャリア教育的な場でいうのは、三日坊主でもいいからやってみようと。やってみてやめても、合わなかったということがわかっただけでも、やらないよりいいよねと思うんですけど、仕事でもまずめぐりきたものを食べてみる。
食べてみないとわからないというのが私の信条ですので、まずお試しをしてみると。すべては実験ですね。
本当にやってみてわかることが財産だなと思いますので、私の中での「お試し」「実験ですから」っていうと。仕事も本当にそうですね。ピューロランドの中でも、これだけ今うまくいってるのは、「実験だからやってみよう」という気風になってきた。
たとえそれが、結果が思ったことじゃなかったとしても、わかることが企業としても財産になるんですよね。
ここに広告を打ってみた。思ったよりはねなかった、なにがいけなかったんだろう。ビジュアルがイマイチだったのか。このキャラクターじゃなかったのか。なんだろう。じゃあ今度こうしてみよう。
その連続で今ピューロランドはどんどん新しいことにチャレンジしてますので、お試しというのは本当にお勧めです。
とはいえ、なにから試したらいいのか。自分の人生においてはですね。それは先ほど言ったように得意分野からまずやってみる。
自分のいろんな引き出しの中から、どこの引き出しから試してみようかなというのを客観的に考えて、人材育成のところからやってみようかな、女性視点で商品開発してみようかな、こんなことでみんなを笑顔にしてみようとか。なにか笑顔のコーチング、コーチングの学びをここに生かしてみようかなというような、得意分野から生かしてみると、けっこう道が開けるかなと思います。
そして共鳴し始めるんですね、いろんなことが。そうなんです。こんな経験がなにに役に立つんだろうって思うときもあると思うんですよね。
ピューロランドに行き始めたときは、あんな血を吐く思いをして勉強して大学院に行って、「あれってなんだったんだろう?」って思ったときもありましたけども。やっぱり自分との向き合い方を、しっかり2年間で自分自身も体得したし、人にもそれを伝えられる。アカデミックな下支えみたいなものが、自分の自信にすごくなってるなと思います。
もう1回見てみると、さっきの自分のこのいろんな経験の中で、いろんなものが共鳴し合ってるなと。
子育てで得た「待つ」。辛抱づよく待つというところだったり、タイムマネジメントだったり。それから病気をしたことによって、すごく社員の一人ひとりの健康状態にも、「ちょっと顔色悪いな」とか。そういう母親目線だったり。
自分が病気をしたからこそ、いろいろな痛みみたいなものがわかるようになったなとかですね。本当に1つ1つの経験そのものが共鳴し合っているなと思います。
ハロースマイルという活動の中で、パーソナリティをやらせていただいたとお伝えしましたが、その経験もすごく今生きてるなと。
そこでいろんなアーティストの方とのつながりもできまして、それも今ピューロランドの仕事に共鳴して活かすことができてるなと思ったりします。
共鳴し合うんですね。経験の「全部乗せ」になっていくと。歳を重ねると。いいですよ、歳を取るって(笑)。
40代のときに「早く50代になりたい!」とずっと思ってたんですが、その50歳になったときに、早く60歳になりたいと思ってて、いくつですかって聞かれると、「ほぼ60」って、けっこう前から答えてるんですけど。
本当にワクワクするんですよね。経験がどんどん重なっていってどんどん自由になっていく。できないことができないといえる。30代くらいは本当に突っ張らかっていましたので、自分が苦しかったんですけど、今は若い方に「ねえねえそれどうやるの?」って。
デジタル変革とかっていってますけど、「コンバージョンが」とかいろんなこといわれても、「え、それよくわかんない」って、それがすごく素直にスッといえるようになってるんで、歳をとると本当に楽しいなと思います。
経験の全部乗せです。もうこうなったら(笑)。本当に今日お話しさせていただいてるこの経験も、私は貪欲なので、ここでみなさんとつながってですね、これがきっとなにかに活きるんじゃないか。
相乗効果という言葉が好きなんですよね。出会ってお互いにこんなことが生まれたり、お互いに自分ではない経験を聞かせていただくことによって、いろんなヒントをもらったりとか。それから自分自身が体験してなくても、人様の経験も自分の中に取り入れることができる。
