2024.10.10
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プリンストン大学 卒業式 2010 ジェフ・ベゾス(全1記事)
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(最初にプリンストン大学学長・Shirley M. Tilghmanからの紹介スピーチ)
Shirley M. Tilghman:Amazonなしの生活、想像できますか? Amazonは私のような年を重ねた者の生活にも密着しています。クリックするだけでトニ·モリソンの最新作、そして18世紀に出版されたジョン·ロックの作品まで手に入れることが出来るなんて他では出来ないことでしょう。素晴らしい本をチェックすると同時に、靴までチェック出来てしまうんですから!
(会場笑)
Amazonの2009年の総売上高は2450億ドルを超えます。この世界で最も大規模なオンライン小売会社、AmazonのCEOは46歳の若さです。Amazonは1995年に創業、ここにいる2010年度卒業生の皆さんよりも若いのです。
これからご紹介する方のストーリーは、正しい時に正しいアイディアが正しい人の手に渡った時、世界中の人の生活を変えることになることを物語っています。彼の場合のそれはインターネット時代初期に、インターネットの力を使い、全世界で出版されているすべての本を提供するバーチャル本屋をつくるというアイディアでした。
そしてそのアイディアは、1986年にこのプリンストンを最高の名誉を受け卒業していった、自称オタク、コンピューターサイエンス・エレクトリックエンジニアリング専攻者の手に委ねられました。それが本日のスピーカー、AmazonのCEOジェフ·ベゾス氏です。
彼は以前、彼と同じくプリンストンを1992年に卒業した妻マッケンジーと共に、ウォールストリートに拠点を置くD.E.Shawで働いていました。ジェフとマッケンジーが彼らの経済的安泰を約束するウォールストリートを後にして、ドットコムスタートアップの流れに参入し挑戦を始めたのが1992年のことです。
ジェフは言っています。
「失敗することは新しいものを生み出す為に必ず通らなくてはならない道だ。もし絶対に成功するとわかっていたらそれは何の挑戦にもならない。Amazonは私達が新しいことに挑戦し続けた結果である」
両親の貯蓄を軍資金に、ジェフはシアトルの自宅ガレージの中につくったテーブルの上で仕事に取り掛かります。彼は多くのスタートアップが失敗することをよく理解した上で、そうならないよう全力を尽くします。少し資産があったから出来た、自分は恵まれていたという事実は否定しない、とジェフは言います。しかし、彼に顧客満足に最重点を置く素晴らしい企業をつくろうという確固とした意志がなければAmazonは実現していなかったでしょう。
彼は昨年の事業報告書にこのように記しています、「Amazonの今年の目標は452ありますが、そのうちの360は顧客満足に直に繋がるものとします」。この同じ事業報告書に「収益」という言葉は8回しか出てきません。
「でもだからといって、皆さんも452の目標を立ててそれに向かって行動せよ、と言っている訳ではありません」
(会場笑)
「これがAmazonが成功した理由のうちのひとつであるということをお伝えしたいのです」
もうひとつの成功の秘訣、それは彼が商業とテクノロジーを画期的でクリエイティブな方法で融合させたことにあります。そして彼が失敗を恐れなかったことも忘れてはいけません。
まさにAmazonは飛躍の代名詞です。そしてその飛躍には彼らは彼らの販売する書籍の全文検索サービス、「なか見!検索」を開設したことも含まれます。素晴らしい機能を開発したことだけが飛躍なのではありません。2003年に開設されたこの機能により、顧客が書籍の内容を購入前に閲覧出来るよう力を入れたというその事実が、Amazonが顧客満足に力を入れている何よりの証拠です。この機能により顧客が閲覧出来る書籍は120,000以上に至ります。
他にもワンクリックショッピング、商品のカスタマーレビュー、そしてキンドルの発売。Amazonの発展を反映するかのように、キンドルストアで販売される書籍の数は開設からわずか2年の2009年時点で約460,000タイトルとなりました。
ここまで来たらもう後戻りはできません。ジェフは事業報告書にこう記しています、「私達のビジョンは、世界中に現存するすべての書籍を60秒以内に提供できるようにすることです」。
実現不可とも思えるビジョンです。しかしアルベルト·アインシュタインはこう言っています、「成功する可能性を秘めたアイディアとは、一見して突拍子もなく誰かに言うのもバカバカしいと感じるような大胆なものである」。
アメリカン·アカデミー·オブ·アチーブメントはジェフの功績をこのように称えています、「世界中で本の購入方法に革命を起こしたことに留まらず、ジェフ·ベゾスは世界中の人々の読書方法にまで改革をもたらした」。
プリンストン大学が、彼の起こしたこの世界革命に少しでも貢献出来たのであれば光栄だと思っています。
夢見る行動者であり、起業家でありエンジニアでもあるジェフ。こんなにも成功したのにも関わらず、まったく気取らない彼は当校の誇りです。彼をこの場にまた迎えられることをとても嬉しく光栄に思います。ジェフ·ベゾス氏です!
