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Lecture 8 - How to Get Started(全5記事)

「メディアに取り上げられる=成功」は錯覚-- PR担当者なら知っておきたい、7つの実践ノウハウ

アメリカのライブ配信サイトJustin.tvやカレンダー管理アプリのKikoのファウンダー・Justin Kan(ジャスティン・カン)氏が起業家育成講義に登場。本パートでは、PR戦略のコツについて多くのスタートアップを立ち上げてきたジャスティン氏独自の視点で紹介しました。PR効果を最大化する7つの実践ノウハウとは?

メディアへの情報提供の方法

ジャスティン・カン氏(以下、ジャスティン):では、「どのように話題を提供するか、注目を集めるか?」について話します。メディアで話題になるようにする為には、とても戦略的でシンプルなステップがあります。

プレスをセールスファネルのように考えてみてください。たくさんの人と話したとしても、話をした人すべてがコンバートするわけではない。

つまり、ある特定の人やレポーターが皆さんの会社について記事を書かないとしても怒ってはなりません。まずは自分がメディアに出したいと思っている自分の会社についての話が面白いかどうかを考えた後に、記事を書いてくれるメディアの人々、レポーターに共通の知り合いから口をきいてもらいます。

どんなビジネスディベロップメントでもそうですが、共通の知り合いを通じてメディア関係者と知り合うのは、お互いを知りもしない彼らに突然営業のEメールをするよりもはるかに簡単です。

1番良い方法はつい最近記事になった起業家、またはつい最近TechCrunchで紹介された友人に頼んで、彼らの記事を書いたレポーターを紹介してもらうことです。

これが良い方法である理由は、起業家からしてみれば、自分達のことを最近書いてくれたライターに人を紹介することなど他愛もないことだからです。

レポーターに何をお返しする必要もない、もし紹介した人の話が面白ければレポーターの得になるのですから。起業家仲間にレポーターを紹介して欲しいというのは、投資家を紹介して欲しいだとか、新しく人を探しているのだけれど誰か良い候補者はいないだろうか、と相談するのに比べれば何でもないことです。

レポーターの視点から見ても、既に面白いと思ってインタビューし、記事を書いた人からの紹介とあれば、その会社や人もきっと面白いはずだと思うはずです。

メールだけのやりとりではダメ

起業家仲間からライターの紹介を受けたら、実際に取材だとか執筆だとか事が運ぶのに大体1週間くらいかかると見ておきましょう。ライターだって、抱えている仕事を全て投げ出して皆さんのところに飛んできてくれるわけではありません。

たくさんの人、特に始めてまもない起業家は「ジャスティン、明日プロダクトをローンチするのだけどTechCrunchに載せてくれないか?」と言ってきたりしますが、プレスと良好な人間関係を築いていない場合はまず無理でしょう。先に知り合っておく、人間関係を築いておくと有利になります。

では会社についての話題を発表したい日を具体的に決めたとしましょう。例えば、プロダクトを2週間後にローンチすると。まずはレポーターを紹介してもらう、そしてその人とミーティングをする、ここで時間をかけて皆さんのことをレポーターによく知ってもらうことが大切です。

より深く皆さんのことを知ってもらうと、より良い感じで紹介してもらえます。1番良いのは実際に会ってミーティングをすること。一部のブロガーには直接会いたがらない人もいますが、その場合には電話で話をしましょう。

1番よくないのはメールだけのやりとりです。メールだけでは、彼らは書くことを忘れたり、無視したりすることになるからです。

プレス前のフォローアップも忘れずに

次のステップは、彼らにピッチする。彼らと話す時には必ず自分の会社について今紹介してもらいたい事項をピックアップしてリストにしたものを持参します。それをきちんと筋道立てたアウトラインにして、彼らにピッチします。話として面白くします。

それをレポーターが文字起こしをして記事にしてくれます。つまり、私が世間に知って欲しいと思って書いたことが、実際に出る記事の内容そのものになるということです。

更に、しっかり準備してミーティングに備えることで、緊張して話が飛び飛びになることもありませんし、共同創業者の名前やアプリの最も優れた機能など、最も重要なポイントを言い忘れるなんてことも起きません。

これが電話での打ち合わせでも、同じように話したいことのリストを目の前に用意して、そこに書き込んだすべてのポイントを打ち合わせ中にカバー出来るようにします。皆さんはピッチをした、レポーターはメモを取り、その後記事にまとめる。

ここまで来たら次のステップはフォローアップする、です。ミーティングの数日後や、記事が出る日の前日にレポーターにメールを送りましょう「先日はありがとうございました」「この日にアプリをローンチします」「これが掲載して欲しい写真、スクリーンショット、ビデオです」「私と共同創業者の名前はこのようにスペルします」、のように。特に重要な情報は太字にします。

以上が必要なステップです。これでプレスが上手く行き、皆さんが有名になれることを願っています。

メディアに載ることとその効果は切り分けて考える

PR会社についてよく質問されます。スタートアップを始めてすぐの時はすべて自分でやりたいと思うものです。そして実際に自分ですべてをやるのは簡単です、特に常に新しい話題を探しているテクノロジーのプレスやブロガーと一緒にやる時は。

誰かを雇う前に全部自分でやってみて、プレスはどのような感じか掴むことを強く勧めます。ひとつPR会社について言っておかなければならないことは、彼らはメディア関係者とのつながりとロジスティックに関してしか皆さんを助けられません。

