2024.10.21
お互い疑心暗鬼になりがちな、経営企画と事業部の壁 組織に「分断」が生まれる要因と打開策
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司会:それでは、向さん、よろしくお願い致します。
向千鶴氏(以下、向):よろしくお願いします。座らせて頂きます。私は軍地さんのことが大好きで(笑)。今日は壇上でもお話できるのがすごく嬉しいです。
今日、軍地さんは『ヌメロ・トウキョウ』のエディトリアルディレクターと書いてありますが、これは1つの肩書きであって、今回この30分が終わった後に皆さんに感じてほしいのは、ファッションという仕事の幅の広さ、できることの幅広さ、本当にファッション業界っていろんな……、あ、タイトルに書いてありましたね。多様性があるんだなってことを感じてもらいたいんです。そんな前置きがもったいないので、早速、お呼びしたいと思います。軍地さんお願いします。拍手でお迎えください。
(会場拍手)
軍地彩弓氏(以下、軍地): ありがとうございます。何か素敵な紹介をいただいて。
向:いえいえ。いろんなところでご活躍で。
軍地:いえいえ。
向:多分たくさん話があると思うんですけど。では早速始めさせていただきます。
軍地:はい。
向:最初のスライドに進めていただいていいですか。ちょっと準備していただいて。
軍地:あの~。
向:何を話してもらおうかというところですよね?
軍地:そうなんですけど。まず私が歩んできた道って、私も結構な年なんですけど、ファッション業界で雑誌の編集やって、四半世紀経ってるんですけど。私が経験した四半世紀っていうのが、紙の変遷とデジタルの変遷が劇的に変わった時代なので、それをお話しながら、じゃあなぜ私がファッションの業界に今、身を置いてるのかっていうのを話ができればなと思って。ちょっとした自分ヒストリーを作ってきました。
向:それを通じていくと、皆さんが経験してない時代かもしれないですけど、こんなふうにファッション業界って実は流れてきたんだなってことが、メディアだけじゃなくてわかるという感じですね。
軍地:そうですね。
向:わかりました。じゃあ早速、具体的に。資料をご用意いただいているので。あのでも、おうかがいしていいですか? 皆さんと同じ年ぐらいの頃の軍地さんって、どんな感じでした?
軍地:(笑)。
向:思い出していただいて。20歳過ぎた頃って、何を目指してたんですか?
軍地:私は大学に1浪して入って、中央大学ってところに入ってたんですけれど。ちょうど20歳ぐらいの頃っていうのは、まだ大学にいたんですけれど、大学時代から就職するとなったときに、メディアの仕事はやりたいと思っていました。だけれど、まったく高嶺の花だったんですね、その当時。なのでできないと思ったので、まず大学でできることから始めようと思ったのが、ジャーナリズム研究会っていうサークルに入ることだったんです。
そのときは何となく新聞に行きたいなとか、何かこう、本の世界に入りたいなとは思ってたんですけど。とにかく就職で出版社に入るって、今でもそうですけど、すごい狭き門で。それよりも大学でやりたいことやって、就職は就職で考えようかなと思って。それでジャーナリズム研究会っていうのに入って、そしたら100円で作ってる雑誌の編集長に。
向:いきなり?
