2024.10.10
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アルフレッド・リン氏(以下、アルフレッド):では、ここからブライアンとのQ&Aタイムです。
ブライアン・チェスキー氏(以下、ブライアン):皆さんこんにちは。
アルフレッド:ブライアン、会社をつくっていく際の企業文化の重要さをどのように理解していったかについて話を聞かせてください。
ブライアン:ここにいる皆さんはすでに私達の会社の歴史をご存知かもしれませんので、最初から全ては話しません。短いバージョンでお話します。
Airbnbのような会社を最初からやりたいと思っていたわけではありません。私は仕事を辞めて、LAに住んでいました。ある日サンフランシスコに引っ越し、大学時代の友人とルームメイトになりました。それがジョー・ゲッビアでした。
当時私の銀行預金は1000ドルで、家賃は1150ドル。その週末にサンフランシスコでインターナショナルデザイン展が開かれることになっていました。周辺ホテルはどこも満室です。
そこで私とジョーは私達の部屋をこのイベントに各地からやってくる人に貸すことにしました。私はベッドを持っていませんでしたが、ジョーはクローゼットから3 つのエアベッドを引っ張りだしてきました。これが「エアベッドとブレックファースト」というオリジナルネームの由来です。このようにして会社が始まったわけです。
ブライアン:私は大学に行きましたが、両親はソーシャルワーカーでしたので私がアートの道に進むことを心配していました。アートでは卒業後にちゃんと就職出来ないのでは? というのも子を持つ親なら当然心配することです。
親からは健康保険制度がある会社に絶対に就職するのよ、といつも言われていました。AirBreakfast.comが始めた当初のオリジナルネームですが、始めた時に母から「保険がある会社には結局務めなかったわね……」と言われたものです。
(会場笑)
今この話をしているのは、Airbnbは大きなことをやってやろうと狙って始まったことではないということを言いたいからです。始めた理由は家賃を払えなかったからで、まずは家賃の心配をしなくても良くなってから、大きなことをやる為に動き出そうと思っていたのです。
私達が抱えていた問題に対してのソリューションをつくると、それが成功する大きなアイディアへと結果的に繋がりました。
素晴らしい会社にする為には素晴らしいチームが必要です。創業当初、共同創業者は3人でした。ジョーとネイトと私です。私がこんなに成功することが出来たのは、ラッキーだったからです。
Airbnbのアイディアを思い付いてラッキーだったというよりは、素晴らしいチームに恵まれたことが幸運でした。Airbnbのような良いアイディアを思い付いてある程度成功出来たとは思いますが、この2人と一緒に始めなければここまでではなかったでしょう。
彼らは私がとても尊敬する人々で、彼らの才能に対してむしろこちらが恐縮してしまうくらいです。一緒にいると気が引けてしまうくらいに優秀で尊敬出来る人と一緒に仕事をすることで、自分も彼らに付いていかなければと必死になります。
ブライアン:2008年頃の創業初期、私達は家族のようなものでした。創業者とは親で、会社は子です。子は両親の関係性から多くを学びます。両親の仲が上手く行っていなければ、子供はグレたり、問題を抱えることになります。そんなことになってはいけません。
会社には素晴らしい文化が欠かせません。ジョーとネイトと私は家族でした。毎日18時間、週に7日一緒に働きました。一緒に働き、一緒に食べて、一緒にジムで汗を流しました。重要なミッションに向かって一緒に行動する特別部隊のように感じていました。
