2024.10.01
自社の社内情報を未来の“ゴミ”にしないための備え 「情報量が多すぎる」時代がもたらす課題とは?
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威圧的な先輩が職場の空気を支配しており、上司でさえも何も言えません。仕事自体は、やりがいもあり、条件面でも悪くないので折り合いを付けていますが、威圧的な先輩社員のことを気にして働くくらいなら転職してもいいのに、決めかねています。
井上智介氏(以下、井上):確かに威圧的な人が空気を支配しちゃっていることは、部署単位で見たらけっこうありますし、もしかしたらこの方は、会社単位でそれがまかり通っちゃっているのかなと思うんですよね。
ただ、幸いなのかわからないですけど、何とかお仕事を続けられているということは、大きな体の症状だったり、何か仕事ができなくなっている状況ではないのかなとは思うんですよね。
それは僕はいいことだなと思っています。どんな環境でも人によって合う合わないがありますので、質問された方が、まあ何とかその環境で仕事ができるというのは大事な側面なんですよね。
その上での自問自答として、「じゃあ他に何かやりたいことがあるか」なんですよね。ここが大事で、例えば違う業界に行きたいとします。医療業界に行きたいとか、出版業界に行きたいとか、IT業界に行きたいとか、違う会社に行きたいとか、やってみたいことがあるのであれば、転職は僕は1つ(の手段)かなと思うんですけど。
特にない。今のままでも仕事が何とかできているんだったら、僕はそのままでいいんじゃないかなと、いつもアドバイスしているんですね。
加藤実紗子氏(以下、加藤):なるほど。
井上:ただ、とはいえストレスは非常に溜まっていると思うんです。職場でピリピリしながら毎日やってはるので、そこは仕方がない。それ以外の時間ですね。俗に言うアフター5だったり休日だったりで、いかに自分の心のケアに重きを置くかを大事にしてほしいなと思うんですよね。
自分の好きなことだったり、自分へのご褒美も多様に盛り込みながら過ごして、「生活」と「働く」のいいバランスを取りながらやっていってもらえたら今はいいんじゃないかなと僕は考えています。
加藤:無理してネガティブな理由で動くよりは、何か自分の中でやりたいこととか、ポジティブな理由が見つかってきた時に動くというのも大切ですね。
井上:そうですね。別に何が嫌で転職するというのはぜんぜんいいことだと思うんですけど、せっかくならというか、自分に言い訳ができるために、あれがやりたいなとかこれがやりたいなというのがあるほうがいい。そのほうが転職がやりやすいし、自分を受け入れやすいんですよね。
結論として「嫌なところから逃げた」というのは、めちゃくちゃ大事なことだしいいことなんだけど、なかなかすぐには自分で受け入れられない人もいるので。周りから見たら「それでぜんぜんいい」と言われても、自分1人だけ納得できないことがけっこうある。
納得材料を一応持っておくために、あれがやりたかったなというか、これをやりたかったな、こういう業界に行ってみたかったなというのを思った上で転職するほうがいい。今仕事ができないほどの状況であればちょっと問題ですけど、できているのであれば、それくらいの感覚を持ちながら転職活動していただけたらなとは考えています。
加藤:そうですね。この本を読みたいなと思われている方は、真面目な方が多いのかなと思うので、やはりネガティブな理由で転職したとなると、自分で自分を責めてしまうこともあるかもしれませんからね。
パワハラで休職した後、復帰する時に気をつけることを教えてください。産業医の方との面談がZoomだったのですが、オンラインで相手のことはわかるのでしょうか。
井上智介氏(以下、井上):今まさに休職中という方ですね。結局、質問が2つくらいあったのかなと思うんですけど。
まずは「Zoomで産業医面談が行われちゃった」という話なんですけれども、これは実は僕もコロナ禍はこういう時もありました。ただ、やっぱりやりづらかったというのが結論ですね。
なかなか人と人が接する時の温度感だったり、しかも「はじめまして」がほとんどなので、そういった時にどういう人かわからないし、どんな反応かも表情も読み取りづらかったり、顔が見えていてもそういうところはやりづらかったです。でも社会情勢上、やはり仕方なかったかなと思います。
このあとがどうなるのかわからないですけど、最近コロナも少しは収まりつつあるので、実際対面でお話することが増えたなという印象があります。(※2021年12月24日時点)
井上:あともう1個質問があったと思うんですけど、お仕事に復職していく上で気を付けることなんですけれども。これ、どうも質問者さんの話を聞いていくと、かなり原因がはっきりしている。「パワハラを受けて」ということなので、非常に環境要因が大きいなと思うんですよね。
