2024.10.10
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ジョンズ・ホプキンス大学 卒業式 2016 スパイク・リー(全1記事)
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スパイク・リー氏(以下、リー):ハロー! ……元気ないですね。ハロー!
会場:ハロー!
リー:ありがとうございます。ジョンズ・ホプキンス大学のみなさま、学長のダニエルズ(ロナルド・ダニエルズ)氏、評議員会ならびに運営部のみなさま、そして2016年ご卒業のみなさんに感謝申し上げます。
(会場拍手)
そして忘れてはならないのが、保護者のみなさま……今日この日まで大きな力となってくれた方々の存在です。
(会場拍手)
偉大な哲人であり詩人だったP.R.ネルソン氏(注:歌手・プリンスの本名)は、かつてこう言いました。「親愛なるみなさん。今日こうして集まったのは、人生というものを生き抜くためです」。
(会場拍手)
ジョンズ・ホプキンス大学2016年度卒業生のみなさん。私はこれまで、自分がしたいこと、大好きなことを仕事にして生きる人生に恵まれてきました。
私は自分の仕事、映画制作を愛しています。私は映画制作者であり、物語の語り部です。
これまでに私が制作した長編映画23作品にほぼ共通したテーマとして、2単語から成る言葉があります。それは、「Wake up!(目を覚ませ!)」です。
眠りから目を覚ませ、無気力状態から目を覚ませ、不平等や偏見に素知らぬ顔をしている休眠状態から目を覚ませ。私たちが暮らす、この不正だらけで狂気に満ちた世界へ目を向けよ。無意識を背後から正面、つまり意識のある状態へと向け、そして目を覚まそう、と。
そびえ立つ象牙の塔のような浮世離れした制度から離れ、巷の人々の問題に本腰を入れて取り組もう。街の仲間たちは「覚醒せよ!」と言います。
油断せず、偏見のない開いた心を持ち、覚醒して実際に起きていることに敏感になろう。目覚めよう。
故ラジオ・ラヒーム(注:スパイク・リー氏の映画『ドゥ・ザ・ライト・シング』の登場人物)が着けていたナックルリングのように、心の底から愛と憎悪の違いを知ろう。
マルコムXはこう言いました。「我々は連れ去られ、目隠しされ、道に迷って自制心を失い、欺かれた」と。
私たちは今、アメリカ合衆国の歴史において、重要な転機に立ち会っています。正直なところ、私には危うく不確かな状況に思えます。どちらに転ぶかわかりません。みなさんがどのようにお感じかわかりませんが、私は危ぶんでいます。
ここにいるジョンズ・ホプキンス大学卒業生のみなさんのことを思って心配しているのです。最優秀学年ということですし(笑)。知りませんでしたが、そのように聞きましたよ。
(会場笑)
この母なる地球の卒業生全員を含め、みなさんが、平和と光と愛に満ちた世界へと旅立てたらと願いますが……現実は違います。おとぎ話の世界に生きているわけではありませんから。
ただし、1パーセントの人はおとぎ話の世界に留まっているようですが。
今日この場から一歩外に出たら、みなさんには現実が待ち受けています。現実はシャレにならない世界です。残り99パーセントの人を現実が待ち受けていることは確実です。
その現実を、少しでも公平で公正な世界に変えられるかどうかは、あなたたち若い世代の肩にかかっています。
日常的に欺かれ、騙され、出し抜かれ、軽蔑され、裏切られ、投獄され、犯罪者扱いされ、飢えに苦しみ、誤った教育を受け、利用され、虐待され、さらには通りで銃殺されることすらある99パーセントの人々にとって、よりよい世の中になるかどうかは2016年度卒業生のみなさん次第なのです。
卒業生のみなさん、これからどうかまっとうな道を歩んでください。不正の道へと突き進むことなどないように。ちなみに、この「不正(skulduggery)」という言葉は、マイク・タイソンから学びました。大好きな言葉です。
アメリカは多様性に富んだ国です。それが、この国を偉大な国たらしめる多くの要素のうちの1つです。……原住民の虐殺や奴隷制度という負の遺産があるにもかかわらず!
