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ナレッジの越境時代 ~ビザスクがテクノロジー×イノベーションで創る未来とは~端羽英子(株式会社ビザスク 代表取締役CEO)(全5記事)

いきなり新規事業の担当に…何から始めたらいいかわからない ビザスクCEOが実践、動き出しながらビジネスモデルを探るアプローチ

グロービス経営大学院が開催したテクノベートセミナーに、ナレッジプラットフォーム「ビザスク」を運営する株式会社ビザスクの代表・端羽英子氏が登壇。「ナレッジの越境時代」をテーマに、端羽氏の起業のきっかけや、早く、多くの“打席”を経験することの重要性などを語りました。

ビザスクのCEO・端羽英子氏が登壇

山中礼二氏(以下、山中):今日はお忙しい中、お時間をいただきましてありがとうございます。

端羽英子氏(以下、端羽):よろしくお願いします。

山中:さっき聞いてすごくびっくりしたんですが、今、司会進行を勤めた弊社スタッフが、端羽さんがグロービスの講師をやってくれていた頃の受講生だったっていう(笑)。

端羽:そう(笑)。

山中:かつて端羽さんはグロービスの講師としてカネ系の科目を教えてくださっていた頃があって。その時に受講生だった弊社スタッフが端羽さんから教わっていたということで、すごく羨ましいです。

端羽:いやいや、知見を活かして人が活躍するサービスを作りたいなと思っていろんなビジネスを考えていた時に、グロービスのように知見を持つ方々が先生で登壇するところもおもしろいなと思って、Webから「先生をしたいです」と履歴書を送りました。グロービスのプログラムにかける情熱を知った時に、「こりゃ大変だ」と。

山中:(笑)。

端羽:「先生になるのは大変だ」と思いまして、知見を1時間のインタビューというかたちでマッチングするビザスクのモデルに行き着く1つのきっかけになりました。

山中:「知見」というキーワードで、グロービスとビザスクさんがつながっているんですね。

端羽:そうですね。

山中:今日はぜひ、いろいろなお話をおうかがいしたいと思います。まず、今聞いている方の中にはビザスクのビジネスの内容をあまり詳しく知らない方もいらっしゃると思うので、どういうサービスなのかを教えていただけますか。

端羽:我々は「知見と、挑戦をつなぐ」をミッションにしています。このミッションの下、今グローバルで60万人を超える、ビジネス知見をお持ちの方々が「エキスパート」としてご登録いただいています。

ビジネス側でいろいろな会社さまのさまざまなニーズに(応えるために)、我々は「スポットコンサル」と呼んでいますが、1時間のインタビュー(をしています)。

それから、数ヶ月〜1年ほどの伴走支援というかたちでプロジェクト型でお手伝いさせていただいたり、オンラインのBtoBマーケティング調査やサーベイのお手伝いをさせていただいていたり、さまざまな手法を開発しながら、個人が持つビジネス知見を企業のニーズにつなぐことをしています。

より効果的なマーケティングへのニーズの高まり

端羽:企業にどんなニーズがあるかというと、例えば「新規事業を考えていて、この業界に対して、より深いニーズを知りたい」という時に、業界の方にインタビューをしたいと思ったとします。そういう人が知り合いにいらっしゃらなかったり、知り合いだと「良いアイデアだと思うよ。がんばったらいいと思うよ」と、良いことしか言ってくれない時もあります。なので、知り合いじゃない方への業界インタビューをつないだり。

あるいは、「このサービスをぜひWebサービスにしたいんだけど、自社でWebサービスを立ち上げたことがない」という時も、ノウハウを学ぶ1時間のインタビューをしたり。または、「サービスが立ち上がるところまで支援をしてほしい」という方には、中長期間プロジェクトのお手伝いをさせていただいたりしています。

以前から新規事業のニーズが非常に多かったんですが、最近は既存の事業も含めて、より効果的なマーケティングを目指すところも増えています。今までは展示会でお客さまのフィードバックをいただいていたけど、コロナがきっかけで展示会ができなくなり、代替のマーケティングとして、いろんな方にインタビューを行うことが増えました。

テキストを作って、自分の知見をたくさんの方にクラスルーム式でお伝えするのは、できる方が限られるところがありますが、自分が詳しいことに関する質問に答えるインタビューはやりやすい。

「知見を、挑戦につなぐ」と言うと、知見を持つ人が挑戦したい人に情報を提供するだけの、一方向的な関係になる印象があります。しかし、実際には、挑戦に取り組むことで知見を持つ人も学び、知見を得ることで挑戦したい人も学ぶことができる。つまり、「知見と、挑戦をつなぐ」とは、双方向の学びのプラットフォームであり、それを実現するためにスポットコンサルを運営しています。

山中:知見を持つほうも、質問してもらうことによって知見を引き出して、「そうか。こういうパッケージになるんだ」と、自分の知見の価値に気づくことができるわけですね。

端羽:そうですね。

起業のきっかけは「解決したい社会ニーズがあった」ではない

山中:今では60万人というものすごい人数が参加しているわけですが、端羽さんはどういうきっかけで起業して、ここにたどり着いたのでしょうか。最初からこのビジネスモデルを考えていたんでしょうか?

