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Anne Hathaway on International Women's Day(全1記事)

アン・ハサウェイ「女性を真に解放するには、男性を解放しなければいけない」国際女性デーに国連でスピーチ

女優のアン・ハサウェイ氏が3月8日の「国際女性デー」にニューヨークの国連本部でスピーチを行いました。昨年3月に第1子を出産し母になった経験を踏まえ、出産と育児をめぐる経済的状況の問題点を指摘し、真の男女平等に基づいた制度の必要性を訴えました。

子供を産んでわかったこと

アン・ハサウェイ氏:お言葉ありがとうございます。国際連合事務総長、国際連合副事務総長、国連ウィメン事務局長、そしてすばらしい紳士・淑女のみなさま。

私は、まだ若いときに女優としてのキャリアを歩み始めました。マンハッタンで行われるオーディションに母が車で送っていくことができない時、ニュージャージー州の郊外から電車に乗り、父に会いに行きました。父は職場である法律事務所のデスクを離れ、私たちはペンシルベニア駅のプラットフォームの発着サインの下で待ち合わせしました。そこから一緒に地下鉄に乗り、向かい合って座った時、父がこう尋ねました。

「どっちが北だと思う?」。

私は、最初、北がどちらかうまく見つけることができず、かなりの時間を費やしました。しかし、父は「どっちが北だと思う?」と聞き続けました。そのうちに、北がどちらかわかるようになってきました。

昨日この場を訪れるために飛行機に乗っている間、この思い出が頭に浮かびました。あの時には想像もつかない人生を歩んでいます。それだけではなく、この小さなレッスンがとても意味のあることだったと理解したからです。

まだ幼い時から、父は私の方向感覚を養う訓練をしてくれました。そして、大人になった今では、正しい方向に導く能力には自信があります。父は、私がこの世界において自分で自分の方向性を決めることができるよう自信を与えてくれたのです。

昨年2016年の3月後半、私は人生で初めて子供を授かりました。それは、言葉にすることができない、でも誰もが体験するすばらしい経験でした。生まれたばかりの息子を腕に抱き、そして、私の人生における優先順位が細胞レベルから変わったことをはっきりと認識しました。

そして、意識も大きく変わりました。私の愛するキャリアを維持しつつ、誰かを深い深い愛情をもって育てることができるという確信。子供を持つほかの親と同様に、仕事と親としての新しい役割の間で、どのようにバランスを取ればいいのか悩んでいました。その時、頭にあったのは、アメリカにおける産休取得の制度とその統計でした。アメリカ人女性は、12週間の無給産休取得が権利として与えられています。アメリカ人男性は、どのような権利も与えられていません。

息子が生まれて約1週間経った時、この情報はまったく違って聞こえました。産後1週間、私は歩くのがやっとでした。この情報はまったく違って聞こえるのです。完全に夫と私に依存しなければ生きていけない人間というのがどういうことか理解し、そして、私自身多くのことを夫に頼らなければいけませんでした。それは、家族や夫婦の関係性について、すでに知っていると思っていたことをすべて初めから学び直す経験でした。こうした経験を通すと、この情報はまったく違って聞こえてくるのです。

私たちを含めてアメリカ人の親は、どうにかして3ヶ月以内に日常生活に戻るよう望まれています。でも、収入もなく? 

自分でこう問いかけました。「妊娠における実際の現実は、家庭で養うべき人数が増えるということ。そして、アメリカという国は多くの人がギリギリの給料でその日暮らしをしています。無給休暇が経済的にどうすれば成り立つのでしょうか?」。そして、真実は、多くの人にとって、成り立たないということです。

女性を真に解放するためには、男性を解放しなければいけない

4人に1人のアメリカ人女性が産後2週間で職場に復帰します。なぜならそれ以上休む経済的余裕がないからです。25パーセントのアメリカ人女性です。

12週間の無給休暇をとる余裕がある女性であっても、多くの場合そうはしません。なぜなら、マザーフッド・ペナルティ(妊娠出産に伴って制度上不利になること)を招くことになるからです。マザーフッド・ペナルティとは、妊娠出産を経験した女性が、仕事に割く時間が減るとみなされ、出世やさまざまなキャリアアップの機会を逃すことを意味します。

