2024.10.01
自社の社内情報を未来の“ゴミ”にしないための備え 「情報量が多すぎる」時代がもたらす課題とは?
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河合敬一氏(以下、河合):ご紹介をいただきました河合でございます。これまでのお三方からは、どちらかというと、大きなコンピューティングがどう変化しているのか、そしてそれがどのようなプラットフォーム、あるいはそのインフラストラクチャーのところでどんな変化が起きているのか、そういうようなお話しがあったかと思います。
私からは、それが実際どんなことに使えて、そしてそれが皆さまのビジネスをどんなふうにお手伝いをできるのか、という少し身近な話をさせていただければなと思います。私は普段、グーグルのシリコンバレーの本社で、グーグルマップの開発の指揮をしております。特にストリートビューや写真から、さまざまな皆さんの便利な地図をつくるということを普段やっていますから、前の講演と少し雰囲気が違うかもしれませんが、あえてそんなお話しができればなと思います。
私が社会人になったもう十何年も前ですけれども、最初に買えと言われたのは小さな紙の地図の本でした。多分皆さまのかばんの中にもあったのではないかと思います。
ペラペラペラとめくると地下鉄の路線図が書いてあって、上に14ページに行くと銀座の上に行ってとか、そのようなことを皆さんずっとされていたのではないかと思います。大きなテクノロジーの進化が地図の世界でもありました。紙からオンラインへの大きな大きな変化です。そして、最初はデスクトップだったのが、今度はモバイルへの進化、こうした大きな変化が過去の10年間にありました。
グーグルマップもまた、この10年間で大きな進化を遂げてきたものです。2005年に私どもは初めてグーグルマップというのを公開をいたしました。何が新しかったというと、一番最初のインターネットの地図は、皆さん覚えていらっしゃるかわかりませんが、上下左右に四角がついていて、それをクリックすると10秒くらい待つと次のがペロっと出てくるという、紙のペラペラしたものをそのままインターネットに移したようなものだったのです。
しかしグーグルマップで初めてやったのは、ドラッグするというということ、マウスでぐっと押してぱっといくと、次の地図がずるずるずるずる永遠に出てくる。今では当然のテクノロジーですけれども、これが9年前、2005年当時には大変に新しかったわけです。
そうやって考えるとこの10年でいかにいろいろな変化が起きていたか、10年前がどんなに古く感じられるか、そんな話かと思います。その時はアメリカとイギリスが最初で、実はこれヨーロッパ地図ではないのですけれども、イギリスがぽっかり海の上に浮かんでいるということでヨーロッパの皆さんに大変怒られまして、後で一所懸命描きました。
日本も同時に2005年にグーグルマップを出しました。これが一番最初のグーグルマップの大阪駅周辺の地図です。今と比べると随分粗くて、昔の皆さんお使いだったカーナビのまさにそういうようなドット絵で、これは一所懸命この地図の画像ファイルをデータセンターに溜めて、それを同時にたくさん捌かなければいけませんから、ずっとたくさんコピーをして、そうやって地図を皆さんのところに早くお届けするという仕組みを、インフラストラクチャーをつくったわけです。
そこから10年で今、私どもは、実は全ての地図を皆様のお手元にお届けするときに画像ファイルを自動的にその場で生成して、お届けしています。100分の1秒で地図を描いて、秒間で一番多いときで160万枚の地図を皆様のお手元に届けています。1秒160万枚を100分の1秒で描いて、皆さまのお手元に届けています。これが10年間で地図、そしてコンピューティング、ネットワークで起きた進化です。
今ご覧いただいている(上記の)この2005年当時の地図から、皆様のお手元の地図はもう少し綺麗になりました。そして、それがまたその場その場で描いていますから、なるべく早い最新の情報でお届けできるようになっているわけです。実はこの当時は、地図を更新するのに大体1年ぐらいかかりました。なので、新しいデータをいただいてきてからも、皆様のお手元にお届けするのに1年くらいの差があったわけです。
紙の時代は、皆様は新しい地図を本屋さんで毎年、あるいは何年かに1回買わないと新しい地図が更新できなかったわけです。これで今一番新しい情報をお手元に100分の1秒で描いて届けるということを今、グーグルマップでは実はやっているわけです。
グーグルマップのAPIも今ではたくさんのお客様にお使いをいただいております。
ほぼ100万サイトで、グーグルマップの小さい地図がその上にさまざまな皆さんの情報、例えば、自分のお店がどこにあるのかというのを上に重ねたり、ガソリンスタンドが私のチェーンはこんなところにありますよということをお見せになったり、地図の上でさまざまな情報を表現していただけるようになっています。
これも最初は2005年にグーグルマップを私どもが出したら、これは余りにも便利だということで、勝手にその上に情報をいろいろな人が貼って、自分のサイトに貼り始めてしまったので、こんなに使っていただけるのであれば、ではきちんとしたAPIを整備してお使いいただけるようにしよう、ということで始めたものでした。
