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特別対談「伝える×伝える」〜大人の処世術 上手な断り方〜(全4記事)

面識のない人に仕事をオファーする時は、メールではなく手紙 長文でもむしろ喜ばれる「手書き」の活用術

『嫌な仕事のうまい断り方』著者である人気経営コンサルタントの山本大平氏と、プレゼンテーションクリエイターの前田鎌利氏が「大人の処世術 上手な断り方」をテーマに対談を行いました。本記事では、仕事の場面における「メール」と「手紙」の使い分けとその効果について語ります。

91パーセントの人が「伝えること」に苦手意識

後藤美佳(以下、後藤):本日も始まりました「伝える×伝える」。伝伝(つたつた)ですね。「大人の処世術上手な断り方」、本日のゲストは山本大平さんです。

山本大平氏(以下、山本):よろしくお願いします。

司会者:今回はハイブリット形式になっておりまして、鎌利さんの事務所に大平さんがいるという変わった環境で始めさせていただきます。トークセッションが主になっていまして、いつもと違った「伝伝」になるかと思います。みなさん、お楽しみください。じゃあ、鎌利さんお願いします。

前田鎌利氏(以下、前田):始めていきたいと思います。「伝えることは難しいですか?」と聞くと、だいたい91パーセントの方が「苦手だ」とおっしゃいます。そんなに苦手な人が多いのかな? と思うところなんですが、実際にこの協会では、プレゼンを伝えるためのツール・武器にしてもらいたいなと思っています。

「人に伝える」ということを文章にしてくれたのが、紀元前300年代です。アリストテレスが弁論術というのを書いてくれました。とはいえこれは口頭で伝える術ですので、時代の変遷に伴って、言葉だけじゃなくてビジュアルで伝えるというふうに伝え方は変わっていきます。

現代になって、みなさんが使われているようなPowerPointとか、プレゼンテーションツールも手に入れたんですが、これではなく僕らは日常で伝える機会がたくさんあります。例えば名刺を交換する時もそうだし、病院に行ってお医者さんとお話する時もそうなんですが、日常のあらゆる瞬間が「伝えるシーン」じゃないかなと思っています。

日本人はブランディング力がなさすぎる?

前田:昨今、VUCAになって不確実性が増大してきました。これまでのスキルが通用しないから、みんながんばって勉強をしたり、スキルを身につけていくんですが、これからの時代で大事になってくるのは「セルフブランディング」だと思います。

「副業OKだよ、兼業OKだよ、外でお仕事してもいいよ」といった時に、同じスキルセットの人はたくさんいらっしゃるんですよね。そんな中でも差別化しなきゃいけない。そんな時に大事になってくるのが「伝え方」です。

先日、とあるレストランオーナーの方とお話をしたんですが「とにかく日本人はブランディング力がなさ過ぎる。安く見積もり過ぎだ」みたいなことをおっしゃるんですね。「もっと高くていいじゃないか」「いやいや」と言って、謙遜して安く見積もるんです。

特に今はインバウンドが多いですから、「もっと高くてもいいんだよ」といったお話をされているのを聞きました。伝え方や見せ方は大事なんじゃないかなと思います。

ということで、伝えることに何かしらのお役に立てればと、プレゼンテーション協会を立ち上げました。みなさんの「念い(おもい)」が伝わる世の中になるようにということで、毎月イベントを開催させていただいております。

そんな中、マンスリーでゲストをお迎えして行っているのが、こちらの「伝える×伝える」です。本日ゲストにお迎えしたのは山本大平さんです。よろしくお願いします。

山本:よろしくお願いします。やっと会えた!

前田:もうね、やっと会えたんですよね。それこそ大平さんがVoicyを始められる時に、最初にゲストに呼んでいただいたんですよね。

山本:そうなんですよ。

前田:そこからの付き合いなんですが、リアルでお会いできたのは今日が始めて。

山本:いやぁ、うれしいです。今日はリアル鎌利さん。

前田:リアル大平さんにお会いできた。本当にありがとうございます。今日、この時間が始まる前にこっち(撮影ブース)に入っていただきまして、約1時間近くずっとしゃべりっぱなしで盛り上がっちゃいました。

山本:はい(笑)。

前田:今日はもうしゃべることなくなるんじゃないかな? ぐらい盛り上がっておりました。

今回のゲストは『嫌な仕事のうまい断り方』著者

前田:とはいえ今日のネタは、大平さんが2023年に出された『嫌な仕事のうまい断り方』です。これ、みなさん読まれましたか?

