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戦略人事とHR Tech(全3記事)

知恵を絞りながら、大胆に--メルカリが実践する“攻めの人事”の爆発力

今後のHR Techの展望と戦略人事のHR Techの活用について語る「HR Tech Kaigi」。トレタ 取締役COO吉田健吾氏がモデレーターを務めたセッション「戦略人事とHR Tech」では、先進的な“攻めの人事”を展開するメルカリのHRグループ・石黒卓弥氏とエウレカで採用広報部リーダー・庄田一郎氏を招き、2社の先進的な事例をもとに、これからの人事のカギを握る「戦略人事」というキーワードについて掘り下げました。

「守りの人事から攻めの人事へ」

吉田健吾氏(以下、吉田):株式会社トレタの吉田と申します。「戦略人事とHR Tech」ということで1つ目のセッションを開始させていただきたいと思います。よろしくお願いします。

モデレーターを担当する私は「お前誰なんだ」という感じなんですけども、私は人事はやっておりませんで、トレタという会社で取締役COOをやっております。

私の会社は今、東京、大阪、シンガポールと拠点があって、80名くらいいる会社で創業3年目です。お恥ずかしい話しではありますが、実はまだ人事の責任者がいない状態で、私がけっこう見ています。人事の担当専任というわけではないですけども、経営の立場からいくと3年間の間に毎年倍々で人が増えてくるなかで、経営課題としても人の部分は大きいということで。

とくに、人数が少ないうちの1人の影響は大きい部分がありますので、小さい会社ならではの課題として、マッチしていない人が入ってきてしまうと全体が沈んでしまうということもあるという状況ではあります。

今日は私はモデレーターとして経営者の立場から先進的な事例についておうかがいしたいと思います。非常に上手にやっていらっしゃるなと思うんですけども、お2人から2社の状況をおうかがいして、いろんな話ができればと思っております。

「戦略人事とHR Tech」というお題でこのセッションを任されたんですけども、戦略人事といっても、そんなにまだ一般的な話ではないのかなと思ってます。戦略人事というのは、Amazonで検索してみると5冊くらい、そのままのタイトルのものが出てきたのですけども、そんなにたくさんあるわけではないなというところです。

Amazon.comのほうで「Strategic Human Resorce (ストラテジック・ヒューマン・リソース)」を検索してみると2、30出てきたので、英語圏のほうがもしかしたら進んでいるのかなという感じです。

この戦略人事というのがどういうものかというと、(スライドを指して)『ハーバード・ビジネス・レビュー』の特集の目次を見てみるとこんなふうになっています。

CHOというのが最高人事責任者ですね。「守りの人事から攻めの人事へ」「人事部はなぜ嫌われるのか」ということが書いてあります。

2つ目の「守りの人事から攻めの人事へ」というところが、今回のテーマになるかなと思っています。中身に書いてあるわけではないのですが、本の右上にタグラインとして書いてあることで、「人事は管理部門から脱却できるか」ということもテーマとしてあげられていて、こういうところが戦略人事の課題意識として今出てきているのかなと思っています。

なので、戦略人事とはどういうものか。戦略人事として自分が動いているというわけではなくても、やっていることがけっこう戦略的だということはよくあると思っていまして、とくに今日のお2人のお話は勉強になると思っています。

ここで順番に自己紹介いただきまして、会社の説明と、人事としてどのようなことをやっているかを順番にうかがいたいと思います。最初に、石黒さんお願いします。

メルカリ、エウレカの“戦略人事”

石黒卓弥氏(以下、石黒):メルカリの石黒です。よろしくお願いします。いつも自社でやってるミートアップより比較的場の空気が重い感じがする(笑)んですけども、フランクに。

2年前にメルカリにジョインをして、実は今日はとても懐かしい、前職に「辞めます」と言った日ですね。

今日は人事のことをお話しするので、会社のフェーズとあわせてお伝えできればと思います。メルカリには60番目くらいのの社員としてJOINして、現在は400人弱くらいになりました。仙台に150人くらいのカスタマーサポートの拠点があって、残りは東京、アメリカ、イギリス。東京は150人ぐらいいますね。

東京のメンバーのうち50人くらいがカスタマーサポートで、カスタマーサポートが全400人弱のうち半分以上を占めている状況です。それ以外、グループ会社の「ソウゾウ」に40人くらいいます。

