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スタンフォード大学 卒業式 2008 オプラ・ウィンフリー(全2記事)

「幸せになるには…」オプラがスタンフォードで祝辞

アメリカの大物司会者・Oprah Winfrey(オプラ・ウィンフリー)氏がスタンフォード大学の卒業生に向けて、人生を豊かにする方法について説きました。彼女は失敗をしたとき、「これは私に、何を教えようとしてくれているのだろう?」と自分自身に問いかけます。そして教訓を手に入れることができたら、次に進むことができるのです。また、自身がおすすめする著書、エックハルト・トールの『ニュー・アース 意識が変わる 世界が変わる』から名言を抜粋。これから世の中に羽ばたく学生たちにエールを送りました。

失敗から教訓を得られれば、次に進むことができる

オプラ・ウィンフリー氏:次に、失敗について少々お話しをします。誰の人生であっても、滞りなくスムーズに流れることは無いからです。誰もがつまずき、挫折します。何かが狂うと行き止まりです。必ずそれは起こります。

そんな時は、人生が「道を変えるべきタイミングだよ」と教えてくれているのです。私は、失敗するたび、その失敗に問いかけてみます。失敗のたび、ピンチに陥るたび、困難に陥るたびに「これは私に、何を教えようとしてくれているのだろう?」と問いかけるのです。

そして教訓を手に入れることができたら、次に進むことができます。教訓をうまくものにすることができれば、及第です。同じ授業を受ける必要など、もうありません。ものにできなかった場合は、失敗は今度は別の姿を取って現れます。別のズボン、もしくは別のスカートを履いて再び現れ、皆さんの軌道を直そうとします。

私が学んだのは、そういった困難は、「人生が囁きかけてくる言葉に、耳を傾けない時に現れる」ということです。人生は、まず皆さん本人に囁いて教えてくれます。そしてその囁きを無視すると、悲鳴をあげる羽目に陥ります。皆さんがあらがうと、継続します。

しかし、正しい質問をすれば……。「何でこうなったのだろう」という疑問ではありせんよ。「これが起こったのは、私に何を教えようとしてくれてのことだろう?」と問えば、必要な教訓を得ることのできる場所、境地に導いてくれるのです。

友人エックハルト・トールは、著書の『ニュー・アース 意識が変わる 世界が変わる』で、「自分が何者であるかを認識すると、行動すべてに対して影響がある」と書いています。

ニュー・アース -意識が変わる 世界が変わる-

彼はこのように表現します。「逆境に抗ってはいけない。反対に、逆境と融合するのだ。すると、逆境の解決策が姿を見せる。逆境に流されることとは降服ではなく、責任ある行動を意味するのだ」。

一番大切なのは誠実さ、品質、美の感覚

ご存知の方も大勢いらっしゃると思いますが、ヘネシー学長のご紹介にもあったように、私はアフリカに学校を設立しました。南アフリカの少女たちに、ここスタンフォードのような、すばらしい未来を贈りたいと思ったからです。

私は5年の歳月をかけて、校舎が学生たち自身に負けないくらい美しくあるように、入念に準備しました。少女たちの一人ひとりに、自分の価値を、身の回りに反映されているものから感じとってほしいと思ったからです。

青写真にはすべて目を通し、枕を手にとって調べ、レンガの漆喰を目視確認し、シーツの縫い目も数えました。そして9つの州の村から、少女を一人ひとり選抜しました。ところが昨秋に、予想もしていなかった危機に直面しました。寮の女性監督員の1人が、性的虐待に関与している疑いがあるというのです。

ご想像の通り、それは極めて衝撃的な知らせでした。まず、私は泣きました。実に30分間、激しく泣きじゃくったのです。それから「では、対応しましょう」と言いました。30分間で何とか立ち直ったのです。まずは、今現在の問題に集中しなくてはいけませんから。すぐに手を打つ必要に迫られていたのです。

