
2025.03.27
「過去1年でインシデントが増加」と回答した人は約8割 大規模化かつ高速化するDDoS攻撃から企業を守る、最新セキュリティ
リンクをコピー
記事をブックマーク
ギャレス・エドワーズ氏(以下、エドワーズ):人がなぜ、どのように物語を語るかということには、実はあまり違いはありません。僕はその理由は、人間という種が実は、不死であることにあると思っています。人間は個々では死んでしまいますし、繁殖を行い、自らのクローンである子孫を作りますよね。しかし、自分の経験だけは、コピーも繁殖もできません。良い意味で、まっさらなものです。
人間の身体はハードウェアです。そして僕が思うに、物語というものはソフトウェアであり、新たに子どもたちにダウンロードしていくものです。物語というものは、ポケットに入れて持ち運べるような小型サイズの、人生で得た教訓です。僕たちは、それを記録するのです。
物語では、ヒーローが誰も言ったことのない場所に行き、女性に出会い、悪人を倒し、村のためになにかを持ち帰ることについて語られます。僕たちが常にハッピーエンドに心惹かれるのは、いざ自分たちにその番が来た時に、そういった成功体験が役に立つからです。
僕にこんなことを教えてくれた人がいました。「物語に起きた一番の悲劇とは、文字の発明である」。
長い年月の間、人づてに伝えられた物語は、聞いた人がおもしろいと思った部分は残り、つまらない部分は切り捨てられます。さらに人に伝えられる折には、語り手がおもしろいと思ったことが少しづつ加えられていきます。このような繰り返しにより、物語はさらに進化を遂げ改良を増し、すべての人が聞きたいと思う話へと変貌を遂げるのです。
僕はこれにとても共感し、映画制作をできる限りオーガニックに保ちたいと思いました。そこで、脚本を書く時に、半分は楽をしたいからだったのですが、いつも心がけていたことがあります。
映画の登場人物に身体的に起こったことと、内面で感情的に起こったこととを結びつけようとしたのです。たとえば、なにもない場所にぽつんとある駅が舞台で、周りがとても騒々しい中でのセンチメンタルなシーンでは、そのままを書くのはいやだと思いました。もう少し柔軟性を持ちたいと思ったのです。
そこで、映画の登場人物に身体的に起こったことを黒インクで、感情的に起こったことを青インクで書きました。
僕たちはホイットニーをオースティンで拾い、メキシコまでドライブしました。メキシコ、ベリーズ、グアテマラ、コスタリカ、テキサスと周りました。行った先々で僕たちは「この場所で、興味深いものが見られるのはどこですか?」と尋ねました。「向こうでは洪水が起こっている、ダウンタウンでデモが行われている、建物が解体されている」等々、なんでもありです。
僕たちは実際にそういった場所に行き、身体的になにが起きるかを実際に試してみました。「すばらしい。これはストーリーに取り入れよう」。そして、今度は感情的になにが起きるかを試しました。そういったことを、行く先々で探して周りました。それは今までにない、すばらしい経験でした。
僕は、役者と共に2ヶ月近く、運搬車で移動しましたが、これほどまでに過酷な時間を過ごしたことはありませんでした。さまざまなことを、急速に学び、適切な対応をする必要がありました。
なにもない渓谷のシーンだった場合、なんのシーンで、なにをやるべきかをわざわざ話す必要はなく、フォースのように伝えることができるようになるのです。イーブル・クニーブル(アメリカのスタントマン、グランドキャニオンを飛び越えるパフォーマンスを行った)のように、グランドキャニオン渓谷を飛ぶシーンであれば、谷を繋げる装置を作るだけでよいのです。シーンへの軌道を用意してあげれば、役者は自分たちの力で理解し、飛び立ちます。僕たちはフォローしてあげるだけです。
役者たちにバックグラウンドのストーリーや、存在理由、これからやろうとしていること、やってはいけないことを話し、あとの仕事は任せておけばよいのです。これがたいへんうまく行きました。