(会場拍手)
Jeff Bezos:子供の頃、夏は祖父母と彼らの所有するテキサスの牧場で過ごしました。私の仕事は風車を直したり、家畜の予防接種をしたり。よく牧場で祖父母の手伝いをしたものです。午後になるといつも皆でテレビのメロドラマを観ました。
祖父母はキャラバンクラブのメンバーでした。キャンピングトレーラー(エアストリーム)の所有者が集まって、皆でアメリカ·カナダ内を旅しようというサークルです。私達は毎年ではないながらも、たくさんの夏をキャラバン参加して過ごしました。祖父の車にエアストリームを接続しおよそ300人のメンバーたちと共に旅に出かけたものです。
私は尊敬する大好きな祖父母と旅に出るのをいつも楽しみにしていました。
ある夏のある旅で事件は起きました。私はそのとき10歳くらいだったと思います。私は後部座席に座っていて、祖父が運転していました。祖母は助手席に座っていました。彼女は旅の間中いつもたばこを吸っていたのですが、私はそれがとても嫌でした。特にそのにおいには我慢が出来ませんでした。
この頃私は、周りにある様々なものを計算して遊んでいました。例えばガソリンのマイレージだとか、食料品に使ったお金を計算したりしていました。ちょうど同じ頃、たばこの悪影響を啓蒙するキャンペーンをよく耳にしていました。正確に思い出せませんが、「たばこを一口吸う度に人生の何分か寿命が縮まる」という内容で、確かたばこを一吸いすると2分縮まる、だったように記憶しています。
いずれにせよ、祖母の為にこの計算をしてみることにしました。一日に吸う本数、そして一本のたばこを何口で吸うかを元に計算をしてみました。自分で導いた計算の答えに満足した私は、後部座席から助手席の方に身を乗り出して祖母の肩をトントンと叩き、自信満々に言いました、「おばあちゃん! たばこを一口吸うごとに2分寿命が縮まるんだ! つまりおばあちゃんの寿命は9年も縮まっていることになるんだよ!」
この時のことは非常に鮮明に記憶に残っています。私が求めていた反応とは違う反応が返って来たのです。
(会場笑)
私は私の賢さと計算のスキルを祖父母に褒めて欲しかっただけだったのです。
「ジェフ! お前はすごく賢いな! こんなに複雑な計算が出来るなんて。人生の一年から何分が奪われるか、だって? 割り算も出来るのか!」
と、こんな具合にはなりませんでした。
(会場笑)
なんと、祖母が泣き出してしまったのです! 彼女が泣いている間、私はどうしたらいいかわからず後部座席に座っていました。それまでずっと黙って運転していた祖父がハイウェイの路肩に車を停めました。そして私の方に周って車のドアを開け、付いてくるように私を促しました。
「やばい! 怒られる!」
祖父はとても賢い穏やかな人でした。祖父に叱られたことは過去に一度もありませんでした。これがその記念すべき最初になるんだ、いや待てよ、もしかしたら、車に戻っておばあちゃんに謝りなさい、と説かれるのかもしれない、なんて不安に思っていました。今までこんなことは一度もなかったので、一体これから何が起こるのか想像もつかなかったのです。
彼はトレイラーの横で立ち止まりました。私もそこで止まります。少しの沈黙の後、彼は私をしっかりと見て、やさしく穏やかにこう言いました、「ジェフ、いつかわかる日が来ると思うが、賢くなるよりもやさしくなるほうがはるかに難しいことなのだよ」
今日この場で皆さんにお話したいのは、才能と選択の違いについてです。
賢さは生まれ持った才能ですが、やさしさは選択です。生まれ持った才能とは、言ってしまえば与えられたものなので努力を要しません。その反面、選択をするということ、これは難しいことなのです。気を付けなければ、才能は私達を傲慢にします。そして自分の才能にうぬぼれると正しい選択をすることが出来なくなります。
ここにいる皆さんはたくさんの才能に恵まれた方々ばかりです。ここにいる皆さんに共通するたくさんの才能のうちのひとつ、それは皆さんが非常に賢い、ということでしょう。こう言い切れる理由は皆さんが競争率自体が非常に高いプリンストン大学に入学し、そしてその過程を修了したからに他なりません。もしあなたが賢いことを証明できなかったならば、この大学に入学することすらなかったでしょう。
この世界を生きていくのに、賢さは皆さんの武器になるでしょう。私達人間は日々一歩一歩前に進んでいるわけですが、ある日ものすごいことを成し遂げるものです。近い将来、 資源エネルギーを作り出すことが出来るようになるでしょう、それも大量に。原子の研究は、人間の細胞に入り込み、直接病気を治せるものすごく小さな機械を作り出すことでしょう。
毎月私達の暮らしに影響を与える素晴らしい進歩のニュースが発表されます。そして毎年それは更なる進歩へと繋がります。私は、人間の脳の秘密さえも完全に解明される日が確実に近づいていると思っています。ジュール·ヴェルヌ、マーク·トゥエイン、ガリレオ、そしてニュートン。過去の偉大な人物達は皆、社会がどれだけの進化を遂げたかを彼らの目で確認することができたなら……と思っていたことでしょう。
特に私達が生きている今この時代を生きていたかった、と悔しがっているのではないでしょうか。社会全体として私達はとても恵まれています。それは個人にも同じことが言えます。私の目の前に座っている皆さんも例外ではありません。私達は皆恵まれているのです。
そこで質問です。皆さんは恵まれた自分だけの才能をどのように使いますか? 才能があることを誇りに思うでしょうか? それとも自分で選択し、自分で選んだ道を誇りに思うでしょうか?