コーポレート部門は全社で20人くらいでして、そのなかで人事が6人です。

6人で仲良くやってるんですが、メルカリのビジネス系とProduct系とソウゾウの採用を担っていまして、アメリカ、イギリスは現地で採用しています。

吉田:ありがとうございます。また詳細については、いくつか質問しながら進めていきたいと思います。次、庄田さんお願いします。

庄田一郎氏(以下、庄田):エウレカの庄田と申します。よろしくお願いします。

株式会社エウレカで今、採用広報部のリーダーと「Couples」事業部のプロダクトオーナーを兼務しています。

まず僕自身は、新卒でリクルート(現:リクルートホールディングス)に入社しまして、リクルート住まいカンパニー「SUUMO」の営業職を1年半ほど務めた後、リクルートホールディングスでプロダクトに関わる新卒採用、特にエンジニアコースを2年間担当しました。リクルート退社後は、フリーランスの採用コンサルタントとして複数の企業にて採用業務のお手伝いをさせていただき、2015年12月にエウレカに採用担当として入社しました。

現在、エウレカは全体で150名ほどの規模になっています。拠点としては、国内は東京、海外はシンガポールと台湾があります。恋愛・婚活マッチングサービス「pairs」とカップル向けのコミュニケーションアプリ「Couples」の2 つの事業をそれぞれ日本と台湾で展開していて、今後アジアを中心に海外展開を進めていくというフェーズにあります。

従業員数150名の内訳は、CSがおよそ25名、エンジニアが全体の半分弱にあたる60名ほどを占めており、経営管理(コーポレート)が20名、残りがデザイナーやディレクターという構成の組織になっています。

エウレカは、2015年よりInterActiveCorp(IAC)に参画しています。IACは米国に本拠地を置くインターネット企業で、その傘下のMatch Groupは数多くのオンラインデーティングサービスを有していることで知られ、NASDAQに上場しています。僕らの規模にしてはコーポレートの規模が大きいのはそのためで、財務担当の人数が他社と比べると少し多くなっています。

採用担当は広報担当と合わせて「採用広報部」というチームに所属しています。メンバーはアシスタントも含めて4名で、採用担当2名、広報担当2名という体制で運営しています。

知恵を絞りながら、大胆に

吉田:はい、ありがとうございます。両者の会社の規模感ですとか、創業してからどのくらいかというのは、人事としては会社の規模や人数は重要なファクターなので、頭に入れつつ聞いていただければと思います。

今日のテーマとして最初に申し上げたのですが、オペレーション人事との違いというのは、出て来るところかと思っていまして、オペレーション人事ってなんのことかというと、基本的に受け身の人事であると。

採用に関しても、媒体を使って応募があったものに対して対応していくという従来型のものがオペレーション人事のイメージかと思います。

2人はそういったところとは、かなり違った取り組みをされてきているという部分があると思っていまして、従来のいわゆる人事像とは違うところ、「けっこうアクティブにやっている」「自分たちで工夫してやっている」というところがそれぞれあると思います。

その辺りについて少しずつお話いただけますか。どのあたりが特徴的な部分というか、アクティブに動いている人事がやっていることとして特徴的なものがあるかということですね。

石黒:そうですね、ちょうどフェーズを含めて話をできるといいのかなと思っていて、私が入った頃は60人ぐらいのフェーズだったんですけど、その頃は広告型の求人をいくつか出していました。当然エージェントさんとの付き合いも、今でもありますけども、ありました。

私が入社した頃から少しずつWantedlyの募集やフィードを書くようになったり、わかりやすくいうといわゆる内製が始まったということになりますね。これを別の言葉で(来たものだけの対応をする「守り」と比較して)「攻めの人事」という言い方をするかもしれないのですが、どんどん中でコンテンツを作って外に出していくということを続けています。

突飛なことをやっていたかというと、そうではないと思っています。が、「Wantedly」の募集を丁寧に1個1個やっていったり、ミートアップイベントをはじめたりと、少しずつ認知を広げるようにやってきました。「(広告を)お金で買う」というよりは「知恵を絞ってやっていく」というのが私たちの2年前です。入社して最初の半年ぐらいの動きですね。その頃がだいたい100人から120人くらいの規模です。

吉田:自社で「mercan(メルカン)」というオウンドメディアを運用されています、ああいった自己発信型のコンテンツをどんどん出して行くとか、社内の様子をどんどん社外に出していくとか、今おっしゃっていた内製をするということは、石黒さんが入られたタイミングではどういった感じだったのですか?

