2024.10.01
自社の社内情報を未来の“ゴミ”にしないための備え 「情報量が多すぎる」時代がもたらす課題とは?
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リード・ホフマン氏:ありがとう、サム。私がこのクラスのシラバスを見たとき、ここで学べるたくさんのスキルに何を付け加えるかを考えました。
私が教えようと思っていることは、素晴らしい会社の創業者とはなんなのか? そうなるためには何が必要なのか? ということです。会社を設立しようとするとき、自分がどうなっていればいいのか、どうやって準備をするのか、そして何が自分にとって正しいかを判断するのか。こうした類のことです。
まず、素晴らしい会社の創業者とは、なんなのかから始めましょう。
古典的には、スティーブ・ジョブズやビル・ゲイツ、イーロン・マスク、マーク・ザッカーバーグやジェフ・ベゾスのような人たちがそうだと思われています。会社の創業者というのはスーパーウーマンやスーパーマンのようなイメージを持たれがちです。能力のパノプティコン(「ありとあらゆる全ての」という意味)を持っている人たちです。パノプティコンという言葉を使えるのはこれがスタンフォードの講義だからですが。
(会場笑)
例えば、PMFをどうすればいいか知っている、プロダクトも作れる、戦略も立てられる、マネージメントも得意だし、資金調達もできる。こうした全く異なる能力を全て備えているということです。世間が言う素晴らしい会社創業者というのは、スーパーマンだとする見方で、全てに秀でている人のことを指します。オールラウンドで、何でもできて、何が来ても打ち返せるのです。
私が自分の会社を立ち上げようとしていたとき、こんな記事を読んだことを覚えています。
「ビル・ゲイツはアインシュタインより頭がいい」
確かにビル・ゲイツは非常に頭が良くて成功しています。でもそもそも彼自身だって「アインシュタインより頭がいい」なんて言われたかったわけではないでしょう。これは会社創業者をスーパーマンのように考えるイメージに原因の一端があります。素晴らしい創業者は何でもできる、例えばビルからビルへひとっ飛びに飛び移れるとか、そういう感じです。しかし、会社の創業者というのは、現実的には大量の全く異なる問題に頭を抱えているのです。
常にどこにでもスーパーパワーを発揮できる人なんていません。でも会社を作ろうと思っているなら、あなたは幾つかのスーパーパワーを持っているはずです。あなたをユニークな人間にする力、そしてあなたが解決しようとしている問題を解決できる力、他の競合から差別化してくれる力。でも実際には、天才的な才能によるものではありません。
狂気と天才の違いについて語ることが難しいのは、それが結果から遡って語られるからです。不確かな状況を解決しようとしているとき、本当は天才だったのに、狂人と呼ばれてしまうかもしれません。逆に本当は狂人だったのに、幸運にも天才と呼ばれるかもしれません。
それでは一体、どのような能力があり、どのように考えれば、私たちのようなごくごく平凡なありふれた人間がこうした戦いの中に参加できるのでしょう? これが素晴らしい会社創業者になるための問いです。
例えばこのスライドに、超重要だと誰もが納得するような能力を並べてみました。でもこれを見ていると、これは人間を超えたタスクに見えてくるはずです。
私がやったことは、これらを整理して、何が本当に優れた会社創業者を作り出すために重要なのかを考えることでした。なぜならこの全てで10点満点を取れる人は、起業オリンピックの金メダリストくらいでしょうから。
チームについて考えるところからはじめましょう。
創業者がスーパーマンであるという神話を打ち破りましょう。普通はひとりの万能な創業者ではなく、2~3人のチームで当たるのがベストなのです。これは必ずしも、ひとりの万能の創業者では上手くいかないということではありません。ですが、多くの場合において、2~3人のほうがよりよい結果になります。私自身が投資家として企業を見るときに、こうしたプロジェクトは高く評価しますし、こうした創業者は上手くいきやすいです。
なぜ2~3人かというと、先ほど話したように、必要なスキルセットがあまりに膨大すぎるからです。どうやって会社を成功させるのか、という質問があるとき、創業者が2~3人のチームであるべきだと答えます。異なったスキルを持っていれば、お互いに補完し合うことができます。
誰にでも弱点はあります。起業する際に出会う多種多様な問題について、弱点を補完し合いながら当たることができるのです。投資対象としても高い評価を受けることができます。
そもそもこうした起業というのは、途中で潰れてしまう場合が非常に多いです。よくあるのは、共同創業者と喧嘩別れしてしまうことです。常にそうなるというわけではありませんが、良くある潰れる理由のひとつです。
次に必要なものは、立地です。本当によく聞くのが、スーパーな才能を持った人たちはみんなシリコンバレーにいる、ということです。これは確かに事実です。
シリコンバレーのスタートアップがなぜこれほど成功しているのかといえば、たくさんの才能と人材がここに移住してきているからです。シリコンバレーは、特にソフトウェア分野においてはここ20年極めて強い力を持っています。
しかし、全ての素晴らしいソフトウェア開発者たちがシリコンバレーに移住するわけではありませんし、できるわけもありません。世界の様々な場所にも、たくさんいます。
なぜ素晴らしい創業者にとって立地が重要なのか? それは素晴らしい創業者は、問題を解決するために重要な人脈を築けるからです。そして「私はスーパーマン、どこででも会社が作れる、例えば南極でもどこでも」というようなことではないからです。成功しようと思ったら、自分が解決しようとしている問題や自分が取り扱う分野について、最も強いネットワークを築ける場所に行くべきです。
シリコンバレーは、確かにある分野においては超優秀でしょう。ですが、別の問題を解決するには、別の場所が最適でしょう。全てに優れた場所はないのです。
