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まだ空いている、生成AIビジネスのど真ん中(大野峻典さん編)(全3記事)

AIビジネスを狙う若者は多いのに、VCは投資に及び腰… DMMが、生成AIスタートアップに20億円を投資した背景

DMM.com 会長の亀山敬司氏が、経営やビジネスをテーマに語るポッドキャスト番組『亀っちの部屋ラジオ』。脱力系ながらも本質をついた商売論・人生論を展開する本番組の中から、今回は株式会社Algomatic CEOの大野峻典氏のゲスト回の模様をお届けします。「まだ空いている、生成AIビジネスのど真ん中」と題し、DMMから20億円の投資を受けて設立したAlgomaticの展望などを語りました。 ■音声コンテンツはこちら

DMMから20億円の投資を受け、設立したAlgomatic

亀山敬司氏(以下、亀山):どうも、DMMの亀山です。今日はAlgomatic株式会社の大野くんに来ていただきました、よろしく。

大野峻典氏(以下、大野):株式会社Algomaticの大野と申します、よろしくお願いします。

亀山:じゃあ、自分の過去を振り返りながら、自己紹介してもらおうかな。

大野:ありがとうございます。もともと大学時代は、AIや深層学習、機械学習系の研究を東大でしていました。卒業してからは東大の研究室に1年間所属しながら、画像認識や言語処理系のプロジェクトをやってました。

そこから1社目のAlgoageという会社を立ち上げました。Algoageは、最初は機械学習や深層学習のアルゴリズムを開発して、企業さま向けに提供する事業をやってました。

3年前にDMMグループにM&Aでジョインして、アルゴリズムの事業からマーケティング用のチャットボット、「DMMチャットブーストCV」というサービスに事業の軸足を移して、これまでやってきました。

そのサービスを2年ぐらいやってきて、2023年にもともとCOOをやっていた横山(勇輝)にAlgoageの代表をバトンタッチしました。2023年4月には、新しく生成AIの新規事業を作っていく会社としてAlgomaticを作って、そこに亀山さんのDMMから20億円の投資をしていただいています。よろしくお願いします。

亀山:東大卒のエリートで、稼いでおりますという感じで(笑)。

大野:いやいや、感じ悪いです(笑)。

急速に成長する生成AIのチャンスをつかむために

亀山:うちも投資しているので、今回はちょっと身内ネタになりますが、なるべくポジショントークにならないように、いろいろ聞いてみたいと思います。たぶん、少しなるところもあるだろうけどね(笑)。もともと大野と知り合ったのが3年ぐらい前かな?

大野:そうですね、3年前ぐらい。ジョインしたタイミングで一応ごあいさつはしたんですが、たぶん亀山さんは覚えてらっしゃらないと思うので(笑)。

亀山:うん(笑)。

大野:ジョインして1年くらい経った時から、亀山さんと直接一緒にやるようになって。2年前ぐらいに亀山さんと一緒にバーベキューしたところからですね。

亀山:当時のCTOの松本(勇気)くんがM&Aしたんですが、そのあと本人が辞めてしまいましてね。残された大野が、俺にバトンタッチされて、「誰だこいつは」みたいな話から始まったよね(笑)。

このあとに「じゃあAlgoageはこういう方向でいこう」といって、DMMチャットブーストCVを始めたら結果を出したので、なかなかやるじゃないと。次は「やっぱりこれからはAIじゃない?」となって、AIの会社を作ろうぜってなったのが今ですね。

大野:そうですね。2022年の夏ぐらいから、MidjourneyやStable Diffusionといった画像生成AIがものすごく伸びて。冬ぐらいにChatGPT、テキスト生成周りと、かなり応用をイメージできるぐらいの革命が起きて。

そのあたりから亀山さんと、「生成AIのチャンスをつかむためにはどうしていくべきだろうね」みたいな話をよくしていて、そこからって感じですね。

亀山:そうだね。俺もこれからはやっぱりAIかなと思ったから、「若いやつだけで集まって、何をやるかは任せるけど金は出すから、しばらく考えていろいろとやってね」って、俺もAIがよくわかんないままスタートしたんだけど。

生成AI領域で複数事業の展開を狙う

亀山:今はビジネスといったらBtoBとBtoCがあるじゃない。それも「どっちでもいいわ。自分で考えて」と言ったんだけど、結局今はどっちが中心になってるんだっけ?

