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東京パフェ学~パフェ評論家、斧屋とその姉、能町みね子のパフェトーク(全6記事)

パフェ評論家がオススメする東京のフルーツパフェ5店 シンプルさを楽しむ「引き算の思想」とは?

パフェ評論のパイオニア・斧屋氏が初の著書『東京パフェ学』を出版。その発売を記念したイベントがお台場・東京カルチャーカルチャーで開催されました。トークのゲストは、自称漫画家の能町みね子氏。実は意外な繋がりのある両者が、書籍の内容に添って東京近郊にあるおすすめパフェを紹介していきます。このパートでは、斧屋氏が「引き算の思想」と語るフルーツパフェのオススメ店舗を紹介。四谷三丁目のフルーツパーラーフクナガ、浅草のフルーツパーラーゴトー、成城学園前の成城ル・フルティエ、秋葉原のフルーフ・デゥ・セゾン、池袋のベリーパーラーの5店舗、それぞれどんな魅力があるのでしょうか?

フルーツパフェの思想は「引き算」

東京パフェ学

横山シンスケ氏(以下、横山):斧屋さん、前に「パフェの非日常感」みたいなことを言ってましたよね。パフェとかフルーツって普段は食べないから。

斧屋氏(以下、斧屋):基本的にフルーツパフェを食べると、頭の中は真っ白になるんです。

能町みね子氏(以下、能町):何でですか?

斧屋:何でですかって、言うも野暮ですよ、そんなのは。

能町:あっそう。

横山:たぶん考えてないだけだと思う(笑)。

斧屋:今、頭真っ白になってるっていう(笑)。でも、本にもちょっと書きましたけど、フルーツパフェの思想は、基本的に引き算なんです。フルーツだけあればいいので、他の余計なものはそぎ落とすっていうことが考えられている気がします。

だからフルーツを個体として大きくカットして、他は生クリームとかバニラアイスとか、邪魔をしないものだけで構成をする。なので、フルーツパフェは引き算。

横山:逆に言うと、素材でちゃんと勝負できないと……。

斧屋:そうです。だからそれが勝負できないと、もう目も当てられないことになるっていう。

能町:目も当てられないものを食べたこともある?

斧屋:まあそれは……でもフルーツで大外れはそんなにないですが……。次いきましょう。

四谷三丁目・フルーツパーラーフクナガのパフェ

能町:これ、私、食べたいなと思いましたよ。

斧屋:フルーツパーラーフクナガっていうお店で、ここは、とにかくシャーベット。これは洋梨のパフェですけど、ちなみに洋梨って追熟という作業が難しいらしくて、食べごろで出すのが、ものすごく難しいフルーツらしいんです。

とにかく必ず、フルーツと、そのフルーツのシャーベットを入れる。これが定番のパターン。なので、ここはシャーベットがべらぼうに美味いですね。

能町:シャーベットって、あまり美味しいと思ったことないんだけど。

斧屋:特に秋口に食べられるぶどうのシャーベットは3日間ぐらいかけて作っているらしいんですけど、これがとんでもなく美味いんです。

斧屋:場所は四谷三丁目駅から徒歩3分くらいのところです。

横山:好きな果物っていろいろあるけど、特にぶどうが好きな人は絶対行った方がいいですね。

斧屋:そうですね。常時おいしいんですけどね。この間パパイヤパフェを食べて、ものすごいおいしくて。パパイヤでおいしいのって、あまり食べたことなかったんですけど。

レギュラーメニューでいろいろなフルーツがある中、季節のフルーツも食べるっていう感じですね。ちなみにこれ、上のぶどう、全部種類が違うんですよね。合計7種類のぶどうが使われているんです。

横山:いくらぐらいするの?

斧屋:これは1,000円ぐらいだったと思います。

能町:今日は弟の大袈裟な説明自体にびっくりしたかったんだけど、モノ自体がびっくりするものが多いから、パフェ作っている人って本当にみんなこういう(斧屋氏のような)人なんだろうなと思っちゃう。

斧屋:じゃ、次行きましょう。

フルーツパーラーゴトーのパフェは説明書付き

横山:これは元気系?

