2024.10.10
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『嫌な仕事のうまい断り方』著者である人気経営コンサルタントの山本大平氏と、プレゼンテーションクリエイターの前田鎌利氏が「大人の処世術 上手な断り方」をテーマに対談を行いました。本記事では、嫌な仕事を依頼されても断れないという人に向けて、自分でできる未然防止策を解説します。
前田鎌利氏(以下、前田):3つ目の質問にも行こうと思います。「自分がチームメイトに協力を求め、仕事をみんなで分担する場合は自分でコントロールできるからそれで良いと思うんですが、上司・同僚・部下との協力にとどまらず、利用されたり仕事を押し付けられたりしないようにするコツはありますか?」。
「いいように使われないようにしたいな」ということですかね。敵に回さないために、利用されないようにするために、どういうふうにしたらいいでしょうかと。
山本大平氏(以下、山本):なるほど。めちゃくちゃありがたい質問です。どうされています?
前田:頼りがいがあって、いろいろとお願いしたいなって思われると、何でもかんでも「人がいいね」と言われて、上手に断らないとどんどんお願いをされちゃう。そんな感じかな?
山本:「押しつけられない」ということですよね。実はまさしくこの本(『嫌な仕事のうまい断り方』)に書いたんですが、未然防止はできてますか?
前田:未然防止。
山本:はい。どういうことかというと、例えば「嫌な仕事」の「嫌」って、誰が感じてるんだっけという話でもある。仕事を振るほうと受けるほう、どっちが「嫌な仕事」だと感じます?
前田:基本は受けた側ですよね。
山本:そうなんです。振る側も「これ、嫌な仕事やで……」と言って振るわけないし(笑)。
前田:(笑)。
山本:なので「任せたほうの立ち位置をいったん考えましょうね」と言っています。
山本:どういう現象が起きているのかを簡単に説明すると、ズレが起きているんです。鎌利さんが良いと思って(依頼者は仕事を)振ってるけど、鎌利さんは嫌だと感じています。今の質問にある「押しつけられているように感じている現象」の全部じゃないんですが、9割方がズレが生じていると思うんです。
じゃあ、なぜズレが生じるのかを分析していくと2つあって。1つは「忙しすぎて嫌だ」。もう1つが大半なんですが、こっちが良かれと思ったことが良くないという「ズレ」の話です。
なぜそれが起きるかというと、振る側が鎌利さんを知らないから。もう少しブレイクダウンすると、素を見せていない。つまり「嫌われたくない」「好かれたい」というコミュニケーションをずっと取ってきたから。
逆説的にすごくわかりやすく言うと、「僕はこんな人間です」という状態を演じず、極端に言うと「実家の状態」でお互いに接しておけば、そのズレはほぼ解消されるはずなんです。
「鎌利さんはこういう性格で、こういうことが好きでやりたいと言ったから、これを振ろっか」だと、「ありがとうございます」で済むんです。社交辞令で「そういうことをやりたいです、めっちゃ好きです」と言って、それを真に受けられて仕事を振られると「え、マジで……?」ということになるんです。
書いた本の中では「断る前に未然防止できてますか? ふだんから素でいましょう」と言っていて。結論「無理したらあかんよ」って、大阪弁で言ってます(笑)。
前田:誰に対しても素でいるのって、できる人とできない人がいらっしゃると思うんです。
山本:僕もそうでした。
前田:できるようになったきっかけってあるんですか?