大野:toBのほうが多くはありますね。そもそもAlgomaticは1個の事業をやるというよりは、複数事業を生成AI領域で作っていこうと思っていて。複数の事業を探索してるんですが、結果的にいろいろと思考錯誤してるものはtoB領域が多いですね。

1個は「シゴラクAI」という、仕事の生産性をAIを活用して圧倒的に上げることを支援するサービスを出してます。

亀山:AIで何かをやろうと思ったら、toCよりもtoBのほうがやっぱり今は早いか。

大野:そうですね。結局、事業として堅くお金を稼ぎながら成長していけそうなものは、toBのほうが多い気はしますね。特に生産性向上に使えるユースケースが多いので、toBはイメージしやすくて。

一部の領域ではtoCでもマネタイズできて、事業として成り立つこともあり得るかなって感じなんですが、それ以外はけっこう難しいというか。不確実性は相当高い感じはしますね。

亀山:そうか。toCだとサービスを作っても、マーケティングとかでけっこうお金がかかるじゃない。もともとtoBかtoCかもわかんない状態だったから、ちょっと多めに予算を組んだんだけど、toBだったらそんなにお金はいらなかった?

大野:(笑)。いや、それもそんなこともなくて。

亀山:やっぱり採用とかにかかっちゃう感じか。

大野:そうですね。今は20億円を投資していただいていて、採用ではそこまで予算がかかるって感じではないんですが。ある程度いける事業が見つかった時に、マーケやセールスを踏むことを考えると、「そんなにいらなかった」って感じはまったくないですね。

亀山:そうか。toBでも、ある程度仕組みできたら広告しなきゃいけないしな。

大野:そうですね。

AIに興味のある若者は多いが、VCは及び腰

大野:事業探索の仕方的に、一定のお金を動かせる前提で市場を選んでるというか。最初から「20億円投資するよ」とコミットしていただけたゆえに、それなりのサイズの市場を最初から狙えるようになった感じはしますね。

小さく始めたら、もっと不確実性が高くて、(市場が)あるかどうかわからない、あんまり資本を突っ込む気になれないようなところを狙いにいっただろうな、という気もします。

亀山:なるほどね。俺もこれからAIでスタートアップが増えるなとは思ったんだけど、VCとかに「じゃあ、どういったところに投資するの?」と聞いたら、みんなけっこう悩んでたわけよ。

「結局、どこが跳ねるかがわかりにくい。(次に伸びる領域は)AIだとは思うんですが、投資自体に手がすくみますよね」みたいな話がよく出てたので、逆にこれはチャンスだなと。

今、AIをやりたい若者はいっぱいいるのに、VCはいまいちまだ及び腰だし。だったら早めにお金を積んで「みんなやろうぜ」ってやったほうが、みんな来るんじゃない? みたいな(笑)。

大野:それは本当におっしゃるとおりです。今、僕らはスタートアップとして新しい生成AI事業を作りにいってますが、周りのスタートアップを見ても、ここまで投資することにコミットして資金調達された環境で、大きい市場を取りにいこうとアクセル踏めているところはないので。

生成AIの革命期の今、採用状況は好調

大野:生成AIに興味がある方で、「生成AIで事業を作るんだったらAlgomaticにいこう」と思ってくれる人は多い気はしていて、そこはポジションが取れてる気はしますね。

亀山:じゃあ今、採用はけっこう順調にいってる?

大野:採用、めちゃくちゃ順調です。人数が多いというよりは、少数精鋭的に優秀な方が集まってくれています。事業を複数作りたいので、それぞれの事業ごとにカンパニーのCEO・CTOという感じで、事業のリーダー・経営陣たちを集めてるんです。

「普通の時期」って言ったらあれですが、「生成AIの革命期」でなければまったく仲間になってくれなかったような方たちも、ビジョンに共感して入ってくれていて。今、採用はめちゃくちゃ順調に進んでますね。

亀山:なるほど。じゃあ現状、人集めに関してはうまくいってるんだ。

大野:とにかく、この革命期に時代を変えるような大きいサービスを作りたいという思いでやってます。ただ、そういう気持ちでやりたい人が多くても、亀山さんほど大きく投資する投資家はまだそこまでいないので、その意味で稀有なポジションを取れている感じはしますね。

企業がChatGPTを導入しても活用しきれないケースも

亀山:とりあえず、今はどんなものを進めてるんだっけ?

大野:リリースしてるところで言うと、「シゴラクAI」というデスクワーカーの生産性向上のためのサービスを出してます。ビジネス用のChatGPTみたいなもので、「あらゆるシゴトをラクにする」で「シゴラクAI」なんです。

亀山:それは企業向けにSaaSで売っていくんだっけ?

