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コイニー佐俣奈緒子(全1記事)

「諦めた方がいいと言われていた」金融業界に挑む女性起業家が奔走し続けた“3つの信用”

2017年3月29日、30日に開催された「Slush Tokyo 2017」。起業家やイノベーターたちが一堂に会するこのイベントで、コイニーの佐俣奈緒子氏が登壇しました。「最下位からのスタートだった」と話す佐俣氏が、金融業界に挑むために意識した3つの信用について語りました。

事業を通じて学んだこと

佐俣奈緒子氏(以下、佐俣):みなさんこんにちは。

私はコイニーの創業者でCEOの奈緒子です。今日は、コイニーの事業を通してなにを学んだかをお話ししたいと思います。

私は2011年10月に、コイニーを始めるためにペイパルを離れました。ペイパルではおもにマーケティングを担当していました。しかし、私はコイニーを始めるために、ペイパルを退職しました。

私がやりたかったのは、少額の支払いにおいても、より簡単な決済方法を提供すること。それがコイニーを始めた理由です。

今日、私たちがおもにしていることは、スマートフォンとクレジットカードリーダーを用いたサービスです。このクレジットカードリーダーはICカードも読むことができます。

また、昨年の夏、オンライン決済も始めました。そして今年は、QRコードリーダーによる決済サービスも始めました。今後は、AIをベースとしたレンディンググエンジンも決済サービスとともに提供していく予定です。私たちのビジネスはもっと拡大していくと思います。

これは私たちがどのように成長していったかを示すものです。

私たちのサービスは右肩上がりに成長しています。現在は約40人が働いていますが、今日このステージに上がるまでたくさんの問題がありました。困難な状況に何度も直面しました。そこで、今日は私たちが学んだ経験をシェアしようと思います。

信用には「サービス」「経営陣」「資本」の3つがある

2012年、私たちはこのようなウェブサイトをリリースしました。すぐにでもこのサービスを提供したかったのですが、たくさんの困難がありました。

なぜか? それはクレジットカード会社との契約が必要だったからです。

私たちは、彼らとの契約を結ぶことができませんでした。理由は、私たちになんの実績もなかったからだと思います。なんの信用もなかったのです。このサービスを運営するための信用はまったくありませんでした。

そのため、私たちの最初の大きな挑戦はパートナーとお客様からの信用を得ることでした。

信用には3つの種類があります。1つ目はサービスです。2つ目は経営陣です。私たちの経営陣は今ではとてもよくワークしています。3つ目はお金、つまり資本です。

それでは1つずつ説明していきたいと思います。

サービスは、安全性が高く、信用が必要です。コイニーはこの点を満たしていると言えます。私たちのアプリケーション、ハードウェアの初期の開発において、この点を満たすことは簡単なことでした。なぜなら、私たちには素晴らしいエンジニアとデザイナーがいたからです。そのため、この点において簡単に開発できました。

しかし、「暗号化されたカードリーダー」に関しては難しい問題に直面しました。私たちがこのビジネスを始めた時、暗号化に関する規制がありませんでした。そのため、契約を結び、サービスを提供するまでに暗号化の方法を何度も修正する必要がありました。これにはとても多くのコストがかかりました。

加えて、私たちは、PCI DSSというライセンスを取る必要がありましたが、このサービスを始めるまで、私はこのことを知りませんでした。

また、このライセンスを取得するにあたり、1つ問題がありました。

私はすべてのシステムをクラウド内で開発したかったのですが、当時日本にはすべてをクラウドで提供する金融サービスがありませんでした。私はPCI DSSに関するすべての基準を満たして証明書をもらうためにAWSのグローバルチームとジャパンチームに協力してもらいました。

最終的にはクラウドでの開発のみのため、証明書を取得することができました。繰り返しますが、これには多くの費用がかかりました。私たちはシードラウンドで20万ドルを調達しましたが、そのほとんどをセキュリティシステムに投資しました。

優秀人材が加わり、経営陣としての信用を得る

2つ目は人、経営陣です。私がこのサービスを始めた時は27歳でした。経営者は私だけでしたので、専門的なことに対処していくため、いつも40代、50代の人が必要だと言われていました。

