2024.10.01
自社の社内情報を未来の“ゴミ”にしないための備え 「情報量が多すぎる」時代がもたらす課題とは?
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ケビン・ヘイル(以下、ケビン):私にとってユーザーに愛されるプロダクトづくりとは喜んで使ってくれるユーザーの為であり、ユーザーがプロダクトの成功とそれをつくる会社をも無条件に応援したくなるようなものをつくることです。
この数週間で、皆さんはグロースについてたくさんの話を聞いてきましたね。私にとってグロースとはとてもシンプルです。グロースには2つのコンセプトが関わってきます。コンバージョンとチャーンです。
この2つの間の距離で成長の速さが決まります。多くの人、特にビジネスパーソンはこの2つを数字的観点からみることが多いようです。そこで私はこの2つのコンセプトをより人間的に紐解いていきたいと思います。
スタートアップの初期段階では、皆さんはユーザーと親密に関わることになります。プロダクトづくりは様々な角度から検証することが出来ます。いくつかの例を挙げ、どのように上手く進めていくことができるかみていきましょう。
私がスタートアップを教える中で大切にしている哲学は、10億ドルを得る1番の方法は、まずは1人のユーザーを得る価値を生み出すことにフォーカスするということです。これさえ上手く出来れば後は自然と上手く行くでしょう。
YCのパートナーとなった経緯ですが、私自身が卒業生であったことから繋がりました。2006年冬に、YCのプログラムに第2期生として参加しました。その中でWufooというオンラインのフォームサービスをつくりました。
コンタクトフォーム、オンラインアンケートや、シンプルな支払いフォームをつくることができるサービスです。簡単に言うと、フィッシャープライスがデザインしたかのように見えるデータベースアプリです。とても簡単に使うことが出来るので、様々な業界やバーティカルの方に使っていただいています。
そしてその中にはフォーチュン500のメジャー企業も含まれます。
5年間この会社を経営し、2013年にサーベイモンキーと合併しました。とても面白い合併でした。当時私達は10人で会社をやっており、Yコンビネーターを通じてシリコンバレーで投資を受けていましたが、実際に運営をしていた場所はフロリダでした。
オフィスは無し、皆がそれぞれ自宅で仕事をしていました。私達は面白いアウトライヤーだったのです。これらの点はIPOまたは合併によって生まれたスタートアップを示していますが、私達は左側のアウトライヤーです。グラフ下の数字はいくら投資を受けたかを示しています。
縦軸は会社の価値を示しています。スタートアップは平均して2500万ドルの投資を受けています。そして投資家へ676%を返している。Wufooは約11万8000ドルの投資を受け、投資家へのリターン率は29,561%です。
Wufooが他と違うことに多くの方が興味を持ってくれます。その答えは、私達がプロダクトづくりにフォーカスしていたことにあります。私達は人々がただ使ってくれるだけのソフトウェアをつくることには興味がなかったのです。
どういうことかというと、データベースがプロダクトのコアではあるものの、「仕事をしている」ことを感じさせるようなものはつくりたくありませんでした。つくろうと思ったのはユーザーに愛される、彼らが応援したくなるプロダクトです。
ずっと付き合っていきたくなるようなもの。この目的を成し遂げる為にもはや狂気的なくらい真剣にやりました。やっていくうちに人々に愛されるプロダクトをスタートアップがつくりたいと思うことは、無条件の愛を求めるかのように、現実世界で実現するのはほとんど難しいような面白い課題だと理解しました。
スタートアップではそれをスケールによって実現しなければならない。そこで、現実世界の恋愛とはどんなものか考えてみよう、そしてそこから学んだことをプロダクトづくりに適用してみよう、ということになりました。
比喩として、新規ユーザーを獲得するのはデートに誘い、意中の人とお付き合いするようなもので、既存のユーザーと付き合うのは上手く行っている結婚のようなものだと考えます。
付き合っている段階では、第一印象が鍵を握ります。付き合っている人の話を誰かにする時、「初めて」の話をしませんか? 初めてのキス、どこで初めて会っただとか、どこで告白しただとか。しかも大切な人との思い出は何度でも至るところで色々な人に話しますよね。
これが2人の恋物語が周囲にどんどん広まっていくメカニズムです。会社でも似たようなことが起こります。人間は人との付き合い無しで生きていくことは出来ません。
そして自分と関わりがあることにはどんどん愛着がわいてくるものなのです。自分が運転する車、着ている服、使っているツールやソフトウェアでも、私達は何でも擬人化したがり、そのものに対しキャラクターを生み出します。これが私達のやり方です。
どんな関係を始める時も第一印象はとても大切です。だって「初めて」のエピソードを私達は周囲の人達に何度でも話してしまうんですから。そして「初めて」の体験をどう捉えるかも重要です。
例を挙げましょう。気になる人と初めてのデートの日、素敵なディナーを楽しんでいる時にデートの相手が鼻をほじっているのを見てしまったらどうしますか? 恐らくもう1度デートしたいと思わないのではないでしょうか。
