2024.10.01
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西野亮廣氏(以下、西野):『革命のファンファーレ』の話はまだまだ続くんですが、読まれた方も半分くらいいらっしゃったので、もう終わっていいですか? できるだけ本を読んでください。
今日話したいのはそっちじゃなくて、本とはぜんぜん関係のない話になってきますが、今回のAmazonに駆逐されるというテーマに近い話になってくると思うんですが、非常に大事な話を最後にして終わりたいんです。
今さら言うまでもなく、AIが、ロボットが、僕たちの仕事を取るんじゃないかということをよく聞きますよね。あれ、別に脅しでもなんでもなくて、実際そうだと思うんです。職業ごとなくなる場面に、立ち会っちゃってるから。こんなこと初めてですよね。
これまでも、時代ごとになくなっていく職業はあった。切符を切る人は改札機ができた時にいなくなったし、スマホが出てきたら電話ボックスを作る職人さんはいなくなった。
その時代、その時代で、確かに職業はなくなっているんだけれども、こんなにまとめて職業がなくなる時代って、人類は経験してないんです。産業革命でもこんなに職業はなくなってない。
この5年、10年で、ここにいる半分の人の職業がなくなると思うんですが、こんなの誰も経験してない。初めてなんです。
僕のお父さんとお母さんが、「どの職に就くの?」って感じで話してきた。でも、もうその職自体がなくなっていくから、どの職に就くもなにも、職を作らなくてはいけないというのが、僕たちに課せられている宿題です。
とにかく職を作らないといけない。ロボットが仕事を代替してくれるようになったら、当然、僕たちの生活はちょっと豊かになって、ちょっと働く量も減るんだけど、じゃあ働かなくていいようになるのか、毎日プラプラしていいのかというとそうではない。
やっぱり、人間は働かなくては生きていけないんです。それはなんでかというと、収入とかではなくて、人間は生きがいがないと生きていけないということです。
みなさんの身近でもあると思うんですが、例えば、おじいちゃんもおばあちゃんも90歳の老夫婦がいたとします。ある日、おじいちゃんが死にました、翌週、おばあちゃんが死にました。こういうことってけっこうあるじゃないですか。
赤の他人が90年間、まったく同じ感じで生きていて、1週間違いで、2人とも死んじゃう。おじいさんが死んじゃったその翌週に、翌年でもいいんですけど、おばあちゃんが死んじゃった。そこに因果関係はないのかというと、僕はあると思っています。
おじいさんが死んじゃったら、おばあさんには生きがいがないんです。つまり、おじいさんにご飯食べさせて、美味しいって言われるとか、おじいさんのために働いていることがおばあさんの生きがいだった。
僕たちは本当に脆くて、生きがいがなかったら、極めて弱っちくなる。生き物としてすごく弱くなる。バリバリ働いているやつって風邪ひかないじゃないですか。なんか生きがいなさそうな人って、ずーっと風邪ひいてるじゃないですか。
生きがいがないと免疫が落ちちゃう。オーガニック食品とか、サプリメントとかを摂ることもすごく大事だけど、生きがいがないと、めちゃくちゃ弱っちゃうのが僕たちなんです。
だからこのまま、どんどんどんどん職業がなくなっていっちゃうと、生き物として弱くなっていっちゃう。それは良くないので、僕たちは仕事を作らなくてはいけないんです。
最後に話すのは、これからの仕事の作り方です。じゃあ仕事ってどうやって作るんだという話になってくるんですが、そこで作る仕事は、なるべくならロボットに代替されないことがいいですよね。
もっと言うと、他の人にも、真似できない仕事のほうがいいですよね。他の人に真似できない仕事、自分にしか作れない仕事、つまり、Amazonには作れない仕事の作り方ということになる。じゃあ、いったいどうやって仕事を作るのか。
仕事ってどうやって発生しているかというと、差異なんです。つまり、ほとんどの人がヒットを打てないなか、イチロー選手はヒットを打てるから、彼の活動の一挙手一投足はお金になって、仕事になっているわけです。
一般人といかに差をつけるかということ。もっともっとアホな表現をすると、いかに天才になるかです。つまり仕事を作りたければ、自分が圧倒的な天才になっちゃえばいい。
こういう話をすると、いや、天才って生まれ持ったもので、先天的なものでって反応がけっこう返ってくるんですよ。でも、そんなことはない。天才って生まれ持ったものでも先天的なものでもなんでもなくて、後天的なもので、つまり、作り上げることができるんです。
自分を天才化することは可能だということです。じゃあどうやって自分を天才にするかという話ですが、よく例えるのが、紳助・竜介さん。
島田紳助さんが、昔、漫才のコンビを組まれていて、その紳助・竜介さんの漫才で、すごくいいやりとりがあって、飛行機ってなんで飛ぶかわかるか? っていうネタがあるんです。