そして2007年には、今日もお使いになってここまでおいでになった方もいらっしゃるかもしれませんが、乗り換え案内のサービスを始めました。そして、その後には駅からどうやって歩いてここまで来られるのか、そういう徒歩と乗りかえと、そして、その組み合わせのナビゲーションもできるようになりましたし、つい最近ではバスの時刻表も入りました。
皆さんも実は、バスは余り乗られないですよね。しかし、実はすごく便利だったりするんですよね。ただ、バスはどうしても難しくて、路線はすごくわかりにくいし、本当はバスで行ったら早いところを地下鉄と徒歩で行ったり、タクシーに乗ってしまったりしていたので、実はグーグルマップでバスが検索できるようになって、バスに乗る方が、実は増えたりもしているわけです。そういった意味で、さまざまな進化というのも乗りかえ、あるいはナビゲーションの分野でもいろいろ進めております。
そして、当然、今日もずっとクラウドとモバイルの相性の話がたくさんありましたけれども、私どももやはり地図って一番使うのはどこか? と。もちろん外にいらっしゃるということですよね。今、自分がどこにいて、これから行く場所にどうやって行けるのか? あるいは自分の周り、今30分あるからコーヒーを飲みたいな、この近くにコーヒー屋さんはどこかにないだろうか? 当然ながら、地図を使うときにモバイルが一番大事なところだったわけです。
ですから、2007年当時に、当時はまだパカッと開くガラケーの時代でしたけれども、グーグルマップをお使いいただけるようにして、そして2007年、また同時にスマートフォンの時代が始まりましたから、一番最初のiPhone、そしてアンドロイドの電話にも、さっと使っていただけるグーグルマップ、最も使われているアプリケーションの一つです。そんなようなサービスも2007年に始めています。
私どもはそうやって地図を進化させてきたわけですけれども、ひとつ気づいたことがあります。地図というのは、皆さん実は上から見たものを絵に描いてあるわけです。ですから、お使いになるときは三次元で横から見るわけですから、二次元の空から見たものを横から見たものに頭の中で変換しなければいけないのです。だから地図は使いにくいのです。だから地図は少し難しいのです。苦手な方もたくさんいらっしゃいます。
なので、では地図はそもそも三次元で使うものだから、三次元で地図をつくればいいではないか、ということで、私どもは横から見た景色の写真を徹底的に撮りまくって、
皆さんの目線で横から見るとこういうふうに見えますよ、ということを写真で表現するサービスを始めたのが2007年です。ストリートビューというサービスが生まれて、やっと7年ほどたつようになりましたが、それがきっかけでした。地図のより使いやすい使い方を考えていくと、そこには目の高さで描く、そんな地図が出てきたわけです。日本でも、ちょうど1年ほどたった2008年にストリートビューのサービスを始めました。
東京、札幌等、最初は12都市で、私の実家の仙台もあって、何で名古屋がないのだとすごく怒られたのですけれども、それは私の実家があったからではなく、たまたまちょうど天候の関係でなどといろいろ言いわけをしましたけれども、そんなふうな形でサービスをしまして、やっと去年の9月に47都道府県全ての県で日本でもストリートビューをお使いいただけるようになりました。
大きな大きなご声援とご支援をいただいて、大変たくさんお使いいただけるサービスになっています。また、寺社仏閣、観光地、世界中の方が今、日本のストリートビューをご覧になっています。
京都の桜の、これは東寺の写真だと思いますけれども、そういったようなところを世界中の方がご覧になっています。特にアジアの方は北海道、京都の画像をたくさんご覧になっていらっしゃいます。世界が少し近くなる、そして世界に対して日本が少し近くなる、そんな地図を私どもは作ってきています。
そしてナビゲーション、手元でカーナビゲーションと同じような機能を無料でお使いいただける、これも大変たくさんの方が、特にスマートフォンで、モバイルで近くまで、車まで行って、そのまま車で隣の方、あるいはダッシュボードに置いて、着いて、降りて、そして歩いていく、そんなようなエンドツーエンドでのナビゲーションを皆さんやっていらっしゃるような、そんなサービスも2010年からもう早4年、皆さんにお使いいただいています。
当然、ナビゲーションをやると何が必要になってくるか? 渋滞情報が必要になってくるわけです。渋滞情報もいろいろなつくり方があるのですが、グーグルはせっかくなので、クラウドの時代、グーグルらしい交通状況の収集と表示をしたいなと思いまして、いろいろな工夫をしました。
スマートフォンの時代です。スマートフォンにはGPSがついています。ですので、皆様にお願いをして、オーケー、いいよと言ってくださった、ご許可をいただいたユーザー様からは今の移動の状況を送っていただいております。
そして、当然匿名で処理をして、どなたから頂いたものかわからないような形で保存をして、加工して、これは膨大な量のデータですけれども、ここから現在の車の移動のスピードがどれぐらいかというのを計算をして、それをリアルタイムで交通状況として表示しています。
