2024.10.10
将来は卵1パックの価格が2倍に? 多くの日本人が知らない世界の新潮流、「動物福祉」とは
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新野良介氏(以下、新野):じゃあ、ベンチャーにしても大企業にしても、内部から変えていくときに、自分が思い切った実務家人生を送ることが大事で、そのために、西岡さんの本(注:『一流マネジャーの仕事の哲学』)に書いてあった、後悔しない生き方をする、が根底ですね。
そのためには、どこの立場にいようと、仕事を引き受けた以上、なにかしらリーダーシップを発揮して、先ほどのステークホルダーからもらったチャンスを成果で返さなきゃいけない。そのときに、西岡さんがいつも手本にしているようなリーダーシップは、どういうものですか?
西岡郁夫氏(以下、西岡):僕のリーダーシップの手本? 写真がある。(スライドを見ながら)……これはいいわ。この話、すごくおもしろいねんけど。次。これ。
『鬼平(犯科帳)』知ってる人?
(会場挙手)
西岡:けっこういてくれてはる。うれしいねえ。中村吉右衛門なんだけど、この『鬼平』は松本幸四郎とか中村錦之助とか、いっぱいやっていたけど、もう全部だめ。このスケベったらしい吉右衛門がいいねえ、この人情味がね。
(スライドを指して)これ、部下なんだよ。向こうが盗賊。これは火付盗賊改方長官だから、もう生死の権限を持っているわけ。警察長官であり、裁判長官であり、死刑執行人。
この人たちが本当はいい人たちなの。本当に改心しているときは、処罰せずに犬にする。諜報人。それで、この人たちで事件解決の……。もちろん、与力・同心というすごく部下はいっぱい持っているんだよ。
だけどね、よく考えたと思うのは、賊が15名、大店に入って1万両奪う。15人が山分けする。相当山分けできる。どうする? 株買う? 貯金? こういう人は賊なの。遊びに行くわけよ、バーンと。吉原とか、博打場に行く。それで、チップをはずむ、「取っとけー!」って。今までお金も払えんような奴が、1両、2両、バーン。
この人たちはそういう悪の道にコネがあるので、そういう情報をちゃんとキャッチしている。それがダーッと尾行して、ついに同じ賊が、1年後でも、次の大店を狙って行く。そのときの日付も、全部調べあげる。
見ている人は知っていると思うけど、最後、解決のところは、賊がまたそこの新しい大店に忍び込むわけ。忍び込んだら、「待っていたぞ」と。
新野:(笑)。
西岡:ものすごく情報をつぶさに検討して、次を考える。もっと僕の好きなのは、この人に、いっぱいいる手下に、与力・同心、刀のうまい人がいる。相手にもすごく強い用心棒がいるわけ。一番強い奴とは必ず「俺がやる」と。それを部下に「お前、やってこい」と言わないよ。日本の陸軍みたいな「お前ら行ってこい」とはちゃうねん。「俺がやる。ぶった斬る」。強いんだよ。あとちょっとだけ言っていい?
新野:はい。
西岡:これ、見た人いたかなあ。この人の奥さんが、久栄(ひさえ)さんっていうのかな。久栄さんは彼と結婚する前に、付き合っていた男がいるんです。その男が今は賊の用心棒やった。ものすごい使い手で、同じ道場で竜虎と言われた仲間やった。で、この人がそれを囲っていって捕まえて、自分の牢屋に押し込めるんだ。
そしたら「俺を処罰できるか? 俺を処罰するときは、処刑場でお前の妻の久栄が、実は俺の女だったとみんなに言ってやる」。「だから、逃がせ」っていうことなんだな。それを久栄さんはバラされるんじゃないかと思って心配して、屋敷の中に牢があるけど、外でお調べが済むのを聞いている。バラされるんちゃうかなと思って。
そしたら、ついに賊が「お前はえらそうに言っているけど、あれは俺が初めて女にしたんだ」とか言う。そしたら鬼平はなんと言ったか? (パチンと手を叩いて)「おめえはバカだなあ。あんないい女を幸せにしてやれなかったのは、バカだなあ。俺は幸せにしたんだよ」と。……かっこよくない?
