2024.10.10
将来は卵1パックの価格が2倍に? 多くの日本人が知らない世界の新潮流、「動物福祉」とは
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質問者8:どうもありがとうございました。小林さんの話で「なにが起きるか将来わからないけれどがんばる」という部分が、数学の研究っぽいなと思いながら聞かせていただいたんですけれど。私自身、実は小林さんの後輩にあたる数学科、東工大の数学科なんです。
小林:本当ですか。
質問者8:今働いていて、おそらく大学時代にやられていた数学、トポロジーを使われる機会というのはなかなかないと思うんですけど、数学に未練が残ったり「もうちょっと数学やりたかったな」と思ったり、そういうことってありませんか?
小林:そうですね……私、東京工業大学という大学に行ったんですけど。働いたからもう時効かなと思うんですけど、本当に税金を無駄にして申し訳なかったと思っています。数学の才能がなくて……。私が数学科に行って学んだことは、いかに私が数学ができないかということを4年間かけて学びましたね。
でも、すごく役に立ったんですよ。なぜかというと、憲法とはまた違うんですが、数学って本当に意味がわからない。先ほどおっしゃっていたトポロジーは、私もその専門ですが、意味がわからないんですね。
わからないというのは、絵に描けないんですよ。多次元空間なので。この世って、たかだか3次元なので、次元が無限にあることとか、「無限のなかでね……」となっても、なんか「はあ?」って感じじゃないですか。具体例がまったくよくわからないんですよね。何回聞いても。なので、想像するというのが難しいんです。
じゃあ、なんで小林せかいが卒業できたのかというと……。
出口:僕も、すごい気になる(笑)。
(会場笑)
小林:この学問を通して徹底的に磨かれたのが、わからないことを聞く能力でした。
しかも、教えてくれる人たちはみんな賢いんですよ。なにがわからないかお互いわからないなかで、「『1+2=3だけど2+1=3であること』『1−2と2−1の答えが違うこと』、ここにポイントがあるのか?」と聞くと、「そうだ」と答えられる。そういう学問があるんですね。
「そうだ」と言われて、「あ、なるほど。順番がここではなにか話に……」という聞き方、刑事の取調べと同じような能力が身についたんです。これって、すごく大事ですよね?
出口:そうですね。
小林:わからないことをわかるレベルまで、1−2と2−1の話にまで落とし込まないと無限次元のことはわからないですから。そうすると、世の中はたかだか3次元というか、すごく情報量が少ないから、見えるんですよ! 見えるって素晴らしくて。数学は、だいたい見えないので(笑)。こうやって指差しながら「このボールの大きさは……」とか言えるんですよね。すごく生きやすくなった(笑)。
数学というものが直球ではないんですが、でも、そうやって聞いて理解したり、この人がどのレベルまでわかっているのかというのは、そこで磨かれて、おかげで無事に卒業できましたね。
出口:保険会社にも数学のドクターを取った奴がいるんですよ。飲みに行ってうっかりと専門を聞いたりすると、どこで話を終えていいのかわからないので、ものすごく大変な……。
(会場笑)
小林:そう。そっちのほうが難しいんですよ。
出口:聞くの、難しいんですよ(笑)。
小林:みんな三角形ってわかるじゃないですか? でも、完全な三角形は、この世にないんですよね。概念として三角形はみんなわかるけれど、完全な三角形ってないんですよ。それは紙の三角形、厚さがあったり。ちょっと哲学的な話になっちゃうんですけど。
では、三角形はまだわかるけれど、「ねえ、ちょっとバウンダリーってなに?」といった見えないものの話になると、急に「え、う~ん、足し算のことなのかな?」とか、わけのわからない解答になっちゃたり。聞くのって難しいですよね。……回答になっていますか?(笑)。
(会場笑)
出口:大丈夫だと思います(笑)。はい。後ろの方、手を挙げられましたよね?
