2024.10.10
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ミシガン大学 卒業式 2018 チャールズ・ウッドソン(全1記事)
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(会場拍手)
おめでとうございます。みんなのご両親、友人、家族、親戚のみなさんも、自身に向けて大きな拍手を贈ってください。おめでとうございます。両親は観覧席に座り、やっと肩の荷が下りた、なんて考えているところでしょうから。 スピーチを始める前に、この先何者かになりたいと思っている人は手を挙げてください。何者かになりたいですか?
(会場挙手)
良いですね。このことについてはまた後で。今日の私はいつもよりすごいはずですよ。友人が「今年は卒業スピーチにすごく良い人を呼んだみたいだね」なんてメッセージを送ってきましたからね。
私は、「私の前に10~15人のスピーチ候補がいたんだろうけど、誰からもいい返事がなかったみたいだよ」と言っておきました。そんなわけで、あなたたちは私と一緒にここにいるというわけですね。でも、良い面も見ましょう。スピーカー不在の年にはならなかったのですから。
(会場拍手、歓声)
今日という日をシュリッセル学長に感謝します。この地域と、選ばれし先生に、私をこの素晴らしい機会に招待してくださったことに感謝します。これは本当にすごいことです。心の底から感謝します。
私は過去にも他の大学でのスピーチを頼まれたことがあるのですが、辞退させていただいています。というのも、その時の私は、自分のスピーチに対する責任は取れない、と感じたからです。それはある意味本当のことですが、本当の理由は、自分の母校が私にスピーチを頼んでくるのではないか、という思いがあったからです。もしそうなら、母校で最初にスピーチをしたい。2018年の卒業生のみなさんのために、機会を温めておいたのです!
(会場拍手)
本当のところ、少し緊張しています。私の前にいる人数の問題ではありませんよ。私はこのスタジアムで10万6,000人の前で試合をしたこともあるのですから。今日、この時はあなたたちの時ですから。あなたたちが、生涯記憶に残す時ですから。私は、良い記憶として残りたいのです。
今日のためのスピーチの準備をしている時に、ミシガン大学の一番の魅力は何だったのかを考えていたのですが、私の兄がミシガンのフットボールチームの熱狂的なファンで、思えばそれが私を黄色と青(注:ミシガン・ウルヴァリンズのチームカラー)に目覚めさせたきっかけでしたね。
大きくなるにつれ、いろんな選手やチームに目が行くようになったのですが、私を嬉々としてファンにさせたのは、ここ、ミシガン大学のチームだったのです。ミシガン・ファンになったのです。
私の好きな選手に、トニー・ボウルズという選手がいたのですが、80年代の終わり、彼はランニングバックでした。彼の名前は聞いたことないでしょうね。ここで怪我を負って、選手生命は短く終わったのですから。しかし、長身で細身の男の中には大きな力があって、彼がオープンフィールドを駆ける光景はとても美しいものでした。
私とデズモンド・ハワードに共通する、興味をそそる話をしましょう。デズモンドはオハイオ州出身、私もオハイオ州出身です。オハイオ州を後にし、ミシガン州に来たのです。私はオハイオ州を去り、デズモンドはミシガン州に来たのです。デズモンド・ハワードはちょうどそこのサイドラインでパントリターンしました。例の人に対して。勝利のために。同じようにそこのサイドラインでパントリターンしたのは? 誰だかわかるでしょう? 私です。
(会場笑)
デズモンド・ハワードはハイズマン賞を受賞していますが、私もハイズマン賞を受賞しています。デズモンドはミシガン大学を出て、NFLで活躍しました。NFLではオークランド・レイダースに籍を置きました。私が引き抜かれたのは、お察しの通りレイダースです。デズモンド・ハワードはグリーンベイ・パッカーズで活躍し、グリーンベイ・パッカーズでスーパーボウルで勝利を収めました。行け! パック、行け!
