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Lecture 10 - Culture(全4記事)

「結局、人材選びのコツは社風に合うか」 世界最高峰のVCセコイア・キャピタルが“企業文化”にこだわるワケ

世界的な投資ファンドSequoia Capitalの・Alfred Lin(アルフレッド・リン)氏が起業家育成講義に登場。本パートでは、スタートアップの成長速度を決める企業文化の築き方を紹介しました。建前になりがちな会社のミッションを社員に浸透させる方法とは?

企業文化の築きかた

アルフレッド・リン氏:私が先に話をしますが、今日のメインはブライアンです。ブライアンからAirbnbの文化をどのように築いてきたのかを伺います。

皆さんはこれまでスタートアップの始め方、チームのつくりかた、プロダクトのつくりかたについて学んできました。すると物事は前に進み始め、どのようにやるかわかり始めますね。

市場を独占するスペシャルな会社になる。皆さんが狙う市場は紙飛行機市場よりも少し大きくて……というような感じでどんどん前に進むでしょう。その後はどうすればよいと思いますか? スケールする為の鍵はチームと会社の文化にあります。今日の講義が終わるまでには、皆さんに文化とは何か、なぜ文化が重要なのか、大切にすべき価値観をどのように生み出すか、そしてハイ・パフォーマンスをするチームづくりにかかせない文化とコアとなる価値観に関連する要素、文化を守る為にすべきことを理解してもらえれば幸いです。

文化の定義はなんだと思いますか? 皆さんはどう思いますか?

会場:価値観?

いいですね。今ネットで調べました? これが辞書から抜粋した文化の定義です。でも、私達はスタンフォードのコンピューターサイエンス的に考えなければなりません。スタンフォードでは質問に対する答えが簡単に導き出されることはありませんよね。

ガンジーの言葉にみる企業文化の重要性

企業文化とはなんでしょうか? 文化とは社会的なもの、グループの文化、場所やものについて使われる言葉でもありますが、今私達が議題としているのは企業文化をどう定義するかです。

先ほどの辞書からの定義を少し発展させましょう。ヒントはこれです。空白を埋めてみてください。人によってこの穴埋めには違う言葉が入ります。「企業のCの為、チーム全ての人間のAとB」空白Aには推測、信条、価値観、コアとなる価値観等。

私はコアとなる価値観を入れるのが好きです。次の空白Bにはふるまい、行動を入れる人が多いですが、私の答えは具体的な行動です。

空白Cに企業の「ゴール」を目指す為、と入れてしまうと少し弱いです。「困難で大胆なゴール」の為、とすると少し硬いです。Cには「ミッション」を入れると良いでしょう。

これで企業文化の定義はわかりましたね。ではなぜこれが重要なのでしょうか? ガンジーの言葉に、「あなたの信念があなたの考え方となり、あなたの考え方があなたの言葉になる。あなたの言葉があなたの行動に繋がり、あなたの行動が習慣となる。あなたの習慣があなたの価値観となり、あなたの価値観があなたの命運を決める」というものがあります。良い企業文化が無ければ、上を目指すことはできないのです。

企業文化が会社の成長につながるワケ

企業文化が大切なのは、それが何かを決定する時にも第一原則(First principles)となる、チームの皆の足並みを揃える(Alignment)基準となるからです。

そして内部を安定させ(Stability)、お互いへの信頼(Trust)へも繋がる。更に企業文化を確立させることで、皆がやるべきこと、やってはならないことが明確になります。

特に「やってはならないこと」を明確にすることが重要です。そして企業文化があることによって、会社にとって必要な人をしっかりと選別することができます。

皆さんの会社に誰もが馴染むわけではありません。しかし文化が明確であれば、誰を手放し(Exclusion)、誰に残ってもらえばいいのか(Retention)迷うことがありません。これらのアルファベット頭文字を取るとFASTER。つまり企業文化を明確にすることで成長の速度が上がるということです。

説得力をもつ価値観のつくり方

これには科学的な理由があります。

これは1994年から2013年のS&P500とRussell 3000、そしてフォーチュン100の株式市場の指標です。フォーチュン100に選ばれる会社とは、多くの人が最も働きたいと考える会社ですが、これを見てお分かりの通り、フォーチュン100企業の株式リターンは11.8%で、S&P500とRussell 3000に入る企業と比べて約2倍でした。

会社が従業員を手厚く扱い、会社内部で働く人々と会社がお互いを信頼している状態、企業文化が確立していればそれが企業のパワーになるのです。

どのように皆で共有できる価値観を浸透させるのか、どのように企業文化を確立するのか、とよく質問されます。まずはリーダー、創業者である皆さんにとって最も大切にしたい価値観とは? 