私は即、児童トラウマの専門家に連絡を取り、調査チームを立ち上げました。そして、少女たちが確実にカウンセリングとサポートを受けられるように手配しました。

ゲイルと私は飛行機に飛び乗り、南アフリカに向かいました。その間、私は絶え間なく自問自答していました。この事件は一体、私に何を教えようとしてくれているのか。

この経験は極めて辛いものでしたが、私は非常に豊かな教訓を得ました。今では、自分の犯した過ちが何かを理解しています。私は、間違った物に心血を注いでいたのです。私は、外側から学校を作ろうとしていたのです。本当に大切なものは、内側から作るべきだというのに。

そしてこの教えは、人生全般にも応用が利きます。一番大切なものは、中身なのです。誠実さ、品質、美の感覚です。私は教訓を得、少女たちもまた得たものがありました。少女たちは、この事件から、より活気に満ちて立ち直りました。そして、自分たちの声には力があることを学んだのです。

少女たちのはつらつとした様子と精神とは、私が彼女らに手渡したものよりも多くを与えてくれました。そしてそれは最後の教訓へと導きます。幸福の追求です。これについては1日中お話しすることもできますが、皆さんにはこの後も楽しいスケジュールが目白押しですよね。

人生とは、今を生きること

幸福の追求とは、大きなテーマです。しかし一方で、極めてシンプルでもあります。グウェンドリン・ブルックスは、子供たちへ贈る詩を書きました。「Speech to the Young : Speech to the Progress-Toward(子供たち 進み行く者へ贈る言葉)」の末尾に、彼女はこう書いています。

「勝利に甘んじて生きることなく、何かの終わりのために生きるのでもない。今、在る時と共に生きよ」。ブルックスは、トールのように、「現在を生きなさい」と訴えているのです。この瞬間を生きるのです。過去に何が起ころうと、それは今に対しては何の力も持ってはいません。人生とは、今を生きることなのです

私は、彼女がもう1つ「何者かと共にあれ」と訴えていると思います。人は、1人で生きる者ではありません。私もそれはよく知っています。真の幸せを掴むには、自分より大きな何者かと共に生き、その大いなる何者かを具現して生きるべきなのです。

人生とは、相互作用です。前に進むには、代わりに何かを返さなくてはいけません。私にとってこれは、人生についてのすばらしい教えでした。幸せになるには、何かをお返ししなくてはいけないのです。

皆さんがこのことをご存じであることは、よくわかっています。なぜなら、この教えは、この大学の理念に織り込まれているからです。ジェーンとリーランド・スタンフォード夫妻が設立し、皆さんに遺した教えです。皆さんは、この偉大な学校の沿革はよく御存じでしょう。

スタンフォード夫妻は、腸チフスにより15歳の若さで失った1人息子の名を遺すために、この学校を設立しました。夫妻は世間に背を向け、関わりを断つだけの充分な権利と動機とを持っていたはずですが、そうしませんでした。代わりにその悲しみと苦痛とを、高潔な行為へと昇華させたのです。

愛息を失って1年が過ぎるまでに、夫妻はこの偉大な学校のための基金を設立し、自分たちの息子に叶えてあげられなかったことを他人の子供たちに約束しました。この教えは明快です。傷ついたのであれば、他者の傷を癒します。苦痛にあれば、他者の苦痛を和らげます。混乱にあれば、他者がそこから脱するのを支援するのです。

その行程において、皆さんは私が言う所の「多いなる絆」の一員になるのです。「思いやり」の姉妹、「貢献」の兄弟に。スタンフォード夫妻は、どんなママやパパでも到底耐えられないような最悪の試練に直面しましたが、他者を助けることが、自らを助けることを理解していました。

この叡智は、曖昧なソフトスキルに留まらず、科学的ないし社会学的にも立証されています。他者を支援する者は、他者を助けることによって、魂の高まりを得ることができるのです。ですから、幸せになりたければ、外に出て、善行をすればよいのです。