私も、グリーンベイ・パッカーズに在籍していました。そして、スーパーボウルで勝利しました。デズモンド・ハワードはNFLを引退し、テレビの世界へと足を踏み入れました。今や私たちのよく知る、尊敬に値する解説者です。なので、私がNFLを引退した後にテレビの世界に行ったのは、自然なことだと言えるでしょう。
少し妙な感じもしますが、デズモンド・ハワードほど後に続きたくないと思う人はいないでしょうね。そして、「驚異の5人」。ジミー、ジェーリン、ジョシュアン、レイ、そしてクリスです。彼らは才能に満ちあふれていました。口が大きく、型破りで、文化すら変えてしまいました。
私の家には居間と台所を隔てる低い間仕切りがあるのですが、彼らの試合をテレビで見ていて、興奮して飛び上がった私はそこで頭を打ってしまい、あうやく気絶してしまうところでした。
そして、同じくミシガン大学に通った者としての誇りで輝くでしょう。サンジェイ・グプタ博士もその1人です。彼のテレビ番組は見たことがあるでしょう。今日、私たちの知る、最も尊敬すべき医師の心を持つ医師です。治療薬としてのマリファナの合法化に向けて、マリファナを占有している者や健康問題と戦っています。
あなたたちが言うように、私が言うように、彼もミシガン大学出身です。ここにも、スターウォーズ一家の1人がいます。
(会場歓声)
考えてみてください。ザムンダの王(注:『星の王子様ニューヨークへ行く』の登場人物)や、あなたたちがアメリカにやってきて、それが誰か知るのです。ダース・ベイダーの声も同じくミシガン大学出身。「ルーク、私が父親だ」。ジェームズ・アール・ジョーンズ、その人です。
2、3週間前、私はミシガン大学の他の陸上選手とともに「ミシガンホール・オブ・オーナー」に就任しました。数週間前まで知らなかったのですが、ボストンマラソンで優勝したアメリカ人女性リサ・ラインズバーガーもミシガン大学出身です。
学校の一歩外には、お手本となる卒業生がたくさんいるのです。そのことはあなたたちに胸を張らせ、ミシガン大学出身であることに誇りを持たせてくれるでしょう。
だからこそ今日、私は伝えにきたのです。今から212日でミシガン・ウルヴァリンズはコロンバスを制し、このスタジアムで勝利の行進をするでしょう。そしてミシガン大学に、覚えのあるその勝利の風を運んでくれるでしょう。
(会場拍手)
それだけではありません。それだけではないのです。私たちは再びミシガン大学へと戻ってきてオハイオ州に跨がる南部の境界線に大きな、美しい壁を建設するのです。オハイオ州から再びミシガンへ悪い人が入ってこれないようにね!
(会場笑)
ちょっと待って、ちょっと待ってください。ミシガンとオハイオに壁を造ってしまうということは、私とデズモンドもミシガンに来れないんですよね? 取り消しです。取り消します。壁なんて作らないですよ! それに、政治的なスピーチじゃないので大丈夫ですよ! まあ言いたいことは伝わったでしょうが。
(会場笑)
今日私から言いたかったことは助け合いについてです。持ちつ持たれつの助け合いです。私はオハイオ州フリーモントの3人のシングルマザーのための結束の強い小さな共同体で育ちました。シングルマザーは望んでそうなったのだと思われがちですが、違うのです。
自分自身の力だけですべてを行える人はいません。私たちはみんな誰かの助けを必要としています。時として、助けはあなたたちの思いもよらないところからやってきます。そのことに気付くことさえできないときもあるでしょう。
診察結果は、根気よく治療をすれば大丈夫、早めに気付いたのだから大丈夫というものでした。しかし、私は足を外側に向けるための矯正靴を履かなければならず、靴の中には棒が入っていたため、想像してみてください、私はあまり動くことができなかったのです。
そんな時、私の兄は「みんなで家にいよう」と言ったのです。彼や姉妹が外で遊んでいる時に私が側で座っていると、立ち上がったり、動いたり、仲間に入れないことに対して泣き出してしまうからです。
私の兄がそれからどうしたかと言えば、私を抱きかかえて、兄弟姉妹の側にいられるように家中連れ回したのです。それでも私はいつも泣きわめき、無駄に騒いでいました。今思えば、私は子どもとして起き上がり、自分で何でもしたかったのでしょう。しかし、私にはできなかったのです。
