2024.10.01
自社の社内情報を未来の“ゴミ”にしないための備え 「情報量が多すぎる」時代がもたらす課題とは?
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司会者:ありがとうございました。それでは、4人目のスピーカーの方をご紹介させていただきます。経済産業省大臣官房政策審議室室長補佐、草野百合子さんです。草野さん、よろしくお願いいたします。
草野百合子氏:よろしくお願いします。草野百合子と申します。
今ご紹介いただいたんですけれども、私は経済産業省というところで働いています。就職して9年目で、30歳になります。そのため、たぶんこの会場は先輩の方々も多いんじゃないかと思っていて、恐縮していますが、私の失敗についてお話させていただきます。
「失敗について話してください」という打診をいただいた時、けっこう困ってしまって。なぜかと言うと、そう言われると、なんかすごい失敗を話さなきゃいけないんじゃないかと思ったんです。でも私、すごい失敗をした経験ってそんなにないなって、自分の中で思って。
ミスという意味での失敗だったら、例えば審議会を開く時に、直前までお茶を買い忘れていたことに気付かなくて、会議が始まる10分前に上司に買いに行かせたとかですね(笑)。
大々的に出せるほどでもない失敗っていうのだったらあるんですけど、こういう場所で喋ってみなさんに共感していただくようなストーリー性のある失敗って言われた時に、あまりないなと思いました。
でもさらにそれを考えた時に、そういうこと自体がもしかしたら失敗なんじゃないかなと思ったんですね。
「失敗について話してください」と言われた時に思いついた失敗の中で、1つ大きいなと思った失敗がありました。
それは私が(就職して)7年目だった時なんですけれども。それまで私の仕事にはなんらかの目標があって、それに向かってどういうことをやっていったらいいかというHowを考えるところがメインだったんです。
ただ、7年目の時は「少子化対策をやろう」とすごいザックリ言われて、「あとは好きにやっていいよ」という種類の仕事でした。
それまでは、こんなに大きいwhatを考える仕事はそれほどやってみたことがなかったのです。その時になにをやりたいかを自分で考えました。そのテーマは私がすごくやりたいものだったので、「これをやりたい」と思って。
「それについて一緒にやってくれ」と、自分の省庁の中の人たちにも話しましたし、社外の人たちに企画書みたいなのを持っていって「一緒にやってください」とお話をしたりということもしました。省内では、あまりそれまでの蓄積がない分野だったので、わりと積極的に動いていろんなことをやっていかなくてはならなりませんでした。はっきり言うと、初めてやったくらいの時だったんです。
これがなんの失敗だったかというと、やはり初めてというところもあってぜんぜんうまくいかなかったんです。
例えば「こういうことって、あまり行政でやるタイプのものじゃないよね」と言われたり、先方の会社の方に持っていった時も「総論としては賛成するんだけども、各論としては別にうちの会社でやろうとは思わない」っていうことを言われたり。
全体としては私の力不足によって、やりたいと思ったこと自体は実現できなかった。カタチにならなかったこと自体が、私の中ではすごく失敗だったんです。
ただ、この失敗経験から私が得たものはすごくありました。
そもそものテーマ設定や資料の作り方、話し方に関する力不足の実感もあります。例えば「こういうことをやって」とざっくりと言われた当初に、もっといろんな先輩をつかまえて話を聞けば良かったというタイミングに対する気づきもありました。
また、後になって「こういうのってこうしたら良かったじゃん」とか言ってくれる先輩もいろいろいて、「この人とこの人はこういうことをよく知ってるんだな」ということを、自分の体感としてわかったりもしました。
それから、企業の方にお話を持っていくっていう時も、「この資料ぜんぜんダメだったよね」「こういうところを意識するとうまくいく」みたいなものが、具体的に自分の中で体感としてわかったりしました。
社内で話を通すためにも、私はだいたい1対1で話をしにいってたんです。しかし、1対1でやっているだけだと、話ってぜんぜん広がらないんですね。
1人の先輩からは「あ、いいね」って言ってもらっても、そこから広がってもっと社内全体で、「こういうのやっていこうよ」とは広がらない。1対1で話した後に、チームみたいなのを作ってやればよかったとか思いました。
