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まだ空いている、生成AIビジネスのど真ん中(大野峻典さん編)(全3記事)

生成AIビジネス、スタートアップはビッグテックと戦える? DMM亀山氏×Algomatic代表が語る、新興企業の勝ち筋

DMM.com 会長の亀山敬司氏が、経営やビジネスをテーマに語るポッドキャスト番組『亀っちの部屋ラジオ』。脱力系ながらも本質をついた商売論・人生論を展開する本番組の中から、今回は株式会社Algomatic CEOの大野峻典氏のゲスト回の模様をお届けします。「まだ空いている、生成AIビジネスのど真ん中」と題し、ChatGPTを活用した業務効率化の可能性や、市場におけるスタートアップの戦い方について語りました。

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AIを使った業務効率化、どんな分野で進む?

亀山敬司氏(以下、亀山):俺も「これからはAIだぞ」とか言いながら、実は大して本人はやってないというのが実際問題なんだけど(笑)。ただ現場のやつらは「シゴラク」を含めてけっこういろんなツールを使ってるし、「いろいろやってみて、使えるようなら使えよ」っていう話はしてるんだけど。

実際に自分らの業務的なもので言うと……例えばCSやバナー作成とか、いろんな分野のAIがあると思うんだけど、今後はどういったところが業務効率化されて生産性が上がるわけ?

大野峻典氏(以下、大野):まずツールとしては、どこかの業務に絞って提供するというよりは、わりと幅広く、どういう業務でも使えますよと。

例えばマーケティングの人が記事を書くこともあれば、コピーを考えることもあったり、上司に報告するためのレポートを書くこともあったり。仕事っていろんなタイプがあるので、特定の業務に特化して体験を作り込むというよりは、幅広く汎用で使えるようなツールにしようとしてます。

例として使えるところで言うと、広告分野だと記事作成、広告・マーケ・PRの分野だとプレスリリース作成とか、広告のコピー作成、メールの文面作成とかもあります。

他には、例えば営業だと提案資料の構成を考えたり、アポを獲得するためのメールとか、お知らせ的な文章のメールのスクリプトを書いたり。営業のトークスプリクトとして「こういうふうに話していくとよさそうだよね」というアイデアを考えてもらったり。

開発チームだったらプログラムの意味を説明してもらったり、そもそも「こういうコードを書きたいんだけど、どう書けばいいの?」と、コード自体を書いてもらったり。人事だったらスカウトの文章を一緒に書いたりとか、本当に幅広い用途があって。

ChatGPTの回答の精度を上げるには

大野:うちでは「各業務・各部署で生成AIと相性が良い業務ってこれだよね」と特定して、その業務で使いやすいように、大規模言語モデルと会話するためのテンプレートを揃えています。

亀山:じゃあ、ChatGPTを入れればそれでいいんじゃないの。「シゴラク」を入れたら何が良いわけよ。いまいち俺はまだわかってない。説明を受けたことはあるんだけど、「わかんないからいいや」みたいに聞き流しちゃった(笑)。

俺がわかんなくても、ここで聞いてる人はわかるかもしれないから、もうちょっとわかりやすく教えて(笑)。

大野:(笑)。普通にChatGPTを使っても、できることは多いです。ただ、大規模言語モデルの特徴の1つは、プロンプトによってモデル側の役割を指定してあげたり、今からやってほしいことを指定してあげることで、得られる回答の精度が上がっていくことなんですね。

人をマネジメントする時と似てますが、「こういうコンテクストでこの仕事をやってほしい」と、背景とかをちゃんと伝えると、精度の高いアウトプットが出てくるんです。その指示書にあたるプロンプトって、良いものを書くのはけっこう大変なんです。

ChatGPTを使っていると、基本的には自分でその文章を書かなきゃいけないんですね。例えば「あなたは記事のライターさんです。こういうターゲットに向けて、こういう目的の記事を書いてください」と、記事を書く時の論点がいくつかあるとしたら、その論点を全部並べてお願いするわけです。

「このタスクをやる上では、どういう背景知識を与えてあげるといいか」というのを毎回考えてプロンプトを書くのは、ChatGPTでやるとけっこう大変。

うちのツールを使うと、チャットを送る画面でテンプレートを選択できる機能があるので、やりたいのが記事作成だとしたら「記事作成」をポチっと押すと、「じゃあ、記事作成だったらこの項目だけを教えてください」と、穴埋め形式でガイドしてくれる。

作成したい記事では、どんなターゲットをイメージしているかとか、決められた項目を人が埋めるだけでいい。そもそもどういう項目が必要かを考えなくてもいいし、プロンプトの設計を考えなくて済むので、そのぶんシゴラクAIを使ったほうが楽。だから、プロンプトの準備が楽だというのがまず1個です。

自力ではなかなか難しいプロンプトの入力

大野:また、ChatGPTを使う前提だと、そもそもプロンプトぐらいしかいじれる変数がないというか。使う側からすると、プロンプトを良くすることぐらいしか、AIと対話するのがうまくなる方法がないんです。

