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バージニア工科大学 卒業式 2017 シェリル・サンドバーグ(全2記事)

「希望は私たち自身で育て上げ、成長させていくもの」Facebook社COOが若者たちに困難の乗り越え方を説く

バージニア工科大学の卒業式にFacebook社COOのシェリル・サンドバーグ氏が登壇。2007年に銃乱射事件が起こったこの大学で、困難を乗り越えるための“希望”について語りました。2年前に最愛の夫を亡くしたサンドバーグ氏が、深い喪失から立ち直るなかで学んだこととは?

物語を共有することが必要不可欠

シェリル・サンドバーグ氏:また、私たちは物語を共有することで集団的レジリエンス(collective resilience)を作り上げていくことができます。これは一筋の光のようなものです。

ストーリーがいかに、大切な役割を担っているかわかりますか? ストーリーは要です。私たちがどんな過去を経験し、将来についてどう考えているかを伝える方法でもありますから。そして、まったくの新しい場所でコミュニティを築く際には、もっとも重要な役割を持っています。

毎回毎回友人が、大好きな物語を聞かせてくれる度に――わかりませんが、そうですね、例えばバージニア工科大学がUVA相手にダブルスコアで圧勝した話とか――あなたとの絆は深まります。物語を共有することは、世の不条理に立ち向かい、社会に変化をもたらすためには必要不可欠です。

何年か前、私たちは「Lean In」を設立しました。性差別に立ち向かう組織で、グループ内の女性や男性を手助けし、お互いの熱意をサポートしあう小さなグループでした。それが今では150ヶ国で、33,000ものグループが作られるまでになりました。けれど、デイブを失うまで私はなぜこのグループがそこまで必要とされているか理解できていなかったのです。そう、それは集団的レジリエンスをつくり上げるためだったのです。

少し前、私は北京にいて中国のLean Inグループに所属するある女性とお会いする機会がありました。ほかの場所と同じように、女性であるということは中国では決して立場が強いものではありませんでした。もし27を過ぎても結婚していない場合、「売れ残った女」という意味のsheng unと呼ばれます。個人的には、「未亡人」という言葉もとてもよくないと思っています。「売れ残り」という汚名も、とても極端です。

ある36歳の経済学者は、15人の男性から、ただ高学歴であるという理由だけで結婚を断られました。それを見て、彼女の父は彼女の妹に大学を卒業することを禁じたのです。

けれど、Lean Inに参加している80,000人の女性たちは新しいストーリーを作ろうとしています。The Leftover Monologuesという団体は、「売れ残り」であることを祝い、セクシュアル・ハラスメント、デートレイプやホモフォビア(同性愛者に対する嫌悪感)など今まで避けられてきた話題に真っ向から取り組んだのです。

世界は、どんなストーリーを語るべきかを私たちに示してきますが、実際に我々はそれとはまったく違ったストーリーを歩んでいるのです。売れ残りなんかじゃありません。私たちは強く、それぞれの道を一緒に歩んでいるのです。

希望は私たち自身で育て上げ、成長させていくもの

集団的レジリエンスを築くということはまた、自分と違った経験をしている人たちを理解することでもあります。彼らは、違う人種、違う国籍、そしてあなたとは違う経済環境にいるのですから。私たちは違うストーリーをそれぞれ持っていますが、新しい物語を一緒に作り上げていくことができます。そしてそれは、お互いの価値観を認め合い、同じ方向を見つめ合うことです。

自分の将来に不安を感じている人はいますか? どこに行くのか、まったくわからない? 私も時々、そう感じます。そしてその不安に打ち勝つ方法を知らない? その偉大なるアイディアは、たった1つの小さな言葉で言い表せます。「希望」です。

たくさんの希望があります。自らがスワイプ・レフト(アメリカのスラング。異性から相手にされない、興味がないとされる時に使う)されないための。ごめんなさいね。ここに座って、やるべきことが魔法みたいにすべて片付いてしまうとか。ごめんなさいね。雨が降りやむためとか。またまたごめんなさいね。けれど、私がもっとも好きな希望はgrounded hopeと呼ばれる、行動を起こせばよりよい結果をもたらしてくれるだろうという考えです。

ふだん私たちは、希望とは個人個人にもたらされるものだと考えています。けれど、希望、立ち直る力とは私たち自身で育て上げ成長させていくものです。

2年前、私はチャールストンのエマニュエル・アフリカン・メソジスト監督教会を訪れました。銃撃事件はいまからちょうど2年前にあり、命についての祈りを牧師様と8名の参拝者と一緒に捧げました。その後に起こったことは、とても信じられませんでした。憎しみに捕らわれることなく、みんなが人種差別と暴力に抵抗するために立ち上がったのです。

地元の牧師であるジャーメイン・ワトキンスは、それを支持しました。「憎むという行為について、“そんなことはいけない、今日するべきことではない”と声を上げるでしょう。別離についても、“違う、今日ではない”と声を上げるでしょう。また、希望を失うことについても、“違う、今日ではない”と声を上げるでしょう」。

ここに、私がFacebookの投稿の中でもっとも感動したテーマを1つあげます。はい、正直に言いますね。私はFacebook上の投稿をたくさん読んでいます。

この投稿は、アントワーヌ・レイリスというパリのジャーナリストによって書かれました。彼の妻エレーヌは、 2015年にパリでのテロで亡くなりました。2日後、そう、たった2日後に彼は妻を殺した人物にあてた手紙を公開しました。