やがて映画は完成し、ありとあらゆる映画祭、クリスマス前から現在に至るまでに開催予定のある、大きな映画祭すべてにエントリーさせました。そしてすべての映画祭のエントリーに落ちました。
ところがありがたいことに、SXSWにおいて、特にティム・リーグ(配給会社「アラモ・ドラフトハウス」創設者)のおかげで……(素早く水を飲む)スティーブ・ジョブスはプレゼンテーションのプロですね。
(会場笑)
おかげで作品が上映されることになりました。未完成だったのでそのまま提出を余儀なくされました(『モンスターズ/地球外生命体(2010)』ギャレス・エドワーズ初監督長編作品)。
モンスターの映画でモンスターが登場するのですが、僕自身がVFXを手がけ、間に合わないので、本来であればVFXが入るべき箇所に「モンスター、ここで攻撃」などというテキストを、やむなくスクリーンに挿入しました。
SXSWでの上映が許可され、「アラモ・ドラフトハウス」のティム・リーグに、飛行機を降りたところで出迎えられました。僕はワールド・プレミアに出席するかのように、とても緊張していました。ティムは「ちゃんと完成させて、テキストを差し替えたかい?」と聞いてくれました。「もちろん! 心配しないでくれ。ずっときれいなフォントに変えたから」。
(会場笑)
もちろん、映画は完成していました。今ではこうしてジョークにできますが、当時は本当にがちがちに緊張していました。僕にとってはワールド・プレミアのような舞台に、人生をかけていたのです。当時の僕は35歳。このわすかな時間に、すべての有り金と、VFXのキャリアをかけていました。
時間が足りず、急いでいてプリントもなにもできなかったので、作品は、安物のテープ上にダビングされていました。すべてがこの瞬間にかかっていました。上映1時間で、テープが壊れました。ちくしょう!
あと20分というところでした。やがてエディターから「あと4秒!」と電話が入り、再スタートしたのです。
無事に終演し、その後Q&Aを行いました。僕が会場に降りてくると、大勢の人が次々と来て握手を求め「よかったよ」などと言葉をかけてくれました。1人が映画のプロデューサーだと自己紹介し、名刺をくれました。「映画プロデューサーだって! すごいじゃないか」と僕は思いました。また別の人が名刺をくれて、その後何人かと握手し、終わりました。
ここでどっとアンチ・クライマックスの波が襲いました。「これで終わり? 名刺2枚のために、僕は人生を投げ打ったのか? ギャレス、お前は35年間もなにをしていたのか。なにを期待していたのか。ユニコーンでも来てくれると思ったのか、僕は?」。何色のユニコーンかはわかりませんがブルーかピンクか、虹色でしょうか?
私はまた車に乗り込み、役者たちと共にホテルに戻ろうとしました。すると、映画プロデューサーらしき人が僕のそばに立っていました。「ああ失礼、このタクシーに乗ろうとしていらっしゃったのですか」「いいえ、私は役者さんの友人です。同じフロアに泊まっていたので、一緒に映画祭に来ていたのです」。
僕は「なんだ。この人は映画プロデューサーではなかったのか」とがっかりしました。「まったくの時間の無駄だった」。翌朝起きて会場に戻ると、僕は聞いたことのないWebサイトのインタビューを受け「これでおしまいなんだな」と思いました。
インタビューが終了すると、魔法で出てきたかのように、そばに男性が立っていました。「こんにちは。少しお時間をいただいてもよろしいでしょうか。昨晩、あなたの作品を見ました。お話をさせていただきたいのですが」「もちろんけっこうです」。そこで僕たちは話をしました。確かボーリング場かなにかだったと思います。オースティン出身の方であれば、ご存じの場所だと思います。