うちのサービスだと、例えば記事作成においては「チャットよりも、Google Docsのようなインターフェイスで会話したほうがやりやすいよね」みたいに、プロンプト以外にも作業を効率化するためにプロダクト側も最適化していきます。

これは今後僕らがやっていきたい路線ではあるんですが、要はプロンプトがいじれるという話より深いレイヤー、プロダクトのUX、体験側もいじっていければと思っています。

亀山:ますますわかんなくなってきたけど、まあいいや(笑)。実際問題、俺は使ったことはないわけじゃなくて、ChatGPTも使ってみたんだけど。とりあえずしゃべり言葉でいろいろ入れてみたけど、いまいち大した答えが返ってこないことがよくあるわけよ。

みんなに「たぶん入れ方が悪いんです」って言われるんだけど、じゃあどうすりゃいいわけ? ってなった時に、簡単に言えば今みたいなツールを使うと、欲しい情報が出やすくなるってことでいいの?

大野:そうですね、おっしゃるとおりです。

亀山:定型文みたいなものがあって、それをバサッとはめこむ感じ? 指示書の内容を指示してくれて、自分の欲しい答えになりますよと。

大野:そうです。穴埋めだけすれば指示書が完成する状態ですね。ChatGPTの場合は、指示書の構造から自分で考えなきゃいけない。

ChatGPTは実は計算が苦手

亀山:ちなみにこの間、「友だちが10人来るから、1人3,000円で、何の材料を買えば料理を作れるの?」と聞いたんだけどさ。

タンパク質がなんとか、お米を何千円分、野菜を何千円分と出てくるんだけど、それを足し算したら「お前、ぜんぜん予算内に収まってないじゃない」みたいなことがあったんだけど(笑)。ChatGPTって計算下手なの?

大野:(笑)。そうですね。そもそもわかりやすく言うと、例えば「文章として自然そうか・返事として良い感じか」みたいなところで評価されて学習しているイメージなので、数学的に計算が微妙に合ってないことはあります。僕らは足し算して検算するわけですが、そういう機構は明示的にはないので。

亀山:もっと頭良いのかと思ったけど、意外と彼は足し算もいまいち下手なんだ。

大野:人間は(計算を)簡単って思うけど、意外と間違いやすくはありますね。

亀山:「お前、ChatGPTのくせに計算合ってないじゃない。使えねーわ!」とか思って(笑)。それもやっぱり、指示をちゃんと考えればなんとかなるの?

大野:指示を考えれば、なんとかなるとも思いますね。例えば「ちゃんとこの数字を足し算して、検算した結果も教えてください」と言うと、自分で検算して、間違ってるところに気づいて自己補正させることは、指示の仕方によってはできる。

亀山:なんかね、愛嬌はあるんだよ。「計算おかしくない?」って入れ直したら、「おっと。間違ってました、すみません」って言うんだけど(笑)。いやいや、そんなかわいげを持たされても困るわみたいな。

大野:(笑)。そうですよね。確かに計算とかは、そのままやらせちゃうと良くなかったりしますね。

亀山:なかなか俺もAIを理解しきれてなくて、まだそんなレベルしかわかってないんだけどさ。

個人単位ではなく、会社全体で活用する時代へ

大野:そうだ。ChatGPTとの違いで、特に使っていただいてる企業の方に「便利」と言っていただけるところで言うと……業界共通のプロンプトも用意しています。

例えば文章の要約、メール作成、記事作成とかいろいろ用意してるんですが、企業特有の業務や、企業特有の知識を入れた上での指示ってあるじゃないですか。

亀山:あるある。

大野:企業ごとにプロンプトをカスタマイズしたり、例えば社内のマニュアル的に「この業務だったらこのプロンプトを使って作成してね」とやりたいわけですよ。

うちのツールだったら、「この添削業務だったらこのプロンプトでやってください」「うちでの添削時に見る項目はこれです」と書いた上で指示できるんです。自分でプロンプトのオリジナルテンプレートを用意して、社内に閉じて共有することもできるので、そのへんもけっこう便利ですね。

当然、ChatGPTだと、今はまだそういうことはできなくて。基本的には「個人のアカウントでの作業」みたいなことに閉じてるので。

亀山:そうかそうか。俺個人で使ってるものは、俺の個人のデータが貯まっていくけど、会社全体としてのルールみたいなものを入れ込めるってことか。

大野:そうですね。

“サービスを導入したら終わり”にはしない

亀山:それで、いくらぐらい取るのっていうか、いくら儲かるんだよ(笑)。

大野:(笑)。どういう料金体系でやってるかで言うと、ChatGPTの有料プランを使うよりも安く始められるプランでやってます。

基本的にうちではID数課金だから、「10人で利用したらいくら、100人で利用したらその10倍かかります」みたいなプランなんです。(シゴラクAIは)1IDあたり月1,100円で導入いただいて、あとは使った分だけコストがかかっていく設計にしてます。

基本的にChatGPTの有料版だと、たぶん今は20ドルだと思うので、日本円だとだいたい月3,000円ぐらいかかる。ChatGPTは使わなくても3,000円かかってしまうんですが、シゴラクAIの場合は1,100円から始められて、あとは使った量だけ課金というかたちになってます。

亀山:ユーザーからは良く見えるけど、株主から見ると、それ儲かるの(笑)?

