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佐渡島庸平×石川善樹 「大胆な仮説を全力で実現していくということ」 『ぼくらの仮説が世界をつくる』刊行記念(全6記事)

「愚痴を言うとスッキリするけど、老ける」リフレッシュに適した呼吸法を石川善樹氏が解説

作家エージェント「コルク」経営者・佐渡島庸平氏による初の著書『ぼくらの仮説が世界をつくる』刊行記念イベントが下北沢B&Bで開催。予防医学研究者の石川善樹氏をゲストに迎え、「長期間働く」ための生活について語りました。疲れを脳・体・心の3つにわけて考え、よい睡眠やよい姿勢とはどのようなものか、いくつかの研究結果に触れながら解説します。

脳と心と体の疲れをわける

石川善樹氏(以下、石川):キャリアの話になるんですけれども、100年を生きるってなったときに、健康づくりで一番大事なのが、「長時間働く」というパラダイムから、「長期間働く」というパラダイムに大きく変えなきゃいけないですね。

長期間働くためになにをしたらいいか、なにが一番大事かというと、リカバリーなんですよ。毎日のリカバリー。

最初にやられ始めたのがスポーツの世界。スポーツの世界で、今どうなっているかというと、疲れっていうものを3つに分類しているのね。脳、認知的な疲れなのか、感情的な心の疲れなのか、体の疲れなのか。脳と体と心で疲れをうまく分解して。

佐渡島庸平氏(以下、佐渡島):脳と心をわけるんだね。

石川:認知と感情はちょっと違うから。脳と心と体にわけて、それに応じて、オフの日の過ごし方を変えるとなって。

睡眠でいうと、睡眠って前半、中盤、後半とあるんですよ。後半のほうが6時間以上だとすると、前半、中盤、後半でどの疲れを取ってくれているかって違うのね。前半は、最初の2~3時間は脳なんだよ。中盤が体、最後が心なのね。

佐渡島:何時間以上が心?

石川:6時間以上が、もう心だと思ったほうがいい。6時間以上だと、ほとんどレム睡眠しか出てこないのね。レム睡眠って感情の不快を取り除く。そうそう、夢見たりするやつ。だから、6時間より少ない人っていうのは、基本的に心の疲れが取れてない人だと思ったほうがいい。

佐渡島:ショートスリーパーはどうなの?

石川:ショートスリーパーは、そういう意味でいうと、疲れが取りきれてないの。

佐渡島:本当に? ショートスリーパーの人たちって異様に元気だよね。

石川:あれはストレスがかかっているからね。

佐渡島:緊張しているから? そうすると、どうしても寿命短くなる?

石川:ショートスリーパーの研究があるんだけど、自分のことをショートスリーパーだと言っている人のなかで、本当のショートスリーパーって5パーセントくらいしかいないって(笑)。

佐渡島:それはすごくわかる。

6時間睡眠と7時間睡眠はぜんぜん違う

石川:例えば、俺、中学校が世田谷学園という学校に行っていたのね。仏教系の学校で、そこ、先生全員がお坊さんなんですよ。校長先生が山本慧彊先生という先生で、自他共に認めるショートスリーパーなのね。毎週月曜日の朝礼のときでも、「俺は3時間くらいしか寝てないんだけどね」みたいな。

その山本慧彊先生の息子さんが山本慈訓先生といって、慈訓先生もその学校の先生で。「うちの親父はショートスリーパーですごいよね」って。ただ山本慧彊先生、若くして亡くなりました。

(会場笑)

石川:それ以来、僕はまったく信用してない。ショートスリーパー。

佐渡島:「手塚治虫はショートスリーパーで、水木しげるはロングスリーパーだから」ってよく言われるよね。

石川:確かに(笑)。人によって違うっていうのはもちろんあるんだけれども、日中眠くならないくらい、週末の寝だめを必要としないくらいっていうのが、自分に適切な睡眠時間。ほとんどの方は、たぶん7時間くらいが適切だと思います。

日本の社会人の平均って、だいたい6時間くらい。6時間と7時間って、わずかな差に見えて、めちゃくちゃ違うんですけども、6時間睡眠の人は、脳の老化、めっちゃ早いのね。

脳の老化って気付かないじゃないですか? 本当は7時間とったほうがいいのね。逆に起きている時間からすると、17時間起きるのと、18時間起きるのでそんなに違うかっていう話なんですよ。7時間寝て17時間起きたら十分だと思いませんか? みなさん。

その「眠るということがどういうことなのか」とか、「睡眠の質というものを高めるためにどうしたらいいのか」ということが、まぁ見事にまとまった本があるんですよ!