皆さんの会社の面白いところはどんなところか知りません。記事を書いてくれそうなライターの名前がずらりと載ったリストを渡してくれるだけです。

つまり、自分の会社を売り込む為の面白い記事の内容だとか、今後どのように世間にアピールしていこうかだとか結局すべて自分で考えなければなりません。

そして、PR会社にお願いするのは安くありません。私達の場合数社にお願いして月に5000ドルから2万ドルを支払っていました。スタートアップにとっては痛いですよね。

特に初期の段階ではこれは賢いお金の使い方とは言えません。メディアで注目されるのは簡単ではありません。何がベストかよく考えてください。プレスを集めるということはバニティ・メトリクスのようなものです。

なぜGoogleのPRを真似ると失敗するのか

メディアで取り上げられると成功しているように錯覚します。有名な企業、GoogleやFacebookは常に世間の注目を浴びていますから。しかしメディアに登場出来るからといって、必ずしもその会社が上手く行っているとは限りません。

より多くのビジネス、ユーザーを得て、ユーザーを喜ばせて成功することと、メディアで取り上げられることに関連性はありません。

メディアで取り上げられることは最初の100人、200人、1000人のカスタマーを得る為に役立つかもしれません。しかし、それはスケーラブルなユーザー・アクイジション戦略ではありません。ブートストラップのようなものです。

何度もメディアに取り上げられると、人々は飽きる。しかも人が飽きるのは早いです。つまりニュースは常に新しくなければならない。

そしてこれがGoogleのように常に新しいことに挑戦する企業でない限りはとても難しい。プレスを続ける価値があると決断した場合には、定期的に新しいニュースを世に打ち出せるようにすること、そして将来の話題性を考えながら仕事をすることです。

私がマーケティング、PRを中心に仕事をしていた時はカレンダーにいつ何をローンチするか書き込み、その時期が集中しすぎないように、定期的なニュースになるように気を付けていました。人々に忘れられないように、そして話題性を最大限にする為です。

対メディアで仕事をする時は人間関係が全てです。レポーター、メディアの人々との距離を離さないこと。誰かに自分の会社について書いてもらったら、継続して連絡を取り合うようにしましょう。

今後また記事を書いてもらう話が出るかもしれません。人は何かするのであれば、すでに付き合いがある人、すでに一緒に仕事をしたことがある人とやりたいと思うものです。

とっておきの緊急速報、ニュースがある時に相談することが出来るレポーターの2、3人と良い関係を築いておくとよいでしょう。そして今後世間からネガティブなことを言われるような時が来たら、彼らが皆さん側の立場に立ってものを書いてくれるかもしれません。

誰かを紹介することがやがて自分に返ってくる

最後に、これは黄金規律というか「ペイ・フォワード」のようなものですが、起業家仲間がメディアに紹介されるように助けましょう。それによって皆さんもまたメディアで紹介されるからです。

メディアで取り上げられる1番の方法は人づてに紹介しあうことです。私はレポーターとのミーティング中によく、「あの人は面白い」「あのビジネスは面白い」と名前を出します。それが後に良い結果をもたらします。

ライターにとってこれは書くための面白い取材対象が見つかってうれしいですし、私が名前を出して紹介した起業家仲間とも助け合えるとよい関係を築くことが出来ます。

プレスについてもっと知りたい方の為にこの2つがおすすめです。

ジェイソン・キンケード、元TechCrunchのライターで、私が今お話したことをより詳しく、ブロガーの視点で書いています。

こちらの『Trust Me, I’m Lying』は元アメリカン・アパレルのマーケターが書いた業界の裏話です。ちょっと悪意が見え隠れする、プレスがどうやって世論を操っているかという内容です。でも人々の心理がどのように動いて、ある話題がインターネットで注目を浴びるプロセスを学ぶのにとても役立つ本です。ではこれで終わります。

「Twitch Plays Pokemon」が流行したワケ

生徒:どのタイミングでプレスのことを考え始めるのがよいのでしょうか?

ジャスティン:1番最初のスタートアップで1番最初のプロダクトをローンチした時、その多くは世間からまったく注目されませんでした。どうやってまず100人のユーザーを集めるかということに頭を悩ませました。

YCでは、初めてプロダクトをローンチする時に、まずTechCrunchで一度紹介してもらい、何人かの人にプロダクトを知ってもらうところから始めましょうと話しています。まずはどんな風にPRが機能しているか知る為に実際にやってみます。初期段階では、外部に取り上げられることにそこまでフォーカスしなくてよいでしょう。

生徒:ポケモンがここまでヒットした背景にあなたの会社はどれくらい貢献していますか?

ジャスティン:Twitchには「Twitch Plays Pokemon」というものがあり、ディベロッパーたちがゲームボーイのポケモンで、人々がAやBを押すとポケモンキャラクターの動きを操作できるというものをつくりました。

それが世間の注目を浴びました。どんなことに貢献したかというと2つあると思います。まず第1に、「Redditで今話題になっているあれをチェックしてみよう」と人々がTwitchを検索するようになり話題を提供出来たことにあります。

第2に、あのアイディアはTwitchとして考案したわけではありません。狙って得たラッキーではありません。でもレポーター達に話題を提供したり、その後も継続した話題を提供することが出来たり、ポケモンだけに限らず他のことについてもです。私達があの話題をつくったわけではありません。コミュニティの人々が話題にしてくれたおかげです。ありがとうございました。

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