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佐々木常夫・人生100年時代のライフデザイン入門〈66Love協会主催・幻冬舎大学〉(全5記事)

佐々木常夫氏「未来を見つめる力がある人は老いにくい」 何歳からでも成長する人の共通点

2019年4月9日、一般社団法人66Love協会と・幻冬舎大学による「佐々木常夫・人生100年時代のライフデザイン入門」が開催されました。元・東レ経営研究所社長であり、ベストセラー作家の佐々木常夫氏が、自身の半生を振り返りながら、人生100年時代の「豊かな老い」を得る心構えを伝えます。本パートでは、老いることや自らの尊厳死、遺族のためにできることなどを語りました。

未来を見つめる力がある人は老いにくい

佐々木常夫氏:だから、ある意味では、人はいつでも変われるんじゃないかと。私は、まさか62歳になるまで本を書くなんてことは考えたこともなかった。しかし、頼まれて必死になって書いたんですよ。拙い文章でね。ところが、いろいろとアドバイスをしてくれる人がいました。

2冊目の本は仕事術の本だったので、私がやってきたことを書くだけですから。これは比較的簡単でしたが、表現力というのはいまひとつ。よくネットでの感想が入りますが、当時は、文章は下手だけど心は通じるというようなことを書いてくれる人がいました。ところが、課長の本(『そうか、君は課長になったのか。』)くらいから、だんだん乗ってきたんですね。『働く君に贈る25の言葉』がたくさん出ましたが、これは出たなりに理由があるんですよ。

前の本に比べれば、文章がずっと良くなっているんですよ。大げさに言うと、人は何歳からでも伸びるんじゃないでしょうか。私の大好きな葛飾北斎という画家の傑作のほとんどは、彼が70歳を過ぎてから描いたものです。88歳のときに「天よ、私にあと5年の命を与えたまえ、最高の傑作を描いてみせる」と言って、長野県小布施のお寺の中に、最高傑作を描いたんですよ。

ピカソもそうです。80歳くらいになってから名作を描いているんです。ですから、その人に力があって、伸びようとする、あるいはここまでいきたいという意欲があれば、それなりのものがついてくるのではないかと。やっぱり体は衰えますからね。例えば、三浦雄一郎さんはこの間、(ドクターストップで南米最高峰「アコンカグア」の登頂を)諦めましたね。あれは無理ですよ。

けれども、あそこまでトレーニングをしてやるわけですから。だから、あの方は「絶対に自分の体力を維持しよう」という目標設定があった。未来を見つめる力がある人は、やっぱり老いにくいんじゃないかと私は思います。未来を見つめていると、思考力や想像力が維持できますからね。

尊厳死を選んだきっかけ

尊厳死についてですが、私は自分の母親が75歳で亡くなっています。すこし認知症も罹っておりまして、最初は自宅で私の兄弟が看ていたのですが、認知症が入ったので、最後は病院に入ったんですね。食べられなくなっちゃうということで、胃ろうをすることになりました。

私は反対したのですが、残りの兄弟がお母さんに少しでも1日でも長く生きてもらいたいと言って、胃ろうをしたんです。ところが、本人は意識はないながらも苦しんでいる。所見があって、これはなんだろうと思ったんですよ。ほとんど意識もなく、ただ生きているだけ。

このようにすることは、人の尊厳というのだろうかと思いました。だから、私はあのときに決心しました。私は、絶対にこのようにはならない。60歳になったときに尊厳死協会に入会しました。遺言状を書いて、尊厳死協会に入りました。

娘や息子たちにも言ってありますからね。この本(『人生は理不尽』)を読んだ尊厳死協会の理事長が私と対談してくれと言って、来月やるのですが。もっと広めてほしいということを言っていました。それからお葬式ですが、このごろのお葬式は、大規模なものがほとんどなくって、家族葬をやってお終い。あとからみんなに連絡するというのが流行りですよ。

人生は理不尽

自分の葬式は、一緒に生きてきた家族や知人のためのもの

私の一番仲のいい親友が、この間67歳で亡くなりました。亡くなってから私は聞いたんですよ。彼はかなり優秀な人格者でもあるし、優秀な頭を持っていてね、人望もあって、いろいろな組織のボスもやってきた。クラスの中心人物だったので、同級生が集まって「俺たちで葬式をやりたい」と言い出しました。

ところが、その遺骨も写真もなにもない。家族が「やらない」と言って終わっているんだから、「もうやらない」と言ってね。そのときに私は感じたのですが、葬式というのはだれのためにやるのかというと、みんなが葬式に出て一言つぶやきたい。冥福を祈りたい、という気持ちがあるんですよ。

その機会をなくしてしまっていいのかということなんですよね。だから、葬式というものが残された人のためにあるとすれば、家族のためでもあるんだけれども、その彼と共に一生を生きてきた人たちのためでもあるんではないかというように思いました。だから、私はできるだけ、お葬式はやれればやった方がいいと思います。

ただ、選ばなきゃいけません。本当に仲のいい人だけに絞る。だから、私は自分が亡くなったときに、だれを呼ぶかというリストを作ってあります。家族はその人に連絡をすればいい。たくさんはいませんよ。だけど私が亡くなったことをあとから聞いたら、私が黙って死んだら、怒る人がいるんですよ。だから、その人のためには、葬式というものはいるんじゃないかと思います。

遺言状を書くのは高齢者の義務

それから、私は、遺言状を書くのは高齢者の義務だと思っています。遺言状がないと、いろいろなトラブルが起こりますからね。もちろん法律で決まったものもありますが、そう簡単にはいきませんよ。