ふたつの例を出しましょう。ひとつはGrouponです。Grouponはここ、シリコンバレーでは設立さえできなかったでしょう。確かにソフトウェアではあるのですが、自らネットワークを作り出しているのです。もちろんインターネットテクノロジーとモバイルプロダクトについての素晴らしいネットワークはこのシリコンバレーに多くあります。
Grouponの立ち上げ時期において重要だったことのひとつは、大きな販売力があったことです。そうした力とネットワークの弱みというのは、実は表裏一体です。シリコンバレーは、例えば25階建てのビルがあったら20階分にはセールスの人がいて、それで物事を進めていく、といったプランとはまるで逆の性質を持っています。
そうしたセールスに特化したプランは、ここでは評価されず、批判され、投資家たちは資本効率やネットワーク効果など、シリコンバレーで鍵となるものが必要だと言っていたでしょう。だからGrouponがシカゴで設立されたことは意外ではありません。シカゴはこうしたセールスに本当に強いからです。このように、ソフトウェアのスタートアップでさえ、シリコンバレー以外で設立することがあり得るのです。
ここで設立するのに向いていない愚かなスタートアップは、他にもあります。例えばファッションのスタートアップをはじめることを考えてみましょう。それがPoshmarkのようなモバイルマーケットプレイスであれば、ここで設立すべきでしょう。
しかし、新しいファッションの会社を設立するとき、シリコンバレーでやるというのはいい考えではありません。ファッションの会社を作ることが悪いわけではありません。自分がやることをサポートしてくれるネットワークが必要だということです。
ここに私がなぜ素晴らしい創業者になるために場所が重要だと考えたのかの理由があります。私はよく例えとして、「起業とは崖から飛び降りて、落ちるまでに飛行機を組み立てるようなものだ」と言います。非常に困難で、基本的には死ぬのが前提だからこそ、勝ち残るために考えうる全てのチャンスをものにしなくてはいけないのです。
そのため素晴らしい創業者は、人脈を得るためにシリコンバレーに集っているのです。SNSや、モバイルや、ネットワークや、マーケットプレイスのスタートアップにとって、ここはとてもいい場所です。
しかし他のことをするのであれば、全く違った別の場所に行くことを考えるべきでしょう。これは新しいことではなく、むしろ使い古された単なる「逆張り」だと言われるかもしれません。
それでは逆張りとは何かについて考えてみましょう。逆張りをすることは簡単です。難しいのは、逆張りをした上で、それが正しいと考え続ける事です。
例えば自分の考えが逆張りなのか考えるとしましょう。自分が逆張りをしているということは、頭のいい人は自分の考えに反対する、ということですね。頭のいい人は想像しにくければしません。何かに精通した人が、あなたの考えが重要なチャレンジに価すると考えるのなら、それは、逆張りではないということになります。
つまり逆張りというのは、他人と関係しているという事です。そうでしょう? インターネット上のたくさんの人たちが、この考えについてなんというだろう、というふうに考えているうちは、それはいいアイディアにはなりえません。
逆張りをする人は、なぜ他の人が知らないことを自分が知っているのだろう、それは自分の頭がよくて他の人はそうじゃないからだ。だから自分の逆張りは正しい、と考えがちです。これは非常によくないです。確かにこれが事実であることもあるかもしれません。しかし、誰もいない平野では落雷に遭いやすいということも事実です。
他の人が知らなくて自分が知っていることについて、もっとたくさん考えましょう。例えばLinkedInの最初期には、創業者のみんなに、自分が話せる全ての頭がいい人に話を聞いて、フィードバックを得るべきだとアドバイスしました。LinkedInで私が歩き回って、こんなことを考えているんだ、どう思う? と言ったとき、私のネットワークの3分の2かそれ以上の人々は、気が狂ってしまったと思っていました。
なぜでしょうか。彼らが言ったのはこうです。これはネットワークプロダクトなのだから、たくさんの人がいなくては価値がない。登録した1人目が、1人では意味がないから2人目を連れてきたとしよう。しかし1人目にとっても2人目にとっても、このサービスは意味がない。なぜならお互いはもう知り合いだからだ。ユースケースを作るときは、50万から100万人を想定します。そこまでサイズが大きくならない、成長しない、というのが彼らの意見でした。
こうした人たちが知らなくて、私が知っていたことはなんだったかというと、自分のビジョンを信じているとか、これはおもしろいと思うとか、こうしたプロダクトがあるべきだとか、そういった興味関心です。そうした物が、LinkedInが実際に達したような価値ある大きさまで成長させました。多くの批判者たちが考えていなかった、私だけが知っていることだったのです。
逆張りをするということを考えるとき、なぜ他の賢い人たちが反対するのかを考えなくてはなりません。彼らはある知識を持った立場から反対しています。でも彼らが知らない、私だけが知っていることがあるとき、逆張りは実際に成功するのです。このケースからわかることは、一般に会社創業者は正しい感覚によって逆張りをすべきだということです。
最後に、逆張りと言っても、いろんな逆張りの仕方があります。例えばよくある例として、今はとても小さいアイディアだが、やがてとても大きくなるものなのだ、と言います。
ロケットのような急成長モデルをみんな目指そうとしますが、実際にはゆるやかな成長曲線のほうがもっともっと価値があります。LinkedInはロケットのように成長したときはありませんでした。少しずつ年々成長していったのです。ですが、インターネットにおいては、典型的なパターンが重視される傾向にあります。
※続きは近日公開!
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