お互いを信頼しあい、それが会社のDNAのようなものだったと思います。あるポイントでプロダクトづくりから第2段階へ移行しなくてはなりません。第2段階とはプロダクトを支える会社づくりにフォーカスすることです。
プロダクトをつくり、プロダクト・マーケット・フィットを得ることが出来たらその後は会社を確立しなければなりません。つくったプロダクトがどれだけ素晴らしくとも、素晴らしい会社にすることが出来なければプロダクトが長期的に生き抜くことは出来ないでしょう。私達は長期的に成功し続ける会社にしたいと思いました。
会社が子のようなものであれば、親は子に親よりも長生きしてほしいものですよね。親が子よりも長く生きてしまうのは悲劇です。長く存続する会社にしたかった。
ブライアン:長く続く会社には共通点があることを知りました。彼らは彼ら独自のユニークで特別な、とても明確なミッションと価値観を持っていました。
スティーブ・ジョブズは情熱をもって何かに取り組む人は世界を変える事が出来ると強く信じて、それを彼の信条としていました。彼はAppleのプロダクトが変化し続けても、会社が大切にする価値観がブレたことはないと言っています。
私達はAmazon やNike等、長く存続する多くの会社について学びました。同じことが国造りにも言えますよね。明確な信条がある国が生き残り続ける。
目的を持つことは必要不可欠であり、文化はよく考えてデザインされるものだということです。私とアルフレッドが知り合ったのは、私達がセコイアから投資を受けたからです。当時Zapposは素晴らしい文化を持っているとよく話に聞いていました。
長く愛される企業に共通するのが文化であり、そこには2つの要素があることを学びました。
ひとつはふるまい方でそれは50年もあれば変わります。ふるまいやしきたりはどんどん変わります。
しかし、絶対に変わってはならないものがあります。それが原則であり、原則とはその会社をその会社であり続けさせるものです。誠実さや正直さはコアとなる原則というよりも当たり前に持っているべき価値観です。
いくつかその会社独自の価値観を持ち、それが原則であるべきです。そしてこれらは生涯考え続けなければならないものかもしれません。人と自分が違うところ、自分にしかないものとは何なのかと。
Zapposはスタッフが100人の時に10個の守るべき信念を書き出したとのこと。Zapposのトニーは100人のスタッフを抱える前にコアとなる原則を書き出しておけばよかったと言っていました。それを手本とし、人を雇う前に守るべき原則を書き出しました。
アルフレッド:最初に人を雇うまでにどれくらいの時間をかけましたか?
ブライアン:私達が最初に雇ったのはエンジニアでした。彼を雇うまでに4ヶ月、5ヶ月の時間をかけて数千人の候補者から数百人と面接をして決めました。
アルフレッド:そしていつ大切にすべき原則的価値観を書き出したのですか?
ブライアン:2009年の1月頃でしょうか。始めてから6ヶ月、7ヶ月ほどが経ったあたりです。人からなぜ最初のエンジニアを雇うまでにそんなに時間をかけたのですか? と聞かれることがあります。
私は最初に雇うエンジニアは会社のDNAだと思っています。会社が成功すればエンジニアを千人ほど雇うことになりますね。創業当時、私達が最初のエンジニアに期待するのはいくつか新しい機能をつくってもらうことではありません。
これから雇う千人のエンジニアの手本となってくれるような人、長期的に付き合って行ける人と一緒に仕事をしたいと思いました。年齢やバックグラウンドに多様性は必要ですが、コアとなる価値観に多様性は必要ありません。皆が同じ価値観を持って同じところを目指すべきです。
アルフレッド:ではAirbnbの価値観とは?
