2024.10.01
自社の社内情報を未来の“ゴミ”にしないための備え 「情報量が多すぎる」時代がもたらす課題とは?
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田中美和氏(以下、田中):では、さっそくですが、小安美和さんにお話いただきたいと思います。「“自分らしい”リーダーシップとは?」。小安美和さん、どうぞよろしくお願いいたします。みなさん、拍手でお迎えください。
(会場拍手)
小安美和氏(以下、小安):みなさん、こんばんは。
お仕事帰りのお忙しいところ、お集まりいただきまして、ありがとうございます。私からは、「"自分らしい"リーダーシップとは?」というテーマで、お話をさせていただこうと思います。
ちなみに、今日いらっしゃっている方のなかで、すでに管理職をやっていらっしゃる方は、どのぐらいいらっしゃいますか?
(会場挙手)
小安:はい。では、「これから管理職になるかもしれない」と思っていらっしゃる方は、どれぐらいいらっしゃいますか?(笑)。
(会場挙手)
小安:ありがとうございます。すでに管理職をやっていらっしゃる方、それから、これからという方もいらっしゃると思うので、いろんな角度からお話をさせていただこうかなと思います。
ちなみに、講演タイトルに「私がIMD(注:スイスのビジネススクール)のプログラムで学んだこと」と書いてありますが、本日はIMD北東アジア代表の高津(尚志)さまがいらっしゃっています。
(会場拍手)
小安:よろしくお願いします。コンテンツの中身に関しては、秘密の部分もございますので(笑)、あまり詳しくお伝えできないことも多いのですが、私が何を感じたかということを中心に、シェアしたいと思っています。
こういったセミナーは、「私はこんなにがんばってきた」「私はこうやってここまで成功した」と成功体験をお話しするケースも多いと思いますが、私のケースは『しくじり先生』です。
(会場笑)
小安:『しくじり先生』、テレビでご覧になった方もいらっしゃると思うんですけれど、実は私、大好きで、『しくじり先生』を見ながら泣いちゃったりするんです(笑)。
今日は、私のしくじり体験とともに、みなさん、ぜひ泣いていただければと思っております。そこから、反面教師として学んでいただければと思います。
まず自己紹介ですが、私の自己紹介は非常に長いです(笑)。というのが、配偶者の海外転勤で2回キャリア断絶をしておりまして、その度に、執念でカムバックしてます(笑)。
(会場笑)
小安:直近、リクルートに11年おりましたが、リクルートに入るまでに6社。リクルートが7社目ということで、履歴書だけ見ると「こらえ性がないんじゃないか?」「辞め癖があるんじゃないか?」と言われることもあります。
が、実はすっごくがんばっていて。最初の5年間、新聞社で働いた後、配偶者の転勤でシンガポールに行った際は英語もできないのに必死で就職活動をして仕事を見つけました。シンガポールはジョブホッピングといって、いい条件の仕事があればどんどん変わっていくというマーケットなので、その後、2回転職しました。
その後、帰国し、業務委託などをやりながら、リクルートに入社。七転び八起きの人生です。
そんな七転び八起きのキャリア人生なので、リクルートに入社したのは33歳です。当時では非常に遅い、転職35歳説があるとしたらギリギリでした。「もう無理かもしれないな」と思いながら、執念で就職しています。
33歳でリクルートに入った時に、すでに私の上司が30歳ぐらいの課長だったので、私はこのまま「(管理職ではなく)ハイプロフェッショナルとしてやっていくのかな」と思っていました。
それが、ひょんなことから37歳で課長になり、40歳ぐらいで部長になって、42歳で事業会社の執行役員というようなキャリアを積ませていただきました。
ただ、キャリアを積むなかで、どうしても言語化できないモヤモヤがありました。とても仕事は楽しい、やりがいもある。だけれど、「なんだか超えられない壁がある」ということを感じていましたので、会社を辞めて、スイスのビジネススクールに行ってきました。
グローバル視点で女性エグゼクティブにはどんな壁があって、それをどんなふうに乗り越えているのか。そんなことを学ぼうと、6月にスイスのIMDに行きました。そして、これからは女性のキャリア形成や女性の就労支援をやっていこうと思っています。
本題に入りますが、「世界でもっとも管理職になりたくない? 日本の女性たち」とスライドに書きました。ファクトとして今、日本において管理職、管理的職業に従事している女性の割合は12.5パーセントです。
諸外国と比較し非常に低い。かろうじて、韓国に勝っているという状態ですが、それ以外の国からは、非常に低いレベル。このあたりは、みなさんもご認識はありますか?
さらに、「世界でもっとも管理職になりたくない」国なのではないかと。これはデータがなかったんですが、グローバルの女性リーダー育成の権威であるギンカ・トーゲル先生は『女性が管理職になったら読む本』の中で、日本で驚いたことがあったとしてこう書いています。
「日本の女性の多くが、そもそもリーダーになりたいと思っていない。そもそもリーダーになりたいと思っていないことが課題です」と。
ギンカ先生は、これまでヨーロッパ、アジア、中東、アメリカで、女性リーダー育成のための支援を行ってきましたが、「どの国でも優秀な女性たちの多くはリーダーになりたい。より大きな責任を担いたいと願っている。日本の女性のように『そもそもリーダーになりたいと思っていない』という声は、あまり聞いたことがない」ということをおっしゃっています。
ギンカ先生は、「女性自身がリーダーになりたいのに、女性リーダー比率が低いことが問題で、そこに対する支援をこれまでやってきた」と言っています。それが、「日本においては、リーダーになりたいという意識が可視化されていない。そこからやっていかなきゃいけない」というようなことを、おっしゃっています。
ちなみに、「私はリーダーになりたい」と思っている人、手を挙げてください。
(会場挙手)
小安:4分の1から3分の1ぐらいですかね。では、「リーダーになってもいいよ」と思っている人は?