「私は、ハリウッドのエージェントです。映画について少しお話を聞かせてください。これまでどんなお仕事をされていたのでしょうか」。僕は「ドキュメンタリーを製作していました」と答えました。相手は、僕が良い人間か、悪い人間かを判別しようとしているわけですよね。そこで「どんなドキュメンタリーを製作されたのですか」と聞かれた僕は「孤児と里親制度についての作品です。アフリカ系アメリカ人家庭が、子どもを養子に迎えるドキュメンタリーを撮りました」と答えました。
「とてもすてきな話ですね。考えさせられるテーマだ。それでそのドキュメンタリーはどうなったのでしょうか」「さあわかりません」。
(会場笑)
彼はたいへん聡明な人で、「なんでこんな人がエージェントをやっているんだろう」と思いました。それに僕の方がずっと年上でした。
最後に彼は言いました。「私は映画監督の代行を行うエージェントですが、僕の担当している監督の名前はご存じでしょうか」。僕が「存じ上げません」と言いますと「クエンティン・タランティーノ、ティム・バートン、ウェス・クレイヴン、ジョン・ウーなどです。ぜひ、あなたの代行もさせていただきたい」。
彼の名前はマーク・シンプソン、オースティン出身です。前列のこちらの席にいらっしゃいます。
(会場拍手)
そこが僕の人生の分岐点でした。それ以降起こったことはすべて、いろいろな人々のおかげです。こういったスタジオのシステムを解説はしませんが、簡単に流れを説明しますと、まずアレーに行きます。自分の作品は、エージェンシーのプライベートなスクリーンで、いろいろな作品と一緒に上映されます。上映回数は3回です。
初回はプロデューサーを招待して上映されますが、大抵は来ません。アシスタントが来ます。そこに僕たち監督は行きません。アシスタントは、帰社して上司に推薦します。すると2回目にその上司が来ます。気に入られると、3回目に大手のハリウッドの配給会社が来ます。ですから監督は3回目に行くとよいのです。
(エドワーズ氏、水を飲む)
会場のみなさん、僕がなにかおもしろいジョークを言ったかのように笑ってください。
(会場笑)
なんだか僕は、水を飲むタイミングが下手になってきましたね。
さて僕は、この会場の4分の1くらいの規模の、こじんまりとした劇場に行くわけです。満席ではありません。そこで観客に自分の作品紹介と自己紹介をするのです。「僕はギャレス・エドワーズ、イギリス出身です。低予算映画を製作してきました。VFXは自分で担当しました」。
ふと見ると、2列目か3列目にボブ・ワインスタイン(旧ミラマックスフィルム創設者)がいます。さらに壇上で話し続けふと見ると、その隣にクエンティン・タランティーノがいて、僕は「うわあ!」などと驚くわけです。
食物を取りに出て「最後まで見届けなくては!」とエージェントの1人のリッチー・クッキーと急いで会場に戻り、映写室の窓から会場のリアクションを見ていると、ボブ・ワインスタインが立ち上がり、出て行ってしまいました。僕はがっかりしました。
さらに彼は、壁を殴りつけ、悪態をついているようでした。建物の外に出て行った彼は、やがて戻って来ました。そして誰かがギャレスが映写室にいると教えたらしく、こちらに来るではありませんか。彼が言うには「途中で邪魔が入った。映画を最後までぜひ見たいのだが、もう私は行かなくてはならない」。僕が「今晩にでも、またお会いするか作品を送るかしましょうか」と言いますとボブ・ワインスタインは「ぜひそうしてくれ!」。
僕は作品のコピーも、DVDも持っていなかったので「エージェントが送ってくれると思いますよ」と伝えました。やがて業界人たちがぞろぞろと会場から出て来ました。マイクが、僕が『レザボア・ドッグス(1992)』の大ファンで、劇場で7回も鑑賞したことを知っていたので、クエンティン・タランティーノ監督を連れて来てくれました。過去15年間、僕が壁に飾っていた唯一のポスターは、タランティーノ監督のサイン入りの『レザボア・ドッグス』のものなのです。
