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Senior Monitor Jake Bailey's Speech(全1記事)

「困難な状況でも諦めない人間になるために」車椅子の高校生が語った未来への希望

ニュージーランドの名門校クライストチャーチ男子高校の卒業式に、監督生であるJake Bailey(ジェイク・ベイリー) 氏が登壇。スピーチの1週間前にがんを宣告された彼ですが、しっかりと前を向き、希望の満ちた言葉を語りました。伝統に対する誇りと、未来への責任を感じさせる彼の言葉に、耳を傾けてみましょう。

実際に土俵に立つ人間に価値がある

ジェイク・ベイリー氏:このスピーチを書き、ついに発表することとなった1週間前にガンと申告されました。3週間以内に治療を受けないと死ぬから、今日この場に来られないとも言われました。

でも運の良いことに、このスピーチはこれからについてではなく、これまでのすばらしかったことについてですから。皆さんも病院での話なんて聞きたくないですよね。

シャルトルのベルナルドゥス(12世紀の哲学者)が、人間を巨人の肩に乗る小人に例えた一節から私のスピーチは始まります。彼によると、私たちが先祖より多くのものを見られるようになったのは、鋭くなったわけではなく、背が高くなったわけでもなく、先祖の巨大な英知によるものだということを言っています。

そんな高みを与えてくれたクライストチャーチ男子高校に感謝します。「Tena koutou katoa」(マウイ語の挨拶)皆さんこんばんは、私はジェイク・ベイリーです。2015年度の監督生です。今年の支えていただいた全ての皆さんに感謝します。

自分が相応しいのか迷った時もありました。自分がスタンダードを満たせているか疑ったこともありました。しかしその恐怖とは裏腹、皆さんを後悔させないために、リーダーとして良くあり続けることを止めたことはありませんでした。そしていつも、皆さんから返ってくるものをすばらしく思いました。

自分にとって特に大切だと思っているある言葉を皆さんに紹介したいと思います。そして今年のそれは、今まで以上に重要となりました。

「失敗したとか、もっとうまくできたとか、そんな批判に価値はない。汗水たらし泥にまみれ、勇敢に努力し、何度も失敗し、実際に土俵に立つ人間にその価値は存在する。なぜなら、失敗のない努力など存在しないからである。勇敢に実行し、熱狂し、没頭し、意味のあるのが彼らである。達成の高みにて勝利することを知っているのは彼らであり、失敗は果敢な挑戦の結果である」

この役目は1人で果たせるものではありませんでした。大きなチームに常に感謝しなければいけません。まず代理のサムとジェシー、常にたくましく、インスピレーションを与えてくれました。私が弱った時には強く、すばらしい助けとなりました。本当に信頼でき、毎日がよりすばらしいものになりました。

130年の歴史を理解することができた

2015年の監督生たちへ。私はあなた方一人ひとりとの繋がりを宝のように思います。そう簡単に認められないような仲間の一員として認めていただき、また、チャンスを与えていただき、感謝しています。これがなければ得られなかったこの繋がりが、私の得た最高のものだと言えます。特別で、すばらしい能力を持っている皆さんから多くのことを学びました。

そして、ヒル氏の揺るがないリーダーシップとサポートも忘れてはなりません。この1年間、フレッシャー氏、ウィリアム氏、ダネット氏によるサポートにも助けられました。私の成果の中枢を担うといってもよいものであり、彼ら無しではどうにもなりませんでした。

皆さんは本当に多くのことを私に教えてくれました。そしてその教えと共に私は人生を歩もうと思います。あなた方に認めていただけるような自分であればと願います。

「the Old Boys」の皆さんにも感謝しなければなりません。特にテリー・ドナルドソンとジム・ブレアには、彼らの側にいさせていただき私も袖を正すことができました。そういう関係にいられたことを誇りに思います。

彼らのおかげで、この130年の歴史が何たるやということを身をもって理解することが出来ました。伝統を重んじ、歴史に感謝し、そして軍、アート、文化、商業、法律、ボランティア、スポーツにおいてOld Boysが貢献したことを理解できました。

そんな聡明な彼らに支えられました。彼らは自分の達成を強くは語らず、また穏やかに学ぶべきことを示し、その栄光がもたらす責任について語りました。そしてこれらは私が入院する前に書いた内容です。ありがとうございます。

先生方への感謝の言葉

残念なことに、短くもあり長くもあった時間が過ぎ、前に進む時となりました。ここまでくるのには困難な道のりであり、それは自分だけの力によるものではありません。これは一夜で成せるものではなく、私たちの数々の決断や、それを支える周囲の方々のおかげなのです。そういう人たちにこそ、私たちは感謝を捧げなければなりません。

先生方へ。才能と知恵、そしてたまに映画を拝借させていただき、ありがとうございます。あなた方がして下さったことは、義務と呼べる行為以上のものでした。しっかり時間をかけて課題の説明をしていただき、また、私たちが注意散漫な時には何度も説明していただきました。

やらないと選択できたような時でさえ、助けを差し伸べて下さいました。私たちが集中し続けられるように、授業も工夫して下さいました。そして私たちの最善を引き出して下さいました。

