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SEKAI NO OWARIのプロデューサーと進撃の巨人の編集のプロデュース講座!(全6記事)

SEKAI NO OWARIをどうやって見つけた? セカオワ×『進撃の巨人』の仕掛け人らが運命的出会いを振り返る

多種多様なクリエイターが登壇し、メソッドや哲学を学ぶ学校「QREATOR SCHOOL」で、SEKAI NO OWARIのプロデューサーである宍戸亮太氏と、漫画『進撃の巨人』の担当編集である川窪慎太郎氏によるプロデュース講座が行われました。作品やサービスを多くの人に届けるにはどうすればいいのか? また、ヒットの種をどうやって見つけたのか? 大ヒット作を手がける2人がアーティストや作家との運命的な出会いから現在に至るまでを赤裸々に語りました。

「セカオワ」と「進撃」をプロデュースする2人が登場

佐藤詳悟氏(以下、佐藤):お2人にいろいろとお話をうかがいながら、“マスに作品を届ける”というテーマの話ができればいいなと思っています。(スライドを指して)お2人は、今日これを初めて見ると思いますが、基本的にはここに書いてあることを、いろいろと聞いていくつもりです。

まず経歴のところで、お2人の自己紹介を。

宍戸亮太氏(以下、宍戸):僕から。

佐藤:はい、宍戸さんからお願いします。

宍戸:TOKYO FANTASYの宍戸と申します。よろしくお願いします。

SEKAI NO OWARIというバンドのマネージャーをやっています。デビュー前に彼らと出会って、そこからずっと一緒にやってきました。今、出会ってから9年目かな? といった、宍戸です。よろしくお願いします。

佐藤:すみません、川窪さんもお願いします。

川窪慎太郎氏(以下、川窪):週刊少年マガジン編集部の川窪と申します。講談社という出版社がありまして、そこの社員です。1年目から週刊少年マガジン編集部という部に配属されまして、今、12年目ですね。ずーっと同じ部署にいます。

経歴としては、みなさんがご存知ない作品もたくさん担当しているのですが、ご存知かなと思うものでいうと『進撃の巨人』という作品を担当しています。

佐藤:お2人とも、今日はお願いします。

宍戸:お願いします。

川窪:よろしくお願いします。

世界に飛び出した末に出会った「SEKAI NO OWARI」

佐藤:もうちょっと経歴についておうかがいしたいのですが。宍戸さんは、今、セカオワさん……セカオワさんと言ってもいいのでしょうか?

宍戸:セカオワで大丈夫です。

佐藤:セカオワさんのマネージャーに至るまでは、どのようなご経歴だったのですか?

宍戸:至るまでは……どこから言おうかな……。

佐藤:かなり昔の話が面白いので、せっかくなので全部。

宍戸:もともと音楽が好きでTOWER RECORDSで働いていたんです。でも20歳くらいのときに、「このまま社員になって、ここでずっと働くのもなにか違うな」と感じて。

北海道出身なのですが、まだ行ったことがないところ、札幌から沖縄まで行ってみようと思いました。しかもその頃はすごく原チャ(原付バイク)が好きだったので、それで行こうと思いました。

札幌から沖縄までは北と南なので、それならこれ全県を通れば行けるんじゃないかと思ってやってみたら、実際に行けましたね。けっこう辛かったのですが、まずそれをやりました。

その後、原チャを置いて船で中国に行って、モンゴルに行って帰ってきました。そのときにいろんな国の人に会ったのですが、ぜんぜん英語ができなくて。英語を勉強することによって、いろんな人と話せるし、いろんなものをより吸収できるんじゃないかと思ったので、工場で(働いて)お金を貯めて、オーストラリアに留学をしました。

戻ってきたところでいい年齢になったので、働こうと思い、英語もできるし、いろんなところに行けるからっていうので、旅行会社を受けました。

そこの面接で答えられなかった質問がありました。「社会というフィールドで、人生をかけて、なにを実現したいんだ」と言われ、「それはなんだろうな?」と思いながら答えられなかったのに、(その会社に)入れてくれてので、それを考えていました。