「飛行機がなんで飛ぶかわかるか」って、紳助さんが竜介さんに聞く。竜介さんは、「そりゃ飛行機っていうのはプロペラがあって、羽があって」と航空力学で返すんですが、紳助さんは「そうじゃない」と。「あんなプロペラと、あんな羽で、あんな鉄の塊が飛ぶわけないやろ。飛行機が飛ぶのはそうじゃない、まずよく考えてみろ」と。
「まず、何百人の乗客を乗せている」と。で、「けっこう高いお金をいただいている。そして滑走路を走りだしてしまっている、間もなく滑走路が途切れてしまう、このまま走ってしまうと海に落ちてしまう、海に落ちたら無茶苦茶怒られる、じゃあ、飛ばなしゃあないやん!」って言う。
つまり「飛行機は飛ばないとしゃあないから飛ぶ」というのが紳助さんの言い分です。もちろん漫才なんで、ギャグっぽく締めているんですが、これが物事の本質なんです。
僕たちのアイデアとか哲学とか運動神経は、環境によって支配されている。鳥だって飛ばなきゃいけなくなったから、羽を生やした。
陸に上がった動物も、陸に上がらなくてはいけなくなってしまったから、陸に上がったわけで、そこで生き延びなくてはいけなくなってしまったから、手足みたいなものを、ニョキニョキって生やした。
つまり、極端な才能は、極端な環境によって生まれているということです。環境が先にあって、それに合わせるように、才能がにょきにょきって伸びている。
なんでかというと、僕たち生き物は、生き延びるようにプログラミングされているので、極端な環境を与えたら、その中で生き延びるようになんとか動く。それで、羽を生やしたりとか、手足を生やしたりするということです。つまり極端な才能は、極端な環境が作り出している。
逆に言うと、人と同じような環境で生きていたら、才能は手に入れることができないということです。要は、朝起きて、仕事行って、昼まで働いて、夜まで働いて、夜飲みに行くみたいなサイクルで生きていたら、極めて天才になりにくい。
もっと具体的な例を出したほうがいいですね。本業でマネタイズしている時点でもう終わりです。つまり、ケーキ屋さんがケーキを売って、その売り上げで、明日のケーキを作って、利益分で家で新作のケーキの開発をして、というサイクルのケーキ屋さんはいっぱいいる。
それがケーキ屋さんの一番都合のいい生き方なので、その生き方をしてる人は他にもいっぱいいる。だからそこで競争しても、多少の差異はあれど、極端にばーっといくことはないということです。
本業でマネタイズしている段階で、もう極端な環境ではないので、才能を手に入れることはできない。才能を手に入れる1つの方法として、本業でマネタイズしない。
これをやってるのは誰か。けっこうみなさんの身の回りにもいるんです。本業でマネタイズしなくて、天才になっている人。有名なところでいうと、矢沢永吉さん。ご存知ですよね、日本を代表するロックンローラーです。僕、大好きなんです。
本業でマネタイズしないとはどういうことかというと、日本のアーティストさんは、収入のポイントって、なんだかんだ言ってまだCDなんですよ。CDの売り上げで事務所を回しているんです。ライブとかスタッフさんのお給料とか払ってるんです。でも、どうですか、矢沢永吉さんのCDって、売れてるイメージがあんまりないですよね。
AKBとか、嵐とか、EXILEとかが売れているのは、何となく聞く。オリコンランキングでその辺が入っているのは、聞くじゃないですか。ラッドウィンプスとか、ミスチルとかも入っているのかな。
でも、矢沢永吉さんのCDってあんまり売れてるイメージがないんですよね。もっと言うと、矢沢永吉さんっていつCD出してるの? というのが、みなさんの感覚だと思うんです。そうなんですよ、実際、矢沢永吉さんのCDってあんまり売れてないんです。
ディスってるわけじゃなくて、事実です。あんまり売れてない。ただ、矢沢永吉さんのライブって、めちゃくちゃお金かかってるんですよ。ライブのセットとか、美術のセットとか、演出とかがすごい。ヘリとか平気で飛んでくるんですよ。
もっと言うと、セットとか演出なんかより、バックバンドの人。バックで演奏する人いるじゃないですか。あれ、世界的なアーティストを呼んでるんです。そのアーティスト呼ぶだけで何億円ってかかってるはずなんです。
もっと言うと、1曲のためだけにオーケストラバンドを海外から連れてくる。何十人とかの編成のオーケストラバンドですよ。だから1曲のためだけに、何千万円っていうお金がかかっている。
つまり永ちゃんのライブって、めちゃくちゃお金がかかってるんです。でも、CDは売れてない。じゃあ、そのお金はどこで用意しているの? って話になりますよね。どうやってお金を作ってるのかを探っていくと、永ちゃんタオルなんです。
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