(会場挙手)
小安:若干とまどうという。これは、だいたい日本で起きる雰囲気です(笑)。
(会場笑)
小安:ちなみに、私はどうだったかというと、管理職になりたくなかった女性の事例として、日経新聞に取材されたことがあります(笑)。
(会場笑)
小安:たいていこういうセミナーだと、「私はこういうふうに地道にキャリアを積んできて、目の前のことを一生懸命やっていたらアサインされました」という話が多いかと思うんですが、私はずっと躊躇し続けてきました。
それで、2013年に日経新聞の「女性登用の動きが広がる一方で、尻込みする女性も少なくない」という記事で、尻込み女性として取材をされました。
ちなみに、この記事によると、リクルートで当時、2012年末のデータですけれど、「将来高い役職を担いたい」と答えた男性は73パーセントいたんですけれど、女性は39パーセントだったという数字があります。
最近の日経新聞の記事で、「女性で管理職になりたいという人が60数パーセント」という数字がありましたが、「実感値より高いかな」ということをおっしゃる方が多いと思います。
こういうオープンな場で「(管理職に)なりたいですか?」と聞くと、常に20~30パーセント止まりかなと思います。
私自身は、なぜ管理職になりたくなかったかについて、「家庭を優先したかった」と答えています。実は2回目の結婚で、夫を置いて単身赴任で上海に行っていたんですが、親が泣いたんですよね。「もう離婚しないでくれ」と(笑)。
ですので、「家庭を大切にしなきゃいけない」という思いがありました。年齢的にも、「そろそろ子供を産みたいな」という思いもあったので、「管理職になりたいですか?」と聞かれると、「いやいや、私は……」というようなことを言っていました。
では、そんな私がどうして管理職になり、リーダーにチャレンジしようと思うようになったかというと、2つ、転機がありました。1つが、女性ネットワークの「J-Win」(ダイバーシティ・マネジメントを支援するNPO法人)。
200人の女性が集まるネットワークの定例会で、大企業の役員を務める先輩女性のお話を聞く機会があったのですが、当初は共感できなかった。
「私は、別に偉くなりたいわけじゃないし」と思ったんです。
「……でも」って、ここに書いてありますね。「あの方にできて、私にできないのってなんでかな?」と。(心の)根っこの根っこの根っこで、実は思っていました。
そこで壇上に上がっている人が男性であれば、「いやいや、別に関係ないし」となるんですけれど、同じ女性で高い役職を担っていて、ものすごく生きがいをもって仕事をされている姿を見た時に、「私にできない理由はなんだろう?」みたいなところを考え始めたんです。
もう1つの転機は、会社のリーダー研修を受けた際に「30年後の会社のビジョンを書きなさい」というお題が出たんです。「無理! 自分の30年後もわからないのに、そんなもの書けるわけない」と思いました(スライドの写真を指して)……ちょっと若いでしょ? 当時の私。
(会場笑)
小安:この時、もう40歳で、子供も産まなきゃいけない、もうギリギリだと思っていた時期だったので、「30年後の会社のこと考えている暇があったら、自分の人生を考えたい」と、正直思っていました。
ですが、「私、それでいいのかな?」と思いまして、なにをしたかというと、「私は、いったいどう生きていきたいんだろうか。どうありたいんだろうか」ということを、1人ホテルにこもって、「1人合宿」をしました。これは4年前のことです。
自分の30年後がわからなくて会社のビジョンを書けないのであれば、自分の30年ビジョンを書いてしまおうということで、1泊2日、1人で自分に向き合って、ウンウンうなりながら2枚のパワポを作りました。
私自身、さっきのキャリアにあったように、2回キャリア断絶していて、その度にゼロから就職活動しなければいけなかった。そして、国をまたいでいるというのもありますし、結婚というタイミングということもあるので、過去のキャリアを見ていただけないケースが多かったんです。
どんなに「過去にこういうことをやったんです」と言っても、シンガポールにいた5年間は属性がいわゆる「駐在員の妻」だったため、ブランクとしか見ていただけず、悔しい思いをしました。
男性であれ女性であれ、やりたいという意欲だったり、やれる能力があるのであれば、働くということを通して、人生を主体的に築いていく社会を実現したいと。自分の経験も踏まえて、そんなふうに思ったので、そのことをビジョンに書きました。
具体的になにをするのかというと、さまざまな選択肢をつくるということ。さらに、日本だけじゃなくグローバルにおいて、男女の機会格差をなくしたいと、今、格差があるほうの女性の能力開発に取り組みたいということを書きました。
これは、一晩で書いたものなんですけど、実はそこからまったく手を入れずに、今も迷うとここに立ち戻るものになっています。
さらに、もう1枚パワポをつくったんです。それはvisionをどんな時間軸、どんな優先順位で実現するのかという30年のマイルストーンを、キャリアとライフに分けて書いてみました。
これは私のやり方なのですが、おすすめです。女性はライフイベントが読みにくいので、目の前のチャンスを自分から取りにいかない、躊躇するみたいなことがきっと多いと思うんです。
が、30年後まで時間軸を伸ばして書いてみると、意外と「あ、できるじゃん」と。時間をズラしてやってみると、「やりたいと思っていることが、もしかしたら全部実現するかも」という思いになりますので、機会があれば、ぜひ長い視野でキャリアに時間軸を引いて書いてみるということをやってみるといいかな、と思います。
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