2024.10.01
自社の社内情報を未来の“ゴミ”にしないための備え 「情報量が多すぎる」時代がもたらす課題とは?
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山田裕輔氏(以下、山田):それではさっそく、本日のパネリストをご紹介いたします。下園壮太さんです。下園さん、本日はよろしくお願いします。
下園壮太氏(以下、下園):こんにちは。よろしくお願いします。
山田:はじめに、下園さんのご紹介をさせていただければと思います。下園さんは、陸上自衛隊初の心理幹部として多数のカウンセリングを経験されました。その後、自衛隊の衛生科隊員の、いわゆるお医者さん、看護師さん、救急救命士さん、レンジャー隊員に、メンタルヘルス、カウンセリング、コンバットストレス対策を教育されてきました。
現在は、NPOメンタルレスキュー協会でクライシス・カウンセリングを広めつつ、産業カウンセラー協会や、県や市、企業、大学院などでメンタルヘルス、カウンセリング、感情のケアプログラムなどについての講演やトレーニングを提供されております。また、メンタルヘルス関係の著書は40冊を超えております。
本日はどうぞよろしくお願いいたします。
下園:よろしくお願いします。
山田:本日はトークセッションの予定だったんですが、限られた時間の中で情報を伝えるというところもありまして、下園さんの講演、そのあとに質疑応答というかたちで進めていきたいと思います。では下園さん、よろしくお願いいたします。
下園:わかりました。今日は「なぜメンタルは弱くなるのか? 本当の心の強さとは」というタイトルでお話ししたいと思います。今、コロナ禍が2年目になりました。私のカウンセリングの中でも、いろんなことで困ってらっしゃる方が多くなっているような気がします。
お仕事をやってる方は、「もう退職をしたい」という方もいっぱいいますが、そうでなくても「無気力」とか、「仕事が進まない」「アイデアが生まれない」という悩みを持ってらっしゃる方も不安ですね。「もう、なんにしても不安」ぐらいの問題があって。
それと、イライラも多いですね。そしてそれが職場で起こると、パワハラとかセクハラの被害者・加害者としての問題が顕在化することもあれば、うつっぽくなって仕事を続けられないとか、死にたくなる気持ちを持つ方も多いようです。
下園:今日は「疲労」ということでお話をしてるんですが、通常、疲労がたまったうつ状態になってる方は、ざっくり言って全体の1割ぐらいはいらっしゃる。「プチうつ状態」は2割ぐらいいらっしゃって、7割が普通に元気にお仕事をしてる。この「プチうつ」状態でも仕事はできちゃいます。
心理テストなんかをすると、「ちょっとうつっぽいよ」という数字が出るのが、このあたり(「うつ」「プチうつ」状態)の人たちだと思ってください。コロナになって1年ぐらい経ってからのデータなんですが、半分がうつっぽいんですよね。
元気だったのに最近プチうつっぽいなとか、いろいろなことですごく悩むとか、プチうつだったのにもっと悩むようになった人たちが、「心が弱くなっちゃった」という問題意識を持つ方だと思ってください。
この「元気な人」たちは、「ぜんぜん変わりませんよ」と言うんです。そういう人が半数はいるんですが、けっこうな数の方々が(コロナ禍でメンタルに)影響を受けていると思っていただければいいかなと思います。
じゃあ、なんで私たちはちっちゃいことでも心が傷つくような感じになってしまったり、心が弱ってしまうのか。通常、刺激が強いと当然ストレスを感じるでしょうし、不安、孤独、変化に敏感か・鈍感か(といったセンサーの差)でも感じやすいでしょうね。
ちょっと前に流行った「繊細さん」。「私は繊細さんだから、ちょっとしたことでもすごく(ストレスを)感じるのよ」という、これもあるでしょうね。
要するに、ストレスは受けているんだけれども、我慢する力、無視する力、あるいは感じてるけれども気晴らしをするストレス対処法のバリエーションを持つ力の差で、結果としてストレスが表面に出るかどうかが変わってくる。これは、なんとなくイメージがつくと思います。
下園:ところがですね、私はもう長年この仕事をしていますが、自衛隊の頃から多くのことを観察していると、実は一番(ストレスに影響が)大きいのが疲労の度合い(蓄積疲労)。これによって、センサーが2倍、3倍になる現象があるんです。これは、みなさんあんまりご存じないんですね。