あるとき、それは「人と音楽をつなぐ仕事」なのではないかと、自分にとってはそうなのではないかと思ったんです。そしてその会社を辞めて、そこからは無職になるのですが、その日からレコードショップに行って、いろんな試聴できるものを片っ端から聴いて、気になった人がいるところの社長宛に履歴書をバーッと送ったら、ラストラムという僕が前いた会社の社長が拾ってくれました。

他にはなにもできないのだから、とにかく新人を探してこいというので一生懸命探していたらSEKAI NO OWARIに出会いました。それから今です。

師匠は矢沢永吉の元マネージャー

佐藤:すっごい(笑)。ちょっと、やっぱり変ですよね(笑)。

宍戸:君に言われたくない(笑)。

佐藤:ああ(笑)。原付で旅をして……大学などは行っていないのですよね?

宍戸:音楽が好きだったので、音楽の専門学校に行きまして、その後にタワレコで働いていました。

佐藤:へー。それで、その音楽の事務所に履歴書を送って、連絡してきてくれたのは前の事務所というか……。

宍戸:僕の師匠にラストラムの村田(積治)さんという、矢沢(永吉)さんのマネージャーだったり、ブルーハーツの事務所を作ったなど、業界でいうレジェンドのような人がいるのです。なぜ僕を採ってくれたのかわかりませんが、あのとき採用してくれました。

佐藤:(笑)。それ、何社くらい受けたの?

宍戸:受けたというか、ひたすら履歴書を送っていたんです。あのとき……どのぐらい受けたかな。宛もなく社長に、30から40くらい送っていました。

佐藤:へー。

宍戸:返事がきたのが村田さんだけなのですが。

それも、旅行会社時代に……1ヶ月くらいしか僕はいなかったのですが、その中での僕の仕事の1つが郵便物の仕分けだったのですが、届いた郵便物の封筒を開けて、いろんな人の机に置いていく。でも、社長宛のものだけは開けるな、そのまま渡しなさいと言われたことが残っていて。

これ(履歴書)を人事部に送っても募集していなかったり、そもそも求められていないと話が通らないし、社長宛にこの気持ちを届けられたら物事が動くんじゃないかと思ってやってみたらうまくいった。

入社してすぐの仕事が「新人を探してこい」

佐藤:それで入社して、セカオワさんに辿り着くまではどのくらいの期間なのですか?

宍戸:2ヶ月くらい。

佐藤:それまで、いろんなアーティストに会いに行っている?

宍戸:入ったら「新人を探してこい」と言ってくれて、それをやりたかったので一生懸命探していました。そのころは毎日ライブハウスのスケジュールを見て、気になった名前の子たちをMyspaceやYouTubeで聴いて、さらに気になった子がいたら見に行っていました。

ただ、見に行って気になったからとすぐ声をかけると、彼らもデビューできると思っちゃう。それは違うなと思って、ずっと見ているだけでいました。SEKAI NO OWARIのときだけ、すぐにわっと声かけました。

佐藤:なるほど。その先の話はあとでいっぱい聞かせてもらいますね。

入社して初めて受けた持ち込み電話が『進撃の巨人』

佐藤:川窪さんは、講談社に新卒で入られたのですか?

川窪:そうですね。そこはもう普通に、企業に就職をしました。

佐藤:そこから、今に至るまではどういった……?

川窪:4月に会社に入って……うちの場合は4月5月が研修期間で、6月が配属なのです。それでいうと宍戸君と同じで、編集部に入ってから2ヶ月後ですかね。7月か8月の初めくらいに『進撃の巨人』の諫山(創)さんが漫画を持ち込まれたんです。

持ち込みといっても、おわかりになる方はいらっしゃらないかもしれませんが、新人漫画家さんがプロの漫画家になる道は、大きくいうと2つあるのです。1つは漫画賞。各雑誌が主催している漫画賞に作品を応募して、いい賞をとれば、デビューできるといった道があるのです。

そしてもう1つは、もうちょっと地道な作業ですが各出版社や各雑誌に自分の作品を持ち込みます。それはたぶん音楽業界でも……。

宍戸:うん、デモテープね。

川窪:デモテープを送るのと同じように、書いた描いた原稿をそのまま持ってくるというのがあって。それを諫山さんが、7月か8月に僕のところに持ってきてくれたのが出会いというか……ですね。

佐藤:持ってきてくれたというのは、偶然出会ったのですか?