皆さんのビジネスにおいて最も大切にしなければならないことは? どんな人と一緒に仕事をしたくて、彼らは何に重きをおくか? と考えます。このようなポイントを考えることで大切にすべき価値観を明確にします。

逆に、一緒に働きたくないタイプの人は? そしてそのような人々が持つ価値観とは? と考えても良いでしょう。覚えておかなくてはならないのは会社の価値観は会社のミッションを支持するものでなくてはなりません。

会社が掲げる信念が必ずしもミッションを支持する価値観ではないな、と感じたら何かが欠けている証拠です。

価値観とは説得力を持ち、ミッションとユニークに関連するものでなくてはなりません。Zapposでは素晴らしいカスタマーサービスを提供する文化づくりにフォーカスしています。私達が最も大切にしていた価値観は、サービスを通じて「おぉ!」という嬉しい驚きを人々に提供することでした。

これは書き出してありましたが、そこに補足で、「人々の中には従業員も、顧客も、パートナーも、投資家も含まれる」と書きました。会社として望まないものを考えた時、私達は尊大な人々とは一緒にやりたくないという気持ちがありました。

Zapposが大切にする価値観は謙遜する気持ちでした。これがミッションにユニークに関連する、そして説得力を持つコアとなる価値観のつくり方の例です。

リストアップする、絞る、そして掘る

このようにしていくつか譲れないポイントを確立します。ここに出ているのが一例です。正直さ、誠実さ、サービス、チームワーク等があります。皆さんが大切にしたいと思うことのリストは3つかもしれませんし、10になるかもしれない、30になるかもしれない。

まずはリストアップしてみます。Zapposがコアとなる価値観を確立しようとしていた時、当時の従業員達に彼らがどんなことを大切にしたいか聞いた結果、リストは当初37項目となりました。

そこから1年かけて10個に絞りました。1年もかかるの? と驚かれるでしょう。例えば皆さんが大切にしたい価値観のひとつに「正直さ」を挙げるとする。でも考えてみてください。どんな会社だって正直さを文化に取り入れたいはずでしょう? 誰だって嘘をつかれるのは嫌ですから。

そして「サービス」。「サービス」を大切にしたいとは具体的にどういう意味でしょうか? これらすべての単語はアイディアであり、そこから深く掘っていく必要があります。

皆が「チームワーク」の大切さを説きます。しかし、学校のスポーツチームとプロ野球のチームでは異なったレベルのチームワークが要求されます。

価値観を共有しないままコミットさせるのは危険

ではチームワークをどのように堀りさげるか。例えばコミュニケーションが大切です。ただ「チームワーク」に重きをおく、という価値観では十分ではありません。

Zapposではこう考えます。チームの皆がとても賢いが故に、誰が正しくて誰が間違っているかの議論になってしまうことがありますが、それは時間のムダであると。

私達は皆が意見を出し合って、アイディアをより良くする為に協力しあうことに重きを置いています。つまりどの個人が「正しい」かを決めるのではなく、会社がより良くなるように協力しあうことを会社の文化にしたいと思ったのです。

つまり、まずは皆が会社の利益を第一に考え、その後に部署、チーム、最後に個人という優先順位が原則です。

パトリック・レンチオニが考案したこのピラミッドがもうひとつハイパフォーマンスなチームを表す良い例ですので紹介します。

これが面白いのはチームが失敗する原因について考察されているところです。お互いを信頼していないが故に多くのチームが失敗します。例えお互いを信頼しているチームがあるとしても、なぜ信頼しあうことがそんなに大切なのだと思いますか? 

信頼しあっていれば、ディベートすることができるから。例え同じ意見を持っていなくとも正しい結論にたどり着くことが出来るからです。何かにコミットする前にどうやってそれが正しい道だと確信することが出来るでしょうか? 

物事が不確かなままコミットするのはとても怖いことです。それでもコミットしたと仮定しましょう。そこで起きやすい間違いとは? 人々が彼らがコミットしたことについて責任を持たないことがあります。

コミットしたことに責任を持たなければ、良い結果が出るはずがありません。会社をブラックボックスであると仮定すると、それが利益であれ素晴らしいプロダクトであれ、いかなる結果もがアウトプットであると考えることができます。そして最も重要なインプットが企業文化です。

採用時にミッションに共感しているか確認すべき

今後どんな価値観を大切にしていきたいかを皆さんが今思っているよりもより深く、より時間をかけて考える必要があります。

多くの会社は技術的な適正や、今いるメンバーと同じくらい優秀かどうかで人材の採用を決めますが、会社の文化にマッチするかどうか、会社のミッションにその人材が共感しているかどうかを面接で確認しません。これが大きな間違いです。

世界で最も優秀なエンジニアであったとしても、目指すミッションがなければ心をこめて仕事をしようとはしません。企業文化を面接の段階で取り入れ、パフォーマンスレビューで取り入れ、そして日々の習慣にすることで、企業文化はより浸透していくことでしょう。

最後のポイントです。どんな創業者も素晴らしいカスタマーサービスを提供したい、素晴らしい文化を持つ会社にしたいと願っています。

そのうちの多くは文化を日々の習慣にすることが出来ていません。身体のプロポーションを保ちたいと思っても、毎日の生活で気を付けていなければいずれ身体は崩れて太ってしまいます。

そこで、集中的にダイエットして元の身体を取り戻す! と意気込むようなやり方を企業文化づくりではやってはいけません。

※続きはこちら!世界190カ国で利用されるAirbnb--創業者が語った、サービスを支える不変の経営原則とは?

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