佐渡島:なんていう本? それ自分の本じゃないよね?

(会場笑)

佐渡島:今の流れで自分の本だったら、すごく宣伝うまいけどね(笑)。

NASAの研究でわかった、血糖値のコントロールの重要性

石川:睡眠とか、あと、食生活もそうですよね。長期間働くための食生活ということを、もっとも研究したのがNASAなんですよ。

佐渡島:さっきの睡眠のほうの研究の本は、結局なんだったの?

石川:あ、僕の本です。

(会場笑)

疲れない脳をつくる生活習慣―働く人のためのマインドフルネス講座

佐渡島:結局は違うというオチだと思ったのに……。善樹、ハッピーな人生送ってんなぁ(笑)。

石川:見事ですよね、流れが(笑)。

佐渡島:それで、NASAの研究はどんななの? 教えて。

石川:NASAの研究も、結局、予防医学って健康がゴール。早死にしないためとか病気にならないためじゃなくて、「長期間パフォーマンスを落とさないためになにが大事か」というのは、NASAが一番研究していて。

結論が血糖値のコントロールなんだよね。血糖値を一定に保つことっていう。

佐渡島:できる限り。だから、甘いものとかあまりとらないんだ。血糖値がすぐ上がるものとかは。

石川:そうそう。だから、ピーナッツみたいなものを食べたりとか。スポーツ選手がよくやっているのは、血糖値を一定に保つために、こういうものを食えとか、睡眠はこうしろとか。あとは、ストレスがたまったときに、リラックスはこうしろっていう。

そういうリラックスとか睡眠とか食生活とか、当たり前のように言われてはいるけど、意外とちゃんと習っていないっていうことが、見事にまとまった本がですね、いよいよ! いよいよですよ、みなさん!

(会場笑)

パソコンに向かって座る姿はまるでゾンビ

佐渡島:次の章はなに? 睡眠と食と……。

石川:姿勢というのがあるんですよ。

佐渡島:善樹は姿勢いいの?

石川:姿勢はなるべくよくしようと思って。

佐渡島:どういうふうにすると姿勢がわかるの?

石川:とくに考えたのが、現代のビジネスパーソンは1日の時間をなんの行動に費やしているだろうかと考えたときに、一番長いのはノートパソコンの前に座るということと、寝るっていうことだなと思ったんだよね。

ノートパソコンの前にどう座ると自分は快適に過ごせるのかって、1回も習わなかったので。……ここで『ウォーキング・デッド』出てくるんだけどいい?(笑)

(会場笑)

石川:『ウォーキング・デッド』は、ゾンビがこうやってワーッとでてくるんですけど。

「こんなんじゃ、もうゾンビだな!」と思ったんですよ。というのは……パソコン作業って、要は手をこうやって上げるじゃないですか。

(両手を上げて)こうやって。(上体をゾンビのように揺らして)こうやってやるじゃないですか。ゾンビじゃねーかと(笑)。

(会場笑)

石川:実はもう、『ウォーキング・デッド』の世界になっているんだなっていうこと。

佐渡島:そんなことも本に書いてるの?

石川:それは書いてないですけど(笑)。

(会場笑)

パソコンを使うときの最適な姿勢とは?

佐渡島:よかった。それで?

石川:それで、仕事のパフォーマンスを一番下げるのが、肩こりとか、目の痛みとか、腰痛なんですね。これ、なぜ起こっているかというと、パソコン作業って、必ずピッと(手を)上げるんですよ。これがまず原因の1で。

佐渡島:肩こりのね?

石川:そう。その2というのが、ノートパソコンになっちゃったから、どうしてもデスクトップと違って、(手を上げた状態で前かがみになって)こうなるんですよね。

佐渡島:前かがみにね。

石川:(手を上げた状態で後ろにもたれて)それか、こうなる感じなので。だから、原因はもうシンプルだなと思って、まずは手を上げるっていうのをなんとかせんといかんと。

佐渡島:うん。

石川:で、もう1個は、このノートパソコンってスクリーンが低いので、スクリーンの位置が低いということが原因だなと思って。

佐渡島:なるほどね。じゃあ、デスクトップを使ったほうがいいんだ、会社って?