読んでいらっしゃらない方も、お仕事で断りたいなと思っても断れないなとか、断りづらいなことがありましたら、今日はチャットに遠慮なくいろいろと書いてほしいんですね。

先ほどお話があったとおり、通常だと最初は20分くらい講演をしていただくんですが、せっかくリアルで来ていただいているからトークセッションで進めていきたいなと思います。

大平さんと言えば、最初に出されたのが『トヨタの会議は30分』。大ベストセラーになった本なので読まれた方もいらっしゃると思いますが、こちらのネタに触れていただいてもけっこうです。

大平さんは本当にいろんな大企業を渡り歩いて、今は独立してコンサルティングをやられていますから、みなさんのいろんなご質問を拾って返していただけるんじゃないかなと思います。ということで、特別対談を始めていきたいと思います。みなさんよろしくお願いいたします

山本:お願いします。

前田:事前に用意している3つの質問に触れながら、その間もみなさんからチャットにばんばんコメントを書いてほしいんですね。(参加者コメントで)「トヨタの本、読みました」。

山本:ありがとうございます。

前田:さすが。玉田(賢司)さん。名古屋ですからね。

山本:名古屋ですもんね。ありがとうございます。

前田:じゃあ、ということで。

山本:何でも聞いてください。丸裸にしてください。

前田:(笑)。行きましょう。

仕事において、あえて手書きを使う場面とは?

前田:質問を3つ用意していますので、まずは1個目から行きたいと思います。「『嫌な仕事のうまい断り方』で、山本さんは自筆で手紙を書く重要性をおっしゃっていますが、山本さんは今現在どんな場面で自筆で手紙を書かれますか?」という質問をいただいています。

山本:コミュニケーションと言っても階層があると思っていて。例えば、僕が友人に「来月飲みにいこ?」と聞かれて、「ごめん、来月は埋まってるわ。再来月だったら」と言うコミュニケーションもあれば、あらたまって「こういったことをお願いしたい」という、重要ファクターの高いものから低いことまであると思います。重要性が高くて、失敗したくない時は手紙を使いますね。

前田:そうなんですね。

山本:はい。仕事や人間関係で、失敗したくない時、どうしても決めたい時ってないですか?

前田:ありますね。そういう時は(手書きで)書いちゃうと。ちなみに書くとしてもハガキと手紙があると思うんですが、大平さんはどっちを使うんですか?

山本:僕は手紙を書いて封筒に入れて送るパターンです。

前田:そうなんですね。

山本:でもこれ……放送されるんですよね? 「もらったことねぇよ」って……。

前田:(笑)。来ますよ。「俺もらってねぇな。大事じゃねぇんだな」みたいな。

山本:怖い(笑)。「あれ、こいつって手紙送るんだ」みたいな。ちょっとヤバいな(笑)。でも(重要性が高い時、失敗したくない時は)手紙を送っています。

前田:知らない人と会っていきなり手紙をもらうって、印象に残りますよね。

山本:そうですね。知らない人や接点がなかった人に、いきなり重要な仕事で頼みたい、オファーしたい時は、僕の会社はメールじゃなくて手紙を使うようにはしていますね。

手紙の重要性に気づいた、会社員時代の出来事

前田:ちなみに、もともとトヨタやTBSなどに在籍されていましたが、会社に所属している時もそういうことをやられていました?

山本:いや、やっていなかったんですよ。

前田:そうなんですか。

山本:トヨタの時は車を作っていたので、そもそも手紙とかのコミュニケーションがないんですよね。どっちかというとCAD(コンピュータ支援設計)を触ったり、車の実車を触ったりとか。

TBSの時には、まさしくそれをやっているプロデューサーさんがいて。ある俳優さんをキャスティングしたいということで、4回も手紙を書かれたことを聞きました。

前田:おお! 三顧の礼を超えましたね。

山本:そうそう。3回書いて「まだ送るんだ」と。でも、それでオファーが決まったことがあったと。「手紙っていいんだ」と思って、そこで初めて僕も手紙の重要性に気づいた。

前田:なるほど。最近テレビで見たんですが、自分で何十文字かサンプルを書くと、AIが僕の癖を読み取って手紙を書いてくれる。知っていましたか?