この考え方も対話的自己論のなかで、すごく腑に落ちた考えなんですが、人に出会えば出会うほど、本を読めば読むほど、自分の中にいろんな自分が生まれてくるということで。ますます経験すれば、生きているほど、一日一日、経験が積まれて、その全部乗せになっていくというところで。
とはいえ人間ですもん。そう思えないときもある。そういうときは、うまくいかないときは、「あ、やらなくていいって言われてるんだな」と思うようにしてます。
いろんなことがすべて順風満帆にきたわけではなくて、いろいろなところで、なにが足りなかったんだろうって落ち込むこともたくさんあります。
けっこう夜中眠れなかったりすると、中島みゆきの世界に落ち込むことが、「生きてていいんでしょうか私」みたいな気持ちになりますが。そういうときは私バナナマンが好きなんですけど、お笑いのDVDを見て、気持ちを切り替えて寝ます(笑)。
あとは書き出す。今悩んでること、くよくよしてることを書き出して、ノートをパンと、音を立てるくらいに、パンと閉じる。
これはご存じの方いらっしゃるかもしれませんけど、パンと手を叩くとか、悩んでるものを、クシャクシャとティッシュで丸めてゴミ箱にパンと捨てるとか。非常に体の動きと精神的なものというのは連動してますから、そんなことを利用しながら寝るようにしています。
そうこうして、どんどん強くなり、ずうずうしくなり、60歳のハローワークですよ(笑)。これは、来年60歳なんですが、そこからなにしようかなと思っています。
たぶんピューロランドの仕事はまだしばらく続けさせていただくと思うんですが、今パラレルキャリアという言葉も出てきましたが、いろんなことが自分のやりたいことで。
「やりたいことを仕事にするなんて、そんな夢のようなことあるか」って思う昭和のおじさまたちもたくさんいらっしゃると思いますが。この中にというんじゃないですよ、それぞれの会社にいくとそういうこともあるかと思いますが。
やっぱりどんどん世の中は変わっていく。ますますこの10年、情報システムの大変革によってどんどん変わってきてますが。ここからの5年、10年、予想もつかないような情報システム、流通システム、金融システム、世界状況、どんどん変わっていくと思うので、働き方も当然大変革していくと思います。
ですから経験の全部乗せとか、このキーワードですね。要は柔軟に、「なんでもこい」にしてたほうが、自分の可能性が広がるんじゃないかな、なんていうふうに思っています。
話したいことがたくさんあったので、すいません、ばらけていてお聞き苦しかったかもしれませんが。
小巻:ここから10分くらい、みなさんからの質問をいただいて、このお話の振り返りを兼ねて、締めたいなと思うんですが、竹之内さんご協力いただいてよろしいですか?
竹之内:はい。ではせっかくですから、みなさん、小巻さんに対して、このこと聞いてみたいな、あんなこと聞いてみたいなと思うことがあれば挙手していただければありがたいのですが、いかがでしょうか。
お話の中で、こういうこと聞いてみたいということがあればいいなと思うんですけど。あ、ありがとうございます。じゃあ、よろしくお願いします。
質問者1:今日は貴重なお話をありがとうございました。
お聞きしたいなと思いましたのが、やはり戻ってきて、40くらいからキャリアを再スタートさせるにあたって、上の世代、男性の方たちとどういったコミュニケーションをとって、うまく協力してもらっているかを、教えていただければと思います。
小巻:ありがとうございます。そうなんです(笑)。戻ってきた頃がすでに18年くらい前ですので、もうね、10年ひと昔って、ふた昔も前のことになっちゃうんですけど、やっぱりなかなか理解を得るというのは難しいですよね。
そこでやっぱり、お試しじゃないですけど「実験させてください」というのが、うまくいった1つの方法だったなと。
あんまり大上段に構えずに、「実験させてもらえませんか」というのが、1つ良かったなと思っています。
人の考えを変えるというのは、すごく難しいことなので、「それはわかるけど、これをやってみたいです、実験させてくれませんか」が、功を奏してきたかなと思います。
質問者1:ありがとうございます。
竹之内:ありがとうございます。他はいかがでしょうか? どのようなことでも構いませんが、いかがですか?