端羽:最初はとにかく起業をしたかったんですね。よく、「解決したい社会ニーズがあって、そのためには起業しかなかった」というタイプの起業家の方もいらっしゃると思うんです。

社内でいきなり新規事業の担当になって、「何の事業を始めたらいいかわからない」という方も我々のお客さまにいらっしゃるんですが、私もまさにそのパターンでした。社内の新規事業ではないですが、自分がとにかく1回起業したいと。そこから「どんなアイデアがあるんだろう?」と探し始めたんですね。

でも初めての起業だったので、自分が「あったらいいな」、自分が「使いたいな」と思うサービスにしようと思ったんです。まず100個アイデアを出そうと。例えば前職のストレスで当時肌が荒れていたので、美肌情報が集まるサイトとか、家事が嫌いなので家事代行サービスとか。

いろいろ考えたんですけど、その中でも「働き方」に興味があるなと。私は新卒1年目で子どもができて、子どもがいながらどうやって自分のキャリアを作っていけるかが1つのテーマでした。

あと、自分がビジネススクールを卒業するタイミングで父が引退したので、「仕事が大好きでまだまだ働ける人がフルタイムの仕事を終えた後の時間がもったいないな」と思ったのもあった。「働き方って、もっとなんとかならないのかな?」という興味があったんですね。でも、それがなかなかビジネスモデルにならなくて。

いろんな本を読む中で、ちょうど『シェア 〈共有〉からビジネスを生みだす新戦略』(レイチェル・ボッツマン、ルー・ロジャース著、NHK出版、2010年)という本に出会いました。まだその頃って、UberやAirbnbが日本でそんなに話題になっていなかったので、初めてそういったサービスがあることを知って、「個人が売り手になれる時代が来たんだ」と。

今までは個人が売り手になろうとしたら、お店を始めるとか、会社を始めるとか、会社で働くとか、何らかが必要だったけど、「個人が個人のまま、売り手になれる時代が来たんだ。これは1つの働き方の革命なんじゃないか?」と思ったんです。

同僚→知人→その知人へと相談を重ねてビジネスモデルを一新

端羽:ただ、「自分は運転がすごく下手だし、家は賃貸だし、UberもAirbnbもできない。私が売り手になれるサービスはないかな?」といろいろ考えたんですけど、その中で思いついたアイデアが、人が経験からモノをお薦めするECサイトだったんですよ。「これだ」と。モノなら人は買うから、「金融出身の私が選ぶ電卓」とか、「熊本出身の私が選ぶ手土産」とか、そういったECを作ろうとしたんですよね。

でも当時の同僚に話したら、「なんでかわからないけど、うまくいく気がしない」と言われました。彼女が「1人だけ(起業家の)知り合いがいるから紹介してあげるよ。その人に聞いてみたらいい」と紹介してくれて会いに行きました。そうしたら、「俺もなんでかわからないけど、うまくいく気がしないな。ECを立ち上げたことがある人を紹介してあげるよ」とさらに紹介してくれて。

ECを立ち上げたことのある方に会ったら、1時間、こてんぱんに、非常に細かく、なぜうまくいかないかを説明してくれたんですよね(笑)。私はその1時間の最後に、「もうECはやめます。むしろこの1時間にお金を払える」と言ったんです。

「これもお金を払えるサービスだ。プロのコンサルタントではなく、ECを実際に立ち上げた方への相談。もっと早く出会いたかった」と。それで、1時間のスポットコンサルというサービスを思いついたんです。人の知見をそのままマッチングするサービスを作ろうと。

ただ、すてきな1時間だったけど、1時間を積み上げるのはけっこう大変なんじゃないかと思って、いろんなパターンを考えました。ワインを片手に人が経験をコーチする、「ワイン片手に、◯◯」シリーズを何回かやってみたんですね(笑)。

でも、誰に対して売っていくかと考えてみると、「ビジネスニーズがある人を対象に知見を売るサービスのほうがいいんじゃないか」ということになり、ビジネス知見をマッチングする「ビザスク」が生まれた感じですね。

山中:すごいストーリーですね。

端羽:前職を辞めた時は、まだ「ワイン片手に」のアイデアもあったので、前職のみんなが「送別にプレゼントしてくれる」と言われて、ワインセラーをもらったくらい、「ワイン片手に」シリーズはいけるんじゃないかと思ったんですけど(笑)。

山中:(笑)。

端羽:「これは違う。ビジネス知見にニーズがあるのは、やはりビジネスだ」と思って、結果的にBtoBのサービスになりましたね。

早く、多くの“打席”を経験することの重要性

山中:今話を聞いていてすごくおもしろいと思ったのは、まずはご自分が「このプロダクトだったら買ってもいい」と思ったと。その目線で起業したのが1つですよね。

端羽:そうですね。

山中:もう1つは、端羽さんでも真っ先に正解にたどり着いたわけではなく、試しに「ワインを片手に」シリーズをやってみたり、いろんなトライアルがあって、その結果、今のモデルにたどり着いたということなんですね。

端羽:本当にそうですね。

山中:リーンスタートアップ(コストをかけずに短期間で試作品をつくり、顧客の反応を見ながら、顧客がより満足できる製品・サービスを開発していく手法)と言いますか、そのプロセスがあったんだなと思いながら聞いていました。

端羽:なにせ起業するのは初めてなので、マイナスはないと思っていて。いろいろ手探りでやると、当然失敗もするんですけど、「あ、学んだな」と思って、「じゃあ次はどうしよう?」と思えたから本当に楽しいですよね。

すごく回り道したというよりは、「どれだけ早く、何回バッターボックスに立てるか」。どんどん試してみたのはありますね。

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