斧屋:これはまだ元気系ではないです。

横山:わかんないなー(笑)。

斧屋:これは浅草花やしき近くにある、フルーツパーラーゴトーのフルーツパフェです。いろいろなところで書かせてもらっているんですけど、メニュー表に本当に事細かに果物の説明がされているので、そういうのを知って食べるのが本当におもしろくて。

斧屋:これはゴールドパインのパフェで、これ720円だったと思いますけど、無茶苦茶安いですよ、これ。「舌が痛くならないのかな?」って思うかもしれないんですけど、最後まで甘いままいける。

能町:何かつまらなそうに見えますけど、そうでもない?

斧屋:いやいやいやいや、何をおっしゃいます! そう言っているお前がつまらんぞ!

横山:おっと、姉弟喧嘩始まるか(笑)?

斧屋:これはここのメニューを1つ抜粋している画像ですけど、一昨年ぐらいかな。12種類の柑橘を使ったパフェの説明書です。

横山:すごい! これは素晴らしいですね。

能町:パフェを頼んだらこれも付いてくるの?

斧屋:そうです。今年は13種とか使っているんですけど、順番に「ここから時計回りにこの品種です」って言ってくれるんです。

能町:へえ〜。それはすごいわ。

斧屋:だからこれは「ちょっと作っている人の頭がおかしいんじゃないか?」っていう。

横山:うっすら作り手が面倒臭い人が多いなっていうのが。

能町:パフェのこと考えてると作り手に近くなっていくんだなっていう感じが、すごいわかってきた。

斧屋:まあ、それは知らないですけど。ここはマスターの方が本当にいい方です。

能町:話は合うでしょうね、この感じだと。

斧屋:自分の文章を、すごくいいって言ってくれたので。

(会場笑)

横山:自分のこと好きな人は好きですよね。

パフェはカスタマイズするのも楽しい

斧屋:これは成城学園前の成城ル・フルティエですね。オテル・ドゥ・スズキ・フルーツっていうお菓子屋さんの系列の1つの、フルーツ部門に特化した感じのお店です。ここも引き算の思想というか、いらないものを入れませんよっていう感じ。すごくこじんまりしていますけど、満足感の高いパフェで。

能町:これはいくら?

斧屋:これも1,000円ぐらいじゃなかったかな。生クリームとバニラアイスがめちゃくちゃ美味いので、まずいものは本当に一切入ってないというか、最後まで全部美味しい。量はもちろん、こじんまりしていますけど、満足度は非常に高いと思います。

横山:アンケートで、生クリームがどうしても苦手っていう人いましたね。

斧屋:生クリームは確かにそうですね。でも生クリームが嫌な人って、甘さが嫌だったり、脂っこくて嫌だったりするんじゃないんですかね。ここは甘さは抑えていて。美味しいパフェ屋さんの生クリームはだいたい甘すぎないようにできてますけどね。生クリームでフルーツの甘さが消えるような感じには作らないです。

横山:これも見た目がすごく格好いい。

斧屋:これはイチジクですね。イチジクはすごいパフェ向きの果物だと思います。これはキャラメルアイスを使っていたと思いますけど、イチジクは個人的には苺より好きなパフェの食材です。

能町:イチジクは甘い。絶対甘いよね。酸っぱいということがない。

斧屋:甘くて、風味というか、舌触りとか、水分も多いので、パフェに非常に向いていると思います。

斧屋:カウンター式になっていて、目の前で作っているところを見られます。「こうしてください」って言って、お寿司屋さんみたいに自分なりのカスタマイズをお願いすることも可能です。

能町:生クリーム少な目でとか?