軍地:人がいなかったんで、お前やれっていうので、編集長をやって。で、やりつつ、リクルートってところでバイトをし始めたんですね。そのリクルートでバイトしたときに、たまたまそこがフリーペーパーを作ってる部署だったんです。今でいうフリーペーパーって普通にビジネスモデルとして成り立ってるんですけど、その当時は、もう本当に画期的っていうか。学生にフリーペーパーを。
向:ビジネスモデル自体が新しいですよね。
軍地:そうですよね。そこに企業広告、就活の、就職情報のスピンオフとして出てたので、就職情報で企業情報とかをフリーペーパーで書いてて。で、それの編集の手伝いをしてたら、まさにここからわらしべ長者なんですけど、講談社にいる方で、フリーライターやってた人がいて、ちょうど21、2歳のときに「Checkmate」っていう雑誌で「お前フリーライターで1回仕事しないか?」って言われて、もう学生のときから実はこの仕事を始めてるんです。
向:実は1回も就職はしてないんですよね。
軍地:してないんです。就職してるのは、これ年表見にくいかな。
『ViVi』があって、『GLAMOROUS』があって、コンデナストっていう会社は『VOGUE』出してる会社ですけど、ここに入ったとき、どうしても編集長であるためには社員にならなきゃいけないっていうので、1年半だけOL生活をしてですね。後はずっと最初からフリーランスなんです。私、就職活動の失敗組なんです。なので、大失敗組でこの皆さんの前で話していいのかな(笑)。
向:大学を卒業して、最初は企業には入らずにいきなりフリーランス、ということを自分で選んだところもあるけれども、同時に流れでそうなった、みたいなところですか。
軍地:いやもうね、落ちまくったんです。講談社も集英社も。特に集英社を、今言うとあれですけど、最終で落ちちゃったんです。そうすると、だいたい出版社って遅いんで、そのときはたと気づくと、もう終わってるんですよね、就職活動が。なので慌ててちょこちょこ受けたんですよ。繊研新聞とか受けに行ったりしてた。
向:ライバル誌。
軍地:そう。なんだけど、そこも落ちて。で、どうしよう、どうしようって1月ぐらいになったときに先輩が、そのときもう『Checkmate』で結構稼いでたので、「お前このままフリーランスでやればいいじゃねーか」って。
向:へぇ。
軍地:今でこそフリーランスって結構それなりのポジショニングで、「自由でいいですね」とかって言われるんですけど、当時のフリーランスなんて、親からみれば「お金出して大学行かしたのに、就職しないとは」とか。
向:泣いた? ご両親は。
軍地:そうですね、母親が泣くやら騒ぐやら。就職課から電話がかかってきて、「お宅の娘さんは就職ができないんですね」みたいな。本当にこう、欠落した人みたいな扱いになって。「いや、フリーランスという生き方があって」とかって言っても全然。そのフリーランスという生き方があってというのも、ずっと『ViVi』のときも結構、何だろう、フリーターと同様みたいに言われてたので。今となればフリーでよかったなと、思うんですけど。
向:そこから、びゅーっと飛んで今、すごくたくさんの、本当にいろんな企業ですとか、もしくはそれこそ政治系のお仕事ですとか、さまざまなお仕事をされてますけど、ここに至るまでの過程をちょっと振り返っていただきつつ、業界の流れを振り返っていただきたいんですけど。最初、『ViVi』が長かったんですね。85年から約20年間、フリーランスとして『ViVi』に関わった。
軍地:そうですね。
向:これはどんな時代でしたか。この頃の。
軍地:この頃ね、バブル。バブルって皆もう知らない。今何だっけ、YouTubeで有名な何とかちゃんって、バブルのね。
向:わからない(笑)。
軍地:いるの、何かそういうかわいらしい方がいますよね。ああいう時代ですよね。眉は太くて、肩パットしてっていう。このとき書いてた私、原稿ですごい覚えてるんですけど、「49,800円激安スーツ」って書いてたんですよ。びっくりして。今、49,800円なんて月額で出せるようなお金じゃない。下手したら年間の消費額かもしれない。
向:まずない感覚かもしれないですね。
軍地:そうです。バブってたんです、まさに。それを金額的にも全然感覚も違うし、すごくこう、欲望の時代ですよね、80年代。なので、男の人はもう絶対車を買って、女の子をそこに乗せて、クリスマスはどこかのホテルで夜景を見て。
向:レストランで。
軍地:そう、デートしようみたいなことが目標なので、やたらもう消費、消費、消費の時代ですよね。ユーミンを聞きに行くために苗プリをとって、その苗プリとるためには9月に。
向:苗場プリンス。