質問者2:貴重なお話ありがとうございました。IT企業で竹之内さんの会社のダイバーシティのコンテンツを一緒に運営しております。実は、私、個人的には年間パスポートを持っていまして。一人では行ってないです(笑)。
(会場笑)
奥さんと娘と通っていまして、先週は娘と奥さんだけで、ぬり絵が終わっちゃうというんで、急いで見にいきました。
小巻:すごいコア(笑)。
質問者2:質問は、女性が大事だというお話なんですけど、サンリオピューロランド、男性のスタッフもけっこうイキイキとお仕事されてて、ダンサーの方もすばらしいですよね。
男女、違いがあったりするのが、違いを踏まえてなにか施策を打ったりするのか、男女間のコミュニケーション活性化みたいなところで、なにか取り組まれてることなんかあったら教えていただけますでしょうか。
小巻:ありがとうございます。本当にうれしい質問をありがとうございます。
弊社は本当にみんな今イキイキとして、なんでかなと思うんですけど。とくに男性と女性を仲良くさせようとか、それはとくにないんですけど。折に触れて企業理念を共有するという機会が、すごくうちの会社は多いんですね。
というのは、サンリオグループ全体が「みんな仲良く」という企業理念なんです、簡単にいうと。
それをピューロランドの中では、すべてのキャラクター、そしてエンターテイナー、ダンサー、演者さん、そしてスタッフ全員がその理念を共有し続けないと……。
例えば1つのショーを作る、1つのイベントをする、新しいアトラクションを作るときも、「これを通して、みんな仲良くという理念をどうやって体現していく?」という話をします。
先ほどの歌舞伎の中では、桃太郎という題材を使っている。ご覧になりましたか?
質問者2:はい。
小巻:(笑)。うれしいです。桃太郎で、最後鬼を退治しないということじゃなくて、違いを乗り越えて、みんな心を1つに、みんなを笑顔にしていくんだというようなメッセージだったり。
パレードでは、やっぱり誰だって笑顔になれないときもある、暗い気持ちで光を見たくないときもある。でもその違う人をやっつけたり排除するんじゃなくて、私は待ちたい。キティちゃんがセリフとして言います。
私は待ちたい。誰にでもそういうときはある、でもその「光が嫌い」「笑顔が嫌い」って言ってる人たちも、いつか同じ気持ちになれるって信じて待ちたいということを言うんですよね。
ですからインクルージョンとかダイバーシティというものが、「みんな仲良く」という企業理念の中にあって、それを演者さんも、男性も女性もスタッフも、キャラクターを演じてる……キャラクターが演じている。聞かなかったことにして(笑)。
(会場笑)
キャラクターが、本当にそれが真に入っているからこそ、当然働いてる人同士が、そこが大事ということを共有してるんだと思うんですね。
それはしつこいくらいに毎朝の朝礼の中で、正味10分の朝礼を、12回毎朝繰り返すんですよね。入るシフトによって違うので。その中でチームビルディングだったりとか、今日こんなことがありますよという情報共有だったり。
まず第一声をそこでみんなで出して笑ってから現場に行くとかということをやってるので、それがたぶん、イキイキと楽しそうに仕事をしてるってことにつながってると思います。ありがとうございます。
竹之内:まだまだ質問受付けますので、いかがでしょうか。
質問者3:今日は貴重なお話をありがとうございます。さっきビジョン型と展開型ってお話あったんですけど。キャリアコンサルタント見てると、やっぱり、本人が見果てぬ、現実不可能に近いような夢を一生懸命後押ししようとして、双方苦しくなったり。
あるいはまったく逆に悩みを聞くことに徹しちゃって、こういった状況の中で本当は仕事があるんだけども、自分のつきたい仕事が見つからないって悩んでる人たちは非常に多いと思うんですね。
その中でさっきおっしゃられたように、テーマパークの館長なんてなると思っていなかったと。
そういった中で、キーワードは、その真ん中に書かれている、「想定外が自分の枠を広げてくれる」。想定外の人生を作る秘訣というのは、どうせ私なんてっていってる人たちに対して、どういうようなアドバイスをするかというようなことを教えていただければ。
小巻:どうせ私なんかというときって、私もすごく実はしょっちゅうきます。「あー、どうせ私なんて……」って。その人たちに、「そういうふうに思うときもあるよね」って、まずそれが1つですよね。自分の中にもそう思うときはある。
ただ、自分が一番自分と長く付き合ってるというかですね、客観的に見たときに、自分が自分の一番の応援団長でいてあげないと、かわいそうじゃないかなと思うんですね。
やっぱりいいときも悪いときも、悩みもなんでもかんでも、自分が自分の親友のようにというのかな、そういうふうに思ってみたらと思うんですね。
まず自分の可能性を自分が感じられないときもあるんだけれども、でも「そこは意識的に自分の可能性を信じてあげたらどう?」ということしかいえないかな。
どうせ自分なんかって……。そうなんですよね、思考を変えるというのはすごく難しいので、そういうときもあるから、そのときに「じゃあ自分の引き出しを1つでも広げてみること、具体的になにかしてみたら?」というのがいいかもしれないですね。
自分を信じようとか、自分の可能性を信じようといっても、本当思考を変えるというのはなかなか(大変だと)。
もうよくわかるんです。私も長く、まさに自分が笑顔で、真逆な時代があったのでわかるんですけど、具体的にアドバイスができるとしたら、そういうときこそ自分の引き出しを増やす(チャンス)。
なんでもいいんですよね。ジョギングしてみるでもいいし、なにか資格を取るでもいいし、そうするとそれがその人の自信になると思うので。「なにか1つ新しいことに挑戦してみたら?」というアドバイスのほうが。
「自分を信じてあげて」って、わかってるけど信じられないんですよね、その人はね。それよりも、なにか新しいことに、なんでもいいから挑戦してみたらというアドバイスがいいと思います。
それで、新しいことに挑戦するってポジティブじゃないですか、行動そのものが。例えばなにかをやろうと思ってパンフレットを見ただけで元気になること、みなさんありませんか?