しかし、もしも20年30年の配偶者がバーカラウンジャー(高級リクライニングチェア)でだらだらしていようと、突如埋蔵金を掘り起こそうと思い立ったとしても、すぐさま「離婚弁護士に連絡しなきゃ!」だとか 「さぁ、離婚届の準備をしなきゃ!」とはならないのではないでしょうか。その代り、「まぁ、この人にはいいところもあるしね」と言えるのではないでしょうか。
第一印象によってその後続けるか続けないかが決まります。私達が日頃使うソフトウェアの第一印象は明確です。多くのソフトウェア会社がマーケティングに重きを置いています。私が思うにプロダクトづくりを得意とする人々は、多くの「初めて」を提供し、人々の記憶に残るものをつくることができると言えるでしょう。
その会社から最初に受け取るメール、最初にログインした時の感覚、リンク、広告、1番初めのカスタマーサポート利用体験、これら全てがカスタマーを魅了することが出来るチャンス、「初めて」の瞬間です。
ではどのようにして「初体験」を良いものにしましょうか? このコンセプトは日本からヒントを得ました。日本語には品質を表す言葉が2つあります。「当たり前品質」そして「魅力的品質」です。
例えばペン。魅力的品質とはペンの重さ、インクの出方、書かれた文字の感じがそれを使うユーザーとそれを見る人々にとって魅力的である、書く目的を卓越しているという意味です。
これはWufooのログインリンクで、恐竜がついています。カーソルをログインのところに合わせると「ログインの仕方」だとか機能を難しく説明するようなことなく、現れるのは「ガルルル」です。最初にこれがくるとどんな人でも思わず肩の力が抜けて微笑んでしまうでしょう。とても簡単です。
プロダクトを評価する時、「人々はこのサイトを使ってどんな気分になるだろうか?」と考えることが少ないと思います。
これはVimeoのログインページです。これは数回前のイテレーションの結果なのですが、これが最も美しく仕上がっていると思います。彼らは何度も何度もつくりなおしているので、変化し続けています。「おなら」と検索すると、スクロールする度におならの音がします。これは他にはない面白さで、皆さんも引き込まれてしまうでしょう。
デザインがすべてではありません。これはCork’dの会員登録画面です。ワイン好きな人の為のSNSです。見てください。
書いてあるのは、「Eメール、これがサインイン用のユーザーネームになりますから、本当のアドレスを入力してくださいね」「ファーストネーム、お母さんがあなたを呼ぶ名です」「ラストネーム、軍隊の仲間があなたを呼ぶ名です」「パスワード、覚えやすく且つ皆にバレにくいものを」「パスワードの確認、テストだと思ってもう一度同じパスワードを入力してみてください」。
このフォームに記入するユーザーとプロダクトとの間にやりとりが生まれますね。これがカスタマーが、「これをつくった人、面白いな! これからもこのサイトを楽しめる感じがする!」と思う瞬間です。
それでは逆にこのようなフォームに入力する時はどうでしょう? はい、Yahooですが、ここからどのような印象を受けるでしょうか? 私が残念に思うのは、Yahooは彼らの持っているすべてのプロダクト、サービスで全く同じログインフォームを使っていることです。
Flickrは面白いですね、「サインイン」のボタンが「Get in there (早く入っちゃえよ!)」です。
これはHerokuのサインアップページです。古いバージョンだと思いますが、ここで、おぉ! と思うポイントは「スケールアップが出来る!」「バックエンドサービスがある!」しかもこれをするのがレバーをドラッグするだけでいいのです。簡単にスケール出来る印象を受けますね。
ここに集まっているのはコンピューターサイエンスの人ばかりだと思うので、きっと気に入ってもらえると思います。これはChocolatというコード・エディタです。これの行動喚起はひとつだけ。
お試し期間が終わると、「これまでと全く同じ機能を使うことが出来ますが、フォントはCosmic Sansになります」と表示が出ます。
(会場笑)
彼らが言わんとしているのは、「真に価値あるカスタマーになってくれる人達はフォントがCosmic Sansでは話にならないと知っているでしょう?」ということです。
これはHurl、HTTPのリクエストをチェックするサイトです。
エラーを発見した時が「初めて」の瞬間になります。404になるとこのページが出てきます。
美しいマーケティング素材をつくる時は助けが必要です。しっかりとドキュメンテーションしようとすると、デザイン性を逃しがちです。MailChimpがこれを防ぐ手助けをしてくれます。このように、ヘルプガイドをオシャレな雑誌風にしてくれます。
こうすることによって、ユーザーが資料にきちんと目を通してくれるようになり、様々な機能についても知ってもらう機会になります。更に、カスタマーサポートの場面でこれを使うと、人々から届く対応しなければならないメールの数が減ります。
ドキュメンテーションと言えば、Stripeがあります。APIが面白いのはUXがないところです。UXはドキュメンテーションですから。ドキュメンテーションの中に面白さを見せる機会があるのです。これの素晴らしいのは例が面白いところ。
しかしアプリにログインしてAPIをやっている時に面倒くさいのが、APIクレデンシャルとキーの入手です。Stripeは「アプリにログインしていただくと自動的にあなたのクレデンシャルを例と同期しますので、APIを学ぼうとしている場合、1度だけコピペしてくれればいいんですよ」というのですから驚きです。
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