(会場笑)
西岡:土蔵の外で、奥さんは涙を流す。それで、奴が「刑場に連れて行かれるときに、大声でどなる」。「おめえはバカだなあ。刑場に行けると思うのか? 俺は処罰は自由だよ」って言って、相手の大刀をバンと投げ捨てて、縄を切って、かたをつけるわけ。それで、「良かった」と向こうは刀を持って向かってくるのをブワーッとやっつけるわけ。
それで牢から出て、奥さんが泣いている。見つめながら(抱きしめる演技の真似)。
(会場笑)
西岡:そういうところがあるんですよ、この人は。これ、中村錦之助ではできない演技。吉右衛門やからできる演技。だから、この人は僕のリーダーシップのお手本です。
新野:ありがとうございます。
西岡:義理・人情・浪花節、これもこの本にいっぱい書いておきました。もう1つ言っていい?
新野:もちろんです(笑)。
西岡:僕、出版するときに、この本のなかにシャープの問題点とか、シャープで僕が教わったこと、とくに当時の辻社長からすごく薫陶を受けた……薫陶って、まあイジメられてたわけや。そういうのもいっぱい書いたんですよ。
それで、大好きな社長だったんで、「黙って出版するのは悪い」と思って、原稿段階で、全部、辻さんに送りつけました。電話して、「チェックしてください!」と。全部チェックしてくれて、麻布十番のイタリアンでご馳走しながら結果を聞いたんです。かばんから出てきた原稿用紙が、もう付箋がブワーッ。
(会場笑)
西岡:ブワーッと全ページある、赤や青や黄色や。
(会場笑)
西岡:「えっ、ダメですか?」って言ったら、「いや、おもろい。よう書けてる。だけど、2ヶ所ちょっと気に入らん」。
1つはこれ。それはね、いろいろ僕としてはおもしろいエピソードを書いているけど、「読んだ人にはわからん。君と僕はその場にいたから、これ読んだらわかるけど、初めて本を読む人にはちょっとわからんで」と。「君、なんかシャープに遠慮してるやろ。遠慮せんでええから書け」「えっ、もっと書いていいんですか?」。それで、書きました。
もう1つおもしろいエピソードがある。ノートパソコンがなかなか利益を出せなくて、最後に増産決定するときに、事業部は利益取る、事業本部も利益出る、でも本社に利益が出せない。だって、売れていないんだから。
シャープを、僕が立て直しに行ったわけで。売れてないから金型償却。だって、台数少ないわけ。部品はみんな高い。それで、利益が出ない。「やらしてくれたら絶対にヒットします。やらしてください!」って言ったら、本部長の常務が「俺はよう言わん」と。
本来は本部長決裁。こんなんで社長決裁なんているかいな。でも、怖がって行かないから「僕が行きます」って言って、社長に頼んだ。コンコンと説明した。そしたら、決裁書ってこんないい紙ちゃうねん。ペラッペラの上質紙や。結局ね、「お願いします!」「勝手にせえ!」で捨てられてん。
(会場笑)
西岡:社長室で2人っきりやってんけど、「勝手にせえ」、ヒラヒラヒラヒラ。どうする? 「ありがとうございます!」と拾って、「がんばります!」って言って、社長室から出た。まだ、だめだったら、「待てー!」って言う権限は向こうにあるんだけど出た。そしたら、社長室から出ると室長が待っていて「事業部長、どうでしたか?」。みんな事情わかってるから。「どうでしたか?」「オッケー!」。
(会場笑)
西岡:本部長室に「判押して」と言った。文句言われずに、すごくよく売れました。ということを本に書いたんです。「もう今聞いたから、本、買わんでええ」って思わんといてな。
(会場笑)
西岡:読んだら、もっとおもしろいこと書いてあるから。そのときに辻さんが、「おい、西岡。あのときに『そうか、西岡。がんばれよ!』と言ってオッケーするか、『勝手にせえ』って言うのは、なんかギャップがあるだろ。君、それに気がついてるか?」、ぜんぜん気がついてなくて、当時は「やった」と思ったわけよ。
「こんなもん、そこで拾い上げて『ありがとうございます! がんばります!』と言う奴がおるか?」と。自信持って書いてんけどな(笑)。「ギャップがあるだろ」って言われて、「それはある」と思って、「わかりました」と言って書き足したんですよ。
それは何かというと、その後、2つ社長をやって、VCの社長もやって、それで今みんなに教える立場になって思い出すと、つまり、説得力がまだ完全でなかったということや。
社長も「売れる!」とまでは、信用するところまでいけてなかった。「まあ、賭けてみようか」と思って「勝手にせえ」と言ったわけで、「『がんばれ』とは違うギャップに気づいたか?」って言われた。大したもんや、この人。84歳で今、ものすごい元気でね、ステーキいっぱい食べた。
(会場笑)
西岡:というのが、この本に書いています。これは言わなあかんと思ってな。
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