質問者さんは症状がいろいろあって苦しまれていると思うんですけど、これが治まって仕事ができるようになったとしても、また環境が同じで、パワハラする相手と一緒になったら、また症状が悪くなるのはもう目に見えています。
なので、今後戻る時に「環境の配慮」はめちゃくちゃ大事になります。その時に必要なのが産業医なんですよね。産業医が「ここにまた戻ると症状が再発するからあきませんで」という話をする。僕は書くのがほとんどですけど、それを会社に提出するのがやっぱり必要だし。
別にこれはさっき言ったように、わがままじゃなくて、「このまま戻ったら病状悪くなりまっせ」というのは誰でもわかることで、それを提案しないのはさすがに産業医としておかしい話です。
そういった話は遠慮なく、質問者さんも産業医と今後復職する時に面談があると思うので、ぜひお話されたらどうかなと思います。なので、少なくとも前の人とは離れた環境でやるというのが、絶対的な戻る上での気を付けるポイントというところにはなりますね。
もしかしたら部署とか会社が5人くらいしかいないとか、そういう場合はたまにあるんですけれども、そうであればけっこう離れるのが難しいので、最低限、指示系統を変えるとか。直属の上司にその人が来ないように、誰かを挟んでやり取りするとか。
そうやって流れを変えながら、パワハラする人と少しでも距離を取っていくことが必要ですし、どうしてもという時はやはり退職も1つの選択肢として頭の片隅に置いておいてほしいなと思います。
加藤:ありがとうございます。産業医さんを頼るのが一番の解決策である中で、ちょっと不信感というか、産業医さんとの信頼関係がどうなんだろうと思われているのが、質問者さんの文章から読み取れるなと思っていたんですけれども。復職前の面談の時に、思いや考えを1回伝えてみるところから始められたらいいかもしれないですね。ありがとうございます。
加藤:今の関連で、「職場のお局さま対策。毎日細々と注意されまくり精神的につらくて、毎朝仕事に行くのが恐怖です。でも経験年数が長いお局さまは、上司の信頼が厚く頼りにされています。けど実際は新人イビリです」。こういった場合は確かに難しいですね(笑)。
井上:確かにどこの会社もそれに近いんですけど、簡単に言うと、パワハラする人って成績がいいんですよね。
加藤:うーん(笑)。
井上:成績が悪くてパワハラする人はあまりいないというか、たまに新人だけにやたら厳しかったりする人はいますけど、上も注意できない環境が大きな問題になっているのがパワハラだと思うんですよね。
よく言えば、その人のエネルギッシュなところが会社をプラスに変えているところも、少なからず実はあったりするんだろうけど、その分、大切な人材を傷付けているというのが、大きな問題になっているというのがよくあるパワハラの話です。
こういったお局さんもそれに近いタイプなのかな。上から信頼があるんだと思うんですよね。
これは非常に悩ましい問題です。というのも、職場の環境自体がそれを良しとしちゃっているところなんですよね。正直、質問者の方が相手や会社を変えるのは、ほぼ無理だと言っていいでしょう。その環境の中でどこまでやれるかというのが、大きな分岐点かなと思っています。
井上:正直、僕が産業医として行ってパワハラする人とお話するとか、被害者の方とお話することがいくらでもあるんですけれども、パワハラの加害者について「あんなことこんなことして、大変なやつですよ」と、そこの偉い人にお話をさせてもらっても、ぜんぜん変わらないことって実はいっぱいあるんですよね。
僕らのような第三者が入ってもぜんぜん変わらないということは、そういう会社の風土がそれを良しとしていて、この質問者の方が変えるのはもっと難しい。どうするかというところで考えてほしいなと思うんですけど、やっぱり一番いいのはもしかしたら転職なのかもしれません。
ただ、さっき言ったように、何とかそうは言いつつ業務はできている。嫌々だけど、毎日恐怖があっても、何とか業務ができているんだったら、何か次にやりたいことがあるんだったら転職したらいいと思うし、特段なかったら、何とか耐えていってもいいと思います。
それでも、どこまで耐えられるかを考えてほしいです。期間を限定的に考えて、例えば次の来年の夏とか、7月、6月ぐらいまでは何とか耐えられそうだけど、これが7月以降とかになっても、同じ状況だったらもう辞めようとか。先に自分でゴールを決めちゃうと、少しは気持ちが楽になりますので、そういった考え方を持ちながらその職場とお付き合いをしてみてください。
もはやその人というよりかは職場との関係だと思いますので、職場との関係とどう付き合うかを捉え直していただきたいなと思っております。
