2024.10.10
将来は卵1パックの価格が2倍に? 多くの日本人が知らない世界の新潮流、「動物福祉」とは
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司会者:今日のスピーカーはピーター・ティールさんです。ピーターはPaypal、Palantir、そしてFounders Fundの創業者で、シリコンバレーのほとんどのテクノロジー会社に投資してきました。今日は戦略と競争についてお話して頂きます。では、ピーター。よろしくお願いします。
ピーター・ティール氏:よろしくお願いします。ビジネスを始めるからには常に独占を狙い、競争を避けることだと私は強く信じています。むしろ競争とは「負け犬」がするものであるとすら思っています。これについて今日はお話したいと思います。
ビジネスを始めるにあたりそれにどう価値を付けていくかについて、基本的なところから始めましょう。そのビジネスの価値とはシンプルな方程式で表すことができます。
ポイントは2つです。まず第1に世の中にXドルの価値を生み出すか。第2に、Xドルの中のYパーセントを保持することができるかです。多くの人が見落としがちなのは、XとYは独立変数であるということです。つまり、Xがとても大きくともYがとても小さくなることもある。またはXがまぁまぁの数字でもYが大きければ、大きなビジネスであると言えます。
つまり価値あるビジネスとは、世に価値あるものを生み出し、その価値をどれだけ保持できるかに尽きます。
逆に言えば、例えばアメリカの航空業界とサーチエンジンビジネスであるGoogleをその収益のみによって比べてみますと、航空業界の2012年の国内収益は1950億ドルであることに対し、Googleはおおよそ50億ドル。
飛行機で旅行することかインターネットでサーチすること、どちらかを世界から失くさなくてはならないとしたらどちらを選ぶかと言われると、なんとなく航空会社のほうがサーチエンジンよりも大切なように思うかもしれません。
それに今挙げた数字はあくまで国内の収益に過ぎません。国際的に考えてみましょう。航空会社はGoogleよりもはるかに大きいですが、プロフィット・マージンはとても少ないのです。2012年は航空業界もまぁまぁの利益があったとは思いますが、過去100年の航空業界において、彼らの累積利益はゼロに近いです。
航空会社は収益を上げる、倒産する、再度資金を集めてまたイチからやり直す……この繰り返しです。これは航空業界の時価総額がGoogleの約4分の1程度であることからもわかります。例えサーチエンジンが空の旅を可能にするビジネスよりもたわいもないもののように見えても、サーチエンジンのほうが価値が高いのです。
これでXとYはそれぞれ独立していることがお分かりいただけたと思います。
競争を教科書通り、理論通りに考えてみると、いい点と悪い点があります。経済学入門クラスでよく話されるモデルですが―これはとてもシンプルで理解しやすいので教授たちはこのポイントを話すのが好きなのだと思いますが―、この理想的な理論モデルでは競争が効率を上げます。
私達は「ビジネス同士が消費者を奪い合っている、世の中に必ず消費者は存在する、これが社会なのである、つまり競争に勝ったものが成功する」と教えられます。もちろん多くのマイナスポイントもあります。競争率が高すぎると負ける可能性があるだとか。このポイントについては後で詳しく触れます。
ある業界ではモデル通りの競争が起きている反面で、市場を独占しているビジネスもあります。独占企業は長期的に安定したビジネスになり、より多くの資本を得ます。新しいことを生み出すクリエイティブな独占企業が真に価値あるビジネスだと言えるでしょう。
私はこの世には両極端なビジネスモデルしか存在しないと思っています。競争を勝ち抜くか、独占するかです。その中間であることはほとんどありません。
しかし、この両極端なモデルについてはよく理解されていません。皆が嘘をついているからです。世にはこの2つの種類のビジネスしかないという、ビジネスを考える上で最も重要なポイントを多くの人が理解していません。
では、人々がどんな嘘をついているかをお教えします。完全に競争モデルを取っている会社と独占モデルを取っている会社があるとして、ぱっと見ただけでその会社がどちらに属するかを判断することは難しいです。
なぜなら市場を独占している会社は独占していることを大っぴらにしないからです。彼らは政府に規制をかけられたくない、目をつけられたくないので「独占なんてしていませんよ」と言います。
市場を独占している企業は、他社と競争している風に装います。両極の反対側、物凄い競争率の高い中でやっているのでなかなか成功しない会社もまた違った嘘をつきます。「ユニークで他社とは違ったことをやっているんだ、他の企業が真似できないようなね」と言うことで資本を集めたいと思っているのです。
つまり真に市場を独占している企業が「独占などしていませんよ」という顔をする反面、本当は激しい競争を生き抜こうとしている企業があたかも市場を独占しているような顔をしているので、ぱっと見ただけではその会社が本来独占か競争モデルのどちらに属するのか判断しがたいのですが、この2つの本質は大きく違います。人々がこのように嘘をつくことでビジネスに歪みが生まれるのです。
