2024.10.10
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マーケティング志向の”決算書活用法” 農業における軽減税率の概要(全1記事)
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宮崎智也氏(以下、宮崎):こんにちは。私、オーレンス税務事務所の宮崎と申します。こちらは仲谷と申します。今日は20分しかないのでササッと自己紹介だけさせていただきます。
弊社は、お客様の数が5,300おりまして、そのうちの3,000件が直接農家さん、それ以外のところも農業関連ですので、農業に特化しております。東京事務所も、農業以外のお客さんを取るなと言われているところでございますので、農業専門でやっております。
今回の本題に入らせていただきます。売上と費用を紐付けて利益を考えることは大切だなと思いまして、ホワイトボードの右の図を見ていただきますと、私のお客様で新規就農の方に関しましては、この構造が作物別に成立しているかどうかというお話をいつもさせていただいております。
簡単なことを言うなと思うかもしれないですが、作物別に売上と費用を紐付けて計算し、利益は必ずプラスになるようにしましょうねというお話をさせていただいております。
農業経営者の方というのは、単収だとかキロ当たりの出荷額のことは当然把握されていますが、売上高を獲得するために投資した費用というのを、作物別に把握されていない方も中にはおられるのではないかと思っております。
どういう活動をしたことでその収益が発生したのか、という構造を作物別に明らかにすれば、どこに問題があるのかというのは分かりやすいですし、改善点を見出すことにつながりますので、「決算書はどんどん使っていこう」とお客様には言っております。
真ん中の下のところに「良い取り組みで利益にならなかった例」とあります。よくある例ですが、稲作でしたら畑に手をかけると、売上が上がるとよく言われますけれども、肥料を工夫して堆肥を作るだとか、あとは客土を入れるとか、そういったことをしていても、利益が落ちることがございます。
人件費を多く投下して、手間暇かけて単収が上がったとしても、人件費が売上高を上回ってしまうと利益は減少してしまいますので、投資に対してリターンが少ないということになります。なので弊社は、そのリターンということに関してもお客様にお話ししております。
こちらは損益計算書になりますが、どういう行動をしたから計算書の数値がどう変化したかとか、これからどういう行動をすれば損益計算書の数値が変化していくか、ということを会計事務所的に話すのではなくて、できるだけ経営学だとかマーケティングだとか、そういったものを考えた上で話すようにしています。
私自身も5月まで消費材メーカーでブランドとかをやっておりまして、そこらへんが強いものですので、もし気が向いたら、お声かけいただけますと、そういったブランドの話もさせていただきたいと思っております。
(スライドを指して)図の売上のところになるんですが、販売業とかでしたら、売上がプラスマイナス10パーセントを前後するというのはよくあることなんですが、かりに面積が同じで販売チャネルも同じ場合、概算金の金額が変動しなかったり、天候の影響もなければ、そんなに収穫するものの量は変わらないということになります。
なので、そういったところを普通に見るだけではなくて、売上が変動した場合はセールスミックスがどう変わったのかとか、というのは、みなさまもすごく考えて行動されてると思いますので、それがどのようにPLに反映されているかということを、我々はみなさんと一緒になって考えていこうとしています。
直販にウェイトを少し変えてみたことで、どれだけ売上が増えたのかとか、栽培する品目を変えてみたことで、利益がどれだけ上がったのかというテストとかも、一部ではおこなっております。台風が来る季節でしたら、限界利益が低めのものを持ってくるだとか、そういうこともいろいろ考えております。水色の枠で囲んだ売上と赤枠の費用について、ROIの話をさせていただこうと思います。
ROIということなんですけれども、これは投資に対してどれだけの利益を上げることができたかというような考え方となっておりまして、消費財のメーカーだとか、自動車とかそういったところで日々やっていることなんですが、農業においては肥料だとか、労務費だとか、設備投資、減価償却費になるんですけれども、そういった投資が、売上とか営業利益にどれだけ貢献しているかという視点があれば、営業利益を最大化できるのかなと思っております。
本日来られた方は、それぐらいのことはやっているよと言われるかもしれないですが、農業では、あまりこういうことは考えていらっしゃらない方もいて、喜ばれることが多いですので、今回ご紹介させていただければなと思います。
赤枠のところを上のほうからお話しさせていただきたいと思うんですけれども、こちらのデータは、政策金融公庫のデータを取っています。ここにある農家Aの例ですと、実際はこんなに売上はないと思うんですけれども、肥料費が約300万円増えています。肥料費が300万円増えたことに対して、売上が約2,400万円増えました、「すごいね」で終わるのではなく、肥料費を300万円投下したことによって、どれだけ売上が増えるのかテストしていくことも必要かなと思っております。
次の労務費なんですけれども、これはちょっと極端に作っていますが、売上高が2,400万円増えたことによって、労務費が2,600万円増えている。この時点で見ると、ああダメだなという話になります。ただ、ROIに関しましては、現時点とか単年度のものだけではなくて、将来に向けた投資であれば事業計画を作っていただいて、その事業計画の範囲、3年とか5年で黒字にできるかどうかというふうにみていけばいいと思っておりますので、投資に対するリターンがどうなのか、必ず複数年でも追っていかなければならないと思っております。