「金曜日の夜、あなたは私にとってもっともかけがえのない人物、私の人生における愛そのものであり、息子の母親を奪いました。けれど、あなたは私に憎しみを抱かせることはできません。私の17ヶ月になる息子は毎日のように祈りを捧げ、この小さな男の子は、幸せにそして自由に羽ばたくことであなたの考えを真っ向から否定します。あなたは、彼からも憎しみも得ることはできないでしょう」。

これを見たすべての人が、彼の勇気に心を打たれました。このような希望は、私たちにより大きな希望を与えてくれるのです。これは、いかに集団的レジリエンスが働くかといういい例です。私たちはお互いをより高みへと押し上げあっているのです。

これは、Hokiesのみなさんにはとても自然なことに映るかもしれませんね。経験をともにする、ストーリーを共有する、希望を分け合うということは、この4年間の在学の中で幾度となく経験してきたはずですから。あなた方は勇気、そして人生と愛の象徴であり、この10年間だけではなくここ何世紀もの間ずっとそうあってきたのです。

この大学はあなた方卒業生にとってたくさんの意味を持っているでしょう。けれどそれは同時に、多くのアメリカ人と世界中の人々にとっても同じことです。たくさんの人たちが、あなたがどう強く生き、勇気と真実を他の人たちに示していけるのか、その良い例になれるかどうか背中を見ているのです。

毎晩寝る前にその日の3つの喜びを書き留める

2017年度卒業生のみなさん、これはあなたの物語ですよ。あなた自身のなかにある強みと、周囲の人たちにその勇気を与える力をあなたは兼ね備えているのです。

バージニア工科大学はあなたに目的と、「私にも成し遂げられる」というモットーを与えてくれました。あなたたちが成すべきこと、そして導くべきものは、立ち直る力を世界中に与える手助けをすることです。私たちは、1人ではなにも為すことはできません。だからこそ、家族たちや周囲のコミュニティを助ける責任があります。一緒に乗り越えていきましょう。

この美しいキャンパスを離れ、世界に飛び立つ時、この「立ち直る力」を自分自身で身につけてください。もし悲劇や絶望があなたを襲うのなら、自身の内面をよく見てください。あなたにはそれを乗り越えられるだけの力が備わっています。私が保証します。ことわざにもある通り、私たちは自分自身が考えているよりも弱く、けれど想像しているよりもずっと強いはずです。

一緒に立ち直るための組織を、築いてください。バージニア工科大学は、4年前にGlobal Forum on Resilienceを立ち上げ、この分野では驚くべき成果をあげています。ぜひ家族や友人と一緒に参加してください。そしてぜひ、個人的に家族や友人と密な繋がりを保ってくださいね。ハートの絵文字だけを送るのではなくて。可愛いですけどね。

ご近所の方ともぜひ絆を築いてください。いま私たちの国は離れ離れになってしまおうとしています。そこでぜひそれらのピースをつなぎ合わせる手助けをしてほしいのです。お互いの人生を高め、全ての瞬間に喜びを感じてください。コミュニティを築くために必要なことは、感謝の気持ちを育てることですから。

2年前、もし誰かが「あなたは人生の愛を失ったけれど、それを感謝する日がくるよ」と言ったら私は決してその言葉を信じなかったでしょう。けれど、まさにその通りのことが起こっています。だって今かつてないほどに、満ち足りているのだから。私の家族、とくに子どもたち、友人たち、仕事そして人生そのものに。

数ヶ月前、従兄のローラが50歳になりました。卒業生のみなさん、あまり聞きたくないかもしれませんが、50歳になって年をとるなんてあっという間ですよ。あなたのご両親はすでにそう感じているかもしれません。

その朝に彼女に電話し、「お誕生日おめでとう、ローラ。今日は、あなた朝起きて、“なんてこと、50代になってしまったわ。どうしよう。今年はデイブが50歳になれなかった年だわ!”と思っている場合に備えて電話をしたの」。どちらかが年をとった、もしくはとってないのかも。年齢を重ねることにこれ以上冗談は必要ではありませんね。毎年、いつの瞬間も、雨が降っている時でさえもかけがえのない宝物なのです。

家族や友人、教授たちやバリスタたちやみんなに感謝を示すために、今日のような特別な日を待つ必要なんてないのです。神様が与えてくれた幸せを数えて、増やしていってください。立ち止まって、自分がいかに恵まれているかに感謝する時間を設けている人は、より幸せで健康的です。

私の今年の抱負は、毎晩寝る前に今日あった3つの喜びを書き留めておくことです。このシンプルな方法は私の人生を大きく変えました。だって、今までは寝る前に今日間違えたことや次の日どんな間違いを犯してしまうかを考えながら眠りについていたのですから。

今は、うまくいったことを考えながら眠りについています。そして日々の中で喜びに出会えた時、普段よりももっと嬉しくなるのです、「やった、ノートに書ける!」ってね。試してみてください。喜びに満ち溢れている、今日今夜から。Big Al’s(パブの店名)に行く前にね。

卒業生のみなさん、あなたの前にある道はいい日もあれば困難な日もあるでしょう。一緒に乗り越えていってください。すべての人と、共有できる経験を探してください。共有できるようなストーリーを描き出して、生きたい理想の世界を作りだしてください。あなたが参加し、また作りあげたコミュニティの中で希望を共有してください。そして喜びと愛の本当の意味を教えてくれる、これらすべての人生の宝物に感謝してください。

今夜、3つの素敵なことを記録する時、まさにこのことを書くでしょう。希望と、たくさんのすばらしい立ち直る力に満ち溢れた今日のこのコミュニティのことを。そして、あなたは私がやっと話を終えるのだと安心したと書くのでしょうね。

世界はあなたの目の前に広がっています。あなたたちがこれから何を成すのか楽しみでなりません。

おめでとう、Hokies!

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