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タイ王国(全3記事)

ドラマ・映画も大人気 第二次大戦時のタイの女性と日本軍士官の恋物語『メナムの残照』とは

海外旅行の人気国、タイの歴史について、どんなことをご存知でしょうか? 世界各国の歴史を超ゆるゆるな雰囲気でお伝えするPodcast番組「世界一周!チラ見の世界史」が今回取り上げるのはタイ(タイ王国)。このパートでは、19世紀から第二次世界大戦、そして戦後、現在に至るまでのタイの歴史を解説していきます。また、タイで何度となくドラマ化・映画化されている大人気小説『メナムの残照』の魅力と背景も紹介。第二次大戦中を舞台にした、タイの女性と日本人士官の恋愛物語で、小説の入手はなかなか難しいようですが、図書館などを活用してぜひ読んでみてください。

タイにおける「明治維新」

おおたに先生:(以下、おおたに):そのあとにラーマ5世の時代になりますが、そのころになると外クメール、カンボジアのあたりでしょうかね。それをフランスに移譲させられたり。

やすやす君(以下、やすやす):あ、この時からカンボジアにおいてフランスが始まるんだ。

おおたに:今のラオスとカンボジアが入っていた領地を切り取っていくんですね。シップソーンチュタイをフランスに移譲とか、ラオスのメコン川東岸をフランスに移譲とかですね。そのあとメコン川西岸も移譲とか、フランス領インドシナをカンボジアに移譲とか、イギリスの場合はマレー半島をイギリスに移譲とか。取られていっちゃうんですよ。

やすやす:それでマレーシアとかカンボジアの歴史につながるんだ。これは元々はタイだったわけね。元々というか、タイが支配下にしている時期もあったってことだ。

おおたに:うん。さきほどいったようにベトナムとミャンマーとマレー半島の突端以外は、タイが4つの王朝で占めていたんだけれども、だんだん最後の王朝の時に諸外国に取っていかれる。

やすやす:わりと最近までこの辺はタイが支配していたのね。1860年とかだもんね。

おおたに:19世紀終わりまでですもんね。ちょうどこの頃、ビルマがイギリスの完全植民地になったり。ミャンマーか。当時はビルマですね。その時は、インドの州の1つにされたそうですね。

やすやす:そうなんだ! ミャンマーはタイを倒したりと、一時期は強かったのにね。

おおたに:そうですね。やっぱり欧米が出てくると厳しいですね。ただ、このラーマ5世という王様はけっこうできた王様で、ちょうど富国強兵ですとか士官学校を作ったりとか、外国から技師をたくさん連れてきて、鉄道を造ったりと国内の産業を起こしたりしたんですよ。

やすやす:近代化した人だ。

おおたに:そう。だから明治維新のような内容。それをやった人です。

やすやす:うちもヨーロッパに負けていられないということで。

おおたに:ほとんど明治維新と時代が似ていますよね。

まきちゃん(以下、まき):後じゃないんですね。同じくらいの時期に。

おおたに:ほぼ同じくらいの時期にラーマ5世もやっていた。

やすやす:やっぱり外圧があって、初めて革命って起きるんだね。

おおたに:そうですね。ただ、国は強くしつつあるのですが、どんどん外部から領土を削られていくという時代ですね。

山田長政がムエタイを学ぶ映画がある!?

やすやす:日本ほど鎖国はできていなかったということだからね。もしかしたらタイの歴史の中には新撰組みたいな話があるかもね。

まき:あるかもしれない。

おおたに:あるかもしれないね。

やすやす:「攘夷だ、攘夷だ」って。

おおたに:そうですね。外国人に切りつけていたかもしれないですね。刀を持っていないか。どんな武器だったんでしょうね。

やすやす:ムエタイでしょう!

まき:ムエタイ!(笑)

おおたに:最強の(笑)。

やすやす:何年か前、3、4年前に、山田長政が出てくるタイ映画が撮られたらしいんですよ。その映画の中だと、ちょっとファンタジーも入っていて、山田長政は「謀反の心あり」という感じで、タイの王朝に追われるわけですよ。

おおたに:王家争いに負けた頃ですね。

やすやす:そうですね。現地の忍者部隊に追われるらしいんですよ。山田長政は逃げながら追われるんだけど、ムエタイの一族に助けられてムエタイを学んでいくみたいな話らしいですよ。

おおたに:伊賀・甲賀みたいなのがあるんですかね。

やすやす:代わりに日本刀の技術を教えて、お互い学び合うみたいな。

おおたに:それは知らないな。なんという映画ですか?