石川:デスクトップのほうが絶対いいと。

佐渡島:ふーん。

石川:で、例えば、佐渡島くんが座っているところだと、ノートパソコンだとするとね……。

佐渡島:(ノートパソコンが低いところにあると)これ相当やりづらいね。これくらい高いほうがいいのかな?

石川:そう、これくらいがいいんですよ。(ノートパソコンのディスプレイの中央を指して)ちょうど目線がここらへんですかね。そこくらいになるのがよくて。

佐渡島:なるほどなるほど。

石川:目線は上がるからいいんですけどもね、(両手を上げて)この問題が残っているんですよ。「この問題を解決するにはどうしたらいいか?」って考えて、「キーボードが机の上にあるからいけないんだな」と思ったんです。膝の上にキーボードを置いて。

スクリーンを高くして、キーボードは膝の上

佐渡島:ここのほうが、確かに姿勢はいいのか。

石川:そうそう。膝の上に置くと。結局、机が高いのが問題なんですよ。とくにこれ、女性にそうなんです。日本のオフィス家具っていうのは、男性を基準にしてつくられているから、女性にとっては高いんですよね。

佐渡島:そうなんだ。

石川:高い。だから、こうやってピッと上げてやるから、肩こりが起こる。

佐渡島:へぇー。

石川:これをやるためには、ブラインドタッチができないといけないんですけども、膝の上に置いて、画面を高くしてやると、これびっくりするんですけど、1週間でだいたい肩こりが取れちゃうんです。

佐渡島:へぇー。

(会場驚き)

佐渡島:そんなの、どこでデータを取ってきているの?(笑)。

石川:最初にやったのがDeNAって会社なんですよ。

佐渡島:うん。

石川:あそこのゲーム開発部の人たちに対して。

佐渡島:えっ。善樹が関わってるの?

石川:そうそう。

佐渡島:善樹が、DeNAでそんな仕事をしてるの?

石川:なんか、たまたまそういうご縁があって。

佐渡島:へぇー、そんなの頼まれるんだ! DeNAもよく探してくるね、善樹を。

(会場笑)

おすすめなのはセパレートタイプ

石川:そうそう。最初は「一緒に健康づくりできませんかね!?」みたいなので、連絡いただいて。

佐渡島:へぇー。

石川:行くんですよ。それで、DeNAで、こう見ていると、「ああ、これはゾンビばっかやな!」と。

(会場笑)

石川:ゾンビをどう解決するかってことは、誰もまだ解明してないのね。やっぱり、自分で考えて、「あっ、膝の上に置いたらいいんだな」みたいな。例えば僕も……、(スタッフに対して)そこに僕のかばんってあります?

佐渡島:今まで善樹とはプライベートで普通に飲みながらしゃべるだけだったけど、トークショー向きの性格だね。人前で話すほうが、笑いをとろうとしてネタが面白くなる(笑)。

(会場笑)

スタッフ:かばん、下げちゃったので取ってきます!

石川:ああ、はい。結局、ノートパソコンを使っているかぎりは、長期間働くときにはものすごく不利なのね。

佐渡島:なるほどね。

石川:これは、僕らの身体を非常に酷使するんですよ。肩こり、腰痛、目が痛いっていうのを。そう考えたときに、「じゃあ、どういうパソコンを使うと、一番ヘルシーに仕事ができるか?」というので、あったんです、答えが。

(会場笑)

石川:すごいっすよ。(かばんからノートパソコンを取り出して)これなんです。これVAIOなんですけども、これ、なにがすごいかと言うと、(キーボードが取り外せる)セパレートタイプなんですね。

佐渡島:なるほどね!

石川:セパレートタイプだと、(キーボードを)膝の上に置いてできるんです、こうやって。

佐渡島:確かにできるできる。最近のWindowsは全部そうだよね。Surfaceも。

石川:そうそう。それで、ノートパソコンは(キーボードがディスプレイと)こうくっついていると、こう(手が上がる状態に)なるんですけども、膝の上に置くとこれ(ディスプレイ)を奥に置いても大丈夫なんですよ。

佐渡島:だね。

体、脳、心のどれが疲れているのかによって対処法が違う

石川:奥に置くと……。

佐渡島:目線が合うんだ?

