2024.10.10
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トレド大学 卒業スピーチ 2019 ケイティ・ホームズ(全1記事)
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ケイティ・ホームズ氏:この場にお招きいただき、誠にありがとうございます。2019年ご卒業のみなさん、おめでとうございます。
(会場拍手、歓声)
みなさんのすべての努力に祝福を贈ります。
私の故郷であるトレドの町に帰ることができ、うれしく思います。ところで、私の人生の一部を知っている方々にお話をするのは、とても不思議な気分ですね。みなさん全員のFacebookを事前にチェックする時間はありませんでしたので、ここではみなさんの方が優位です。
(会場笑)
私はこの大学に通ったことはありませんが、間接的な関わりはありました。兄がこちらの法学部の学生で、自宅から通っていました。私が14歳のころ、兄はポーク・アンド・ビーンズの缶詰を食べながら、徹夜で憲法や「不法行為改革」などの分厚い本を読みふけっていました。
トレド大学法学部の名誉のために申し上げますと、兄はヨレヨレになって日々を送っていましたが、大変いい教育を受けていたようです(笑)。
14歳の頃の私は、自分の悩みは取るに足らないものではないかと悩んでいましたが、兄は真剣に耳を傾けてくれました。時間を割いて私をドライブに連れ出し、兄としてのアドバイスをくれたり、いじめっ子には、「呼び出すぞ」と脅しをかけてくれたりしました。
このように私は、学校教育のあるべき姿や、自分が信じた道を粘り強く進むことの大切さ、他者を思いやるために自分の時間を割くことを、ある意味、間接的に学んだのです。
私がクライスト・ザ・キング中学校の2年生の時、父は私が所属していたバスケットボールチーム「クライスト・ザ・キング・レイダーズ」のコーチを勤めていました。覚えているのは、決勝戦で当たった相手の女の子たちが、みな私たちより6センチ以上も身長が高く、見上げるような長身だったことです。
父は、私たちがすっかり萎縮し圧倒された様子を見て取り、スクラムを組んでこう発破をかけました。「いいか、ビビるんじゃないぞ。相手に呑まれたままプレイするな」。本音を言うと、私たちは父の剣幕の方が恐ろしかったのですが。
さて、いざ試合を開始してみると、私たちは相手のアマゾネス軍団を1ゴール差で見事下すことができたのです。
その数年後の21歳の時に、私は『サタデー・ナイト・ライブ』の司会を勤めることになりました。私はすっかりあがって、ガチガチに緊張していました。さて、オンエア5分前の楽屋を父が訪ねてくれて、こう言いました。「ケイト、存分に楽しんで、ありのままのお前でいるんだ。お前がこの番組の司会を勤めるのは、向こうにとってはありがたいことなのだから」。この言葉のおかげで、私の緊張は一気にほぐれました。
16歳の時、私は母と共にロサンゼルスに上京しました。そして駆け出しの女優の例にもれず、片端からオーディションを受けました。覚えているのは、とあるスーパーマーケットで、同年代の女の子たち、若い人たちに取り囲まれたことです。長いことロサンゼルスに住んでいる、若い俳優たちです。
彼らは私に、俳優としての経歴について質問を始めましたが、あいにく私はまったくの未経験者でした。
母は、すっかり萎縮してしまっている私の表情を見て取り、私を速やかにその場から連れ出してくれて、こう言いました。「ケイト、ここには二度と来ないわ。それに心配しなくてもいいわ。あなたには自分を恥じる理由はまったくない。あなたはあなた。そのままのあなたでいいの。出身地がどこかなんてどうでもいい。好きな世界に飛び込み、存分に楽しんで、ありのままの自分でいなさい」。
その後に受けたオーディションの役を、私は見事に射止めました。お母さん、ありがとうございます。
ですから、みなさんは、新卒の仕事であれ、インターンシップであれ、オーディションであれ、まったく気遅れする必要はありません。みなさんが新しい職業に就くにあたり、未経験のことに臨むコツをお教えましょう。
まず、転居先で新生活を始める際には、自分がリラックスできる物を必ず持ち込んでください。