ブライアン:6箇条の信念があります。その中から3 つをお話します。まずはミッションにおけるチャンピオン。これがどういうことかというと、私達は明確なミッション・目的を持った人々と一緒に仕事をしたいと思っています。
報酬がいいから、有名な会社だから、オフィスがカッコいいからといって希望してくるような人とは一緒に仕事をしたくありません。ミッションについて少し話をさせてください。Airbnbとは世界を旅行する際に宿泊する家や部屋を検索し予約するサービスとして知られています。
確かにそれが私達がやっていることで間違いではありません。しかし、私達がこのサービスを提供している理由としては弱いです。
2012年に、Airbnbで自宅を提供するホストの1人、セバスチャンと会いました。私達は実際に各地のホストと会って話を聞いています。ロンドン北部に住む50代後半の男性です。彼は言いました、「ブライアン。君がウェブサイトで使わない言葉があるね」。
私は、「どんな言葉でしょうか?」と聞きました。「友情、フレンドシップだよ。これについて少し話をしたいんだ」と彼は言いました。
彼の話はこうです。そのミーティングの6ヶ月前に彼の家の前で暴動が起こり、彼はとても不安な思いをしたそうです。翌日彼の母親が大丈夫? と電話をしてきたそうです。彼は大丈夫だよ、母さんと言いました。
家は無事なの? と彼の母親。家も無事だよ、と彼は言いました。ここからが面白いんです。暴動が起きてから、母親が電話してくるまでを時間にすると約24時間。その24時間の間で彼がAirbnbを通じて過去に受け入れた7人の宿泊客から電話があったそうです、「大丈夫? 無事ですか?」と。
彼の母親より先に、過去に彼の家に滞在した宿泊客、しかも7人から連絡があったんだぞ。これがどういうことかよく考えてみるんだ、と彼は言いました。
今年の夏のピークの日には190カ国で425,000人がAirbnbを通じて誰かの家に滞在していました。これは北朝鮮、イラン、シリア、キューバを除く全ての国です。ロンドンのセバスチャンの話を聞いても、これを見ても、私達のサービスが部屋の予約や旅の間の宿泊サービスだけではないことは明確です。
私達の信念は人々が世界をより身近に感じられるように、世界中の人々を繋げていくことです。どこに行っても温かく迎えられるような感じを人々に感じてもらいたい。
私達のミッションは世界のどこへ行っても、その場所があたかも自分のホームグランドのように馴染めるようにすること。5年後、20年後の私達が部屋の提供をまだ続けているかはわかりません。
しかし、何年経っても、人々を繋げていく、温かい人の輪を世界中で広げていくという私達のミッションが変わることはありません。
私達が人を雇う時、このミッションに共感するミッションのチャンピオンであることが大前提です。このミッションに生きているか? 深くこれを信じているか? 人を繋げるというミッションに関連する逸話を持っているか? 私達のプロダクトを使ったことがあるか? 私達のプロダクトの可能性を信じているか? と確認します。
スタッフ数が300人に増える時点まで、私自身が面接官として人々を面接していました。クレイジーだと思われるかもしれませんが、「余命1年と宣告されてもこの仕事をしたいと思いますか?」と面接でいつも聞いていました。
この質問にイエスと答える人は家族と上手く行っていないのではないかという可能性があるので、これを後に「余命10年」と変えることにしたのですが。あと10年しかないとすれば自分のやりたいように生きるべきです。
10年もあれば自分のしたいことをしっかりと考えてやることが出来ますから。面接に来る人々に「あと10年しか生きられないとしたら?」と考えて欲しいのです。
もしも考えてみて、10年でやりたいことが私の会社で働くことではなく、世界を見て周ったり、自分の会社を立ち上げることであるならば、そうするべきだと思いますので。我慢して私の会社で働いてもらう必要はありません。自分のやりたいことをやって欲しいと思います。
ブロック塀を組み立てている2人の男の話を聞いたことがありませんか? ある人がブロック塀を組み立てている最初の男に「何をしているんですか?」と声をかけると、彼は「ブロック塀を組み立てているんだよ」と答えます。
同じ作業をしているもうひとりの男に同じ質問をすると「大聖堂を建てているんだ」と答えるという話です。「仕事」と「天職」は違います。私達はただ生きていく為に働くしかないと思っている人を雇いません。天職を全うしたいと思っている人を探します。ミッションのチャンピオンであること、これが第一原則です。
※続きはこちら!Airbnbブライアン・チェスキー「創業した会社は我が子のようなもの」 バイアウトありきの金目当てベンチャーを批判
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