旅行にいけなくても、旅行のパンフレットを見てるだけで楽しくなったりとか、ですからなにかちょっとしたことでも、新しいなにかに気持ちが向くということが、その人の糧になるかもしれないので、それはお勧めします。
質問者3:お言葉ですが、理論的にはそうだと思うんですね、今いきなりお聞きしたから。
でも今の話の流れの中で、明らかに自分自身が、まさに想定外の悲しみの体験に自分の中で対峙して、それを乗り越えたというのが、一番なんじゃないでしょうかね。
でもそれはこういった場では極めてパーソナルな問題なんで、説明するのも、わかってくれない人もいるかもしれません。
私だったらこうお聞きしたいんですけども、自分の人生を広げるために、自分自身が直面した問題にぶつかったときに、なにをもってそれを乗り越えられるのか。それは、自分自身の問題と、あと周りのそういった現実に、どういうふうにこたえられるか。
小巻:私の場合はということなので、極めて私の場合はこうだったというお話になるんですが、とことん落ち込んで孤独を味わったなと。
結局ね、誰もわかってくれないんですよ。自分の本当の悩みって。もちろん友達が聞いてくれたりとか、手紙をくれたりとか、そういうことに支えてもらったことはたくさんあるし、今でもそうなんですね。
スタッフがいてくれて、「良かったよ」って言ってくれる、その一言で元気になることはあると思うんですけど。本当に、今でいうとピューランドの館長だったりとか、あるいは会社の社長だったりとか、ものすごい孤独だったりもするわけですよね。
子どもを亡くした経験もそうですけど、それは本当のことを言うと、誰にも私の気持ちなんかわかりっこないというのが、本音であったと思います。そのときにどうやって乗り越えてきたかというと、ごまかさなかったなと。
それは、私は悲しい、私は悔しい、もうみなさんの前ではお聞かせできないような暴言を、車の中で吐いたこともたくさんありました。
それ今いうと泣いちゃうのであれですけども(笑)、でも吐き出して吐き出して乗り越えたのは……。
1つは、本当に私はありがたいことに子どもに恵まれておりますので、私は自分の子どもがこの体験をしたときに、「元気になってほしい」って心から願うだろうなって思うように、私の親も、私に対して、きっといつまでも私がここにとどまっていることは悲しいだろうなって。
「親として」と「子どもとして」と、その両方の視点を私は持ったように、思い出します。
だから作り笑いでもいいから笑顔になろう。みなさんご存じの方もいるかもしれませんけど、口角を上げると気持ちがついてくると、ある先生に言われまして、子どもの塾の先生ですね。
「ママは作り笑いでもいいから女優になりなさい。笑顔になりなさい。そうすると気持ちがついてくるから」っていわれて、半年経ったら気持ちがついてきました。
なので口角を上げるとか、さっきの丸めてゴミを捨てるとか、シャワーを浴びながら嫌なものを流すとか。
よく、女性は占い好きなので(笑)、そういうアドバイスをみなさんも体験したことがあるかもしれないんですけど。体の感覚として洗い流すとか、ピリオドを打つとか、ドアをバンと閉めてみるとか。なんでも、しっくりくるやり方を私はすごくいろいろ試しました。
それでやっと、こんな能天気になっちゃいました(笑)。それが今の私を作ってくれたなと思っています。
質問者3:ありがとうございます。
小巻:私なりのやり方なので、みなさんに合うかどうかわからないのですいません。ありがとうございます。
竹之内:ありがとうございます。あとお一方だけ。
質問者4:本日は貴重なお話ありがとうございました。私から2つ質問がございます。うちの会社、営業会社になるんですけども、いろんな人が働いていて、情報共有が盛んにおこなわれてるんですけど、大事なことが伝わらない、合意形成がうまくいかない。
