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Emma Watson UN speech(全1記事)

【全文】「今こそフェミニズムを見直すべき」 女優エマ・ワトソンが国連で“男女平等”を訴えたスピーチ

フェミニストに対する批判と偏見や性の役割が固定化している現状を問題視する女優のエマ・ワトソン氏の国連スピーチ。現在ではフェミニストに対して、「権利を求めて騒ぎすぎる、男嫌いで魅力的ではない女性」というイメージが強く持たれています。エマ・ワトソン氏は「フェミニズム」という言葉自体ではなく、女性の権利についての考え方が重要であるということ。男性も「男性とはこうであるべきだ」「攻撃的・アグレッシブであるべきだ」というジェンダー・ステレオタイプに囚われており、彼らがそこから自由になれば、女性も性のステレオタイプから自由になれると語ります。(男女平等を目指したキャンペーン「HeForShe」に1人でも多くの人々が参加することを願ったスピーチです)

女性が権利を主張すると、男性が嫌悪感を抱くという現状

エマ・ワトソン氏:今日、私達は HeForShe というキャンペーンを発足します。今日私がここに立っているのは、皆さんの力を借りたいからです。私達は男女差別撤廃を目的としています。その目的を達成する為には皆さんの力が必要なのです。

UN(国際連合)でこのようなキャンペーン運動が立ち上がるのは初めてのことです。出来るだけ多くの男性、そして少年達に性差別撲滅の為に動いて欲しい。そして、この問題についてただ語るだけではなく、目に見える結果に繋げたいのです。

半年前、私はGoodwill Ambassador for UN Womenとして任命されました。フェミニズムについて話す機会が多くなるにつれ、女性の権利を主張することが男性嫌悪に繋がってしまうことが問題であるとひしひしと感じています。女性の権利主張=男性嫌悪、という世の中の意識を変える必要があります。

フェミニズムの定義とは、男性も女性も平等に権利と機会を与えられるべきであるという信念です。つまり、男女は政治的、経済的、そして社会的に平等であるべきであるという考え方です。性の固定観念についてはずいぶん昔から疑問を感じていました。

8歳の時、保護者に見せる劇を監督しようとして「偉そうに威張っている」と批判され、困惑しました。14歳の時には、私はメディアから性の対象として見なされ始めました。15歳の時、女友達の多くが「男らしく」見られたくないから、という理由でスポーツを辞め始めました。私が18歳になると、男友達の多くが感情を表に出さないことに気が付きました。

いつからか「フェミニズム」は死語になった

私は自分をフェミニストであると認識するようになりました。そして、これはとても自然なことに思えました。しかし、どうやら「フェミニズム」とは死語のようです。自身をフェミニストである、と認識する女性の数がどんどん減っています。

当然、私は「強すぎる、攻撃的すぎる、権利を求めて騒ぎすぎる、そして男嫌いな魅力的ではないフェミニスト」な女として疎まれる種類の女性の1人となります。

なぜ「フェミニズム」はこれほどにも嫌悪される言葉になってしまったのでしょうか? 私はイギリス人です。成し遂げた仕事に対して男性と同じ金額の報酬を受ける権利があると信じています。

私自身の身体についての決定権は私にあると信じています。そして、政治の世界には女性政治家が必要であると信じています。社会的にも、男性と同じようにリスペクトされる権利があると信じています。

しかし、残念なことにすべての女性国民がこのような権利を当然のこととして受け止めている国は世界にひとつもありません。私達の国は完全に男女平等である、と言い切ることが出来る国は世界にひとつもありません。これらの権利は人間として当然の権利だと信じています。しかし、このようなことを主張する私は恵まれていることも理解しています。

フェミニズムの問題に男性がもっと関与すべき

私の両親は私が女の子であるからといって、愛することをおざなりにしませんでした。私の通っていた学校でも、「あなたは女の子なのだから……」などと学ぶ機会を奪うことはありませんでした。

私のメンター達も、「どうせいつかは子供を産んで母親になるのだから」などと理由づけて、私のキャリアでの成功を応援することを止めたりはしませんでした。このように育ってきた環境が、今日の私を男女平等について皆さんにお話する大使にしたのです。

このように私を応援してきてくれた人々は、必ずしも彼ら自身が「フェミニスト」であると認識していません。しかし、彼らは世界に影響を与える立派なフェミニストです。このような人々がより多く必要です。

「フェミニズム」なんて……と思う方もいるでしょう。しかし、「フェミニズム」という言葉の重要性を説いているわけではありません。女性の権利についての考え方が重要なのです。なぜなら、私が持っている権利を多くの女性が持っていないからです。統計的に見ると、私はとても恵まれた数少ない女性の1人です。