私の家庭を例にとると、母は仕事か3人の子供の子育てかの選択に迫られました。その選択によって、母は給料も支払われず、感謝もされない主婦にならざるを得ませんでした。ただ、両方を選び取るというのは不可能だったのです。父と一緒に都会に行った時の思い出というのは、私にとってとても思い出深いものでした。父は家庭における唯一の稼ぎ頭でしたので、仕事が優先され、私たち兄弟と父との時間というのはとても限られていました。

とても恵まれた家庭環境でした! 私たちが経験した苦労は、ほかの家族の夢を叶えるためにあったからです。

有給の育児休暇に関して考えれば考えるほど、女性の平等やエンパワーメントに対する障害が存在し続けることと、男性が子守をすることを恥ずかしいと考える風潮の間には、関係性があることがわかってきました。

(会場拍手)

ありがとうございます。つまり、女性を真に解放するためには、男性を解放しなければいけないのです。

女性や女の子が家事や家族の世話をする思い込みや習慣は、大変に根強い固定観念です。これは女性に対する差別であるだけではなく、男性が家族や地域社会と関わり、繋がりを持つことを制限します。このような制限は、非常に広範囲に渡り、男性や子供たちに多大な影響を及ぼします。私たちは誰もがこれを知っているはずです。

それにも関わらず、なぜ私たちは父親の役割を軽視し、母親に過剰に負担を掛けようとするのでしょうか?

有給の育児休暇というのは、単純に休暇をとるということではありません。役割を自ら定義する自由を生み出すということです。つまり、時間の使い方を自ら選択し、よい行動サイクルを作り出します。

企業によって、有給の育児休暇取得が可能な場合があります。このような企業は、人材の維持・確保の向上、欠勤の減少、トレーニング費用の減少、生産性やモラルの向上などすばらしい成果を上げています。これは、有給の育休制度を作ることができない企業とはるかに異なります。もはや、そうしないわけにはいかないほどです。

スウェーデンで実施された調査によると、父親が毎月育児休暇を取得した場合、母親の給与が6.7パーセント上昇するという結果が出ています。つまり、家族全体で6.7パーセントの経済的自由が手に入るのです。国際男女平等調査によると、父親の多くは子供たちとより多くの時間を持てるなら仕事の量を減らしてもいいと考えています。

さて、首相がおっしゃったことを手掛かりに、おうかがいしたいと思います。ここにいらっしゃるみなさんのなかで幼少期に父親と十分接してきたという人はいますか? ここにいらっしゃる父親であるみなさんのなかで、十分子供たちと接しているという人はいますか?

もし、成長を望むのであれば、互いに助け合わなければいけません。

(会場拍手)

国連ウィメンに加えて、加盟国、企業、機関のみなさんが世界規模で行動を起こし、有給の育児休暇の分野におけるチャンピオンになるために、成長していくようにお願いしたいと思います。

2013年時点での有給育児休暇取得国は、190ヶ国の国連加盟国のうちわずか66ヶ国でした。そして、国連自身、有給の育児休暇制度がまだないのですが、まずお手本となることを期待しています。国連職員に優しい有給のポリシーは、今まさに、検討中です!

(会場拍手)

子供を持ったからといって、男女ともに経済的処罰を受けることがない世界を私たち自身がお手本となって作り上げましょう。

愛とは愛であり、親は親である

もちろん、必ず子供を持って、この問題で得をしなければいけない、ということではありません。子供がいようがいまいが、子供が欲しい人も欲しくない人も、男女の性別に依存しない制度が実現した世界では、誰もが利益を得ることでしょう。そして、思いやりに溢れた時間を持つことで、誰もが利益を得ることでしょう。これは、私たちを弱らせるのではありません。完全な人間にしてくれるのです。

性別に依存する産休制度やその他の職場制度は、歴史上の今この瞬間に、その役割を終えます。これらの制度は女性が暮らしやすいように設定されたものではありますが、この制度によって女性は職場にとって不便な存在であるという偏見を生み出しました。男性は感情的な制限を受けました。そして、これらの制度はすでに世界の現実に合わなくなっています。

現在では、さまざまな家族の形態が存在します。2人の父親がいる家庭だってあるのです! 彼らにとって産休はどうすればいいのでしょうか? 

