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佐々木常夫・人生100年時代のライフデザイン入門〈66Love協会主催・幻冬舎大学〉(全5記事)

愛とは自分が選んだものに責任を持つこと 自閉症の子、うつ病の妻を支えた佐々木常夫氏の覚悟

2019年4月9日、一般社団法人66Love協会と・幻冬舎大学による「佐々木常夫・人生100年時代のライフデザイン入門」が開催されました。元・東レ経営研究所社長であり、ベストセラー作家の佐々木常夫氏が、自身の半生を振り返りながら、人生100年時代の「豊かな老い」を得る心構えを伝えます。本パートでは、参加者からの質問に答え、家族とのつながりや、人間関係の悩みなどにアドバイスしました。

人をリスペクトすることが自分の人間関係を豊かにする

司会者:続きまして、挙手をいただければと思います。

質問者2:今日は素敵なお話をありがとうございました。ちょうど今、人生100年だといわれていた中で、まだまだ先が長いと思って今日はここに来ました。すごく印象的だったのが、「リスペクト」という言葉でして、とくに奥様はリスペクトするのが一番大事だとおっしゃられていましたが。

それが本当に重要だといったときに、私は、家族が来月結婚するものですから、周りにリスペクトするといえば誰なんだろうと、すごく不安になっています。そのリスペクトをするために、初歩的なことで申し訳ないんですが、どういったところを人としてご覧になっているのだろうかと。

例えば、先ほどは、奥様の生活に対する素の態度とおっしゃっていましたが、周りの会社の人やお友達などがいらっしゃる中で、佐々木さんの個人的なところでもいいのですが、どういったことがリスペクトだと思っていらっしゃるのかをお聞かせいただければと思いました。よろしくお願いします。

佐々木常夫氏(以下、佐々木):人にはいいところと悪いところがある。どちらもあるわけですね。いいところが多い人もいれば、そうでない人もいますが。いいところは必ずあるんですよ。だからそれを見つけて、それを評価する。この人のこういうところがいいところだと。

これは家族でもそうなのですが、会社でも、部下たちでも、できのいい人とできの悪い人がいます。でも、できの悪い人でもちゃんといいところを持っている。それを伸ばしてやれば、相手に対して私はそうしたものを認めてくれて、評価をしてくれるということがわかると、私を信頼してくれたり、頼ったりしてくれたり、人によっては尊敬してくれる人まで出てくる。

それは自分の幸せにつながってきますよね。なぜその人をリスペクトするのかというと、それが自分の人間関係を豊かにするからなんです。相手からの信頼を得るということもあるんです。だから、できるだけ相手を認める。相手のいいところを見つけるということが大事だと思っているわけですね。

愛とは、自分が選んだものに責任を持ち続けること

まったくいいところのない人なんていませんよ。だから、それはそれでいい。それから……今日は持ってこなかった。ああこれでいいか。ちょっと切り口は違うのですが、吉本ばななさんが私の本(『ビッグツリー』)を読んで、Blogに書いていたことがあるんですよ。その中に「佐々木さんという人にとって、愛とはひたすらに責任を取ること」と書いてある。

ビッグツリー 私は仕事も家族も決してあきらめない

私はそれを読んで、それを私は責任でやったわけじゃないのだがと思ったんですよね。ところが、私は講演会で質問を受けました。一番前に座っている奥さんが「佐々木さんは奥さんとの離婚を考えたことはありますか」と聞かれました。私は、そんなことを人に聞かれたことが一度もなかったものですから、とっさに応えたんですよ。

「一度もありません」

「どうしてですか?」

「だって自分が結婚したんでしょう? 自分が作った子どもでしょう? 自分が選んだ仕事でしょう? その中でがんばらなくてどうするんですか」

そう答えたときに、吉本ばななさんが「愛とは責任である」と書かれていたのは当たっているなと。この責任というのは、自分が選んだもの、自分の目の前にあるものについては責任を持とうということです。

これは、リスペクトをするということにもつながっていくのですね。そうしたことが結局は自分の幸せをつなぐ、築き上げていくということにつながるということじゃないかと思っています。よろしいですか。

質問者2:ありがとうございました。

仕事の効率化や生活に「断捨離」を取り入れる

司会者:ありがとうございます。私も質問していいですか。私の父とおじさんが、みんなで墓を作ったんです。私に「お前に任せたから」と言われて、3つもお墓があるんですよ。どうすればいいかと思いまして。生きているうちはしょうがないと思いますが、私も年を取って、これから「お前しかいない」と。この場合、弱いんですよ、私も。

「わかりました」と言って、檀家の仕事もして、ちゃんと来ればちゃんと行き、というようにやっているのですが、これを続けられるかどうか。こういうときに、どうすればいいですか。

佐々木:先ほど言った仕事の効率化の話で、断捨離だと私は言っているのですが。断つ、捨てる、離れる。いらない仕事を切るということなんです。タイムマネジメントというのはいらない仕事を切ることだよ、というように言っています。

墓仕舞いですが、3つあるのであれば、1つにするんですな。死んじゃったら、もう向こうはわからないでしょ(笑)。お墓はあるんだから、ね。それでいいじゃない。ただね、墓仕舞いにはお金がかかりますからね。大変ですよ。だれかに譲ったらどうですかね。

(会場笑)

亡くなったあとのことは、残された人の責任でやればいいと思うんですよ。亡くなった人のことを考えることは私はないと思うんです。お墓というのも、亡くなったあとの人の問題ですよ。本人の問題じゃありませんよ。そこにいるわけじゃないんですからね。あまり気にしない方がいいんじゃないでしょうか。