山本:特にお世話になったTBSでは、そういった方がけっこう多かったです。ひもといていくと、クリエイティブって論拠がないんですよ。
例えば「どんなドラマを作ろう?」「どんなバラエティを作ろう?」ってなった時に、ロジカルに作り上げるんじゃなくて、「やっぱり俺はこれが良いと思う」という言葉のぶつかり合いがあって、良いものができていくじゃないですか。
論拠のない世界では、素の状態で会話するしかないですから。そこにずっと身を置かせてもらったことが、僕がそういうマインドになれたきっかけかなと思います。
前田:なるほど。本にも書かれていましたが、まったく文化の違う会社で素の状態でいる技術を身につけて、またロジカルな世界に戻られた。「KPIが大事だよ」「物事は結論からロジカルに話せ」「説明しろ」という会社さんが多いと思うんですが。
山本:それは大事ですね。コミュニケーションと言っても幅が広すぎて、「これは何のためのコミュニケーションだ?」ということがあると思うんですよ。最初にお世話になったトヨタ自動車だったら、人間の命を守るものを作る会社だから「それは本当に大丈夫なのか?」というロジックで説明できないといけない。
もっと言うと、定量ロジックで「こうでこうだから、こういう検証もして、こうだから大丈夫です」と言えないといけないから、そういうコミュニケーションになるんですよね。だからKPIがあることも否定してないし、場合によっては伝え方にロジカルを使うこともあるんです。
ただ、話を戻すと、押しつけられたり、振られた仕事を「嫌だ」って受け止める時にはズレが起きてる。それはなぜかというと、素の鎌利さんを認識してないから。だから素でいたら、素に見合った、適した、フィットした仕事を振れますよね。
前田:次にいきましょう。そのほかにもみなさんから質問があればぜひ。(参加者から)コメントがありました。
「依頼があった時に『それってなんでやるの? うちがやらなきゃいけないの?』とバリアを張る人と、『困ってるし、自分に余力があるからやってあげる』という人。極端すぎないようにするのが重要とはわかっているんですが、どちらが正しいのかを見極めて、その人との今後のつきあいを考えて、どう振る舞うのがいいのか本当に難しいです」。
山本:本質をたどると、さっき答えた「素でいる」が最大の未然防止なんですよ。もう少し言うと、どこかのコミュニティに属する前から素でいることを提唱しています。自分と合わない価値観の世界に入っちゃったら、もうその時点でアウトなんですね。
けっこうクライアントさんから(相談を)受けるんですが、「新しく人を採ったけど、すごくバリバリの人だったはずなのにパフォーマンスが出ない」。それはカルチャーフィットがないんですね。
なんでそういうことが起きるのか、弊社でデータを分析していったら、やはり面接に問題があって。「キャリア合コン」みたいな面接をしていて(笑)、お互いに良くないんですよ。要は、ガワを貼って受かりたいとか、いいところを見せたい。
人事のCROの方にも「○○さん。面接の映像を見ましたけど、こないだ僕とカラオケに行った時の○○さんとぜんぜん違うじゃないですか」みたいな(笑)。
前田:(笑)。
山本:そうすると価値観のフィットがズレちゃって、未然防止ができてない。
山本:価値観なんて、どっちも正解なんです。ただ、会社にもカルチャーは絶対にあって、こういった団体にもカルチャーがある。それを偽って演じちゃうことで、知らない間に良いと思って誘われて入っちゃうでしょう。でも、カルチャーフィットがないと「あ、違うわ」と思われてしまう。
確率論なんですが、その時点、つまり早い時点で(カルチャーフィットしていればミスマッチを)大きく減らすことができる。だから「入ってしまった」は良くないよというのは、けっこう言いたくて。
前田:なるほどね。
山本:なので、本質的に言うと「それってなんでやるの?」というのは、もうズレちゃってますよね。「うちがやらなきゃいけないの?」の「うち」は、その人あるいはその部署というとらえ方があります。
誰かがやらなきゃいけないからタスクが生まれているわけですよね。たまにまったくムダなこともありますけどね。一方で「困ってるんだから、そして自分に余力があるからやってあげる」という優しい人もいるんですが。
チーム内で、不和じゃなくて助け合う文化ができていて、「私は今いっぱいだから、○○さん一緒にやってくれない?」「ちょっと今はこうなんだけど」というカルチャーフィット、つまり「人間関係のベース」ができているから、そういう会話が嫌われない状態でできるんです。
「ちょっと無理っす」「え?」ってなるということは、そもそもカルチャーにフィットしてないんですよ。そこに本質的な問題が潜んでいる。
前田:なるほど。一家に1人、大平さんが欲しいですよ。
山本:僕も今日、嫌だったら来てないもん(笑)。
前田:そもそもそうですよね(笑)。
山本:鎌利に沼っているから(笑)。
前田:(笑)。ありがとうございます。
前田:本当は今日はオンラインでと言っていたんですが、大平さんから「せっかくだから会ってやりましょう」という話になって。大平さんの所は会議室が埋まってたので、ちょっと狭いんですがうちまでお越しいただいたんです。本当に来ていただけたので、スタッフもみんな来てくれて。
山本:Voicyの時に、お互いに素で確認してるじゃないですか。
前田:はい。あれはすごく良かった。
山本:なので、もうすごく安心していて。鎌利さんから「出てください」と言われて、返事を2秒で返した。
前田:めっちゃ早かったですね!