監督が僕に話しかけてくれたのですが、「クエンティン・タランティーノだ!」と、ぼうっとしていた僕の耳に聞こえたのは「ふぁふぁふぁふぁ」という音だけでした。彼が握手をして行ってしまうと、周りの人が集まって来て「どんなことを言われた? 彼はなんと言った?」と口々に尋ねました。僕は「わからない」と答えました。
(会場笑)
たぶんなのですが、「映画は駄作だけど、よく頑張った」というようなことを言われた気がします。
(会場笑)
2025.03.21
マネージャーの「自分でやったほうが早い」という行動で失うもの 効率・スピード重視の職場に足りていない考え方
2025.03.25
減点を恐れてモチベ低下、果ては離職も… あらゆる“会社の害虫”を大繁殖させる「ラスボス」の正体
2025.03.17
不確実な時代だからこそ「知らないこと」を武器にする ハーバード首席卒業生の逆説的なメッセージ
2025.03.19
組織をダメにする“害虫”の正体は間違った思い込み AIやDXなど手段のみにこだわるダメ上司の見極め方
2025.03.24
最悪の場合、組織を死に至らせる“会社の害虫”とは 誤った意思決定や品質不祥事を招く要因
2025.03.19
フェデラー氏が語る「ただの1ポイント」の哲学 ウィンブルドン敗北から学んだ失敗からの立ち直り方
2025.03.24
気づけばモラル崩壊……人材育成に無頓着な企業の末路 業績アップや採用にもつながる“人への投資”の重要性
2025.03.19
OpenAIのAIエージェント「Deep research」はビジネスをどう変革するのか? サム・アルトマン氏ら4人がデモンストレーション
2025.03.19
大企業だけじゃない、「モーレツ×内向き」な組織の2つのリスク “悪気なく染み付いた文化”は個人のキャリアにも悪影響
2025.01.07
1月から始めたい「日記」を書く習慣 ビジネスパーソンにおすすめな3つの理由
2025.03.21
マネージャーの「自分でやったほうが早い」という行動で失うもの 効率・スピード重視の職場に足りていない考え方
2025.03.25
減点を恐れてモチベ低下、果ては離職も… あらゆる“会社の害虫”を大繁殖させる「ラスボス」の正体
2025.03.17
不確実な時代だからこそ「知らないこと」を武器にする ハーバード首席卒業生の逆説的なメッセージ
2025.03.19
組織をダメにする“害虫”の正体は間違った思い込み AIやDXなど手段のみにこだわるダメ上司の見極め方
2025.03.24
最悪の場合、組織を死に至らせる“会社の害虫”とは 誤った意思決定や品質不祥事を招く要因
2025.03.19
フェデラー氏が語る「ただの1ポイント」の哲学 ウィンブルドン敗北から学んだ失敗からの立ち直り方
2025.03.24
気づけばモラル崩壊……人材育成に無頓着な企業の末路 業績アップや採用にもつながる“人への投資”の重要性
2025.03.19
OpenAIのAIエージェント「Deep research」はビジネスをどう変革するのか? サム・アルトマン氏ら4人がデモンストレーション
2025.03.19
大企業だけじゃない、「モーレツ×内向き」な組織の2つのリスク “悪気なく染み付いた文化”は個人のキャリアにも悪影響
2025.01.07
1月から始めたい「日記」を書く習慣 ビジネスパーソンにおすすめな3つの理由
【仕事に直結】頭がいいとは?|知見の幅と高さで決まる。【東大卒 ベンチャー企業社長が語る】
2025.01.18 - 2025.01.18
退職をチャンスに捉える企業文化のつくり方
2025.03.10 - 2025.03.10
青木耕平さんとザッソウ(#156〜158)
2025.02.05 - 2025.03.19
片付けパパ対談【特別編】豊かな人生を過ごすための「投資」&「交渉術」 ~チャンスを逃さず信頼関係も育むコツ~
2025.02.10 - 2025.02.10
グローバルの経営理論に学ぶ、企業アルムナイ成功への示唆〜中央大学ビジネススクール 犬飼知徳教授
2025.02.18 - 2025.02.18