そんなことが続くうちに、兄はある日私を抱きかかえた時、私の笑顔を見たのです。私は自分の小さな頭で考えたのです。突然、自分自身のことを考えてみなければいけないと思ったのです。兄は私を助けているのだと。私は自分自身で起き上がれなくて、動き回ることができないのではないと。私には嫌がりもせずに助けてくれる人がいて、行きたいところへ連れて行ってくれるのだからと。
考えても見てください。いつも私を抱きかかえてくれる私の兄と、泣きわめいて、騒いでばかりいる私。悩ましい状態です。しかし、彼には今進んで彼を助けてくれる人がいます。私を助けてくれる人がいます。時にそれは続いて行くのです。
あなたたちもこれからの人生で、2人の内のどちらかになるでしょう。座り込んで泣きわめいている子ども、できないことや、自分自身で解決すべきなのに解決できない何かに対して怒っている、助けが必要な子ども。そして兄になるのです。
私たちは手を伸ばし、あなたを引き上げ、助けようとし、誰かを助けようとするでしょう。そしていつの日か笑顔に出会うのです。あなたが誰かの足となって助けて来たのだという事実は忘れられない感情となるでしょう。
今月初頭は偉大なるマーティン・ルーサー・キング牧師が暗殺された日でした。その記憶すべき日の残虐なビデオや映像がありますが、虐げられている人々は私のような人々です。キング牧師は人々と関わり合っていました。彼の時間や力を人々に与え、最終的に彼の人生すら与えたのです。
彼は知っている人もそうでない人も助けたのです。それは彼には信念があったからなのだと私は思います。全ての人々が自分の人生を生きられますように、と。
私は今日あなたたちみんなにお願いしたいのです。周りを見渡し、誰が見えるのか教えて欲しいのです。卒業式のスピーカーである、私自身が壇上に見えるでしょう。学長が見えるでしょう。教授が見えるでしょう。見渡すと同級生が見えるでしょう。観覧席には両親の姿が見えるでしょう。わかりきっている答えです。そして、正解です。しかし、私はもっと単純に見て欲しいとお願いしているのです。
周りを見渡した時に、あなたたちには黒人であるか、白人であるか、アジア人であるかで見て欲しくないのです。その人が民主党であるか、共和党であるかを考えて欲しくないのです。ゲイなのかストレートなのか、とも。周りを見渡した時に、あなたたちにはもっと単純に、人として見て欲しいのです。それ以上でも、それ以下でもなく。
(会場拍手)
私は、あなたたちが人というものをそのような見方で見始められたなら、人としてのみ見られたなら、その人に対する扱いが変わって来ること、そして、その人の視点というものを理解できるようになってくることを保証します。
今日、この時から、朝起きて自分自身をただの人として見れたら、自分自身をもう少し大事にし始めるでしょう。
なので今日、私はあなたたちにお願いするのです。とても深くお願いしているのです。憎しみを持ち続けないでくださいと。私の妻も願っています。憎しみを持ち続けないで、と。この世の中で生きて行かないといけない2人の息子も、憎しみを持ち続けないでとお願いしています。でも、助け合いの精神は持ち続けてください。
締めくくりに、ブルース・リーによる、私の好きな格言を引用します。ブルース・リーは知っていますよね? 私は、あなたたちなら、どんな状況に陥っても一歩下がって物事を冷静に見れたなら、人生を切り抜けられると感じています。あなたたちならできるはずですから。
それでは目を閉じてください。このことを思い浮かべることができるでしょうから。この言葉を聞けば、私の話していることがわかるでしょう。
「水のようであれ。何事も決めつけず、小さなところから道を切り開いて行くように。しかし、柔軟に。そして回り道であれ、直線的な道であれ、自分の道を見つけなさい。何も考えられないのなら、頑固でいるがいい。何もかも閉ざされてしまうだろうけど」。
「水のように心を空にして、形や形態をなくしなさい。水をカップに入れるとカップになり、瓶に入れると瓶になる。水は流れもすれば、衝突もする。友よ、水になるのです。」
2018年の卒業生たち、今日私があなたたちに投げかけたように、私があなたたちを見るように、私を見てください。たった今、あなたたちは何者かになれるのだ、という保証を私はします。Go Blue!
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