10代の少年にもそのすばらしさは理解できました。そして親御さんたち。いつもサポートしていただきありがとうございました。過ぎ去ったこの年だけでなく、13年の学校生活と全ての人生に関してです。ベッドから起こし、服を着せ、ドアへ送ってくれました。

宿題、学費もそうです。あらゆる学校行事にも参加していただきました。私たちの日々の些細なドラマにもつき合ってくれ、またこうして成長する余地も与えて下さいました。

強い導きと助言を与えて下さったコーチたち。学校がただのクラス行事のためではないと思えたことに感謝しています。逆境での力の使い方や、鍛錬とスポーツマンシップの重要さを学ぶことができました。そして他人と共に共通のゴールを達成する楽しさも学びました。

モラルの力とは何か

私のミドルネームはロスというのですが、その名前は偉大な叔父からいただきました。彼はクライストチャーチ出身の腎臓移植外科医で、Asian Commission for the Global Advancement of Nephrologyで働いていました。

臓器移植がまだ恐れられた時代に、それを実行し多くの命を救ったことで知られています。その分野においては、人類最高とも言える人間でした。ニュージーランドで初めて腎臓移植を実行したのも彼でした。彼もまたクライストチャーチ男子高校の卒業生で、労働階級出身でした。彼の兄弟で大学に進学したのはたった1人でした。そんな中、彼は高みを求め、多くの命を救うことになった道へと進んだのです。

彼の葬儀が行われた大聖堂では、彼によって命を救われた多くの方々も見えました。短い期間にも関わらず、多くを患者に捧げたのです。彼は変化を生み出すことを恐れませんでした。労働階級出身の卒業生が、「Altiora Peto(高みを志す)」ということを実行したのです。

臓器移植では全ての命を救えませんが、自らの手で物事を変えていくことは可能です。

クライストチャーチ男子高校の成功は、学問、文化、スポーツと多岐に渡ります。そしてそれらのどの分野においても我々は秀逸です。しかし全てにおいて最高になれるわけではないのです。

毎回、全てにおいて完璧にはなれませんが、モラルを携えるという選択は可能です。モラルの力は、このクライストチャーチ男子高校の信条でもあります。ガンになる前に書いたことなのですが、今では新たな解釈も加えられます。

モラルの力とは、諦めてしまえるような状況でも諦めない人間になるために、意識的な決断を下すということです。

未来はまさに私たちの手の中にある

ジム・ロンは言いまいした。

「他人が小さく生きるのは構わない、でもあなたは違う」「小さいことで喚くのは構わない、でもあなたは違う」「小さな悲しみに涙するのは構わない、でもあなたは違う」「他人に未来を委ねても構わない、でもあなたは違う」

もちろんこのように生きるためには恐怖がつきまといます。バカに見えてしまう、十分なレベルに達せないという恐怖です。監督生になるということは、こういう恐怖に日々直面するということでもありました。

でもこう考えるのです。今、生きている限り死ねない、だから目の前の機会に、勇敢で、偉大で、寛大で、そしてすばらしいといえる状態であれ。自分と歩みを共にする人間から学ぶのです。

私は3週間学校を休んだことがありました。私の母に、私の所在を聞くメールを毎日送るのは止めていただきたかった。

(会場笑)

その間は毎日寂しかったです。この5年間、クライストチャーチ男子高校の学生でいられることが誇りに思いました。そして今日これからの人生でも、この学校の卒業生であることを誇りに思い、私に与えてくれたものを返していこうと思います。

自分自身と、皆さんにとってのチャレンジは、今後も成長していけるかということです。未来はまさに私たちの手の中にあるのです。長期的な夢なんか忘れて下さい。それよりも、短期的で目の前にある夢に対してパッションを持とうではありませんか。忍耐とプライドを携えて、目前のもろもろと対峙するのです。どこで止まるか、いつ終わるかなど誰にもわからないのですから。

人生の旅が最高のものであることを願う

お互い、一生出会うことのない人もいると思います。またある人は、テレビや書面、もしかしたら刑務所で顔を見ることになるかもしれません。全ての皆さんと共に育てたことは本当に楽しいものでした。私の人生の数年間を共に過ごせたことは、誇りであり、喜びです。

こうして過去の年月を思い出してみると、カジュアルな関係や、より深い関係がありましたが、その全てが良き思い出として生きるでしょう。皆さんも同じ想いだと思います。そしてそんな高校生活の思い出が褪せていく時、その時こそがまさにここで過ごした時間の真価がわかる時です。それは、授業やテストなどとはまた違い、共に過ごし培った友情の結果なのです。

そうして私たちは今、この場にいます。ここで私たちの歴史は終わりですが、ここから先の物語は次世代の学生たちに委ねられます。この誇らしい遺産を伝承していってくれることを願います。

この逞しい校風の如く、1つの存在として団結し、学校で得た宝を継承していってくれることと思います。

これからどうなるかということは、あなたにも、私にも、誰にもわかりません。でも人生の旅が最高のものであることを私は切に願います。私の人生の一部になってくれた皆さんに感謝します。どこに行っても、何をしていても、出会うときは友でありましょう。

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