石黒:そうですね。ちょうど会社のなかで「そういうのもっとやっていかなきゃだめだよね」というのは話としてはありました。これってみなさんも当然そうだと思いますけど、やらなきゃと思いつつ、じゃあ実際誰がやるの? どう始めるの? という問題にすぐ行き着くんですよね。メルカリの場合は「とりあえずやるか」っていうことになって、すぐ作って出してみてシェアするかたちではじめました。

まず始めて、その上で「どうやったら多くの読んでほしい人に読まれるか」、それを知恵を絞ってやっていくわけです。例えば、おもしろいものだとグループ会社のソウゾウを作ったときに、リリースを一切出さなかったんですね。その代わり、Wantedlyの募集を1個だけ作ったんですよ。代表の松本がポツンと立って「新会社作りました」と出しました。そうしたらそれが1日で16,000PVくらいいったんです。

Wantedlyを使っている方は16,000という数字がいかに偉大かわかると思います。20,000PVを超えてる募集って10本もないくらいだと思うんですけど、そのくらいすごく珍しいものでした。ソウゾウを作ってPRをする際、「PRってなんのためにやるんだっけ」と考えたときに、別に我々は売るものもとくにないわけですし、「会社作って今から開発します」というのが一番伝えたい内容なんですね。

「新規事業やります」だとしたら、人を採用すること以外プレスリリースすることがないということになって、「WantedlyでPRしてみる? こけるかもしれないけどやろうか!」ということになりました。これこそ、我々がよく言う「Go Bold(大胆にやろう、の意)」なわけじゃないですか。大胆にやってもいいよということでやってみて、当たったわけですが、そういったかたちで知恵を絞りながら、大胆にやってます。

「メルカン」立ち上げ秘話

吉田:メルカンって始められてどれくらい時間経つんですか?

石黒:メルカンは今年の5月から始めまして、だいたい丸6ヵ月ですね。

吉田:記事数は?

石黒:記事数は240とかですかね。

吉田:ものすごい量ですよね。

石黒:そうですね。月平均で40くらいなので、営業日で20日だとすると、だいたい1日2記事ぐらい出してる計算になります。

吉田:1日2つの記事が更新されていくというのは、ニュースサイトを除くとそんなメディアほとんどないんじゃないかなと思います。いわゆるオウンドメディアでそこまでできてるところってほとんどないという気がするんですけど、もともとこのくらいの記事量を出していこうというイメージはあったんですか?

石黒:いや、あんまりないですけど、最初は頑張るじゃないですか。そのうちみんな「メルカン」「メルカン」言ってくれて、いわゆる面接に来た候補者も「メルカン読んでます」って言ってくれます。人事グループでメルカンを担当している松尾なんかも「メルカンの松尾さんですよね?」とか言われて。そう言われる状況になっていて、言われるとうれしいから編集の企画をしたり、書きたくなるんですよね。

吉田:なるほど。「ちょっとやってみるか」という状況から「やったほうがいいよ」という状況になって、うまいサイクルに乗っていったっていう感じですかね。

石黒:そうですね。「メルカン」の前の話をしますね。いきなり「オウンドメディアをやって1日2記事書きましょう」って言われても、たぶん「えっ?」って感じになると思います。最初にはじめたのはWantedlyのブログ機能ですね。あのインタビューが最初に始めた内製のコンテンツなんです。あれをきっかけに、中で書こうよみたいな話になったんです。

書き始める時に「誰か(書くの)うまい人いない?」って話になったんです。その時は松尾は入社する前なんですけど、「なんとかさんうまそうだよ」ということで「やってみてよ」ってやったのがきっかけなんですよ。そしたらものすごい読まれたわけですね。

CTOの柄沢のインタビューがそのお姉さんに褒められたというのがあって、そんなこともありどんどん社内のインタビューコンテンツを作っていったという背景があります。

吉田:なるほど、なるほど。メルカリさんって中からコンテンツをどんどん出していくというのがすごい特徴的で、うまくサイクルが回っているなということですね。

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