司会者:ああそうですか。私は、やめてしまうのも悪いかと思ってしまいまして。どうもありがとうございました。

嫌いな人と付き合わざるを得ないときはどうするか

司会者:もう1ついいですか。先ほどすべては人間関係だとおっしゃっておられましたが、どうしても嫌いな人でも付き合わなきゃいけない。どうすればいいでしょうか。どうしても合わない。がんばってもがんばってもどうも合わないという人とは……

佐々木:それは付き合わなきゃいいんじゃないですか(笑)。

(会場笑)

司会者:どうしても仕事上で付き合わなきゃいけないということで(笑)。

佐々木:それならば、「無理に付き合う」んですよ。仕方ありませんからね。その置かれた環境を自分で変えられない場合は、仕方がないですよね。受け入れるしかないんですから。あそこに書いてありますが、運命を引き受ける。

(会場笑)

運命を引き受けて、変えられるものは変えたらいいんですが、変えられないものはそのまま受け入れるしかありませんよ。「嫌いだ、嫌いだ」と言っていても、ちょっといいところもあるから、そこを見つけるしかないんですね。

だって、付き合わざるを得ないんでしょ? いつまで経っても「嫌いだ、嫌いだ」と言っていたら継続できないじゃないですか。人は変えられないけど、自分は変えられるわけですから。人はいつでも変われる。

司会者:自分が変わると。

佐々木:自分が変わるしかありません。

司会者:わかりました。覚悟を決めます。がんばります。他になにか。どうですか、みなさん。

努力しても結果が出ないこともあるからこそ、起きたことが正しいとは限らない

質問者3:今日は貴重なお話をありがとうございました。このスライドについてうかがいたいのですが、一番上の「『起きたことはすべて正しい』は正しくない」というのはどういう意味なんでしょうか?

佐々木:これはある方の本のタイトルでしてね、その人に才能があって努力した結果として事実が起こったんだから、「起こったことはすべて正しい」と書いてあったんですよ。私はそれを読んで、これは正しくないなと思ったんです。

あのとき、もし娘がそのまま会社に行っていたら、我がパートナーは死んでいたんです。私が東レ経営研究所の社長にならなかったら、つまり時間ができなかったら、彼女のうつ病は治らなかったんです。そしたら、私は本を書くという選択をしなかった。テレビに出ることもなければ、今日ここで講演もしていないんですよ。

すべてがたまたま起こった。いろんな人がいろんな事情を抱えて、努力してがんばっているのに、すべての結果が出るわけじゃないんですよ。それを、自分が結果が出たからといって、起きたことはすべて正しいなんてことは言わないでほしいということなんですよね。そういった意味で書いたんです。よろしいですか。

質問者3:ありがとうございます。

司会者:さて、最後の質問にしましょう。どうぞ。

本当に理不尽なことに耐える必要はない

質問者4:本日は、素敵なお話をどうもありがとうございました。すごくくだらない質問で申し訳ありませんが、理不尽。『人生は理不尽』ということで、理不尽だと感じたときに戦うべきなのか、それを運命として引き受けるべきなのか、その理不尽があってなにかこういろんな、生きているということもあると思いますが、それを理不尽だと自分が感じたときに、どう抜けていくのがいいのか。

人生は理不尽

たぶん、今日のお話でもいろいろとあったと思いますが、一言これだよというお考えがあれば、教えていただければと思います。

佐々木:私がこういった講演をやっていて、タイムマネジメントや生き方、人生観などの話をしているとき、最後に運命を引き受けようという話をしたときに、質問がありました。「私の夫はこういう人です。理不尽な人なんです。こういうところがあって、ああいうところがあって、こんな人とも私は一緒に暮らさなきゃいけないんですか?」と。

そのとき私は「そんな男とは別れなさい」と言いました。いろいろな状況があって耐えなきゃいけないんですが、だけど本当に理不尽なことであれば、そんなのは耐える必要はないんですよ。運命として引き受ける必要はないんです。

どうしてもできないことは別。例えば私の場合は、家内を離婚するわけにはいきませんよ。だって、うつ病で、誰も面倒を看る人が周りにいなくて、私と離婚したらどうなるんですか。子どももそうですよ、障害があるから。これは避けるわけにはいかない。これは運命として引き受ける。だけど、ちょっと上手くいかない配偶者なんていうのは、選択の余地はいくらでもあるわけですよね。

「逃げなさい」と言わなければいけないときもある

佐々木:それは自分の生き方と照らし合わせて、合わないとなったら避ければいい。そうした運命を引き受ける必要はない。よくいじめられてというのもありますが、いじめられた子にいくら「がんばれっ」と言っても、本人はがんばっているんですよ。これ以上がんばる必要なんかない、無理なんですよ。

そうした人に、「運命だから引き受けなさい」なんて言うんじゃなくて、「そういうときは逃げなさい」と言わなければいけない。そういうところからは、逃げられるんだったら逃げたらいい。ですから、全部表と裏ですよね。世の中というのは、こういった(運命を受け入れる、がんばるという)建前なんだけど、こういうこと(逃げるべき、がんばらなくてもいいこともあるもの)なんだという。

だから私の場合は、私が考えたことは他とはだいぶ違うのですが、やっぱり人生は理不尽なんだけど、その中でどう生きるか、ということ。そのときに前向きに生きるのと、反対方向に走るのと、それはテーマによって、人によって全部違うわけですよ。それを自分で諦めてほしくない。自分が納得できるようなものを選ばなきゃいけないということだと思います。

質問者4:ありがとうございます。

司会者:ありがとうございました。いろいろな質問がありました。今日は本当にどうも、先生もありがとうございました。私も、これからも先生の言葉を噛みしめながら生きていこうと思います。

佐々木:(笑)。

司会者:今日はどうもありがとうございました。

(会場拍手)

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