私は苦い経験をしていますからね。母親が亡くなったときに、そんなに大きくはないのですが、土地を残したわけです。そして、兄弟4人がそれを相続する立場にあるわけですよ。兄が67歳で亡くなっていたものですから、経済的な状況も苦しくて、奥さんも大変なので、私はその財産を全部その奥さんに渡そうと提案しました。

弟たちは、簡単に受け入れてくれるかと思いました。だって、みんなそれほど困っていないんだもの。ところが、弟じゃなくてその奥さんたちが、4分の1は私たちのものだと言い張った。しょうがないから、私はその人に4分の1を上げて、残りじゃなくて、すべてその土地は兄の奥さんに渡したんですけれどね。

そのときに、ああやっぱりこういうこともあるんだと思ったんですよ。だからやっぱり、きちんとこういうものは書いておかなきゃいけない。私は62歳のときにきちんと遺言状を書いて、実はもう息子にも娘にも家内にも全部見せています。だから、喧嘩の起こりようがありませんね。

ときどき内容を変更するんですよ。君らの対応が悪いと変えるぞ、わかっているな、と。だからフェアにしてありますよ。それからお墓。お墓は残された人が都合のいいようにやればいいと思っています。私の知人が、自分で死ぬ前にお墓を作ったんですよ。鎌倉のずっと奥で、2億円。2億円のお墓を作るか! と。

おまけに墓に名刺入れまで作ったからね。なんで名刺入れがいるのかと思いましたがね。天国に行っても、だれが来たかをチェックしているのかと思いましたが。

私が娘や息子に聞いたところ、「お父さんが好きなところでいいけど、できれば近い方がいいね」と。「じゃあ、君らで決めなさいよ」と言いました。私はお墓は作らないけど、君たちが亡くなってから作りなさい。ただ、早めに作っておいた方がいいと言うのであれば、希望の場所を言いなさいと。

そうすると、娘が「麻布十番に、なんかこうボタンを押したらピューッと出てくるやつがあるから、それにしたい」と言うので、それではあまりにも味気ないじゃないかと言ったのですが。でも、いまはいいお墓がたくさんありますからね。残された人が管理しやすいということも大事です。

それでは、ご質問もあると思いますので、私の話はこれで終わらせていただきます。

重要度の高い仕事を優先する、“仕事のパレートの法則”

司会者:どうもありがとうございました。仕事を管理するためのいろいろなお話、時間を管理するだけではなく、仕事を管理するのだということを伺いました。最後の方は、お墓の話や人生の終い方まで話していただき、どうもありがとうございました。

さて、それではみなさん。ここで、もういろいろな経験をされている佐々木さんに聞きたいことがいっぱいあると思いますので、思いのたけをここで、1人ずつ答えてもらいましょう。では、質問タイムです。挙手でお願いします。

(会場挙手)

質問者1:今日はどうもありがとうございました。私は外食業の店長をやっているものです。仕事上の質問になってしまいますが、少子化の影響で、どうしてもアルバイトさんが集まりません。それで、すごく長時間労働を強いている状態が続いてしまっています。そういった環境の中で、なにか仕事を効率よくやるとか、もっと時間を短縮してできるようにするためのアドバイスがあれば、ご教示いただきたいと。

佐々木:仕事の効率化の話はたくさんありますよ。戦略的な仕事の進め方、効率的な仕事の進め方といったように。広角的な仕事など、いろいろあるんですよ。これを全部説明してもいいのですが、ただ、時間がありません。

この話だけをもう一度繰り返しますね。「パレートの法則」というものがあります。その人が抱えている仕事のうち、重要度の高い順番に2割やれば、その人の仕事量全体の8割に到達するというものです。経済用語でいうところの意味は、国家の富の8割は2割の人に帰属するという、2割8割の理論というのですが。

それをもじったものを、私は“仕事のパレートの法則”だと言っているんです。会社の仕事というものはいろいろあって、ピンからキリまであり、雑用も多い。それを拙速にやって、肝心要の仕事を完璧にやるということですよね。

仕事を管理することが、本当のタイムマネジメント

例えば学校の先生。いろいろな小学校・中学校の先生の労働時間というのは、この間、新聞を読んでいましたら、8割以上の人が一日11時間を超えるんですよ。1日に11時間ですよ。公務員の平均よりも3割以上多い。

どうして今の学校の先生はこんなに忙しいのかという分析をした人がいます。結果は、部活と会議と資料作りにたくさんの時間を費やしているというものでした。子どもに向き合う時間は平均より低いんですよ。教育で最も大事なことをないがしろにして、それほど重要でもない仕事に忙殺されて疲労困憊している。

タイムマネジメントというのは、時間の管理ではありません。仕事の管理です。ですから、その人がやっている仕事の中で、切れるものはないのかということですよね。無駄なことはないのか。無駄なことはやめなさい。要領が悪くて時間がかかっているものは、効率的にやる工夫をしなさい。

工夫するときに1人では無理ですから、みんなで議論して、きちんと組織で対応していくということをやっていけばいい。私の場合ですが、私のチームは、それまで月60数時間の残業が出ていました。

私がいろいろと指導をすることによって、3ヶ月で0時間にはなりませんでしたが、1桁にはなった。これはチームで議論をして、いろいろと知恵を出して、やり方を変えていった。それから無駄な仕事をやめたこと。これが、結果的には月60時間近い残業カットにつながったということなんです。

ほかの職場の仕事でも、こうしたことは工夫次第でできると思っています。

司会者:どうもありがとうございました。

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