減価償却費に関しては、こちらマイナスになっております。投資減価償却費が1,000万円少なくても、売上に影響が出なかったか考えていかなければいけませんし、それだけではなくて、投資が少ないのに人件費やリース等の費用が増えていないかとか、ひとつの勘定科目だけを見るのではなくて、複数の勘定科目を横断しながら効果を見ていく必要があると思っています。
次にROIの測定方法について、お話しさせていただきます。これはちょっとざっくりした計算方法になるんですけれども、ここに四つ田んぼを書いていますが、全部で4ヘクタールあるとします。来年から、2ヘクタールは従来のままで栽培して、田んぼ2では、肥料や材料をいじってみよう、田んぼ3では、人件費を投資して単収を上げようという戦略を取ってみる。
その場合、損益計算書を三つ作るというのはなかなかできないことになりますので、一つの損益計算書でざっくり測定する方法をお話しさせていただこうかなと思っています。
これは消費財メーカーが店頭でよくやっているパターンですが、単純に全部を一つの損益計算書にまとめて作っていただいても構わないんですが、田んぼ2に関しては、肥料が変わっていて仕入先とかブランドとかのデータが抽出できますので、そこだけ別で項目を立ててみる。田んぼ3については、労務費のかかり方が違うので、勤務時間をつけているところは、総労働時間かける各田んぼごとの活動時間ということで、ザクッと従業員の給料を分けられると思います。
1時間当たりの給料と活動時間をかけた人件費を取ると、田んぼ2の肥料費は、こちら単位は千円ですので、200多くなって20万円増えています。それに対して、売上高がプラス330万円となっていて、利益が差引プラス110万円で、1,745という数字になっています。田んぼ3では、労務費が500増えて672となっております。売上高はプラス700で、6,784。利益の方は1,840超えてプラス200と。
これらはダミーの値で本当の値ではないですが、この例ですと、投資に対してリターンが成功していることがわかります。弊社の方でも、25ヘクタールぐらいの農家さんに対しては、1ヘクタールぐらいでいろいろ実験をさせていただいておりまして、どれだけの効果が測定できるかということをやっています。
やはり農家さんが次の世代に橋渡しする時に、売上を上げて渡さないと、息子がなかなか後を継いでくれないということもありますので、どうしたらできるだけ利益が増えるのか、売上が増えるのかということを考えるために、そういうテストとかもやっております。
稲作の場合は、単収を上げることではなくて、農地を拡大することで売上を増やしていこうと考える経営者の方もおられます。これは別に稲作だけではなくて、畑作であっても、果樹であっても同じことですが、そういった場合、仕事量のピークが高まってしまうと、既存の労働力ではその仕事をこなせないことになってしまいます。
なので、うちがよく言うことですが、上のグラフが4ヘクタールすべて主食用米でやっている例で、下のグラフは4ヘクタールの主食用米と2ヘクタールの飼料用米でやっているという例なんですが、そうすることによって、飼料米であれば、収穫時期がちょっとずれますので、同じ既存の労働力をそのまま使えて、トラクターも一台でいいですし、主食米だけをやってると、通常はコンバインを1ヶ月しか使えないのが、2ヶ月使えるということで、減価償却を有効に使えるかなと思っており、こういった話もしています。
果樹園さんであれば、あまりないかもしれないですけれども、豊水とかを作ったあとに、同じところにラ・フランスを入れて、1月下旬まで売るだとか、そういったことをすることで、できるだけ仕事のピークを上げないように、しかも既存の設備や雇用をそのまま使える方法を弊社では提案しております。
ここまでが決算書の話で、あと残りは、軽減税率の話をさせていただきたいと思います。昨日国税庁の Q & A がアップデートされたということで、テレビ番組のニュースなどで、軽減税率を扱われることをが多かったと思います。2019年10月から消費税率が10パーセントになりますので、それと同時に軽減税率制度というのができます。
軽減税率の目的になるんですけれども、消費税というのは所得に関係なく公平に負担するものというふうになっております。低所得者も所得に関係なく同じように税金がかかったら辛いなというところがありますので、低所得者に配慮するという観点から軽減税率が導入されました。
軽減税率の対象品目ですけれども、飲食料品ですね、食品表示法に規定する食品。食品表示法はこの資料の一番後ろにつけております。そのうち酒税法に規定する種類を除く、つまりお酒を除くということと、あとは外食を含まないということになっております。
また、最後の判断基準として、人の飲料または食用として販売されるものであるかどうかということになっておりますので、例えば、人が食べる用の肉をスーパーで販売していて、それをお客さんが買ってペットに与えたりしても、それは人が食べるように販売しているものということで、そのまま8パーセントということになります。
つまり、食品表示法に規定される食品であるかということと、お酒、外食は除く。目的というのは、人が食べたり飲んだりするものということです。昔から伝統的に虫を食べる文化というのもあると思うんですけれども、そういったものは食品表示法に載っていませんので、それは食べるものであっても10パーセントとなります。