川窪:うちの部署は、持ち込みの電話に出た人間が、その漫画を見ることができるというシステムになっているのです。

佐藤:えっ!?

川窪:ですから、今も、もうみんな、目の色を変えてというか(笑)。余談なのですが……。

漫画の持ち込み電話はワンコールしないくらいで出る

佐藤:今電話したら、出るのですか?

川窪:はい。今電話したら、たぶん……この時間でも、すごい勢いで出ます。

(会場笑)

本当に、ワンコールもしないくらいで出るんですよ。みんな、もう必死だから。それが内線のときもあるし、外線だけどぜんぜん違う電話のときもあるし。そうすると、みんな内心では舌打ちしながら(笑)。

(会場笑)

佐藤:(笑)。

川窪:いや、舌打ちはしてないですが(笑)。もう、そんな感じで。

佐藤:では、入社して早い段階で出会えたのですね。

川窪:そうですね。2ヶ月で出会いました。会社に入ってから、何百人という持ち込みだったりとか。僕らから漫画学校に出向いて、漫画家さんの漫画を見せていただくこともあるのですが。数百人単位で見てきましたが、今でもお付き合いがある中で一番古いのが、やっぱり諫山さんです。

佐藤:それ以降も、電話には出ているのですよね?

川窪:それ以降も、1、2年目ぐらいまでは、よく電話に出ていました。今はもう、電話が鳴っても知らんぷりをしていますが(笑)。

(会場笑)

人と音楽をつなぐ仕事がしたい

佐藤:お2人とも、出会った瞬間の話に今なったので……ベットした瞬間というか。僕の場合は、吉本でマネージャーをやっていたのですが、ロンブーやナイナイさんなどを担当していて、でもそれはあまり自分でベットはできていないのですよ。

会社に「この人が担当だ」と言われて担当していた感じです。どこかのタイミングで、この人たちとやっていこうというのを、自分の中でベットした瞬間があると思うのですが。

お2人の場合、ゼロから作っているじゃないですか。出会って、この人だと決めて。その瞬間を今覚えているかというか。なぜここでこの人たちにしようと思ったのかというところをうかがいたいです。

宍戸:それは僕でいうと、初めて彼らのライブを見た下北沢のライブハウスでした。なんだろうなぁ……4人の佇まいや楽曲がすごく素晴らしかった。

「人と音楽をつなぐ仕事がしたい」という思いから、この人たちの音楽を届けたいと感じたのが、本当に純粋な気持ちです。ふだんは声をかけていなかったので。彼らを初めて見たときに、僕、すごく好きだし。これは早くしないとと思ったんです。初めて声をかけたら、ボーカルのFukaseとピアノのSaoriが来てくれました。

彼らも、いろんなところにデモテープを送っていて、ぜんぜん返事がなくて「どうしたら人に届けられるんだろう?」と葛藤しているタイミングに、初めて音楽業界の人が現れた。

名刺を渡したら向こうも緊張していて、Fukaseが受け取ってくれたのですが、緊張のあまり渡した名刺をくしゃくしゃにしてポケットに入れていたので「この人、大丈夫かなぁ?」と思ったことを覚えています(笑)。

佐藤:(笑)。

宍戸:その週末に、彼らが自分たちで作っていたライブハウスのclub EARTHでライブがありました。そのライブに行っていろいろと話をして、そこからずーっと一緒です。

SEKAI NO OWARIを見つけて「衝動的に動いた」

佐藤:他のいろんなバンドさんも見ていたと思うのですが、それとはぜんぜん違ったのですか?