ですから高速道路だけではなくて、ある一定数以上の通行量が、そのスマートフォンからのデータがあった部分に関しては、一般道でも日本全国どのような道路でもデータ量さえあれば、渋滞の状況、今流れていますよ、今詰まっていますよということがお分かりいただけるような交通状況をお届けしています。
これもまたデータコンピューティングの時代、あるいは大きなデータを一気にリアルタイムで計算をしてお届けするような時代が来ている、そういった一つの例なのかなと思っています。地図はもちろん絵に描いたもので、わかりやすくしてあるわけです。
それが空から見た写真で見たほうがわかりやすい、上から真っ直ぐ見た写真、真ん中をご覧いただいているもの、そして斜めから見た写真、こういったさまざまなものを組み合わせることによって、写真と地図の組み合わせで、よりわかりやすくストリートビューと、そして空からの写真と、そして地図と、さまざまなモードでご覧いただけるようになっている。
これも空からの写真をつなぎ合わせて一つの絵にするのは、大変大きなコンピューティングの力とストレージの量が必要になってきますけれども、これもまた大容量のコンピューティングが安価にできるようになった、そんなインフラストラクチャーの進化のおかげで、私どもは世界中で何百万平方キロのストリートビューと、そして航空写真、衛星写真の組み合わせを皆さまのところに瞬時にお届けできるようになっています。
大体ストリートビューと航空写真の画像を合わせて、20メガバイトぐらいのデータが皆様のところに瞬時に引き出せるようになっています。大変大きなデータで、昔だったら考えられないようなデータを、何時間も待ってからお届けするのではなく、その場で検索をしていただいて、その上空に飛んでいただくと、すぐ出る。
そういったような大きなコンピューティングの力が、お手元のスマートフォンで簡単にご覧いただけるようになっているわけです。また、外だけ見れてもしようがないのでということで、いろいろなビジネスの中もご許可をいただいて、お申し込みをいただいて撮影をしています。
これは確か京都の割烹のお店だと思いますけれども、世界中で数十万件のお店が、お店ごとインドアビューというプロジェクトに参加をいただいて、これで中を見ると、大事な会食であったり、例えば大事なデートであったり、勝負デートの時などは変なお店に連れて行けないしどうしよう、と悩まれる方はたくさんおられるので、これも見ておくと安心ですよね。
そういった意味では、地図はついにお店に中にまで入ってくるような、そして皆様の意思決定をお助けしているような、そんなような時代が来ているのかなという感じです。
そして、2011年には大きな震災がありました。
私どももできることは何でもやろうということで、さまざまなサービス、安否確認ですとかでお手伝いしましたけれども、地図というのも大変、その場その場でお役に立てる情報になるのだなということを改めて気づかされました。これはちょうど震災直後の衛星の写真です。金曜のお昼に発災して日曜の12時に出しました。48時間後くらいに、その当時の被災地の航空写真をお出しできたわけです。
それによって何がわかるかというと、いろいろな大きな災害が起きたときというのは、基本的にテレビは、例えば津波が来たところは映すのですが、津波が来なかったところは映さないのですね。そうすると、被害がどこまであったのか、そしてどのルートを使ったら入れるのか、そういったことがなかなか伝わらないわけです。
私自身も実家が仙台で、そして家族が福島にもおりましたから、実際にどこまで波が来たのかわからないまま、私がこの写真で初めて、ああ、あのお家は大丈夫だったということがわかった。たくさんの方、何万人もの方が同じように情報を探していらっしゃった中で、地図で空から見ると一目瞭然で、あの家は残っていたね、大丈夫だったねとわかった、そんなようなお褒めの言葉も頂戴をしました。
また、同時に避難される方、そして、その支援に入られる方、道路がふさがっていることがたくさんあったものですから、どこをどう通って行ったらいいかわからない、どこを通って出たらいいかわからない、そういったようなお声がたくさんありました。
これもある意味、大量のデータを分析することによってお役に立った例ですけれども、ホンダさんと共同で……ホンダさんの車というのは会員制度があって、会員になると自分の車の位置を匿名で送っているのです。そのデータを集めると、過去24時間で車が走ったところと過去24時間車が走っていない道路がわかるようになるわけです。
それを地図にすると、ご覧いただいたように、この青いところは過去24時間に交通実績があったところ、そうするとここは通れる、そういうことで、この地図を使って皆さまが避難であったり、あるいは支援に入られたりと。
あるいはタクシー会社さんから「毎朝これを見ていました」というふうにお声をかけていただきましたけれども、おばあちゃんのところからおばあちゃんを何とかここに持って行きたいのだけど、というタクシー会社など大変多くの方からご声援をいただいて、このサービスをやりました。
これは大変ご好評をいただきましたので、その後もサービスを継続しておりまして、大きな災害があった際にはこのような地図を即時に出せるようなシステムを整えてきています。
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