国勢調査局によると……スパイク・リーの意見じゃありませんよ、今から5年後、白人の子供たちは少数派になり、さらに2049年には、非白人の数が白人を上回るとのことです。
みなさん、これが現状なのです。今こそ戦うのを止めて、この現状を受け入れる時だと私は感じています。
例え、いかにほかのやり方を願う人間がいたとしても、アイゼンハワー元大統領やジム・クロウ人種隔離制度、消防署、警察犬ジャーマン・シェパード、ホームドラマ『ビーバーちゃん』を甦らせることでは、再びアメリカを偉大な国にすることはできません。
(会場拍手)
断固として甦らせません!
(会場拍手)
今こそ、今日という日を生き、類まれなこの歴史的転機を生かして、私たちの間に橋をかける時です。性別、人種、宗教、そして壁と壁ではなく、国と国との間に、です。憎悪の壁に対して、愛の橋をかけましょう。
(会場拍手)
さて、補足があります。その1。私は今この場に立ち、ここジョンズ・ホプキンス大学で、世界有数の偉大な人々に囲まれています。私などよりずっと賢い方々ですので、尋ねたいことがあるのです。
どなたか私に教えてくれませんか? ニューヨークは「ブルックリン共和国」の公立教育を受けた私に。どなたか説明してください。「国境に約8メートルの壁を建設する予定だ」とメキシコに伝える方法を。その上、厚かましくも「その費用を持ってくれ」と言う方法を! おいおい、マジかよ!
(会場笑)
補足その2。
この場にも来ている、愛する妻トンヤと私は、バラク・フセイン・オバマ大統領の第1期に、我が家で資金調達パーティを行いました。みなさんのお気持ちはわかりませんが、私はオバマ氏が退任したら寂しくなります。オバマ氏は歴史の正しい側に立つことになるでしょう。
(会場拍手)
私は通称「フットボール」と呼ばれるものの話を耳にしたことがあります。一見したところ書類かばんのように見える装置のことで、作動させると核兵器の発射が可能になるというものです。私はこれを作り話だと思っていましたが、実は常に大統領のそばにあります。
我が家には持ち込まれませんでしたが、外に駐車された車両のなかに存在していました。みなさんの前にこうして立ち、装置の存在は作り話でないことを証言します。「フットボール」は実在しています。ちらりと見ただけで私は恐ろしくなりました。
話を今日に戻すと、私は繰り返し悪夢を見ています。悪夢のせいで寝返りを打ってよく眠れません。……ドナルド・トランプ氏が第45代アメリカ合衆国大統領に就任し、「フットボール」起動の核承認コードを持つという悪夢のためです! トランプ氏が誰かに憤ったら、私たちはみなドカーンとやられるでしょう!
(会場笑)
もう2つおまけにドカーン、ドカーン!
神よ、私たちを救ってください。いずれにせよ、私たちは覚醒しなければなりません。目覚める必要があるのです。
締めくくりにあたり、哲人であり詩人、すばらしい人道主義者でもあった友人、P.R.ネルソン氏の話に戻りたいと思います。彼のことはみなさん、プリンスというアーティストとしてご存知かもしれませんね。プリンスに愛を送ってください!
(会場拍手)
プリンスは、真に偉大なアメリカ人です。彼は、『ボルティモア』という曲を作りました。心配しないでください、歌ったりはしませんよ。こういう歌詞です。
「ボルチモア、誰も誰かの邪魔をすることなどなかった。だからきっと今日はいい日だったと言えるだろう。少なくともあの日のボルチモアよりはましだと。
マイク・ブラウンやフレディ・グレイのために祈る僕たちの声が聞こえるだろうか?
平和というのは、単純に争いのない世界のことじゃない。争いのない世界。また血みどろの日を目撃するのか?
僕たちはもう、泣いたり人が亡くなったりすることにうんざりしている。銃をすべて取り払おう。争いのない世界」
「君と僕とで、ようやくこう言えるだろうか。もうたくさんだ。もう愛する時期が来ている。そろそろ聴く時間だ。ギターの音色を聴く時間だ。ギターの演奏を。
ボルティモアよ、かつてないほどに。正義がなければ平和もない。正義がなければ平和もない。正義がなければ平和もない。正義がなければ平和はない。
ボルティモアよ、再び血まみれの日を経験するのか?
僕たちはもううんざりしている、泣くこと人が亡くなることに。すべての銃を取り払おう。正義がなければ平和もない。
ボルティモアよ、正義がなければ平和はない」
ご清聴ありがとうございました。さようなら! Brack lives matter!(注:アメリカに広がる反人種差別運動。「黒人の命だって大切」という意味)
(会場拍手)
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