2024.10.10
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午堂登紀雄氏 インタビュー(全1記事)
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──著書の第3章「お金」の冒頭に、「“いい人”をやめられない人はお金に恵まれない」とあります。なぜでしょう?
午堂登紀雄氏(以下、午堂):「いい人」は、お金に対してネガティブなイメージを持っています。お金の話をすると、「いやらしい感じがする」「お金にうるさい人と思われてしまう」と考えているんです。つまり、お金の話をすると嫌われるという思い込みがある。他人に嫌われることは、いい人にとってもっとも避けたいことですから、お金の話を避けるんです。
──たしかに、お金の話はいやらしいと考えている人は多いような気がします。
午堂:本当に不思議ですね。私のいう「お金の話」とは、表面的な「儲け」の話ではありません。稼ぐことができた原因や根拠について、興味を持って考えることなんです。
会社の儲け話は、みんな日常的にしているはずです。「あの企業の業績が良いのは戦略がよかったから」とか、「競合他社はこんなビジネスモデルで儲けているらしい。ウチだったらこうすれば儲かるんじゃないか」などと、みんなで一生懸命議論しますよね。これも「お金の話」です。お金の話をすると、経営戦略やマーケティングなどの知識がレベルアップしていく。MBAもそうです。MBAは企業が儲けるための方法論なのに、「いやらしい」という人は少ない。
企業も個人も、お金を稼ぐことに興味があるはずなのに、個人がお金を儲けた、稼いだ、という話になるととたんに「いやらしい」って感じる人が多い。おかしいと思うんですよね。
個人のお金の話でも同じように、「なぜあの人は何億円も資産ができたのか」「なぜ株で儲けられるのか」という議論をして、その背景や判断の根拠を考えてみると、お金に関する知識が増えて、興味も出てくると思うんです。だから、もっとお金の話をしようと言っているわけです。
──話をしないから知識も深まらず、お金が寄ってこないと。
午堂:そうです。お金の話を避けるのは、じつはお金にとらわれているからです。まだ未練が残っている昔振られた恋人の話をしたくないのと同じです。お金に関心のないふりをしていても、本当は、心の中では「お金のあるなしが人の優劣を決める」というくらいにこだわっている。
まずはお金に対する「いやらしい」という先入観を捨てて、もっとオープンに話すことができれば、お金との適正な距離感が生まれて、客観的に考えられるようになります。
──いい人によく見られる「お金に嫌われる行動」はありますか?
午堂:典型的なのは、節約と貯金です。「いい人」は常識人ですから、「何かあったときのためにお金はきちんと貯金するもの」という親の教えに忠実です。貯めること自体が目的になっていて、「貯めたお金を有効活用して人生を豊かにする」ということに思考が向かわない人が多い。
節約と貯金が大好きで、「30歳で1,000万円貯めました」といったって、それでどうするんですかと聞くと、「いやもしもの時のために」と。もちろん、もしもの時の保険という機能はあります。でも、「もしも」とはどんな時のことか、その時にいくら必要か、まったく計算していない人がほとんどです。1,000万円じゃ到底足りないかもしれないし、多すぎるかもしれないのに。
お金は、幸せのなるための道具にすぎません。ただ貯めるだけではなくて、今よりもハッピーな人生を送るために自己投資するとか、上手に使ったほうが、より満足度の高い生き方になると思っています。
──いい人は貯金はするけど投資はしない、と。
午堂:いい人は、「失敗してはいけない」という固定観念が強いんです。つまり挑戦をしない。お金に関してもそうで、1円でも損するのがいやなんですね。1回でも負けたくない。これもまたおかしな話です。
たとえば、スポーツをする人は、うまくなるために練習します。シュートを外しても外しても、練習すればそれだけうまくなるじゃないですか。仕事もそうです。若い頃に多くの失敗を経験しながら、成果を出せるようになっていく。上達のためには練習が必要です。
でも、なぜか投資に関しては、練習もしないのに全戦全勝したい。ものすごく虫のいい話ですよね。それで、1回でも負けるとあきらめてしまう。
にもかかわらず、買ったとたんに価値が1割下がる新築マンションを3,000万円で買って、300万円損しているのにまったく意に介さない。こういう人に限って、儲け話にウラも取らずに一口のって、失敗したりします。失敗しても、それを教訓にして次に活かせばいいんですが、そうせずに誰かのせいにする。
いい人には「自己責任」という概念が欠けているんですね。誰かが何とかしてくれるという発想がある。でも、結局は誰も何もしてくれないから、国に文句を言ったり、会社のせいにしたりする。依存体質の傾向が強いように感じます。
また、いい人は、他人の言うことをむやみに信用し過ぎることがあります。銀行に対して全幅の信頼を持ち、窓口で手数料が高い投資信託を買ったり、企業の広告宣伝を鵜呑みにして効果が怪しい健康食品を買ったりする。人の話や常識を、「本当か?」「なぜそうなのか」と疑い、本質を問うような思考をしないのです。
──では逆に、「お金が寄ってくる人」はどんな特徴を持っていますか?