石川:そうそう(笑)。

佐渡島:でも、机の奥に置くと、文字ちっちゃくならない?(笑)

(会場笑)

石川:だけど、それは目にもいいんで(笑)。

(会場笑)

石川:というので、「これはイノベーションや!」と思って、大興奮したんだけども。これ、なんで気づいたかっていうと、前、使っていたノートパソコンが壊れたのね。水をかけちゃってキーボードが壊れちゃって、外付けのキーボードを差してやっていたんですよ。膝の上に置いてこうやっていたら、「あ、これ、えらい楽だな」と。

佐渡島:なるほどね。ほかに企業からわざわざ「うちの健康促進を!」って言われたら、どんなアドバイスするの?

石川:ほかにするのは……。

佐渡島:コルクのために、今日タダでしてもらおう!。

石川:ああ、やるやる。いっぱいやるよ。でも、やっぱり、一応見に行くね。

佐渡島:その会社の様子を?

石川:その会社の人たちは、体が疲れているのか、心が疲れているのか、脳が疲れているのかによって(変わってくるんです)。脳の疲れだったら、血糖値の問題だとか、睡眠の話とか。心の問題だったら、リラックス法を習ってないっていうだけだから。

シンプルなリラックスの作法

佐渡島:リラックス法って、どんなのがおすすめなの?

石川:あの、リラックスは本当に誤解されているんですけど、ダラッとすることをリラックスすることだと思っている人が多過ぎて。

佐渡島:うんうん、確かに。

石川:家に帰ってきて、こうやって(ダラダラと)するのをリラックスだと思っている人が多いんです。これはダラッとしているだけだから。

佐渡島:なるほど(笑)。

(会場笑)

石川:リラックスの反対は、集中するとかアクティブっていう。集中するためにもお作法が必要なように、リラックスにもお作法はやっぱりいる。超シンプルだよ。姿勢をよくしてゆっくり呼吸する、というだけなの。

佐渡島:じゃあ、それ何分くらいで(リラックス状態に)なるの?

石川:これ、スポーツ選手がどうやっているかって言うと……。まず、身体のメカニズムから話すと、自律神経というのがあるんですよ。自律神経には、交感神経、副交感神経ってあって、息を吸うと交感神経が活性化して緊張するんですね。

だから、集中して仕事したいときは、息を吸いまくったほうがいいんですよ。スースースーって吸って(笑)。

(会場笑)

佐渡島:うんうん。そういうときは息を吸うといいの?

石川:吐くとリラックスする。

佐渡島:あっ、そうなんだ。

石川:吐くときは副交感神経。

佐渡島:ちょっとじゃあ、みなさんも1回、1分くらい吐くのを中心に深呼吸してみましょうか。ハァー。

(会場深呼吸)

愚痴を言うと老ける

石川:これ、吐く時間を長くするっていうのがよくて。ため息つくじゃないですか。あれ、ため息つくと吐いているから、リラックスするのね。ハァーっていうのは。あれは一応、そういう理屈がいろいろあるのね。

佐渡島:でも、ため息はあんまりよくないとも言うじゃん。

石川:あ、ため息はぜんぜんいい。

佐渡島:いいの?

(会場笑)

石川:ため息はいいけど、愚痴がよくないの。

(会場笑)

佐渡島:限りなくセットだけど、うまく分けるといい?

石川:そうそう、分けると。

佐渡島:ハァーってのはいいんだ。

石川:愚痴ると老けるという研究があって、これなんでかって言うと、ノーベル医学賞を取った先生たちが研究したやつなんだけど。愚痴るとはどういうことかというと、脳内でストレス状況下であった出来事を再現しているから、これ、細胞にとって非常にストレスなのね。

佐渡島:なるほどね。

石川:それで、テロメアという老化を決めているのが、どんどん短くなっちゃっていくっていう。

佐渡島:なるほど。

石川:だから、愚痴るとスッキリするんだけど、一方で老けるっていう。

佐渡島:なるほどね。スッキリしきるのかな、どうなんだろう。でも、僕は自分で会社やるようになってから、本当に愚痴んなくなったな。

石川:そこは自分の受け止め方なんだと思うんだよね。

佐渡島:うん。

石川:基本的には今の人は姿勢が悪いので、なんて言うんですかね、肺がつぶれているから、呼吸が浅くなりがちなんですよね。それでイライラしやすいっていう。

ぼくらの仮説が世界をつくる

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