そこで私は、ある男性を見つけました。彼は西條(晋一)といって、以前はサイバーエージェントで働いていて、COOでした。

サイバーエージェントは日本で最大のインターネット会社の1つです。彼はサイバーエージェントを退社したばかりで、新しいステップを模索していました。そこで私は彼を誘い、「もし興味があるなら一緒に働いてもらえないか」と提案しました。彼は今も、取締役として会社に携わってくれています。

もう1人は井尾(慎之介)です。彼は私のペイパル時代の同僚で、元上司でした。ペイパルを退職後、テスラモーターで勤務し、再びペイパルに戻って重要な任務に付いていました。

そのことを知っていましたが、彼に声をかけました。「私たちには井尾さんが必要だ」と主張し、コーヒーやディナーに誘い、熱意を伝えました。そうして、コイニーで働くことに同意してくれました。

このように、素晴らしい人材が関わってくれたおかげで、どうにか経営陣としての信用を得ることができました。

3つ目の資本についてです。このビジネスには十分な資金が必要でした。理由は2つあります。

1つ目は、お客様やパートナーへの安全性のため、2つ目はセキュリティシステムの開発のためです。サービスを提供するまで、全部で1億円の資金を調達しましたが、もっと資金が必要でした。

最終的に、私たちは13億円の資金を調達に成功しました。これは大きな金額です。私たちはまだ十分な信用がない状態でした。しかし、こうして資金調達をクリアし、徐々に信用を得ることができました。

「いいコミュニティ」にいた幸運

信用を得ることはとても難しいです。1日や2日で得られるものではありません。費用も時間も必要です。特に金融業界では信用はとても大事なことです。スタートアップを始めようとするみなさんは、おそらくどのように信用を築いていくかという問題に直面すると思います。

しかし、別の側面で見てみると、2つの幸運なことがありました。1つはタイミングで、もう1つはいいコミュニティです。私たちが選んだ市場は正しく、非常にいいタイミングで参入したと思います。このサービスを必要としているお客様がたくさんいたのです。

市場に参入するタイミングは重要なことです。私がこの会社を設立して以来、たくさんの起業家たちに会いました。みな、とても頭が切れる賢い人たちです。

しかし、もし適切な市場を選ばなかったら失敗してしまいます。もし適切な市場を選んでも、市場に参入するのが遅すぎたとしたらやはり失敗してしまいます。市場とタイミングはビジネスで成功するために大事な要素と言えます。

もう1つ目はコミュニティです。私は幸運なことにいいコミュニティにいました。学生だった時、ベンチャーキャピタルの会社でインターンとして働きました。ペイパルで働いていた時もインターンでしたが、最終的には正社員として働くことができました。

私は正しいコミュニティを知っていました。そこで働く人を知っていました。そして投資家を知っていました。正しいコミュニティは多くを支えてくれます。

困難な状況に直面して、失敗もありましたが、いつもコミュニティが助けてくれました。したがってコミュニティも成功のカギを握っていると言えます。

正しいコミュティに身を置く重要性

今日、おそらくたくさんの学生が来ていることでしょうし、起業に興味があって、真剣に行動を起こそうとしている若い人もいるでしょう。

あなたたちは今、最適な場所にいます。なぜなら今日会った人たち、あるいは一緒にきていた友達、そんなみなさんの中に次のスターが出てくるかもしれないからです。将来の素晴らしい起業家が隠れているかもしれません。したがって、正しいコミュニティの中に身を置くことはとても大事なことです。

私が会社を始めて、5年が経ちました。この市場は、楽天、ソフトバンク、スクエアといった大企業がたくさんいます。多くの人は最初、諦めた方がいいと言いました。しかし、私たちは信じています。この業界で1番になれると信じています。

私たちは最下位のところから始まりました。起業して数年はそうでしたが、今年は業界で2番目になれるのではないかと思います。しかし、私たちは1番を目指しています。諦めないことは本当に大事なことです。

大きな市場を変えることは、時間がかかります。時には10年、20年かかることもあります。

信用は時間もコストもかかります。なので、今日から少しずつ信用を築いていきましょう。将来、成功するために。必ずできます。

ありがとうございました。

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