『ドーソンズ・クリーク』の撮影のために、ノース・カロライナ州ウィルミントン市のアパートに引っ越した時、私はお気に入りの皿とマグカップを持ち込んで、気分が明るくなりました。一日を完璧にスタートできることがわかっていたからです。
ウィルミントンのおいしいパン屋さんもすべてチェックしました。落ち込んだ時に行って、気分をリフレッシュする場所を確保するためです。私が学んだことをもう一つお伝えします。「偽造IDを使ってワインは買うな。そして、支払いには小切手を使うな」。
(会場笑)
現在では、小切手を使う人はまずいないとは思いますが、それ以外の理由でも、小切手を使うことはお勧めしません。問題がややこしくなります(笑)。
また、自然災害に巻き込まれた時には、災害対策の指示はよく聞くようにしてください。以前テレビで竜巻警報が発令され、「水を購入して備蓄し、風呂桶に水を張ってください」と報道されたことがありました。
そこで私は、ポーランド・スプリングス・ウォーターのペットボトルを大量に買い込みました。その水を、バスタブに注ぎ込んでいて、ふと気がつきました。「あの報道は、きっとこういう意味じゃない」。
(会場笑)
もう一つあります。ジーンズをきれいにするには、冷凍庫に入れればよい、と友人から教わっても、やってはいけません。バリバリになるだけです。
また、私は自分の古着を大量に売り、そのお金で服を買っていました。これでだいぶお金を無駄にしてしまいました。当時の私は、うまいことお金を稼いでいるつもりでいましたし、自分は節約上手だと思っていました。これから得られる教訓は何かは思いつきませんが、お金のやり繰りには気を付けてくださいね。
みなさんがそうでないことを願っていますが、借金が多くて困っていない限り、少し時間をかけて旅に出ることをお勧めします。マーク・トウェインは、偏見や偏狭さ、狭い考え方を打破するには、旅が一番だと言っています。
私たちは、選択肢が非常に多い国に住んでいます。そして世界には、私たちが最悪だと思うようなことでも、夢のように感じる人々が大勢存在します。みなさんは、自分なりの方法で常に自分を磨き続けてください。パスポートは更新し続けてください。ベリーズベイグルが世界中で展開されたチェーン店だったらいいのに、とは思いますけどね。
(会場笑)
旅先では非常に寒くなりますから、車の雪かき用のスクレーパーは、必ず携帯してください。スクレーパーがなければ、みなさんの肘が、雪かきができるほど尖っているよう祈ってください。旅先での天候は予知不能です。これは比喩ではありません。事実です。
しかし、お皿やウィンドシールド・スクレーパーよりも、ずっと大切なことがあります。それは、味方になってくれる人を必ず持つことです。みなさんの背中を押してくれる人たちに、感謝の念を抱いてください。
あるプロデューサーは、いつも私をミーティングに出席させてくれたり、とても受かる自信がないような役のオーディションにも行くよう勧め、受けさせてくれました。やがて、彼女の自信が私にも伝わり、私は自ら進んで、緊張するオーディションも、自分のために受けるようになりました。
信じてくれる人がいれば、みなさんも自分を信じられるようになります。逆もまた然りです。周りの人も、みなさんの自信に応じてくれるようになります。私は、周りの人たちに何年も、まったく異なる人格だと思わせることに成功してきました。そして、まだバレていません。実は全部フェイクだったのですよ、みなさん。
さて、私はある舞台公演において、厳しいことで有名な監督と仕事をしたことがあります。この監督は、キャストにセリフを何度も何度も言わせて稽古をするので、最後はセリフは文章の体を成さず、私たちは、お互いに一言ずつ怒鳴り合っているような有り様でした。
この監督は非常に要求水準の高い人でした。普通の監督であれば「15分休憩しよう」と言うところを、「15“秒”休憩しよう」と言っていました。しかし、公演が始まるころには、私たちは俳優としてすばらしい成長を遂げました。そして全員が、厳しい稽古は報われたと感じていたのです。
私自身が映画監督の時には、その監督と同じテクニックを使いました。私自身にも、出演者たちにも、同様に厳しく当たりました。最終的には全員が向上するとわかっていたからです。