大野:そうです、企業向けのSaaSですね。どういうサービスかというと、そもそも多くの企業ではChatGPTをそのまま使えないというハードルがあって。セキュリティの問題や、企業でメンバーが利用状況を管理できない問題など、「法人として使うための必要条件を満たせない」みたいな、本当に基礎となるハードルがあります。

あと、実際にChatGPTを導入したところで、どう使えばいいかよくわからず、結局良い使い方ができないから定着しない。仕事の中で意味のある使い方ができないから定着しないという、「使い方がわからない壁」が2枚目にあって。

うちのサービスを入れると、セキュリティの問題を解決した上で、「生成AI・大規模言語モデルを使うためには、こういうユースケースがあって、こういう仕事で使えて……」と、サービスを使うだけで使い方がイメージできる。かつ、その各ユースケースで使う時に必要な機能をたくさん揃えてる。

例えば、プロンプトと言われるAIの指示文は重要なんですが、ある程度事前にテンプレート的に用意して、あまり意識せずに仕事の中で使っていける。そういった機能を備えたサービスになっています。

スタートアップのライバルになる企業とは?

亀山:ChatGPTを会社が使うとしたら、内部データが漏れないようにとか、セキュリティも考えなきゃいけないじゃない。

Microsoftやいろんなところも、「会社のデータは出しませんよ」とか言うわけじゃない。そうなると自分たちの仕事って、そういったことを会社に提供してるところ(企業)がライバルになることになるのかな? また違うか。

大野:広く見ると、当然そういったところもライバルです。例えば今だと、自社でMicrosoftのAzureとかをホスティングしてとか……Microsoftが基礎となるサービスは提供してくれているので、自社でChatGPTライクな環境を作って、使える自社ツールを作っていくことはやり得ます。

ただ、そうなると、どこも同じようなセキュリティのセットアップをして、かつ自社で使いやすくするための補助輪をまた作っていかなきゃいけないというか、全部の企業が似たような作業をしなきゃいけなくなっちゃいます。

個社ごとに対応しなくても、だいたい共通しているニーズはたくさんあるので、うちはその共通のニーズを押さえる。普通のSaaSもそうですが、「自社開発・内製でシステムを作るよりもSaaS使ったほうがいいよね」みたいな、そんなことをやってますね。

亀山:それで、そういった企業向けのいろんなところに、スタートアップで勝てるのかい?

大野:(笑)。

亀山:どうなの(笑)?

大野:勝てるかで言うと、汎用的なニーズについては一定Winner takes allの市場になるとは思ってるんですね。一番良い体験ができたほうがいいし、データもそこに貯まっていくので。

Googleをみんなが使うような感じで、「企業向けの汎用のChatGPTライクなサービスだったらここ」みたいに決まってくるとは思うんです。とはいえ市場はめちゃくちゃでかいので、「このセグメントだったらこのツールのほうが使いやすい」というのは、企業の規模や業界とか、それぞれで棲み分けしていくような気はしています。

新興企業でも市場に入るチャンスはある

大野:現状はいろんな競合がいて、Microsoftみたいな超ビッグテックとかも含めているんですが、入るチャンスがないとはまったく思わないというか。むしろみんなで完全な新興市場を耕して、棲み分けは今後数年で決まってくる気はしてますね。

亀山:じゃあ、「自分たちのツールのほうがAzureよりも使いやすいね」という世界はあるってことね。

大野:そうですね。例えば、採用管理ツールでSaaSを使うのと同じように、毎回同じようなものを全部の会社が作っていくのは大変なので。それよりは、「ライトにまず導入するんだったらうちのツールのほうがいいよね」というポジションを取ってますね。

亀山:なるほどね。どういう会社がおすすめとかはあるのかな?

大野:ChatGPTや大規模言語モデルって、基本的に文章を書くタスクであればサポートができます。究極的にはありとあらゆるところに入れるんですが、今、よく使ってもらっている企業の特徴で言うと、業界ではITと広告が特に多いです。

規模で言うと100人以上の会社さんが多くて、意外……かどうかはわからないですが、1,000人以上のけっこう大手のエンタープライズ系の会社さんにも使ってもらってますね。

理論上はどこでも使えるんですが、特に使ってもらってるのはITリテラシーが特に高いIT企業系と、そもそも文章を書くことに企業としての比重がかなり大きい広告系。コピーを考えたり、広告の文章を考えたり、企画を考えたり、アイデアを出すのも文章ベースでやるので、今のところ(IT・広告業界が)多くはありますね。

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