質問者9:小林さんに聞きたいんですけど。僕、お店の前を通ったことはあっても、まだお邪魔したことは一度もないんですが。とても入りにくそうなお店に感じたんです。
(会場笑)
お客さんは、初めての方がぷらっと入る人がいるようなお店なのか……。今みたいに情報があれば「行ってみようかな」という気になるとは思うんですけど、あの店構えと立地条件でふらっと入るのは、なかなか敷居が高いのかなとは思うんです。今最初の頃と今とだいぶ変わっているかもしれないんですけど、どんなお客さんが来ている状態なんでしょうか? すごく気になるところなんですけど。
小林:なんか、すごい世の中的な質問で、ほっとしますね。
出口:はい(笑)。
小林:入りづらいのは、おそらく立地ですよね。例えば、ビルの地下1階にあって、どん詰まりであることとかを見ていただいたんですよね?
実はこれが、おっしゃっていただいたような平日のランチタイムになるとけっこう様子が一変して。大きいビルのなかにあるんですが、ランチのお店がいくつかあるので、けっこう近隣の方はもうランチを食べられる場所だと認識されて来る方が非常に多いんです。
そうなると、「知った場所に新しい店ができた」というようなハードルの低さになるので、立地的にはどん詰まりだけど、意外と人は来ます。あとは、ガラス張りであることから、女性の方にも「入りやすいお店です」と、意外と言われることがあります。
ただ、ご指摘いただいたように、平日の昼間を外すとぱたっと人がいなくなる立地ではあるんです。そういう時間帯に来ると、ちょっと時空に紛れ込んだ感じというか、「こんなお店に本当に行っていいのかな?」というような感じに急に様変わりするところがありますね。
でも、一度来ると、出口さんのように、小銭入れに割引券を入れている方が非常に多いんです。毎日来られる方とか、何週間に1回、1週間の1回という方が増えているので、人が賑わって、「うわ、あそこのお店なんだろう?」みたいな、そういう連鎖になっているのかもしれないですね。
出口:あのカードに磁石がついているんですかね?(笑)。
小林:磁石ね。お店とお客さんの(笑)。
実は最初の頃、カードに赤い線を入れていたんですよ。赤い糸をイメージしていたんですけれど、カラフルなほうがかわいいかなと思って、今はいろんな色にしています。
出口:なるほど。
質問者9:ありがとうござます。
出口:じゃあ、次の方。はい、どうぞ。
質問者10:よろしくお願いします。出口さんと小林さんのご様子がとても違うタイプの方にずっと見えていて、「共通点はなんだろう?」と思っていたんですが。やはり小林さんは食堂をされていることで、食べ物を、本当に直接人の体に入って血となり肉となり、元気になり、エネルギーになることをされていて。
出口さんは生命保険とか保険会社ということで、本当に困ったときにもちろん助けてくれますし、あとはかけていることで自分の生きる安心みたいなものも扱っておられるのではないかなと。それは行き過ぎると、月給20万円の方が6万円の生命保険をかけてしまったりみたいなことにはなりますが。
そういう、直接的に人の生活とか命、身体的なこと、あとは気持ちだったら、本当に元気とか安心とか、そういったものをわりと直接触れられている、関わられているお仕事じゃないかなと感じたんです。そういうことに関して、「どういったお気持ちかな?」みたいなことをちょっとうかがえれば。
出口:共通項を言えばいいんですね?
質問者10:あ、はい(笑)。
小林:違うんじゃないですか?(笑)。
出口:違います?(笑)
小林:なんか、元気とかじゃないですか?(笑)。
質問者10:すいません(笑)。なんかその、本当に1人ひとりの命に直接関わっているなぁということを、日々どのように思われてやってくださっているお仕事なのかを、ちょっとおうかがいしたいなと思いました。
出口:生命保険会社に入ったとき、よく先輩が「聖業だ」と言っていたんですよ。でも、僕はすごくおかしいと思って。僕はわりと実務的なので、役に立たない仕事はなくなるはずだと思っているんですよ。だから、世の中にある仕事はすべて同じように尊いので、順序はないと思っているんです。
進化論ってあるじゃないですか。人間が万物の霊長と、僕が小学校のころはそう教えられました。ですが、今は明らかに違うんですよね。すべての動植物は同じ程度に最高に進化しているんですよ。だから、世界は全部フラットなんですよ。
ほとんどの人は偶然の流れで仕事を選んでいます。でも、どんな仕事でもフラットで、それは1つのご縁があったんだから、やっている以上は一所懸命やるしかないと思っていますよね。そんなところでいいですか?