大野:(笑)。この料金設計は僕らとしても意識して作ってるんです。基本的には使ってもらわないと価値が出ないので、使わないユーザーからお金を取るというのは、価値が出ないサービスで売上を上げているような感じなので、良くないなと思っていて。

ただ一方で、使ってくれればくれるほど、従量課金で売上も増えて、料金としても増えていくので。導入企業さんとしても使うほど成果が出て嬉しいし、使った分だけうちとしてもうれしい。

なので、企業さんに導入してもらったから放置することはまったくなく、むしろ使ってもらうように支援させていただいてます。実際に便利に使っていただける状態になれば、初めて儲かる感じです。

業種問わず、誰でも使えるツールを目指して

亀山:企業努力として、「(ユーザーが実際に)使おうが使うまいが月額がもらえる」というよりは、「基本線固定費は少ないけど、使った分だけもらいますよ」というかたちってことだね。

大野:そうです。

亀山:英会話だったら月額をもらってるから、使っても使わなくても、もらえた分うれしいなって感じだけど、逆に利用してもらわないといけないから利用しやすくしますよってことだ。

大野:そうです。そういう意味で、全員の向いてる方向が一致してるというか。導入企業さんは生産性を向上したかったり、それで付加価値を得たいですから、使いこなしたいですし。

うちとしても導入しっぱなしでOKというよりは、基本的には使ってもらう前提でサポートするので、同じ方向を向けていいなという意味でこの料金設計にしてます。

亀山:確かにうちも今、会社でみんなに「(ツールを)使っていいよ」と言っていて。使うやつは毎日やってるけど、使わないやつは初めに2、3日やってずっと使ってないから、「アカウント返せ」とか言ってるんだけど(笑)。

大野:(笑)。

亀山:少なくとも、使わないと安くなるってことね。

大野:そうです。生成AIやLLMはどういう業務でも使い得る、誰にとっても便利なツールなので。企業の導入担当者さんから見ると、「一部の人にだけ使わせてあげる」ということは、けっこうやりづらいツールでもある気がしてるんです。

例えばChatGPTで、パーソナルな有料プランで1人月3,000円かかっちゃうと、使ってない人にも付与した場合には、お財布的につらいなというのもありそうで。うちの場合は1,100円から従量課金にしてるので、ガッと抑えてますね。

なので当然「使えないんだったらIDを持つな」という目線もありますし(笑)。とはいえ平等に付与しなきゃいけないとか、使えるチャンスはみなさんに持ってもらいたいので、それをやりやすくしてるところもありますね。

亀山:そうなんだよ。「使わないなら使うな」みたいな感じだと、「どのへんでラインを引きましょうか?」って聞かれるから、ややこしくなってるんだけど(笑)。本当は使ってほしいんだけど、言っても使わないやつは本当に使わないからなと思って、ちょっと困ってんだよね。

大野:そうですよね。

ビッグテックに対し、スタートアップはどう攻めるか

亀山:LLMがどうだって(話が)あったけどさ、俺が「AIに20億円を投資して新しい会社を始めます」という話をした時に、「LLMを作るなら、そんなお金じゃ足りないでしょう?」みたいな(投稿を)Xでされてさ。

「どういうこと?」って聞いたら、結局今の話って、ChatGPTを使ってこのビジネス作ってるわけじゃない。LLMはChatGPT自体を作るみたいな話なんだよね?

大野:そうですね。

亀山:「そんなんじゃ足りませんよ」ってXでコメントされて、「すみません、そういうことじゃないんです。コバンザメ商法でやります」みたいな話だったんだけど(笑)。

大野:(笑)。

亀山:この間、松尾研の松尾(豊)さんと話した時に「LLMを作ったらどうですか?」と言われたけど、そういったものもあり得るわけ?

大野:はい、あり得ると思ってます。作ることを決め切ってるわけではないですし、まだあんまりオープンに発信してはないんですが、LLMを作ること自体はかなりポジティブに考えてます。というか、もう社内的にかなり検討を進めてます。

汎用のLLMで戦おうとしてるのがOpenAIやAzureだったりするんですが、例えば企業ごとのデータでチューニングされたモデルのほうが、企業の中の特定のタスクにおいては、精度が出ることはあり得るじゃないですか。

インタビューを記事に書くライター業務があった時に、インタビューの文字起こしから作られた記事をひたすら学習して、(記事作成に)特化したAIのほうが成果は出る感じがするじゃないですか。そういう感じで区切ると、(LLMの事業への)入り方はぜんぜんあり得ると思っています。

うちが超ビッグテックに対して取れるカウンターポジションとしては、シゴラクもそうですが、特定のバーティカルに特化したモデルを作ったり。今は足下での話ですが、モデルレベルでの差別化も今後はやれる気はしてますね。

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