斧屋:そういうのもたぶんできます。そんな感じで喋りつつ、作っている過程を見られると思います。

横山:今、聞きながら思ったんですけど、そういうお店が増えるといいですね。目の前でトッピングをカスタムしてくれたり。

斧屋:そういうところは、いくつかありますね。あとでもう1つ出てきますけども。

秋葉原の穴場、フルーフ・デゥ・セゾン

斧屋:これはフルーフ・デゥ・セゾンっていう秋葉原のお店です。これは穴場だと思いますけど、本当に大きい通りに近いんですよ。だけど、すごい静か。1本入ると、秋葉原も静かですね。

能町:ちゃんと店頭に黒板でパフェを押し出していますね。

斧屋:そうですね。パフェが一番の売りだと思います。クロワッサンとか、いろんなフルーツのデザートも美味しいところですけど。

能町:これは元気系じゃないの?

斧屋:これは……元気系ですね。で、このあと……

能町:これ元気系だ!

(会場笑)

斧屋:お客さんもわかってましたね。元気系だなって。これもフルーフ・デゥ・セゾンなんですけど、さらに元気ですね。

横山:色も派手ですからね。

斧屋:ここはコーンフレークとか全然使わないで、フルーツが最後まで入っていて、フルーツだらけ。

能町:クリームとアイスくらい? あとは。

斧屋:クリームとアイス、シャーベット系ぐらいしかないかな。

能町:これデカすぎない?

斧屋:大きいですよ。かなり大きいです。

能町:辛いんじゃないの? ハッキリ言って。食べ切るのに困るんだよね。

斧屋:自分基準だと全然ですけど、確かにかなり大きいですね。

横山:能町さんも斧屋さんと一緒にパフェ食べたことあると思うんですけど、すごく時間をかけますよね。

能町:めっちゃ時間かかるんですよ。すごいゆっくり食べるんです、この評論家。

斧屋:時間かけましょうよ。

横山:でも作り手も、パフェを作るのは楽しそうですね。

斧屋:楽しいと思うんですよ、今日のキッチンの方々はどう思っているかわからないですけど。

横山:今日のキッチンの人、俺と口きいてくれなかったですよ(笑)。すさまじく忙しくて、本当に大変だって言われたから。

能町:人数も相当だし。

斧屋:ピリピリした上に、何かがっかりさせちゃうんじゃないかっていう怖さがありますよね。みなさんちゃんと頼んでいますか? 大丈夫?

横山:頼んでいます。

斧屋:途中でも頼めるらしいので、どんどん頼んでくださいね。

「元気系」に続くキーワードは何か

斧屋:そろそろフルーツの佳境になってきたね。池袋のベリーパーラーといって、池袋西武の上の方にあるお店です。

能町:これは何系?

斧屋:あの、正直申し上げて、「元気系」以外の言葉がないんです(笑)。例えば今日は画像がないですけど、資生堂パーラーだったら、「清楚系」って言ってもいいのかもしれないですけど。

能町:これこそ何系とか言えそうなのに。

斧屋:わりと品のあるパフェですよね。ここは見た目もそうなんだけれども、味も本当に美味しくて。これはマンゴーですけど、このお店のパフェの特徴としては、一番下にパイ生地を必ず入れる構成を取るところです。一番下にパイ生地ってどうなのって思うかもしれないんですが、その上のアイスと一緒にして食べて、ちょうどいい感じに終わります。そんなに量が多くはない。

能町:パイ生地はノイズではない?

斧屋:ノイズではないです。わりと柔らかくて、そんなに口に残る感じではないです。

斧屋:書籍にも載せましたけど、これもベリーパーラーです。

能町:これ名前付けましょうよ。何とか系っぽい。

横山:俺も思っていました。ここで何系っていうのをいっぱい作ったら、今後俺たちも頭の中で変換しやすいんですよ。

斧屋:じゃ、お願いします。

能町:美術系? 違うか。美術品系とか。彫刻系とか? 彫刻でもないか。

斧屋:ビジュアル系。

能町:ビジュアル系(笑)。ビジュアル系だと雰囲気変わってきちゃう。もう、「華系」でいいんじゃない?

斧屋:華系?

能町:華やかで美しいってやつ。華系。……別にいらなかったらいいんですよ。

斧屋:これ本当に綺麗ですね。食べるのももったいないっていう感じですね。フルーツ系はだいたいこれで終わりです。

フルーツ系を総括しますと、引き算の思想で、シンプルに、とにかくフルーツの美味しさを打ち出しますね。

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