今日は、ここについて簡単に説明していきたいと思います。(スライドを指しながら)これは「蓄積疲労の3段階モデル」という私のモデルなんですが、1段階疲労、2段階疲労、3段階疲労と、疲労の度合いがだんだん深まっていくと思ってください。
(1段階疲労が)みなさんがあまり疲労をためていない状況です。疲労をためていない状況の時に、徹夜する、クレームを受ける、指導を受けるとか、あるショックを受けたとします。そうしたら私たちは、疲れたり、落ち込んだり、ダメージを受けますよね。
ダメージを受けても、まあまあ回復しますよ。徹夜だったら、次の次の日ぐらいにはもう抜けているし、上司から嫌なことを言われても、翌々日ぐらいには忘れている。そんな感じだと思ってくださいね。
ところが、私たちがなんらかの原因で疲れを溜め込んでしまって2段階(疲労)になったら、実は(ストレスを感じるセンサーは)2倍モードなんですね。なぜ2倍モードかというと、前と同じ上司に怒られたり、徹夜したりして、だいたい2日後には回復した場合、同じ出来事だから「今回も2日後には、前日と同じレベルまでにはいくかな」と想定する。
ところが同じ上司からの指導であっても、なんとなく2倍ショックで考え込んじゃうし、抜けるのにも2倍かかるんです。この「抜けるのにも2倍かかる」というのが重要なポイントで、3倍モードになると同じ出来事でも3倍ショックを受けて、回復まで3倍かかるんです。
下園:例えばある会社で、指導を受けた・指導を受けた・指導を受けた、徹夜があった・徹夜があった・徹夜があった……とします。もしみなさんが1倍モードで推移してるんだったら、4回ショックがあっても別に普通のことなんですが、みなさんが2倍モードだったら(ダメージを)2倍受けるんですね。
そして、上がりきらないうちにまた2倍受けて、3倍になる。同じ出来事でも、みなさんの状態によって受けるダメージは変わります。じゃあ、この蓄積疲労の3段階の状態でそれぞれがどう違うかなんですが、これ(青の三角形)は「理性の力」が効く幅広さです。
赤の三角形が「ネガティブな感情に乗っ取られちゃいますよ」という幅です。1段階疲労の時には、ネガティブな感情が引き起こされたとしても、理性的に考える客観的な力が強いので、違う見方や問題解決もできるんです。そういう時って私たちは仕事に集中できるし、何かを楽しむことができます。
ところが2段階になって、感情と理性が拮抗するようになると、目の前の対応に追われちゃうんです。そして、ずーっとなにか緊張している。楽しむことができなくなるんですね。仕事にも集中できなくなりますが、なんとか仕事はできちゃう。
2段階目になると、知らないうちに嫌なことを回避するようになります。仕事、人、場所とかを回避してしまうようになりますし、それでもがんばってなんとか続けていると、「嫌なこと」として記憶化してしまいます。嫌なことをがんばりすぎると、嫌なことを記憶化しちゃう危険ゾーンですね。
これがどんどん低下する時に、どういう兆候や変化があるか。まず最初に、2段階の下のほうから体に出てきます。後で紹介しますが、不眠や食欲不振、その他いろんな(影響が)体に出てきます。
下園:そして2段階になると、だんだん精神症状が変化してきます。要するに、負担感です。2倍モードだから負担感が増えるので、知らないうちに負担を避ける。「だるい」「おっくう」「めんどくさい」という言葉が口をつくようになる。
この三角形の感情で、まず波立ってくるのがイライラなんです。そして2倍傷つきやすいんですが、「表面は飾れる」と(スライドに)書いてあるのは、疲れきっていないので、職場では気合いを入れてなんとかパフォーマンスを出すことはできるということだと思ってください。
3段階目になると、疲労感や負担感の他に、自責感、不安感、無力感と、精神的にだいぶ偏ってきてしまう。これをうつ状態というんですが、疲労しているだけではなくて、うつ状態に偏ってきやすくなると思ってください。
うつの症状は(スライド)左側が体の症状、右側が精神症状だと思ってください。不眠、食欲不振(とスライドには書いてありますが)、若い人は過眠になることもありますし、甘いものを食べすぎて体重が増えることもあります。
負担感、疲労感というのは、やっぱりありますよね。何かをやって感じるのが疲労感で、「何かやって」と言われて感じる精神的なものが負担感です。思考停止で頭が回らなくなりますから、仕事ができなかったり、成績が低下したりします。
ありとあらゆる身体不調が出始めます。ありとあらゆるというのは、一斉にその人に(症状が)出るというよりも、どの症状が出てもおかしくない(状態にあるということです)。耳鳴り、めまい、歯痛、肩こりなど、バリエーションはすごくいっぱいあります。例えば、うつに対するお薬を飲んだり、うつに対する対処や休養をしていくと、これ(体の症状)が薄れていきます。
