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小室哲哉氏 講義(全6記事)

小室哲哉「やっぱり褒めてもらうことがすごく大事」 悩める大学生たちに贈ったアドバイス

法政大学キャリアデザイン学部の講義に、特別講師として音楽家の小室哲哉氏が登壇。90年代の音楽シーンを席巻し、今なお第一線で活躍する小室氏の知られざる学生時代のエピソードや、自身の創作活動、キャリアや働き方についての考え方に至るまで、幅広いテーマで学生たちに向けて講義を行いました。

「代わりのきかない」人になること

田中研之輔氏(以下、田中):じゃあ、そろそろ残りが12、3分なので、(会場に向かって)「これは聞いておきたい」というのは? 

参加者5:3年の○○と申します。抽象的な質問になってしまうんですけど、これから私たちの世代が日本をつくっていく、そういう役割を担っているんですけど、これからの若い世代に、小室さん世代の方が求めているものとか。

その質問の意図としては、私はやりたいことがわからず模索中で、今目の前にあることとか、「やるべきことはこれじゃないか」と思ってどんどん進んで。私はけっこうプライドが高いので、常に100パーセントでやって、疲れてしまう。ちょっと落ち込んで、『ごめん、愛してる』を観るんですけど。

(会場笑)

参加者5:私も2006年の韓国版を観ていたので。すごい泣いちゃいましたけど。常に100パーセントというのは疲れてしまって。

こういう日本をこれからつくっていきたいっていう、小室さん世代から見た視点、若者へこういうのを求めている。そういうヒントとかアドバイスをいただけたらなと思います。

小室哲哉氏(以下、小室):女性の大学生の方から、24~5ぐらいまでの方で、いろんなベンチャーのことをやってて。ピッチっていうやつですね。

田中:はい。

小室:ピッチイベントっていうのがあって、女性の方もけっこう多いんですけど。そういう人たちも遠回りというか、やりたいことでそこに向かってプレゼンテーションをしてたという人はほとんどいないんですね。

みんな、誰かがヘルプをしたらとか、サポートをしたら、それが結局、自分のやることになっちゃって。でも、「こうしたらいいんじゃない?」「ああしたらいいんじゃない?」っていうことで、アドバイザリースタッフになった。

みんな結局、実は思っていないことに行って、そこで自分の立ち位置とか、やる意味、役割を見つけて、「私がいないとダメなんだな」「私がこういうことをサポートしてあげると、助かってるんだな」みたいなことで、ある日突然、「私、これで独立します」「これでやってみようと思う」という話になっていく人が多いような気がしています。

今の答えでいくと、そのためには1週間、2~3日であきらめないというか、辞めないことというか。やっぱりある程度、半年ぐらい、3ヶ月ぐらい見ておかないと、サポートしてあげないと、それが「あ、自分がいないとダメだな、こいつら」みたいにならないんで。「代わりがきく」と思われたらおしまい、という感じ。

「なんだかんだ言って、なになにさんしかいない」、「なになにちゃんがいてくれると助かるよね」ということになった時点で勝ちですよ。その時点で辞めればいいと思います。辞めるというか、そこに準ずるんではなくて、要はそれぐらいの評価を得て、基準値を超えたんだなと。自分が1つの合否をもらったと思えばいいと思いますね。

その時点で、その方たちには申し訳ない言い方かもしれないですけど、次の日に、「自分はそれでやれる」と。言い方はどうでもいいんですけど。そういうかたちで見つけていくというかたちでいいと思うんです。

とくにエンターテイメントとか、ファッション業界であったりとか、広告業界っていうのは、みんな動いているんですよ。ブランドも同じところに3年、5年いる人は少なかったり。特に服飾関係とかでは。いい人はみんなハントされるんです。ちょっとしたことで声をかけられたりとかして。声をかけられた時に、今の職場の人に止められたら、「いなくなっちゃうの?」って言われたら勝ちですよ。

参加者5:なにか誰にも負けない1つを見つける。

小室:それもそうなんですけど、負けてもいいけど、その集団に1回飛び込んだところの人たちに惜しまれることが大事です。惜しまれない人はダメだと思うので。それには、やっぱり1週間や1ヶ月じゃ無理ですよね。アルバイトだとしても、なにかしらにしても、やっぱり惜しまれる人になったほうがいいと思います。

で、逆に悔やむぐらいだったら、そこにいたほうがいいと思う。悔やまない、惜しまれる、が一番いいと思います。

褒めてくれる人が大事

参加者6:私は去年、今年3月にキャリアデザイン学部を卒業して、今、社会人1年目です。○○と申します。

業界的に思うんですけど、すごく外からマスメディアにいろいろ言われて、自分がいろんなことを言われてる時には、その言葉になにか感じることがあると思います。その中でも自分を保つために、この業界で長く生き残るために、いつも心がけてるところとかあったら教えていただければと思います。