しかし、善行により得られるのは幸せな気持ちだけではありません。これは私も確信を持って断言できますが、自分自身も、より向上できます。

どんな分野においても、貢献したいという気持ちで行動すれば、人生はより価値を持ち、幸せになることができるのです。

私は自分のトークショーを持って幸せでした。しかし、その幸せが、言い知れない、測り知れないほどの喜びと、真の深みに届いたのは、テレビを仕事として単に出演するだけのもの、と認識するのをやめ、テレビに利用されるのではなく、視聴者の皆さんに貢献するためのプラットフォームとして利用して行こう、と決めた時だったのです。

単純にこのことだけが、私の成功の軌道を変えたのです。俳優であれば、芸術としてもっとも輝くよう才能を提供すれば良いのです。解剖学者であれば、あなたの知識と医療への貢献が、あなたの持つ才能なのです。

持てる才能が何であろうと、それは同じです。ここにいる皆さんの多くは、今日この日、経営、法律、工学、人文科学、科学、医学などの専門家として、博士号その他の学位を取得することでしょう。

技能や才能を、他者への貢献に活用することを選ぶのであれば、貢献としてのパラダイムを選び、それを通して人生を見るのであれば、皆さんが行うこと全てが「仕事」から「才能」へと変わるでしょう。皆さんがスタンフォードで過ごした時間は、ただ卒業して就職するためではないはずです。皆さんは、多様な方法で豊かさを与えられて来ました。

世界に足跡を残し、その富を分かち合う方法は、これ以上にはありません。私は常に、自分が、より大いなる、善き者のために尽くすことができますように、と祈りを捧げています。

全ての人は偉大な存在になれる

終わりに、私の大好きなマーティン・ルーサー・キングの句を引用します。キング牧師は言いました。「全ての人に名声が訪れるわけではない」。しかし近頃は、皆が有名になりたいと願っているようですね。しかし、名声とは非日常的な体験です。

トイレに行くと、知らない人がついて来て、おしっこをする音に聞き耳を立てます。だから、音を立てずにおしっこするよう努力する必要があるのです。いずれにせよ、相手からは「まあ、あなたなのね! おしっこしていたでしょ」と言われます。

これが、名声に伴う非日常的体験です。皆さんは、こんな経験をしたいとは思わないでしょう?

キング牧師は言いました。「全ての人に名声が訪れるわけではない。しかし、全ての人は偉大な存在になれる。なぜなら、その偉大さとは、その人がどれだけ貢献したかにより決められるからだ」。

史学士の方は、きっと続きをご存じですね。「貢献するには、大学で取得する学位も、主語と述語の一致も、プラトンやアリストテレスについての知識も、アインシュタインの相対性理論や、熱力学第2法則の知識も必要ない。必要なのは、優しさに満ちた心と、愛に喚起された魂だけだ」。

まもなく、皆さんは正式に2008年のスタンフォード大学卒業生となります。ハートと頭脳とを併せ持つ皆さんは、今まさに飛び立とうとしています。才能をどのように生かして行くかは、皆さん次第です。

学位を手に、これらの教えを受けるために旅立ってください。これから皆さんには、すばらしいことが起こるでしょう。

私は常々、わかち合えば物事はより素晴らしくなると信じてきました。締めくくりに、卒業のお祝いを皆さんに贈りましょう。皆さんの座席の下には、私が愛読する2冊の本があります。

エックハルト・トールの『ニュー・アース 意識が変わる 世界が変わる』は、私の読書クラブ(OPRAH'S BOOK CLUB 2.0)のセレクションに入っていて、ネット配信で3,000万回ダウンロードされています。

ダニエル・ピンクの『ハイ・コンセプト「新しいこと」を考え出す人の時代』は、私が正しい方向に進んでいることを、確信させてくれました。

本当は、車をプレゼントしたかったのですが、さすがに無理でした。2008年卒業生の皆さん、おめでとうございます!

ありがとうございました。

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