2024.10.10
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高橋栄樹氏(以下、高橋):そのあと普通に凸版印刷という会社に入社したんですが、それでも引き続きミュージック・ビデオのお仕事を、指名でいただく機会がありまして。
それが入社10ヶ月目ですか。だからほとんどアシスタントの経験もないし、会社員としての下積み、誰かの下で働いていたのがあまりなくて、入社10ヶ月目から、ミュージック・ビデオ・ディレクターということで、時代の勢いもあってやってしまったっていう感じです。
司会:普通に考えると、入社10ヶ月目で会社に「これをやりたい」「これを事業にしましょう」って言うのってすごいなと思うんですよ。どういうふうに言ってらっしゃったんでしょうか。
高橋:ちょうどバブルの時代だったので、「とにかくやってみよう」という気概があってできたっていうのもあります。あとはやっぱり、上司の方に恵まれていたんだと思います。直属の先輩や、課長さん、部長さんにずいぶん助けていただきました。最初は部長同士が、喧々諤々とかしていたんです。「高橋にやらせるのか、やらせないのか」みたいな。
それで怒鳴り合いになって、「俺は帰る!」みたいな感じで、1人部長さんが出て行かれて、「やっぱり無理かな、俺。入社10ヶ月だから」と思ったんだけど、そのあと再度話し合われて仲直りしたらしくて。それで「とにかく高橋にやらせてみようじゃないか」ということになりました。だから上司の方々の熱い支持と寛容なジャッジによって、ようやくなしとげることができたっていう感じですかね。
司会:すごくいい会社ですよね。
高橋:今でも本当に感謝しています。いきなりの新人によく任せてくれたなと思って。だから吉田さんも、「サラリーマンNEO」をやるまで台本のこともわからなかったって言いますけど、意外とわからないなりにいきなり始めてしまうことのビギナーズラックというか、初めてやる勢いっていうのは、あるんじゃないかなと思います。
ただ、そのあとが続けられるかどうかって、非常に悩ましい壁は待っているんですけど、最初に始めたその勢いっていうのは、あるのかなと思っています。
高橋:今でも覚えているんだけど、僕が2007年に初めてやったのが、確かメジャー3枚目ぐらいのシングルだったんですけど、発売当日秋葉原に行ったら、CDショップに置いてなかったっていう。
司会:そうなんですか。
高橋:秋葉原に劇場があったにもかかわらず、それぐらいマイナーな存在で。
ただ、何か僕はおもしろかったんです。そもそもやったことがなかったし、そんなにいっぱいの女の子たちとお仕事する機会とかあまりなかったので。
とにかく初めてだけど、わからないけどやってみようっていう感じで取り組めたので、非常に楽しかったというか。ただやっぱり、最初にやっていた良さ、わからないなりにやっていた良さっていうのがあって、そこでできたミュージック・ビデオだったり、ドキュメンタリーのフォーマットっていうのは、結構その後いろいろな形で応用が可能な、基本の形式になったんじゃないかと思っています。
司会:高橋さんはいろいろなものの最初をやってらっしゃいますよね。
高橋:それがラッキーだなと思っていて、日本のミュージック・ビデオというのもほぼ立ち上げの頃から出会うことができて。コンピューターのテクノロジーが発達していったのも目の当たりにしたし。
それで言うと僕、映像のメディアは、ほぼ全部触っているんです。最初は8ミリフィルムなんですけど、もうたぶんご存知ないですよね、8ミリフィルムって。
フィルムってわかりますよね? フィルムって横幅が35ミリなんですけど、小型化すると16ミリ、8ミリってのがあって、昔個人用ビデオカメラがない頃は、その8ミリという幅の狭いフィルムで、みんなが映画を撮ったりしていたんです。
僕も最初は、その8ミリフィルムから始まって、16ミリ、35ミリって、だんだん幅が広がって、今でもフィルムの編集できるんです。ネガまで全部できるはずなんだけど。手が覚えていれば。
それがあって、そのうちビデオが……ビデオテープはご存知ですかね、みなさん。VHSってありましたよね? VHSとベータがあったことは知っています? ちなみに知らない方っていらっしゃいます? ベータって知らない人っていますか? あ、1人いる。じゃ、Hi8とかSVHSとか知らないですよね?