Amazonのアイディアが浮かんだのは16年前のことです。当時の統計で、インターネット利用率が毎年2300%増加しているということを知ったのです。そこまで急成長を遂げるビジネスの話は見たことも聞いたこともありませんでした。オンラインで本屋をやろう! そしてそこで世界中の出版物を提供できるようにしよう! オンラインだからこそ可能になる超大規模な本屋をつくってやろう! この考えに私はとてもわくわくしました。
31歳になったばかり、結婚して一年が経った頃でした。私は妻のマッケンジーにこう言いました、「仕事を辞めて、このアイディアに挑戦したいんだ。クレイジーかもしれない。他の多くのスタートアップが失敗しているように、僕も失敗するかもしれない。まったく先が見えないんだけれど、どう思う?」プリンストン大学の卒業生で、今日も二列目に座っている妻のマッケンジーは言いました、「やってみたらいいと思うわ!」。
小さな頃から私は発明家でした。例えばセメントを詰めたタイヤを使って自動ゲートを作ったことがあります。太陽電池を作ろうと試みたこともありますが、傘とアルミホイルではやはり無理でした。フライパンをぶら下げて兄弟の侵入を知らせるアラームを作ったこともあります。
(会場笑)
私は昔から発明家になりたかったのです。そしてそのまま大人になった私を妻は応援してくれました。
Amazonを始める前はニューヨークにある金融機関で働いていました。たくさんのスマートな人々と共に仕事をし、尊敬する素晴らしいボスにも恵まれました。ある日、そのボスのところへ行って、「インターネットで本を売る会社を立ち上げたいんです!」と言いました。
ボスは私をとても長い散歩に連れ出しました。セントラルパークを随分歩いた後、彼はついにこう切り出しました。
「ものすごくいいアイディアだね! でもそれは君の仕事を捨ててまでやるべきことなのかな? 仕事に就けない人にとってはビッグチャンスだと思うけど。今君はものすごくいい仕事に就いていると思わないかい?」
(会場笑)
彼の言うことももっともだと思いました。更に彼は最終決断を下す前に48時間だけもう一度よく考えてみるべきだと言い、私は彼のアドバイスに従いました。安泰を取るか挑戦するか、とても難しい決断でした。
しかし最終的に私は挑戦することに決めました。挑戦した結果失敗したとしても後悔はしないだろうと思ったのです。それよりも、ここでやってみなければ一生後悔するだろうことは確実でした。色々考えた結果、私は安全ではない道を選びました。そしてこの道を選んで本当によかったと思っています。
明日になれば皆さんは現実社会へ飛び出していきます。皆さんだけの人生を一からつくる為の第一歩を踏み出すのです。皆さんは自分の才能をどんな風に使いますか? これからの人生でどんな選択をしていくのでしょうか?
何もせずぼーっと人生を生きるのか、それとも自分の好きなことを追及していくのか?
皆と同じでいるか、それとも他の誰とも似ていないオリジナルでいるか?
安定を選ぶか、それとも挑戦し続けるか?
批判されたら落ち込むか、それとも自分を信じるか?
間違いを犯したらそれを隠そうとするか、それとも謝るか?
恋をする。傷つくことを怖がって何もしないでただ見ているだけか、それとも思い切って行動に移すか?
安定を取るか、それとも「バカじゃないのか?」と思われるようなことをやってみるか?
困難な状況に陥ったら、そこで諦めるか? それともがむしゃらになってやるか?
言い訳や批判ばかりするのか、それともやってみるか?
他の人を蹴落としてまで賢くなるか、それともやさしくなるか?
80歳になったあなたが、あなたの過去を振り返るとしましょう。その時に一番心に残っていること、思い出すことはあなたが下してきた決断の数々であると私は信じています。あなたが何を選ぶか、あなたが下す決断が「あなた」をつくっていきます。
あなただけの道を切り開いて下さい。
皆さんのご活躍を心より祈って。ありがとうございました。
参照リンク
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