小室:そうですね。1人だと、やっぱり無理ですね。自分だけで……さっきのテレビの話じゃないですけど、毎日毎日だったらなんとかなるけれど、ずっと1つの仕事となると、やっぱりサポートしてくれる人であったり、いわゆる褒めてくれる人。

「あんた、あれがいいじゃん」と慰めてくれるよりは、応援してくれる言葉を言ってくれる人。隣の人、一緒にいる人、家族だったりするのかもしれないですけど。家族じゃなくても、同じような仕事をしている人から、「いやー、○○ちゃんにはかなわない」と言ってもらうことが大事なので。やっぱり褒めてもらうことが、すごく大事だと思うんです。

「ダメだ、ダメだ」と言われたら、誰でも落ち込みますよね。だから、1人の人に褒めてもらうことも大事ですけど、1人より10人。このクラスのみなさんが褒めてくれる、そのパワーはすごいと思う。「じゃあ、ここにいようかな」と思えると思うし。

簡単なことだけど、「人から評価される」という言葉はちょっと堅いので、褒めてもらえる、「いいんじゃないの、それ」と言ってくれる人がすごく大事だと思います。僕は本当にラッキーではあったけど、誰も褒めてはくれなかったことがなかった。

最初は1人。最高になると何千万人という時もあった。もしかしたら1億とまではいかないけど、アジアでいったら何千万人、そのぐらいの人が「いいよね」と言われたことがあったりもする。

でも、1人でもいいと思います。まあ、できることなら10人ぐらい(笑)、の人が言ってくれるといいかもしれないですね。それで十分保てると思います。がんばってください。

田中:みんなで応援しておきます。

参加者6:(笑)。

小室:応援してもらうことは大事ですよ。

小室氏の最高のプロデュースは「KEIKOさんかな」

田中:こんな質問も、最後に聞いてみたいなと思っています。「最高のプロデュースだったと思うものは? もしくは誰か?」という、小室さんが最高のプロデュースだったと思うことは?

小室:うーん……そうですね、多いんですよね。難しいんですね。

田中:1人に絞るのはちょっといろいろ難しいですかね(笑)。

小室:まあ……みなさんの世代じゃないと思いますけど、「globe」かな。KEIKOさんかな、と思いますね。本当に裏がなくて、オーディションで普通に大阪にいたんです。大阪のオーディションが終わってたので、最後の九州のオーディションを普通に受けに来てたんです。

田中:転落したという。

小室:転んじゃったんです(笑)。転がるところを見てたわけじゃなくて、声だけを聞いただけなんですけど。まさか、JRのCMソングを歌う人になるとは思わなかった。そのときは夢にも思ってなかったです。……もはや奥さんですから。

(会場笑)

それもまさかのまさかなんで。

田中:わかりました、ありがとうございます。

小室:まあ、ほかにもたくさんいますので。

田中:じゃあ、お時間のほうが来ていますので、最後に、大学生がメインですので、大学生のみんなに小室さんからアドバイス、生きる志といいますか、ヒントをいただければと思います。

19歳という年齢が非常に大事

小室:あの……『SWEET 19 BLUES』っていう安室さんの曲が僕はすごい好きで。19歳の女の人の気持ちを僕なりに考えてつくった歌なんです。まだまだこれからも、世の中に残る曲だと思っているんです。

19歳を中心に、18、20、21、その前後があるというふうに僕はそのとき思った。やっぱり基本は19歳っていうのを大事にしてほしいなと思います。19(ナインティーン)を。ティーンがつくのは最後だからね。英語でもラテンから来ているのかもしれないけど、意味があると思うんですよ。そっちのお勉強をしてないんでわからないけど。ティーンの最後というのは、やっぱりなにかの節目だと思うので。

19歳を超えた方、19歳をこれから迎える方、オンタイムの方、3種類に分かれると思います。オンタイムでも、未来を見越しても、過ぎたとしても、「大人っぽいな、子供っぽいな、女性っぽいな、男性っぽいな、できるか、できないか」そんなことをティーンの最後にどう思ったのかは、思い返すと19歳が大きかったです。

田中:その時を大事に。ありがとうございます。裕さん、最後に。

佐藤裕氏(以下、佐藤):今なりたいと思うものがなくてもいいと思っています。夢が見つからなくてもいいけど、いつかはなりたいと思ったものになりたいじゃないですか。そのときのために、今はいろんなことをがんばって、力をつけてほしいなと思います。

田中:じゃあ、お時間も来ましたので、最後に1つだけなにかいただいて。

小室:そうですね、時間が足りなかったですね。こんな場はなかなかないので、もっと話をしたかったです。ですが、あまり10代の人と対峙してお話しができる機会はないので、楽しかったです。本当にありがとうございました。

(会場拍手)

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