小林:すごく似ているなと思いましたね。聖なる業とか、あとは飲食店という意味で未来食堂も「元気になる」「栄養満点の食事」「心が温まる食事」と言われるんですけれど、正直言、まったく興味がないんですね。まあ、言ってくださるのは「ああ、そうですか、そうですか」という感じなんですけれど。
自分が大事にしていることが、元気になる……。例えば「人を元気にしたい食堂です」というと、なんか響きがいいじゃないですか。「そういう食堂はすばらしいな」「今の日本に必要だな」と。それも担っていくと思うんですけれど。
元気になるためには、元気じゃない必要がありますよね。理想論でいえば、誰も元気にならない、でも、すでに元気であればいいじゃないですか。だから、別に元気になるために元気じゃない人を作るのが許せないんですよ、私は。
例えば「家庭的な料理」と言われるたびに、どこかとの境界を作っているようなイメージがあるんです。「未来食堂は安全だけども、ほかの飲食店は安全じゃない」とか、そういう言い方をされるのがすごくつらいですね。お医者さんと患者と一緒ですよね。
出口:さっき言われた、プラスを作るんじゃなくて、余計なマイナスを取るという考え方にも近いですよね。
小林:そうですね。マイナスの人がたくさんこの世の中にいるように考えるのは……。もちろんいるので、無視はできないし、そのために日々がんばっているけれど、そこばかり見るような、そして自分はヒーローだとかいうような考え方、聖業だというのは、ちょっとずれていくんじゃないかなと思ったりしますね。
出口:最初に言われた、僕が勝手に思っている共通項は、たぶん平均よりちょっと合理性が強い部分かなと思っているんですよね。
僕はすごく感情型の人間で、好き嫌いも激しいので、ぜんぜん理論型の人間だと思いませんけれど。でも、できるだけいつも「数字、ファクト、ロジック」と言っています。合理性を大事にしたいというところはちょっと似ているのかなと、勝手に思ったりしていますけれど。それでいいですか?
質問者10:はい。ありがとうございます。すごく気持ちがいいご回答をいただいてうれしかったです。ありがとうございます。
小林:よかった、よかった。
出口:じゃあ、次の方。
質問者11:昨日、未来食堂に、ランチタイムに行って、お祝い定食をいただきました。
小林:ありがとうございます。昨日、お祝いステーキにしたんですよ。今日のトークショーをお祝いして。
出口:あ、行けばよかったですねぇ。
質問者11:おいしいステーキでした。
小林:そうです。
質問者11:ごちそうさまでした。ありがとうございました。『未来食堂ができるまで』を読ませていただいて。あと出口さんは『50歳からの出直し大作戦』を読ませていただいて、2つの本ともとてもいろんな驚きとか感動がありました。
そのなかで小林せかいさんに質問なんですけれども、「まかない」「あつらえ」、それから「ただめし」「さしいれ」、この4つのシステムというのは、今までにそういう食堂で取り入れたことはないことだと思いました。
この4つのシステムのなかで、一番ヒットしそうだと思われたのはどれか。実際やってみてヒットしているのはどれか。もしずれているのであれば今後どうするのか。というのをお聞きしたいです。
あと、本のなかに出ていました学生時代。家出をされたり、ゴールデン街で働いたり、いろいろ経験されていたようなんですが、そのときのご両親の対応はどんな感じだったのかというのをお聞きしたいと思います。お願いします。
(会場笑)
小林:けっこう盛りだくさんでしたね。
出口:そうですよね。
小林:さすがお祝い定食、食べただけありますね。
(会場笑)
理想と実際のずれなんですけれども、まさにズバッとありまして。最初は「あつらえ」のための食堂だったんです。「だった」と言いたくないんですけど。「あつらえ」をする……事業計画書、実は本にも載せているんですけれど、「『あつらえ』とはなにか?」「なぜ『あつらえ』ができるのか?」「ほかができなくて未来食堂でできる」「『あつらえ』をするとこんな利益がある」。「あつらえ」を中心にすべてを組みあげていたんです。