(会場拍手)

今日、国際女性デーに際して、現在の制度を作り出したすべてのみなさんに感謝を述べたいと思います。彼らに敬意を表します。そして、彼らが始めたものの上に築いていきましょう。言葉を変え、意識を変えることによって、性別ではなく、その可能性に意識を向けましょう。

そして、両親が費やした犠牲に対して敬意を表します。彼らのおかげで、男女平等への道筋が生み出されました。私たちの人生、とくに子供たちの人生を決めるだろう遠く離れた真実をつかみ取りましょう。有給の育児休暇は、子供たちと過ごす時間を両親に与えるのみではありません。それは、子供たちが目にする物語を変え、将来の可能性も変えるでしょう。

希望はすでにあります。私の国アメリカ合衆国は、高所得国でありながら、有給出産休暇制度のない唯一の国です。もちろん、有給育児休暇はいうに及びません。ニューヨーク州、カリフォルニア州、ニュージャージー州、ロードアイランド州、ワシントン州では、すばらしい取り組みが始まっています。このすべての州では、有給育児休暇プログラムが施行されています。

(会場拍手)

チャーレーン・マクレイ市長夫人及びビル・デブラシオニューヨーク市長は、ニューヨーク市の20,000人以上の市職員に対して有給育休取得を許可しました。私たちもこれにならうことができます。

変化を起こすためには、それを必要とする人に責任を押し付けるのでは成功はありません。平等を達成するのであれば、権力の最高レベルからサポートがなくてはなりません。

だからこそ、グローバル企業ダノンのような、先進的な有給の育児休暇制度を持つ企業を紹介し、お祝いを述べることができるのは大変すばらしいことです。本日、ダノングローバルCEOエマニュエル・ファベール氏が「HeForShe」の有給育休テーマのチャンピオンに選ばれたことを、みなさんにお伝えします。この発表の一環として、ダノンは、2020年までに全世界10万人の従業員に対して、性別の差なく18週間の有給育児休暇を与える制度を実施します。

(会場拍手)

ファベールさん、国連ウィメン親善大使のエマ・ワトソン氏が「HeForShe」の象徴ともいえるスピーチをした際、権力の大部分を男性が占めている世界では、男性たちにこそ変化の必要性を理解してもらう必要がある、と述べました。これは、あなたのようにビジョンを持つ人のことです。ありがとうございます。

想像してみてください。今から1世代後、ダノンのような制度が新たな基準となった時、世界は一体どうなっているでしょう? 10万人が100万人となり、1,000万人となり、さらに増えていくのです。

あらゆる世代の人々が、「北」を見つけなければいけません。

世界中の女性が選挙権を要求した時、男女平等に向けて重要な1歩を踏み出しました。これが「北」です。

同棲婚がアメリカで認められた時、同性愛に対する差別的な法律に終止符を打ちました。「北」です。

数百万の男性や少年、首相のみなさん、国連副事務総長、すいません、国連事務総長が台本から抜けていました! なんてこと!

(会場笑)

この会場や世界中の男性たち、私たちが知らない方法でサポートしてくれる人々もいます。すべてを見ることはできません。でも感じることはできます。彼らがエマ・ワトソン氏の「HeForShe」の訴えに応える時、世界は大きく成長します。「北」です。

自分自身に問いかけなければいけません。今日の自分より、明日の自分をよりよくするにはどうすればいいのか? あなたや私のような人々が立ち上がった時、全世界が成長するでしょう。なぜなら、男性と女性がいかに異なるかという考えを超えて、深い真実が存在するからです。それは、愛とは愛であり、親は親である、ということです。

ご清聴ありがとうございました。

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