山本:(笑)。

前田:びっくりして、もう書家いらねーじゃんと思っちゃって。そんな時代なんですね。

山本:そこは触れないようにしよう(笑)。

前田:はい(笑)。手書きは重要だなと思いますが、みなさんはどうですか? 今日参加されている方で「私、手書きしますよ」という方は、どれくらいいらっしゃいますかね? よかったら挙手してください。今、会場で2人くらい。すごいすごい、ありがとうございます。

手書きの良さは、長文でもむしろ喜ばれること

山本:これ、なんでだろう? と分析したことがあって。普通に自分が手紙をもらってもうれしいじゃないですか。

前田:うれしいですよね。

山本:例えば、メールで書くのと手紙でオファー・キャスティングするのは何が違うのかというと、情報量が違うと気づきました。一応データサイエンティストの端くれなので。どういうことかというと、タイプで打った場合とペン字で書いた場合に、書家の人を前にして恥ずかしいんだけど……。

前田:いえいえ。

山本:「きれいに書いている」「一生懸命書いていただいた」といった情報が、手紙を見ればすべてわかるし、温度感もわかる。多く書いても、メールと違って別に失礼ではないんですよね。でも、メールで多いと「うわっ」となる(笑)。

前田:確かに「失礼じゃない」というのはそうですね。

山本:難しさがありますよね。長い手紙をもらったらどうですか?

前田:むしろうれしいですよね。

山本:ですよね。「わざわざ書いてくれた」と。

前田:掛けてくれた時間が伝わりますよね。

山本:そうです。なので「1回話でも聞いてみようか」と、ちょっとでも思ってもらえたらいいなと思って書くことはあります。

前田:なるほど、いいですね。

達筆すぎて返信が来ないという、書家ならではの悩み

前田:僕も手紙を書くことがあるんですが、「書家だからきれいな字で手紙が届く」と、みなさん思われるんですね。ただ、あまりきれいな字で書いて送っちゃうと、返事がこないことに気がついた。

山本:どういうことですか?

前田:達筆すぎると気後れして「自分もきれいに書かなきゃ」と、逆に返事をくれないということがわかったんですよ。だから、きれいに書かないことにしたんですね。

山本:そんなテクニックがあるんですね(笑)。すごい。

前田:きれいに書かないというか、ダーッと書いちゃうと読めないということはわかるんですが、達筆に書いたって読めねぇなと。読めないと、返事を書く・書かないというよりも、そもそも諦めるということに気づいて(笑)。

山本:(笑)。なるほど。

前田:実は、きれいに書き過ぎないくらいが相手にとってプレッシャーにならなくていいんだよという話。

山本:それはあるかもしれないですね。

前田:最近、よく美文字の話があるじゃないですか。

山本:美文字ね。

前田:「美文字、美文字」と、きれいに書くことが流行っていて。きれいに書くのも1つの個性だと思うんですが、僕はみうらじゅんさんの字が大好きなんです。みうらじゅんさんの字なんか、めちゃくちゃかわいいんですよ。

こんなかわいい字でこんなかわいい手紙を書かれたら、やはり返事を書きたくなるなと思わせてくれる。抜け感と言うんですかね。そういうのがいいなとはよく思ったりします。

山本:そう思います。

デジタル時代こそ、手書きの効果は倍増する

前田:みなさんからいっぱい質問が来ていますね。ありがとうございます。(参加者コメントで)「以前は手書きしていたのですが、最近はパソコンやスマホでメモをするのが普通となり、手書きの字がすごく下手になったので書くのがおっくうになっています」。大丈夫です。

山本:「みんながスマホだから、書くと効果が倍増する」という考え方もあるのかなと思いますよね。

前田:そうですね。(参加者コメントで)「SNSでつながれない方には特に手紙を送ります」。

山本:いいですよね。

前田:「鎌利さんには書けない」。そんなことないから、ぜんぜん送ってね。大丈夫です。「子どもには手紙を書いたりします」。

山本:これもうれしいですね。僕も子どもがいるんですが、子どもから手紙を書いてもらうのって、やはりうれしいですよね。

前田:うれしいです。

山本:美文字じゃなくても、めちゃくちゃうれしいです。

前田:僕、子どもたちに漫画を書いて渡すんです。

山本:さらにうれしいんじゃないですか。

前田:「今月の4コマ漫画」みたいなものを描いて渡すんですが、だいたい失笑されて終わるんですよ(笑)。

山本:(笑)。時間の尺、大丈夫?

前田:大丈夫です(笑)。

山本:手紙の話で終わりそう(笑)。

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