やすやす:あるらしいですよ。

まき:私も知らない。初めて聞きました。

やすやす:ムエタイ、強いんじゃないですか? 立ち技最強ですからね。

新しい世界秩序の中のタイ

おおたに:そうですね。これはラーマ5世の終わり。1904年というと日露戦争で日本が勝ったりしている頃ですね。日本海海戦は1905年か。土地は取られているけれども、日本はロシアに勝っているじゃないか。これはやれるかもしれないなと、そういう頃ですね。その次のラーマ6世の時代になってから条約改正をしたり、徐々に領地を取り戻しつつあるところです。

やすやす:改正できたんだ?

おおたに:その頃はまだ条約改正だけですね。まずアメリカと新友好条約を批准したのが1921年だそうです。

やすやす:21年。日本もそうだけど、これはアジアの力がかなり大きくなりつつある時だね。

おおたに:その前の1920年には国際連盟にも加盟していますし。

やすやす:国際連盟ができるということは、一方的な西洋支配からだんだん世界が変わりつつある時なんだ。

おおたに:そうですね。その頃ですね。1932年にラーマ7世の時代ですけど、憲法を作って立憲君主制に移行しました。

やすやす:そうなんだ。世界大戦前に、なんだ。絶対王政が終わっているんだ。

おおたに:第二次世界大戦ですよね。その前に絶対王政は終わっていますね。翌年に民選議員選挙なんかも行われています。ただ、その頃はまだシャム国だったんですね。

やすやす:タイという名前じゃなかったんだ。

おおたに:タイという名前に変えたのは1939年。

やすやす:それは何があったんですか?

おおたに:別に何もないですけど(笑)。

まき:何もないのに急に変わったんですか?

おおたに:すみません。変えた理由はちょっと調べていませんでした。何もないというのは、世界的な出来事が何もないというだけです。1940年にはタイがフランス領インドシナ、だからカンボジアとかラオスですか。そこに進軍して領地を回復したりしています。だんだん国力を吹き返してきた頃です。

第二次大戦期のタイと日本を描いた『メナムの残照』

おおたに:1941年になると、第二次世界大戦、太平洋戦争が始まるじゃないですか。日本軍が攻めてきて進駐されて、12月8日に日本軍通過協定に署名したそうです。

やすやす:これだ。『メナムの残照』だ。

おおたに:これの舞台ですね。

やすやす:『メナムの残照』という本は、オススメなのでみなさん読んでください。

メナムの残照 (1978年) (角川文庫)

おおたに:ただね、今買おうとすると、アマゾンで4000円の値段がつくんですよ。

やすやす:そうそう。プレミアがついているんですよ。

まき:えー! けっこう値段高いですね!

おおたに:しかも文庫分で4000円ですよ。私も読みましたけど、おもしろいですね。

やすやす:おもしろいです。だいたい図書館で借りられますからね。

おおたに:私も図書館で借りて読みました。

まき:あれは何年代に書かれた本でしたっけ?

おおたに:本自体ですか? いつだろうな。

やすやす:どうだろう。そこまで古くはないだろうね。

おおたに:書いた人はトムヤンティという人で、国会議員にもなった人ですよね。バンコク運輸公社総裁もやったって。1937年生まれの人が書いてあるから。

やすやす:本当だ。俺、この文章は自分で書いているわ。違う番組で取り上げたんですよね。

おおたに:そうですね。私はそれを聞いて、本を読んで、映画も見たんですよ。

やすやす:ありがとうございます。「旅する本箱」というPodcastをやっていて、その中で『メナムの残照』というトムヤンティさんの本を取り上げたんですよ。ブログの紹介で、コレ、自分で書いている(笑)

おおたに:「旅する本箱」ってまき君も出ているじゃない。

まき:出ています(笑)。

やすやす:出ているやん、あんた(笑)。

まき:すみません。「旅する本箱」と聞いて、ちょっとドキッとしました。

ドラマ・映画も大人気の『メナムの残照』とは

おおたに:『メナムの残照』って、タイでめちゃくちゃ人気らしくて、1970年に最初にドラマ化されて以来、72年、78年、90年、2004年と、5回にわたってリメイクされているということです。

やすやす:ドラマ化されているのね。

おおたに:映画も1973年、88年、95年に映画化されていて、なんと今年(2013)も1月28日から再度ドラマ化されるそうです。

やすやす:そうなんだ! どんな話かというと、タイの一般女性と日本軍の士官が出会う恋愛話。

おおたに:そうですね。

やすやす:背景は第二次世界大戦の話なんですよ。当時の日本とタイの関係なんかも描かれている。日本人男性がすごく誠実なキャラクターなので、このドラマを見ると、タイ人は日本人に対してすごくいい感情を持ってもらえるんですよね。

おおたに:名前はなんでしたっけ?

やすやす:コボリですか?