軍地:苗場プリンスですね。あまりに夢のような話なんですけど。で、電話して、その予約を取るために列ができてるんですよ、そのとき公衆電話しかないから。ウケるでしょ。そういうふうに消費にすごいアグレッシブな人たちが今この親の年代になってるんですよ。
向:確かに。わかります。
軍地:そうですよね、40、50歳ぐらいになってるんですよね。そのときに、そのバブル時代もやって、とにかく私、『ViVi』に長くいるってことは、常に22、3歳の人とずっと話してるんですよ。それでだんだん目の前をいろんな人が通り過ぎていくんですけど。その後に来たのが安室ちゃんブームとか、ディーヴァという人たちが出て、彼女たちになりたいっていう女の子たちが出てくるんです。アムラーだったりとか。そのアムラーが変化していってギャルっていうのが出てくるんですね。
これ書いてますけど、雑誌でいうと赤文字っていうんですけど、『ViVi』って。もともと文字が赤かったんです、今ピンクですけど。今ピンク文字とは言わなくて。で、赤文字って、だいたい同率で、『JJ』が一番先駆者で『CanCam』があって、『ViVi』は本当最後発で始めたんです。このとき同時にストリート誌として、90年代『Olive』があったりとか、宝島さんが出してる『CUTiE』とか『mini』とかちょうど原宿が盛り上がってきてる時代と同時並行していくんですけれど。
そういうギャルブームがあって、ギャルブームっていうのは、109がちょうど2000年に復活するんですけど、それまではただの駅ビルだったんです。すっごいダサい店しか入ってなくて。109に初めてココルルっていうブランドが入って、そこからmoussyが生まれて、EGOISTができてっていう。
みんなは多分その前に生まれてるのかな、90年何年生まれだっけ?
そういう時代があったんです。そのギャルブームとかを『ViVi』で作ってたんですね、ずっと。そのギャルブームをやった後に、今度そのギャルと言われていた人たち、特に安室ちゃんが30歳を超えるぐらいの年齢になってきて。それまで『ViVi』っていうのは最初は『JJ』の真似っこだったんですよ、一番最初って。今、想像つかないと思うけど。
『JJ』がお譲さん系だとすると、『CanCam』が女子大生系なかんじで、モテ子とかモテ女とかっていって。で、『ViVi』はそこからわかれてカジュアルを中心としたファッション誌にしようって。それが2000年ぐらいだったんです。それからちょっと経って2005年ぐらいから、どうもそのギャルって言われてた人たちが、ずっとカジュアルをやりたいって言い始めてて。それまでは、『JJ』って光文社って会社がやってるんですけど、『JJ』のように『CLASSY.』ってあって。
向:卒業していくんですね。
軍地:卒業してどういうルートを行くかというと、いい女子大生になって、例えば何だろうな、上智短大とか跡見短大とか、奥さんになるのに相応しい学校ってあったじゃないですか。だからそこから今度OLをやって、2、3年腰かけOLやって、その後に専業主婦になるっていう黄金のストーリーがあったんです。
向:女性の生き方みたいなところで。
軍地:その頃、2005、6年ぐらいから、いやそうじゃなくて、女の人もちゃんと仕事をまっとうして生きていく生き方があってもいいんじゃないか。男の人と結婚して、専業主婦ということで、自分が社会から降りなくてもいいんじゃないかっていうことを言ったのが、アラサーブームって書いてあるんですけど。
向:(スクリーンを見て)真ん中の青い丸の部分。右から4つ目ぐらいですね。ちょうど『GLAMOROUS』に行く少し前、移るぐらいのタイミングですかね。
軍地:はい。そのアラサーブームっていうのを作ったのが『GLAMOROUS』で、それは創刊から1から立ち上げて、まああのここでの功績っていうか、『GLAMOROUS』自体が、すごく皆さんいまだに衝撃的だったって。
向:衝撃的だったんです。当時、その世界観が『GLAMOROUS』は本当に軍地さんが作りたいものを作った1冊みたいな、それまでの『ViVi』とは違ったスタンスだったと思うんですけど。私から見ると、例えばそのラグジュアリーっていわれるようなブランド、ステータスがあるブランドは、こういうふうに表現しなければいけないですよ、みたいな暗黙的なルールみたいなところにもぐいぐい踏み込んでいって変えていくというか。だからそのモードみたいなものを、高いところから引きずりおろしたっていうと言い方はちょっと悪いんですけど。
軍地:民主化って言ったんですね。
向:民主化ね、うん。モードをラグジュアリーを民主化した、本当にまったく新しいタイプの雑誌のスタートだったんですね。結構かなり衝撃的でした。
軍地:ありがとうございます。
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