加藤:ありがとうございます。この期間を区切るというのはすごく大事な考え方だと本の中でもおっしゃっていましたよね。
『「あの人がいるだけで会社がしんどい……」がラクになる 職場のめんどくさい人から自分を守る心理学』(日本能率協会マネジメントセンター )
井上:そうですね。こういう職場全体となると、出口のないトンネルのようになっちゃいますので、そこでずっとやっていくと、精神的なダメージをすごく負ってしまって。最後は病院に来てしまうような状況になる人がいるんですよね。
でもそこは自分でブレーキを踏むというか、どこまでがんばれるかをちゃんと考えた上で、やれるならやれるで半年間がんばってみるとか。半年で何も変わらないなと思ったら、そこは出ていくという気持ちを持ちながら自分を大事にしてほしいです。
辞めることを、僕はお守りにしてほしいなと思っているんですよね。自分の心のお守りにして、「いつでも辞めてやるよ」という気持ちを持ちながらやる。お守りを持たずに無防備で行くとしんどいと思いますので、辞める気持ちをちゃんと大事にして働いてほしいなと考えています。
加藤:辞める気持ちがお守りというのが、すごく斬新というか(笑)。
井上:いやいや、これがあるからやっていられるという。自分で期間を決めた後も、「よし、辞めてやろう」という気持ちがお守りになって、何とか今働けているということなので、ぜひ大事にしていただきたいですね。
加藤:私もこういう経験はあります。この方も「朝行くのがつらいな」と思うことがあると書いてあるので、半年とかのロングスパンだけじゃなくて、「1日この仕事が終わったら」みたいな考え方もいいんですよね。
井上:もちろん。もっともっと短いスパンで見ていただいて大丈夫です。
加藤:「今日、この仕事終わったらドラマがあるぞ」とか、そういう楽しみを設けてもいいですよね。
井上:そうです。もちろん半年とはいえ、やはり傷つくのは傷つくので、さっきも言いましたけど、いかにアフター5で自分をケアしていくかというのは怠ってはいけないことです。
好きなことですね。ドラマにしろ、食べ物にしろ、映画にしろ何でもいいですけど、趣味のことで思う存分自分をケアしていただいて、自分へのご褒美をどんどんどんどん、これだけがんばっているんだから与えてあげてほしいなと思っています。
加藤:ありがとうございます。本に書いてくださったことの中で私が印象的だったのは、ストレス解消というか、「ストレス解消法を50個事前に挙げておく」ということ。その項目が「帰りに王将の餃子を買う」とか「食べる」とかでもいいというのが、すごく印象的でした。少しそのお話をしていただいてもいいですか?
井上:精神的にしんどい時って、ストレス解消でどうしたらいいかというのは、なかなか思いつかないんですよね。頭が真っ白になるというか、頭が疲れていると考えることがなかなかできなくなっちゃうので、考えるのではなく「ストレス解消法を選ぶ」という段階まで事前に落とし込んでおく必要があるんですね。
そのために、加藤さんに言っていただいたように、50個ほど自分の好きなもの・自分のストレス発散になることをひたすらストックしておくことですね。
でも「音楽を聴くこと」とか「甘いものを食べること」みたいにふんわりしていると、そこからまた考えなきゃいけないですよね。「何聴こうかな」とか「何食べようかな」とか「どこ行こうかな」とか考えなきゃいけないですよ。それもすごく疲れるし、結局ダメになるんですよね。ケアがうまくいかないんですよ。
なので、「これを聞いたら誰もが同じ行動するよな」くらいのレベルまで、具体的な行動に落とし込んでいる必要があって。例えばさっきの餃子の話がありましたけど、「王将の大阪支店の餃子を食べること」みたいな。これを聞いたら誰もが同じことをするくらいのレベルで、具体的に挙げておくことが大事です。
井上:50個って多いなと思われるかもしれませんけど、本当に「餃子」を1つ目として、2つ目は唐揚げでもいいですし、チャーハンでもいいし、自分の好きなものをひたすらどんどんどんどん書いていく。そこは質じゃなくて量です。
カウンセリングではよく100個と言われているんですけど、僕はちょっと遠慮して外来では50個と言っています(笑)。まず50個あれば何とかなるので。どんどん見つかっていくので、どんどんどんどん増やしてほしいなと思います。まずリスト化しておくということをぜひやっていただきたいです。
加藤:ありがとうございます。確かに、「最寄り駅から家の間にあるローソンで、あのプリンを買う」みたいなやつでいいですよね。
井上:まさにそうです。考えるのが難しいので、選ぶという段階まで落とし込む。ぜひみなさん、好きなこと、心地いいことをリストアップしてください。
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