下園:まずは1段階で、疲労から現れる身体症状が出てきます。2段階以降に出てくるのが精神症状です。精神症状とはどういうことかというと、コロナになったら熱が出たり、あるいは咳が出たり、味覚が感じられなくなったりする。これが症状です。
いろんな健康状態や体の状態のバージョンがあっても、コロナになったらみんな同じ症状になるんですよ。だからこれが(1つの)病気として括られるわけなので、うつ状態も病気として括られます。
「なんかうつっぽくなった」といった時に、みなさんは「精神が破壊されるんじゃないかな」と思うかもしれませんが、違います。ある方向にきっちり症状があって、どの方でもその症状になっていくんですね。そしてうつ状態から抜けると、症状は元に戻っていきます。
精神症状が難しいのは、うつ状態でなくても、例えば自信の低下や罪の意識とか、責任感がある人が自責感を感じやすいし、なかなか自信を持てない人もいます。元気な時だと、「あぁ、そういう時もあるよね」と想像しやすいんですね。
だけどそれが2段階、3段階目になると、(ストレスの感じ方が)2倍、3倍過剰になると思ってください。普通だったら、何かで失敗したら自信がなくなりますよね。でもうつっぽくなると、失敗したら「もう人生だめだ」というところまでいっちゃうんです。
ちょっとミスしたら、「自分の責任だ」と感じてほしいと私たちは思っていますよね。ところが(うつ状態になると)、「だったらもう会社を辞めなきゃいけない」というぐらい、すごく過剰になると思ってください。
無力感、自責感、対人恐怖、不安、そして死にたい気持ち。これも症状だと思ってください。誰かが「死にたい」と言うと、私たちは「どうして?」って思いますよね。これは、1段階の発想です。
下園:理由があって「死にたいんだ」と思ってるかもしれませんが、コロナになると熱が出て肺がおかしくなるように、うつ状態も深くなってくると、なんの理由もなく「死にたい」って発想するようになってしまうんですね。
これは精神症状の上のほうの、思考の偏り。「私は能力がなくて、周囲に迷惑をかけて、周囲が怖くて、今後何の対策も打てない」「そんな私はいなくなったほうがみんなのためだ」みたいな。これ以上努力をするのはとてもつらくて、そんなことはできそうもないと思った時に、「死んで終わりにしたい」という発想が出てくる。これは「症状」として出てくると思ってください。
コロナやインフルエンザで熱がある人に、「熱を出したって意味ないよ」とか、咳をしている人に「咳をしたらみんなに迷惑をかけるから、咳をしないほうがいいよ」とか(声をかけても)、正論であっても熱を下げることはできないんです。
同じように死にたい気持ちがある人に対して、「命を大切にしないとだめだよ」「死んだら家族が悲しむよ」とか、それは正論です。でもね、もう(死にたい気持ちが症状として)出ちゃうんですよ。
「死にたい」とか、あるいはすごく自分を責めてる人や自分に能力がない人は、みなさんが理屈でひっくり返そうと思っても、ひっくり返せないものだと思っていただければいいと思います。
理屈ではわかる。でも、みなさんがひっくり返そうとすればするほど、「確かにこの人の言うとおりだな。そうできない私は自助努力が足りないからダメだな」と、(うつ状態にある人は)逆に苦しくなるんですね。
このように現代人の場合は、疲労が原因で、2段階、3段階の疲労が原因でうつ状態になることが多いんです。じゃあ、疲労したら全員がうつ状態になるのか。マラソンをすれば全員うつ状態になるか? というと、そんなことはないですよね。
頭脳労働や肉体労働は、やったことが自分でもわかるので「休もう」と思うし、自分の変化を疲労と結びつけることができるんです。ところが今の世の中の疲労は、自分が疲労してるという実感をなかなか持てないうちに、2段階、3段階に深まっていく。
「自分に能力がなくなったせいだ」「自分が努力をしてないせいだ」「対策がわからないから、もう本当にどうなるかわからない」というように、(スライドの)赤いところをすごく刺激してしまう。そうすると、うつっぽくなっていきやすいと思ってください。
このように疲労したら誰でもなる状態は、本人の本当の性格とは違うので、「うつ的性格」「別人化」と呼んでいます。
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