宍戸:ぜんぜん違ったのでしょうね。それまでは声をかけず、デモテープを買って帰るぐらいでした。正体を明かさずに買って、聴いて、会社の人などに聴かせて「どう思いますか?」といったことをしていたので。でも、あのときだけはもう自分でわっと動いたので。感覚的というのかな。

佐藤:あー、感覚なんだ、やっぱり。

宍戸:うん。とても好きだったという。

佐藤:その他には、まったくそうしたバーンときたものはないという……。

宍戸:そうですね……人と音楽をつなぐ仕事がしたいというので、そこでキャリアを模索し始めました。本当に毎日、ライブハウスに行かない日も、夜中の3時ぐらいまでずーっと一生懸命探していました。それでいたのがあの子たちだった。見たら、音源で聴いたのとはぜんぜん違う衝撃がありました。

『進撃の巨人』を初めて見たときの衝撃は?

佐藤:川窪さんはどうですか? 電話がきて……電話をとるのですよね、まずね? そして「会いましょう」となるのですか? 漫画家の卵の方々とは、電話でどうしたお話をするのですか?

川窪:電話では事務的な話ですね。そうしたシステムがきちんとありますから、希望日を聞いて、自分のスケジュールと照らして、合えばそのまま会います。合わなければ少し調整をする。電話番号とお名前と。一応、年齢が……たまにあるのですが、50歳と言われちゃうと……。

佐藤:あっははは(笑)。あるんだ。

川窪:「ちょっと大丈夫かな?」といったことになるので(笑)。一応年齢も聞かせていただいていますね。あとは逆に10代の子などの場合、親御さんとの交渉もありますから、そういった事務的なことをするのです。

佐藤:先生と最初にお電話をいただいて会ったのは、わりと近いときだったのですか?

川窪:彼はそのとき福岡県の専門学校にいて、学校自体で集団の持ち込みのようなカリキュラムを組んでいたのです。僕が諫山さんと会ったときにも、同じ空間に、同じ学校の生徒さんが何人もいました。雑談していたら、「実はアイツも同級生でアイツも同級生です」といった感じでした。

佐藤:最初に、その作品を持ってきたのですよね?

川窪:そうですね。

佐藤:その瞬間のことは覚えていますか?

川窪:いやぁ、覚えてます。『進撃の巨人』という読み切りを持ってきたのです。

佐藤:へー。

川窪:今とはキャラクターも違うし、設定も多少違うのですが基本は同じでした。『進撃の巨人』というのは、壁に囲まれた世界のお話なのですが、壁の外には巨人、中には人間がいて……という構図は一緒でした。

佐藤:それを見たときに、宍戸君のように「これだ!」と。

川窪:まぁ“稲妻が走った”みたいなことが言えればいいのですが……僕らは年間でも100人ほど見ますし。正直、どのような人がどこまで成長するか、やってみないとわからない部分もやっぱりあるのです。

名刺はいろんな方にお渡するんですよ。5人見たら1人、7〜8人見たら1人ぐらいの割合で名刺をお渡ししています。その中の1人ではありましたが、今まで持ち込みを見た中でダントツではあります。

もう原稿からなんていうんですかねぇ……。「自分は漫画家になりたいんだ」「この作品を描かずに生涯を終えられないんだ」といった、鬼気迫る情熱というか怨念みたいなものを原稿から感じたかなぁ。

セカオワメンバーの第一印象は「すごくピュア」

佐藤:セカオワのメンバーも、そういったものが当時……出会ったときのメンバーは何歳ですか?

宍戸:会ったのが9年前なので、22とか23かな。

佐藤:もうそのときでぜんぜん、作品はもちろんのこと、彼らの発言なども他の方と違ったのですか?

宍戸:発言というのは、他の人と比べて?

佐藤:空気感というか……他の人と比べて。

宍戸:他の人と比べて……うーん、なんて言えばいいのかな。すごくピュアな子たちだなという印象はありますね。いい意味で普通の人とは違うというのは、その点であって。ピュアさというのは、未だに変わっていません。

そのピュアさが彼らの武器でもあるのですが。もちろん普通に話をしていれば、普通のコミュニケーションもとれるし、普通の子たちのようだけど、すごく潔癖ですごく純粋です。そういうところは、人と違うところとしてはあったかもしれません。

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