おおたに:まるでやすやすさんのような誠実な人ですね。

やすやす:どういうことかよくわからない! 全然違いますけどね(笑)。話はずれましたが、これを1冊読むと、タイの二重政策というんですかね。日本にもいい顔をしながら、連合軍にもいい顔をしているというところが垣間見えます。

おおたに:そうですね。親日派と抗日派と両方いたんですよね。

やすやす:そうでしょうね。

おおたに:その主人公の女性は、抗日派の人かな。そういう話ですね。原題は「クーカム」ですか。

やすやす:そうですね。「運命の人」という意味だったかな。

唯一植民地にされなかったタイのしたたかさ

やすやす:通過条約で、日本はタイを通過してミャンマーに行くんですよ。鉄道を作りたいし。歴史の流れは。

おおたに:そうですね。ただ、その時に宣戦布告書を発行させられているのです。枢軸国として、アメリカやイギリスに宣戦布告しているんですね。

やすやす:日本がやるんだったら、一緒に宣戦布告しなさいよということだ。

おおたに:ただ微妙で、宣戦布告、通過もOKといったんだけど、署名する時に担当者が行方不明になったり、なかなかうまく立ち回ってるんですね。

やすやす:のれんに腕押しな感じですね。そのおかげもあってか、世界大戦後は敗戦国にはなってないんだよね。

おおたに:なっていないですね。だから終戦直前にタイの政権を抗日派が取ったので、戦勝国側になっているんですよね。

やすやす:そうだね。「うちはむりやり日本軍を駐在させられていました」ということにして、敗戦国になることをうまいこと逃れたんですよね。

おおたに:「さっきの宣戦布告書には署名がないじゃないか」という。署名してないんで。そのへんがなかなか上手ですね。

やすやす:タイのしたたかな感じが現れていますね。

おおたに:しかもそれを決めた日が、日本がポツダム宣言を受諾した時だそうですね。

やすやす:それを決めたというのは、何を決めたんですか?

おおたに:宣戦布告を「無効だ」といった日。日本がポツダム宣言を受諾したと聞いたので、それまで抗日蜂起でしたが、戦後処理に向かおうと。「宣戦布告書には署名がないじゃないか!」「これは日本に強制的にやむを得なくさせられたんだから、宣戦布告は無効ですよ」というのを8月16日に言ったのだそうです。なかなかうまいというか。

やすやす:やっぱりすごい軍師がいたんでしょうね。

おおたに:だから唯一、占領されない、植民地にされないという国だったのでしょうね。という歴史があります。

タイの国王は何と呼べばいい?

おおたに:じゃあ第二次世界大戦後ですが、ちょうどラーマ9世が即位して、今のプミポン国王ですね。ちょっと口が回っていないかもしれない(笑)。

やすやす:プミポンさんは、本当にいい元首らしいですね。

おおたに:どこに行っても写真がありますよね。

やすやす:すごく尊敬されているらしいですよ。

おおたに:我々はプミポンと呼んでいますが、正式にはプミポンアドゥンラヤデートという名前で、その名前は不可分だそうですね。全部まとめて言わなければいけないそうです。

やすやす:そうなんだ。おおたに先生でいえば、「おおた」までいったみたいな感じですね。

おおたに:そう(笑)。だから向こうに行って簡単に「キングプミポン」というのは失礼かもしれませんね。

やすやす:そうかもしれない。それは失礼だ。

おおたに:気をつけたほうがいいかもしれませんね。難しいですが、ぜひ覚えて向こうに行ったら、「ユア キング プミポンアドゥンラヤデート イズ ベリーグレイト」とか言ってあげればいいんですかね。

やすやす:フルネームで呼ばれたら嬉しいんじゃないですかね。

おおたに:ちょうどいいかもしれませんね。

タイの政変、タクシン首相編

大谷:それでちょうど終戦後に、ラオスもフランス・ラオス協定で独立したり、カンボジアも独立したりしていますね。そのあと1958年に生まれた首相が開発派の首相で、国を変えて産業を導入したり、日本企業を導入したりしたんですね。ただ、それにあまりにも傾き過ぎたのでクーデターが起きたりしています。

やすやす:昔からタイは意外と政治不安なんだよね。

おおたに:そうですね。その首相はタノムさんというんですけど、1973年に王様に追放されたりしています。そのあと新しい憲法が発布されたり、翌年の1975年にはベトナム、カンボジア、ラオスが共産化したりして、取り囲まれていますね。

やすやす:ベトナム戦争もありますからね。

おおたに:新しいタイ王国憲法が制定されたのが1978年だそうです。その後も1992年に民主化運動が起きたりしているのですが、プミポン王様が「まあ、まあ、まあ」と沈静化。

やすやす:いいんですか? 不可分なのに(笑)。

おおたに:プミポンアドゥンラヤデート王ですね。ラーマ9世のほうが簡単かな(笑)。でも、今度行く際にはきっちり覚えていこう! 国としては安泰なんだけど、内部でいろいろと政変が起きていますね。最近の新しいところではタクシンさん問題ですか。

やすやす:簡単にいうと、どういうところが問題なのですか?