そういう具体的な反省がいろいろ自分の中に蓄積されて、「このタイミングでこうすればよかった」と実感としてわかる。こうすればよかった、こういうところが不足しているということも身にしみてわかる。そういう意味で、失敗ってすごくいい経験だなと思ったんです。
そう思うと、これまでの9年間の大きな失敗としてこれ以外ないというのは、それ自体が失敗だと感じたんです。もっと自分がやりたいことややってみたいことをやって失敗した経験があれば、具体的な反省がもっと蓄積されたんじゃないかと思っています。
失敗していないというのは、成功しているわけではないんですよ。
失敗していないと自分の中になにが残るかというと、「これをやればよかった」「こうならなくてよかった」「失敗にならなくてよかった」など、あまり具体的じゃないというか、役に立たない反省でしかない。
ちゃんとなにかを失敗すると……。それが本当に致命的な失敗ならダメだったかもしれません。しかし、致命的ではない失敗であれば「具体的にこうすればよかったんじゃないか」というのが、自分の中で蓄積されている。
成功していることがもちろんいいんですけれども、失敗していない状況が続いているのであれば、それはなにか自分の中で押さえているものがあったり、進んでいないものがあったりするかもしれません。それがなにかを考えれば、一歩進めるんじゃないかと今思っています。
では、失敗していない状況が私の中でどうして起こっていたのか。
私の場合はそれほど大きいことではありませんが、一つひとつの小さな「これはやめておこうかな」が積み重なり、成功も失敗もしていない状況になったんじゃないかと思っています。
それはどういうことか。うちの職場ですと「省内全体で新しい企画を個人で出していいよ」と呼びかけがあった3〜4年目でありました。当時はちょうど仕事にも慣れてきた頃だったので、アイデアを出すタイミングだったんだろうなと思うんです。しかしその時、私はそれを出しませんでした。
どうして出さなかったのかというと、1つは、それに出せる企画書を作るスキルがあまりなかったということもあります。もう1つは、私が企画書を出したら、査定する人たちから「この人はバカだなー」と思われるんじゃないかと考えたんです。それを恐れて出さなかったり。
その時、ちょうど仕事にも慣れてきた頃だったので、そういうのを出すんだったら出すタイミングだったんだろうなと思うんですけれども、私はその時それを出さなかったんですね。
もっと小さなところで言えば、課内でなにか会議をする時に「なにか意見がある人?」となっても、自信がない分野だとバカだと思われるのが嫌だとか、もし反論されたら返せないなと思って言わなかったりしていました。
もっともっと小さなところでは、私は人に挨拶することについても、相手がちゃんと返事をしてくれる人ならできますが、そうじゃない人にはなかなか声をかけることができないんですね。
それぞれは小さなことですが、そういった「こうされたら嫌だな」「こうなったら嫌だな」「こうなったら自分が恥ずかしいな」の積み重ねがありました。
そうするとなにが起こるか。大きなチャンスを得ることがなかなかできない。
先ほど私が「大きな失敗をした」と申し上げましたが、それをしたことによって「この人はこういうことをやりたいんだな」というのが、ほかの人にも伝わったのではないかと思っています。
これは私の職場のいいところかもしれませんが「この間は失敗したけれど、こういう方向のことが好きで、こういうところが強みなんだな」と、必ずいいところを見てくれる人がいます。そうすると、「この話、おもしろそうだから草野さんどう?」「このチームが今度できるらしいんだけど、草野さんは教育関係が好きそうだから推薦しておいたよ」と話をしてくれる人が出てきたんです。
私がなにもしなかった時は、ほかの人から見るとなにが好きかわからないし、なにか言いたそうだけど、なにをやりたいかぜんぜんわからない。実際の行動に移していないから、結局はそんなにやる気がない人みたいに見えていたんじゃないかと思っています。
小さな恐れがいっぱいあることで、そういったチャンスを得られない状況になっていた。チャンスがないからこそ成功にもならないし、失敗にもならない。失敗しないまま、なんとなく毎日は過ぎていくんです。振り返ってみると、学びがあまりない状況だったんじゃないかと思います。
そういったところから私がちょっと気をつけているのは、日々の小さな失敗を恐れないようにする。
挨拶の声の大きさや「意見を出して」と言われたら必ず出すなど、そういったところから取り組んでチャンスをつかみ、きちんと失敗することをやっていきたいなと思っています。
ありがとうございました。
(会場拍手)
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