1997年、ヒラリー・クリントンが北京で女性の権利についてのスピーチをしたことは有名です。残念ながら、当時彼女が問題にしていたことの大半が現在でも問題として残っています。あの時のスピーチを見て1番印象的だったのは、男性オーディエンスは全体の30%以下であったことです。

世界全体人口の半分が男性であるにも関わらず、「女性の権利」「フェミニズム」という会話に男性が参加しない。「フェミニズム」に男性が参加せずに、または歓迎されていないと思っているままでは、この状況が変わることはありません。

ジェンダー・ステレオタイプによって苦しむ男性

男性の皆さん。今ここで、この機会をお借りして正式に「フェミニズム」の世界へご招待します。男女平等は男性の皆さん1人1人の問題でもあるのです。今日、子供にとって母親の存在が必要であるのと同じくらいに父親の存在も必要であるにも関わらず、社会は父親の役割を軽視しています。

「弱いと思われるのが嫌だから」と言って、男性は心が弱っているのに助けを求めようとしません。その結果、イギリスの20歳から49歳の男性は、交通事故、ガン、心臓疾患よりも自殺によって命を落とす方が圧倒的に多いのです。

「男性とはこうあるべきである」「仕事で成功しなければ男じゃない」という社会の考え方が浸透している為に、自信を無くしている男性がとても多くいるのです。つまり、男性も女性と同じようにジェンダー・ステレオタイプによって苦しんでいるのです。

男性がジェンダー・ステレオタイプに囚われていることについては、あまり話されることがありません。しかし、男性は確実に「男性とはこうであるべきだ」というステレオタイプに囚われています。彼らがそこから自由になれば、自然と女性も性のステレオタイプから自由になることが出来るのです。

男性が「男とは攻撃的・アグレッシブであるべきだ」という考え方から自由になれば、女性は比例して男性に従う必要性を感じなくなるでしょう。男性が、「男とはリードし、物事をコントロールするべきだ」という考え方から自由になれば、女性は比例して誰かにリードしてもらう、物事をコントロールしてもらう必要性を感じなくなるでしょう。

男性と女性は別物という考えをやめるべき

男性も女性も繊細であって良いのです。男性も女性も強くあって良いのです。男性と女性というジェンダーを2つの全く異なった両極端のものであるという考え方から自由になり、男性と女性をひとつのものとして考えるのです。私達は私達自身以外の何者でもない、私は私であると受け入れることで、私達はもっと自由になることができるのです。これがHeForSheの考え方です。HeForSheとは自由を求めるキャンペーンです。

男性の皆さん、皆さんのお嬢さん、お姉さん、妹さん、そしてお母様の為に、彼女達がより偏見から自由になれるよう力を貸してください。そして同時に皆さんのご子息にも弱さを見せて良いことを教えてください。それによって、世界は私達が私達自身で居られる場所になるのです。

「ハリー・ポッターの女の子が何を言っているんだ? どうして今このUNでこんな話をしているんだ?」と思われる方もいるでしょう。わかります。私も今ここにいることを不思議に思っていますので(笑)。

確実に言えるのは、私が男女平等について真剣に考えていること、そして状況を良い方向に変えたいと思っているということです。これまで経験してきたことから、そしてこの機会が与えられことで、私には私の考えを皆さんにお伝えする義務があると思い、今この場所にいます。

男女平等を目指すキャンペーン「HeForShe」

エドマンド・パーク(イギリスの哲学者)は言いました、「人々が何も行動を起こさなければ、悪の力が勝つのは当然だ」と。

今回ここでスピーチをすることになり、緊張してナーバスになっていた時、そしてそれ以外でも自分に自信がなくなった時、「私がやらずに誰がやるの? 今やらなくてどうするの? 今やらないならいつやるの?」と自分に言い聞かせます。

「チャンスが訪れたけれども、怖い、不安だ」という瞬間が皆さんにもあるでしょう。そんな時はこの言葉を思い出していただければと思います。私達が何も行動を起こさなければ、女性と男性が同じ仕事をして同じ給与を得るまでに75年もかかるのです。

100年近く待たなくてはなりません。これから16年の間に、まだ子供であるにも関わらず結婚していくことになる少女の数は約1550万人。このまま何もしなければ、アフリカの少女たち全員が中等教育を受けられるようになるのは2086年です。

あなたが平等を重んじる方であれば、きっとあなたは「自分では自覚していないフェミニスト」の1人です。女性の平等を願う気持ちを、皆が必ずしも「フェミニズム」という言葉で表現するわけではありません。

「フェミニズム」という言葉には偏見があります。言葉の表現に差異はあれども、目指すところは同じです。男女平等を目指す活動、それがHeForSheです。皆さん、勇気を出して立ち上がってください。そしてご自身の心に問いかけてみてください、「私がやらずに誰がやるの? 今やらなくてどうするの? 今やらないならいつやるの?」。

ありがとうございました。

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