あと、消費税の概要だけお話しさせていただきます。消費税というのは、消費者が物やサービスを消費したときに負担するものになります。買った側が負担して、売った側が納付するということで、こんな図を書かせていただきました。
真ん中の農業生産者さまのところですが、農業生産者さまが肥料を1,000万円分買いましたと。肥料は食べるものではございませんので、消費税は10パーセントになります。それを購入者に売った場合、これは消費者が食べるお米、農作物なので、8パーセントとなりますけれども、この8パーセントは消費者が負担するものとなります。
生産者はそれを預かって納付するだけで、生産者が負担するものではございません。なので、購入者から預かった消費税160万円から、仕入れした時の消費税、これは一部肥料メーカーが納税しちゃってるので、100万円引いて残り60万円を納付するという構造になっております。消費税が8パーセントになったということで、農業生産者が得する損するということはとくにございません。
次のページなんですけれども、これは最近よく言われることですので書いてみました。10パーセントで仕入れたものを、8パーセントで販売したら、2パーセント損すると言われるんですけれども、これは豚の例ですが、畑作をやってるところも同じなんですね。
タネを10パーセントで仕入れて、野菜を8パーセントで売る。この図の場合は、生きた豚ですが、食品表示法に生きた豚というのは書いていませんので、軽減税率対象外で10パーセントの消費税で仕入れますと。
それをスーパーに8パーセントで販売し、スーパーが消費者に8パーセントで売る。最終的に、消費者が8パーセントを負担するというだけになりまして、税込、税抜き、どちらで計算しても、損益の結果は変わりません。
納付する税額になるんですけれども、その10パーセントで仕入れたものが、8パーセントで納付ということになりますので、預かるものが8パーセントで、控除するものが10パーセントということになります。軽減税率が適用されますと、農家さんの納付する消費税は減るということになります。納付する消費税は減るんですけれども、預かった消費税の金額が最後に出てきているというだけの話で、とくに農家さんが得する損するということはございません。
次は、軽減税率が適用される食品について、お話しさせていただきます。(スライドを指して)左側にある食品は8パーセント、右が10パーセントになっております。一番上に主食用米と書いておりますけれども、これが一般的に消費者が食べるお米になります。これは食品表示法で規定する食品ですし、人が食べるものなので、8パーセントとなるんですけれども、右側の飼料用米に関しては、牛とか豚とかが食べるものになりますので、これは軽減税率の対象外となっています。
下のほうにある野菜に関しましても、消費者が食べる野菜は8パーセントになるんですが、それを作るための苗とか種というのは、事業用のもので、低所得者に配慮するという考えに合致しないということになりますので、軽減税率適用外ということになっております。
最後の家畜になるんですけれども、家畜の枝肉とか内臓とか、そういうものは食べれるので8パーセントなんですけれども、それが生きた状態のものに関しては、生きた家畜と食品表示法には書かれていませんので、対象外と。原皮も対象外となっております。ここに書かれている分類で、だいたいのところは整理できているのかなと思っておりますので、何かあったときはこの表を見ていただくと判別できるのではないかなと思っております。
最後にちょっと事例を入れさせていただきます。みなさまの中にも、飲食料品を通信販売とかインターネットで販売されている方は多いのかなと思いますけど、その場合は送料が発生します。送料に関しましては、食べ物の譲渡ではないので、軽減税率の対象とはならないですけれども、送料と梨とセットにして売ると。
その中に送料がいくらと明示されていない場合には、送料込みの金額が軽減税率の対象となります。送料と、梨とかメロンとかをセットで売ると、同じ軽減税率が使えるということですので、毎回ほんの少しだけ安くすることができます。
あとは容器の話になるんですけれども、いちごを販売する時のパック容器であるとか、ジュースを販売する時の瓶については、瓶がなければジュースが売れないということになりますので、容器代は別ではなくて、容器にかかったコストも含めて、8パーセントで販売するということになります。
メロンとか高額な食品に関しましては、たまに桐箱に入れることもあると思うんですけれども、 桐箱に商品の名前などを直接印刷していれば、その商品のための包装材というふうになりますので、箱代も含めて8パーセントということで、無理に売価をあげたりとかする必要はございません。
最後に観光農園に関しましてですけれども、イチゴ狩りとか梨狩りとか、いわゆる味覚狩りの入園料というものに関しましては、店の中で食べるのと同じということになりまして、軽減税率の対象とはなりません。ただ、収穫した果物を観光農園の中で販売して、利用者がそこでは食べずに持ち帰るという場合は、直売所と同じということになりますので、軽減税率が適用されます。
今回時間がなかったため、あまり資料はお話しできなかったんですけれども、それ以外に役立つかなと思った資料を、23ページ以降に入れさせていただいておりますので、見ていただいて、もし分からなければ、弊社の方に電話をかけていただくと、対応させていただきます。20分、長くて申し訳ございません。ありがとうございました。
(会場拍手)
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