とにかく、そういうのが一般には広まったんですけど、その前に4分の3インチっていう、もっとデカイやつがあるんです。通称「弁当箱」っていうんですけど。さらに言うと1インチっていって、ガチャンってリングかけて巻くリールの式のやつがあるんですけど、僕はそこから入っているので、だから全部見ているんです。
ビデオテープも、アナログもデジタルも、全フォーマットやっていて、コンピューターもほぼ全部。で、今やこの(指差し)MacBookで編集をするようになっている。そういう発展を目の当たりにしてきた世代でもあります。
だからそういう映像のメディアの良さとか悪さを、手で触ってわかっていたというか、その時々のメディアでどういうソフトを作ったらよいか、アイドルならアイドルをどう見せたらよいか、とかを考えることができた年代です。
司会:高橋さんとしてはこういうものがやりたいっていうのはあったんですか?
高橋:僕はあまりなくて。なくはないんですけど、自分発信で作るものが、必ずしも商業的に成功するとは思っていなくて。だから自分からこれを絶対やりたいというものをあまり発信しないで、むしろ人様がこういうことをやりたいんだって言ったものに関して、それをお手伝いする形でやっていく方が性に合っているなと思っています。
司会:売れるものって、そういうところがあるんですかね。
高橋:どうかな。本当に一番すごいのは、自分で考える秋元(康)さんみたいな人ですよね。自分で発信して、自分でスキーム作って、自分でソフト作って、プロデュースして当てるみたいな、本当にすごいことだと思うんだけど。
ただ、自分の熱い思いみたいなものを形にするのって非常に難しいんですよね。客観的に見られなかったりもするし。そういうものをきちんと商品として流通させるのは難しくて、むしろちょっと客観的に見れる、受注生産というか、そういうものの方が、みんなから見て風通しの良いものになると思っています。
司会:なるほど。吉田さんも「サラリーマンNEO」を何で始めたかというと、自分は全然コントなんて興味がなかったのに、同窓会で「NHKだったら何見たい?」って聞いたら、みんなが「コントが見たい」って言ったので出した。それが通ったみたいな話をしていまして。自分発信で難しかったら、人から意見をもらうっていうのも、1つの手なのかなと思って聞いていたことがあります。
高橋:そうですね。だからたぶん、来た球に関して「俺こういう人間だからやらないよ」とか思わないで、試しにやってみるのもいいと思っているんです。例えば時間的にそのドキュメンタリーを2ヶ月強で作らなきゃいけないっていう時に、「できない」って言ったらそこで何もなくなっちゃうので。
だったらやる、やって失敗する。失敗するっていうのはちょっとあれだけど、でも結果として失敗するでも、やってもいいんじゃないかなと思います。
司会:すみません。今日もお一人いない対談になってしまって、初めての体験で。
高橋:勝手に対談みたいな感じで(笑)。大丈夫ですか? 「吉田さん目当てに来たのにふざけるな」みたいな感じになっちゃってないですか? これ入場料1000円いただいてるんですよね? ちょっと申し訳ないですよね。500円ぐらいお返しした方がいいんじゃないですか(笑)。
司会:吉田さんに交渉してみますか。
高橋:そんなことを思わないでもないんですけど。今、吉田さんはどの辺にいるんですか? GPSでわかったりしないんですかね。向かっていますって。ここで出せたらおもしろいですよね。
司会:電話して来ましょうか?
高橋:いや、全然大丈夫。いらっしゃいますよね?
司会:大丈夫です。
高橋:このまま終わるってことはないですよね?
司会:それはないです。新幹線に乗っているので、もう東京にはいらっしゃるんじゃないかなと思います。
高橋:そうですよね。最悪来なかったら500円返金で(笑)。
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