先ほど朝礼の仕方を変えられたりとか、キャストのみなさんの声を聞きあげてそれを反映させてるというお話があったと思うんですが、うまい情報共有とか合意形成の仕方とかのポイントがあれば、教えていただきたいなというところと。
あとは「お試しをしてみよう」とか、「想定外」「枠を広げる」ということがあったと思うんですが、お試しをするにも過去のいろんな経験とかを1回置いといて、リスクをとってチャレンジするというのが必要なときがあるかと思うんですが、どうしてもリスクのほうが頭でっかちになってしまうことがあるんですね。
それを踏み切ってステップを進める切り替えというのは、どうされたらいいか、アドバイスいただきたいです。
小巻:ありがとうございます。まず情報共有、合意形成をどうやってするのがいいかということなんですけど、伝わらないですよね、だいたい(笑)。
こっちは言ったからわかってもらえてるつもりになってることの誤解が、なんてこの世の中を複雑にしてるんだろうと思います。
それは職場じゃなくて家族でも本当にそうだし、恋愛でもたぶんみなさん苦労されたことが、1つや2つ、3つや4つあると思うんですけど(笑)。
「これ伝わってますか?」という確認をするのは、1つすごく基本的なことですが。「わかりましたか?」じゃないんですよね。「伝わってますか?」という確認の仕方は、1つコツとして具体的にあるかなと思います。
あとは「何回言ったらわかるの!」って、子育てのお母さんがさんざん経験してると思うんですけど、「何回言ってもわからない伝え方をあなたがしてますね」ってことなんですよね(笑)。
なので伝え方を、絵にしてもらったほうがわかる人もいるし、体験してもらうことでわかる人もいるし、やってみて、やらせてみせて……、って山本五十六の名言にもありますが、相手がどうやったら伝わりやすい人なのかということをふまえて、最初はめんどくさいけど、こちら側が、伝える側が工夫する必要は1つあるのかなと思います。
あと切り替えですよね、リスクをとってしまうというのは。それは当然リスクは考えますよね。これをやったらこれがなくなるんじゃないかとか、これをやったらこっちの売上がなくなるんじゃないかという。
そこはもうギリギリの、損益分岐点じゃないですけど(笑)、「これをやることによって失うものは何かな?」って、やっぱり書きだしてみると、意外とリスクじゃなかったりすることもあるし、直近ではリスクに思えても、あとでリターンがある場合のほうも多いんじゃないかなと思います。
そのリスクというのが、どういう種類のリスクかにもよりますよね。会社全体を巻き込むリスクなのか、自分のマインドの部分のリスクなのか、自分の部署だけのリスクなのか、自分の家族にしわ寄せがいくというリスクなのか。
いろんなリスクってあると思うんですけども、それを書き出してみて、自分が納得してやめるか、納得していくか。納得が一番すごく大切。切り替えというより、納得して自分が決める。ハンドルを自分が握っているというその感覚がすごく大事だと。
それがなくて、なんかモヤモヤとして、やらなきゃいけないから、やらされ感でやったり、これしかないんだみたいに思考がすごく狭くなってやってしまったことは、後悔を引きずるんですけど。
書き出して、「オッケー、このリスクあるけどやってみよう」と思うのか、「このリスクがあるから今はやめよう」「もったいない気がするけどやめよう」と思うのか、その納得感が切り替えのポイントで。
私の場合は、それが圧倒的に「やってみよう」のほうに傾くタイプの人なんですよね。こんなふうに書き出してみるのがいいかなと思います。
質問者4:ありがとうございます。
小巻:ありがとうございます。
竹之内:ありがとうございました。今の小巻さんのお話を受けて、次のワールドカフェにつなげていきたいと思います。
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