ふたを開けてみると、うまい具合に評判がよく、かつ、みなさんが注目してくださるのは「まかない」のほうだったんですね。もちろんこれも大事だったので、きちんとまかないするからには、ピンクの袋など、いろんなことはあるんですけれど。
「あつらえ」って意外と、実はこれ2冊目の本にくわしく書いているんですけれど、「あつらえ」のために「あつらえ」をしたいという方の欲求を聞くのがけっこう難しいんですね。
出口:なるほど。
小林:本当に体調が悪くて、「今日ちょっとごはんが食べられなくて、お粥が食べたい」って言われたら、絶対すぐ作るんですけれど、なかなか本を読んで楽しみに来てくださる方というのは、いい意味で「ファンだからお金を落としたい」「『あつらえ』をやってみたい」という欲求から来ちゃうと、なかなかそういうアミューズメント向けのところをあまり自分の意識がいっていなかったので、難しかった。これこそまさに「やってみて気づく」というところかもしれないですね。
出口:でも、出たばかりなのに2冊目が出るんですか?
(会場笑)
小林:あ、そうですね。ちょっと話が(笑)。
出口:すごいですね。
小林:実は今日のおみやげとして、お店にもまた来てほしいので1食無料券をおつけしようかなと思っていて……あ、出口さんにもあげますので。
出口:ありがとうございます。
(会場笑)
小林:あとはそこに「2冊目で実はこういうことを書きました」というのを、手紙じゃないですけど、書いて入れているので。
出口:早く読みたいですねぇ。
小林:ありがとうございます。ちなみに、質問がまだ1つ残っています(笑)。
出口:あ、はいはい。
小林:両親の対応という。
警察に届ける必要があるのかというのは、両親は話したらしいんですけれど。「まあ、こういったかたちで家を出て行くのは、警察に届けてもあまり意味がないんじゃないか」という父の判断があって、届けてなかったらしいですね。
でも、私はもう警察に出ていると思っていたので、夜はあまり歩かないようにしていました。あと、東京にすぐに出たんですけれど、大阪に帰るときはちょっと。どうしても住民票を取りにいかないといけないことがありまして、そのときは、ちょっと覚悟しましたけどね。
もう張り込まれているのかなと思っていたんですけど、意外とすっといけたので、「警察、来てないんだ」と思って。後から聞いてみたら「警察には言わなかった」と言われました。回答になっていますかね?
質問者11:あの……大らかなご両親だったのかなと読んだときに思ったので、そのへんを……。
出口:僕からひと言言えば。もちろんゼミ会ってそんなにありませんから、小林さんのお父さんとはそんなにたびたびお会いしているわけではないんですけれど。例えば「そういうことがあって、心配しているんだよね」という素振りはまったくなかったですね。ふだんと同じようにいつも淡々とされていました。
小林:一度だけ接触したんですけれど。そのときは「もう追わないから、保険証だけ渡したい」ということで会いましたね。で、ちょっと雑多なところを指定して、保険証だけもらってすぐに消えたんですけど。本当に保険証だけ渡して帰っていきましたね。
(会場笑)
出口:逆に僕もこの本を読んでびっくりして。僕も子どもが2人とも女なので、もしそんなことになったら、僕、小林さんのお父さんですけれど、お父さんみたいに淡々とできるかなと。でも、当時まったくその素振りも感じませんでした。
質問者11:ありがとうございます。興味深かったです。
小林:よかったです。
出口:じゃあ、次の方。
小林:よかった。意外と質問あってよかったですね(笑)。
出口:よかったですね(笑)。
(会場笑)
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