山本:迷いなく返してるので2秒でしょ。
前田:本当にありがとうございます。
山本:重要度が高かった(笑)。
前田:高かったですか、良かった(笑)。(質問者の方も)いろいろあると思いますが、ありがとうございます。
山本:そうですね。大変だと思いますが。
前田:どう振る舞っていいのかって本当に難しいですが、素でいる、正直でいることですね。
山本:(質問者の方は)素直な人だと思うんですけどね。今は講演なので、その体で答えてます。
前田:とはいえ、カッコつけたがりもいるじゃないですか。
山本:僕も昔、そういうところがありました。
前田:僕の当時のとある上司が「前田くん、この時計知ってる?」「この眼鏡、知ってる?」とか聞いてきて、知らないっすとか思うんですが(笑)。だいたいそこから(会話に)入ってきて「へぇー、すごいっすね」と返したり。
誰とは言わないんですが、持ってるもの、身につけてるもの、飼ってる犬とか、絶えずすっごく雄弁に語ってきて。ぜんぜん羨ましくもなんともないんですが。
山本:じゃあ、もうそれは合わないんですよ(笑)。
前田:合わないですよね(笑)。
山本:寄らなきゃいいんです。それだけ。以上、終了(笑)。
前田:そう(笑)。とはいえ上司が評価者で、気に入られないと仕事も回ってこないし、評価もされないとなると、みんな「いいっすね」と言うんですよ。
山本:でもほとんどの場合、そういう上司が2人いたとしたら、その会社はもう「そういう会社」ですよ。だから、採用面接の時やプロジェクトを承る時に「“国”が違うな」と離れるべきです。
前田:そうですよね……。とはいえ会社員でいる人たちが食べていくためには、「離れよう」と思ってもちっちゃい会社だしなかなか離れられない。
山本:それもわかります。
前田:転職しようにも、転職した所が良いかどうかもわからないし。
山本:ただ、よく考えてください。会社って何社あるんですか? 今置かれている環境で、そこまでしんどい思いをして……。誤解を招きそうなのでちゃんと言っておくと、僕の場合はどの会社もすごくありがたかった。嫌だから転職したわけではありません
前田:(笑)。
山本:これはもう声を大にして(笑)。
山本:今は違う理由で自分の会社を作ってやっています。話を戻すと、苦しい境遇に入っちゃった場合に、どうしてもそこにいないといけないかというと、ほかにも山ほど会社はある。
もっと言うと、Aさんにとっての「合う会社」は絶対にあるんですよ。だから、転職活動や仕事を受ける時に一番注意したほうがいいのは、お金よりもカルチャーフィットを見極めること。じゃないと、しんどい。
前田:そうですよね。ちなみに最近はどうなんですか? 昔と比べたら転職はだいぶしやすくなったと思うんですが、今ビジネスパーソンの方ってだいたい何社ぐらい移られてますか?
山本:日本において、基本的に今から社会人になる人は最低でも6社は経験するだろうと言われていて。アメリカだったら8社とか10社は当たり前なんです。なんでかと言うと、経営コンサルとして「企業の寿命」という考え方をしていて。新興国の台頭や技術革新のトレンドも今は早いですから、企業の寿命は10年ぐらいがアベレージだと診ています。
今って20歳から60歳まで働けばいいかというとそうでもなく、だいたい80歳が定年でしょう。そう考えると60年働きますよね。じゃあ企業の寿命が10年だったら、10年でその会社にはいられなくなるんですよ。そうなると6社を移る計算になるので、逆に言うと1社でずっといける人は稀になっちゃう。
前田:むしろ転職する人がスタンダードというか、マジョリティ。
山本:よく「終身雇用が難しい」という話が出てるじゃないですか。転職しなくちゃいけない状況になってるんです。
前田:ということで、みなさんいかがでしたでしょうか。
山本:時間が(経つのが)早いですね。
前田:早いですよ。あっという間に時間になっちゃいました。
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