でも私は優しいので、時に出演者たちがスターバックスコーヒーを片手に15分遅刻しても、許しました。みなさんは、時間をきちんと守るでしょうから、そんなことはしないと思いますけれどもね。
みなさんは、やるべきことには全力で取り組んでください。やるべきことは、みなさんが思う以上に、たくさんあることでしょう。みなさんは全員がこれまでにきっと、さまざまな経験を積んでいることでしょう。大変でもあり、貴重でもある、それぞれの人生を歩んで来たことでしょう。過酷な目に合って落ち込み、「人生はこんなに厳しいのか」と思い知ったこともあるでしょう。
現在、みなさんはパソコンと強く親密につながっていることと思います。コンピュータとの絆を、今後もぜひ育んでください。20代前半には、パソコンは親友となりうるからです。文字通り、みなさんの夜をあたたかく守ってくれます。
みなさんは全員が卒業し、それぞれの道を行きますが、今後もお互いを支え合ってください。人生で、何度も再会を果たすことでしょう。そして優しさは無償です。
観客席にいる若い女性たちにお話があります。お互いを励まし、話を聞いてあげて、相手を信じてあげてください。才能ある、クリエイティブで、聡明な女性たちが、ワークショップのアイデアを出したり、私が出すメールが威圧的でないよう監修したりなどして支えてくれなかったら、私には映画監督は、とても勤められませんでした。私は、「こんにちは」という言葉の後に「!」マークをたくさんつけてしまうんです。みなさんはいかがですか。
女性は、賃金の平等や相互尊重を求め、組織的な虐待や不当な扱いに対して戦うために、これまで以上に支え合う必要があります。私は、先月旅をして、アフガニスタンから逃れて来て、ギリシアで難民として暮らす女性たちに会いました。
私たちは一日中、女性たちと一緒に服を作ったり、アートを制作したり、夕食を食べたり、ダンスパーティをしたりして過ごしました。女性たちの一人は、わずか13歳の時に、男と強制的に結婚させられたことを語ってくれました。
みなさんは、眼をしっかりと見開いてください。地球の反対側には、想像を絶する恐ろしい抑圧に苦しんでいる女性が大勢いるのです。一方でみなさんの2つ隣の席には、たった今も、みなさんに耳を傾けてくれるであろう女性たちが座っています。
私は、このような母娘やその絆、そしてこういった女性を支援する女性が、現在いかに重要な役割を担っているかについて執筆し、プロデュースするにあたり、必要な支援を存分に受けることができました。
私の人生は大変幸運であり、成長過程では、さまざまな人と知り合って、知恵と経験を提供してもらったり、アドバイスをもらうことができました。
家族は帰省するたびに私をあたたかく迎え入れ、再び世界に送り出してくれました。父は大声ながらも理性的で、コーチとしてチームを優勝に導いてくれました。母は、私は私であり、恥じる必要はないこと、いつ実家に帰って来ても良いことを思い出させてくれました。兄姉は、私をいつまでも幼い妹としてかわいがり、お皿を洗ってくれたり、ゴミ出しをしてくれたりと世話を焼いてくれます。
私が18歳でトレドを出て、『ドーソンズ・クリーク』撮影のためにノースカロライナへ移り住んだ時には、出演者の私たち4人は、開局したてのテレビ局の番組に出演する、新人俳優でした。先がどうなるかは誰にもわかりませんでした。
しかし、幸運にも何かが始まりました。私は非常に不利な状況にいました。でも聞いてください。実は、不利な状況にあったのは、全員がそうだったのです。
もしみなさんが、何らかのきっかけを待っているのだとすれば、今がチャンスです。私がみなさんのバスケットボールのコーチやプロデューサー、兄になり、みなさんに外の世界に出て行って、自分のために物事を動かすように背中を押しましょう。
それには恐ろしくも素晴らしい責任を伴います。みなさんには、10年後ではなく今、喜びを味わう資格があります。ですから、みなさんは自分に対し、厳しく、同時に優しさを持って接してあげてください。
一歩一歩前進し、人が見ていないところで苦労し、電話をかけてくれた相手には、必ず返事をしてあげてください。
(会場拍手)
今日は本当にありがとうございました。
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