午堂:お金が寄ってくる人は、「貯めよう」とせずに「稼ごう」とします。お金は、稼げば稼ぐほど使いきれなくなって自動的に貯まるものです。そのためには「先行投資」という考え方を持つことです。
「稼ぐ」という行為は、誰かの「困っている」や「こうしたい」を探し、自分の持っている能力を人や社会へ提供し、相手に貢献することで感謝という対価をいただくことです。自分だけではなく相手もハッピーになる、発展的な行動なんです。一方で、「貯める」は自分だけの満足で終わってしまう行為。内にこもる行為であって、誰の役にも立ちません。
「稼ごう」へ発想をシフトして、稼ぐ力をつけるために、スクールやセミナー行くとか本で勉強するなど、自分に「先行投資」をする。「まず貯めよう」という発想では、「先行投資する」という考えすら浮かばないでしょう。
先行投資のためには「お金を借りる」という方法もあります。たとえばMBAを取るために留学したいとします。その費用が貯まるまで3年も5年も待っていては、得られるはずのチャンスを逃してしまう。借金してでもすぐ留学すれば、取得後に就いた仕事で、年収や経験というリターンを回収できると考えることもできます。
「先行投資」でチャンスを買って、それを活かしてお金を「稼いで」、幸せという「リターン」を手に入れる。この一連の流れを体験すれば、人生の選択肢が広がります。
──では金融商品などに投資する場合はどのように考えたらいいでしょう?
午堂:投資で大切なのは根拠・判断軸・再現性です。その商品になぜ投資をするのか、どんなリターンを得るのか、という根拠や方向性をしっかりもって、成功しても失敗しても理由を考えて教訓とし、次につなげることを意識すると良いと思います。
その意味で、投資信託は個人的にはあまりおすすめしていません。他人が運用するものだし、「なんとなく上がりそうだしいいかな」という曖昧なイメージで買ってしまいがちだからです。根拠がないから判断軸が養われない。判断軸がないから再現がない。つまりは、多少儲かったところで、次に活かせないんです。
──「ビットコイン」などの仮想通貨はどうですか?
午堂:現在のところ、価値が上がっていくイメージはありますが、なぜ上がったか下がったかを深い洞察とともに説明できる人はほとんどいません。たしかに跳ね上がって億万長者になった人もいるにはいます。いち早くその機会に気が付き、他人より早く参入したというセンスや勇気があったと言えなくはありません。しかし、上がった根拠を説明できなければ、再現性はもたらせない。だから次に同じように稼げるかというと、それは難しいのではないでしょうか。
根拠と判断軸という点でおすすめするのは、株式投資と不動産投資ですね。
株式投資は、企業の未来に投資します。その企業の戦略や財務状況をもとに潜在的な成長力を調べて、現在と比べてどうか、株価が上がるかどうかを判断してその未来を買う。それはつまり、その企業の本質的な価値を推し量るということ。しかしそのためには、事業環境など様々な材料を検討し、論理的に考えて、「自分なりの判断軸」を持つ必要があります。
株式投資を通じて論理的思考や判断軸をつくることに慣れてくると、ビジネスやプライベートでの投資判断や、先々の予想を立てたりするときにも役に立つはずです。
不動産投資は、結婚相手を選ぶのに近いというとわかりやすいでしょうか。その物件は世界に1つしかないし、収益性や資産価値からみて、20年30年と付き合っていけるかを判断する行為ですから、見た目や雰囲気など、一時の情動で選んでしまうと失敗してしまいかねない。
だからこそ、不動産投資も論理的に考える訓練になります。毎月の家賃収入とローンの返済額から差額を計算して、さまざまな材料をもとに収益性を評価する。現在だけでなく、10年後の家賃がいくらになるかも考えて、収支を割り出す必要がある。おそらくお金を借りることになるでしょうが、自己満足のための借金ではなく、将来の収入源を確保してハッピーになるための借金ですから、「先行投資」にあたります。
投資の大前提は「自己責任」です。そのためには勉強もして知識を蓄えて、論理的思考によって根拠と判断軸を明確に持つこと。そのうえで積極的に向き合ったら、自然とお金は寄ってくるのではないでしょうか。
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