もう少し詳しく見ていきましょう。競争モデルの中にいる場合の嘘は、「私達の市場はとても小さいんですよ」でしたね。独占企業の嘘は、「皆さんが思うよりもはるかに大きな市場でやっているんです」です。レトリックとして考えると、市場を独占している企業は「私達のビジネスは大きく異なる市場が合体したものです」と言うのに対し、市場を独占していない企業は「私達の市場は複数の市場の交点です」と言います。
つまり、独占していない企業は「私達の市場はとても小さい。つまりその市場を独占している」と説明するのに対し、市場を独占している企業は「私達のターゲットとする市場はとても大きく、多くの競合が存在するのです」と説明します。
実践例を挙げます。私は最悪なビジネスの例として、よくレストランを例にします。資本と競争は反意語です。理論的な競争モデルの中では、競争社会の中で資本を増やしていくと、その資本は最終的には奪われてしまいます。
であればつまり、レストランビジネスを始めたいと思っても、投資したいという人が現れない。だって競争相手が多すぎますからね。そこで「私達はパロアルトで唯一のイギリス料理を出すレストランなんです」などとユニークさを強調することとなる。
「イギリス料理」「パロアルト」と来れば市場は小さいと正当化しようとしますが、消費者は他のエリアに車で移動して他の店に行くことだってできる上に、「私はイギリス料理しか食べない」なんて人は現代には存在しないはずです。
これはものすごく狭い市場の例ですよね。
ハリウッドでも似たようなことが起きています。宣伝の謳い文句が例えば「大学の花形フットボール選手が、ハッカー集団の仲間に入って、親友を殺したサメを捕まえる」だとしましょう。こんな映画はまだ世に生まれていないですよね?
(会場笑)
でも、その映画は成功するでしょうか? 既に出ている似たような映画の組み合わせなのでは……という話です。このように既存のアイデアを寄せ集めた映画はたくさんあります。ハリウッドで映画をつくることはとても厳しく、そこで稼ぐこともまた物凄く難しいのです。
「本当にその市場は複数の市場の交点なのか?」「それは理に適っているか?」「本当にやる価値があるのか?」という疑問を常に念頭に置くことです。
もちろんスタートアップにも同じようなことが起きます。最悪なのはビジネスのキーワード「シェアリング」「モバイル」「ソーシャルアプリ」等を組み合わせただけの場合です。これらキーワードの交点を探っても大抵上手く行きません。既存のものを引っ張り出して組み合わせても、新しいものは何も生まれません。
では逆の嘘について検証します。例えばサーチエンジンをやっているGoogleは66%のマーケット・シェアを持っており、サーチエンジン市場を独占しています。
最近ではGoogleが自らをサーチエンジン会社をやっていると表現することはありません。彼らには様々な側面があります。例えば、ある時は彼らは広告ビジネスをやっているということもありますね。
Googleのサーチエンジンビジネスを見れば、「巨大市場を独占している。マイクロソフトが90年代に成し遂げた独占よりもすごいぞ。だから彼らは物凄く成功しているんだ」と思います。
しかし同じ数字を広告市場の視点で見てみると「サーチエンジンの広告は17億ドルの市場で、そしてそれはオンライン広告のあくまで一部であり、アメリカすべての広告市場はそれよりも更に大きく、国際市場になると5000億の価値があるので、Google広告ビジネスの観点でみると、巨大な広告市場の中の約3.5%の市場しかシェアがない」ということになります。
広告ビジネスではなく、彼らはテクノロジー会社をやっていると言い換えることも出来ます。
テクノロジー市場は1兆ドルもの価値がある巨大市場で、Googleはこの市場では「私達は自走車で既存の自動車会社と競争しているんだ。テレビやスマートフォンの分野ではAppleと競争している。FacebookともMicrosoftとも競争している。Amazonとはクラウドサービスで競争しているし。私達が勝負しているテクノロジー市場は巨大で、競合がたくさんいる。政府が規制をかけたくなるような独占企業ではありません」と説明することが出来るでしょう。
市場に歪みを起こすパワフルなインセンティブがあることを常に年頭に置いておくことがとても重要です。
テクノロジー業界の市場が狭いことの証拠として、Apple、Google、Microsoft、Amazon等の大企業をみてみましょう。彼らはどれもキャッシュを毎年蓄積している上にものすごく高いプロフィット・マージンを持っています。
これらの大企業がキャッシュをものすごく多く貯めていて、その扱い方に困っているという事実を見てもわかるように、アメリカのテクノロジー会社が成功しているのは独占的なビジネスモデルを確立しているからだと言えるでしょう。
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