おおたに:タクシンさんは首相になったんですね。2001年に首相になって、2005年には愛国党が総選挙で圧勝して単独政権を作っちゃったんですね。

やすやす:今の自民党じゃないですか。

おおたに:そうですね。

やすやす:圧倒的多数でねじれが起きていないということですか?

おおたに:そうですね。国民の半数以上は農民なので、農民の関心を得るために農民の借金返済を3年間猶予したり、すべての村に100万バーツを支給したりとかね。

やすやす:なかなか気前がいいですね。

おおたに:日本でもそういうことがありませんでしたか?

やすやす:いわゆるバラマキですか。

おおたに:30バーツで診療してもらえる制度を作ったり、そういうことをやったんですね。貧困層から非常に大きな支持を得たわけです。

反タクシン派は何が不満だったのか

おおたに:だけど選挙で政権は取るんだけれども、逆に都市部とか企業側とかには不人気で、それが反タクシンですね。

やすやす:それが反タクシン派。つまりざっくり言うとインテリ層は反タクシン派ということですね。

おおたに:そうですね。だから選挙では勝つんだけれども、内閣とか企業が協力しない。それでタクシン・反タクシンの争いが起きているみたいですね。

やすやす:反タクシン派は、辞任要求のデモを行なっている。

おおたに:そうですね。それで2008年には空港を占拠したりしていましたよね。

やすやす:でも正統な選挙で選ばれているんじゃないですか? 違うの?

おおたに:タクシンさんはそうですね。

やすやす:そんなものはデモをしたって無駄でしょ?

おおたに:それってあちこちでありません? どこかで聞いたことがありません? 選挙で選ばれたのに。

やすやす:はい。非常にたくさんある話だけど。

おおたに:そうだよね。「また次の選挙で選べばいいじゃん」となるでしょ。

やすやす:本来はね。

おおたに:だけど選挙にして数にすると、農民が多いからまた同じ結果になってしまうんですね。

やすやす:でもそれを覆すと、民主主義は成り立たないわけじゃん?

おおたに:だから悪い点を見つけ出してきて、「この罪で有罪になる」といって追放したんですよね。

やすやす:じゃあ、今のタクシンさんはどうなっているんですか?

おおたに:追放されていますよね。それで全然関係のない、いろんな国の国籍を取ったりとか、あと日本もビザを発行しましたよね。

やすやす:タクシンに対して?

おおたに:うん。発行して日本に来て演説か何かしていたんじゃないですかね。

やすやす:まあいいでしょう。

政治的シンボルカラーには要注意?

やすやす:それでタクシンさんは国を追われた。今、タクシンさんの妹さんでしょ? 首相やっているじゃん!

おおたに:そうですね。妹さんが選挙で選ばれて首相をやっています。きれいな人ですよね。

やすやす:この人に対しては反政府運動は起きないわけですか?

おおたに:うん。インラック・シナワットさんですね。

まき:ちなみに、シナワットさんを調べたんですけど、タクシン元首相の政党とほぼ同じですね。ほぼ同じというのは、タクシン元首相は「国民の力党」みたいな政党だったのですが、それを前身とする「タイ貢献党」というのができて、インラックさんはタイ貢献党だそうです。

おおたに:一応、名前が違って「別だよ」ということですね。

まき:名前は違うけれど、多分ほぼ政党としては一緒ですね。

おおたに:あと大事なことは、反タクシン派のシンボルカラーは黄色で、みんな黄色いのを着ているし、タクシン派は赤いのを着ているので、そういう色のシャツを着てそういう時期にタイに行くと、ちょっと間違えられると危ないよというのがありますね。争いに巻き込まれちゃいますからね。水色とか緑を着ていってください。以上、タイの歴史でした。

やすやす:誰か専門家の人に200文字くらいで教えてほしいね。

おおたに:なんだそりゃ(笑)。200文字で教えてほしいことって、いっぱいあるじゃないですか。キリスト教の歴史とか。

やすやす:それは200文字では厳しいな(笑)。なぜ民主主義がなじまないエリアがあるのかということを200文字で教えてください。まあ、そういうのもどこかの歴史で触れられたらおもしろいですね。

おおたに:たしかに国が違っても共通の疑問が出てきますね。おもしろいですね。

やすやす:この番組を通して、僕らが地球が抱える問題を解決していくというね。

(授業終了のチャイム音)

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