2024.10.21
お互い疑心暗鬼になりがちな、経営企画と事業部の壁 組織に「分断」が生まれる要因と打開策
サントリー「伊右衛門」四季飲みくらべ茶ロン(全1記事)
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司会者:ではさっそくですが「おいしさが、四季で変わる」というこの新・伊右衛門ですが、中野先生はどのように思われますか?
中野信子氏(以下、中野):先ほど小林さんからも(商品説明の際に)ご説明があったと思うんですけれども、体の基礎代謝とか産熱反応が季節によって変わるというお話がありましたね。
あれの調節をしているのは、実は脳なんですね。ですから脳も人体の一部であるということで、当然四季によって変化をいたします。
日照や気温によって感じるものが違ってきますので、それに合わせて味覚も変化していく。ですので、それに合わせて商品開発をされたということをとても興味深く思っております。
司会者:四季によって「おいしい」と感じる感覚が異なるということなんですが、これは日本特有のことなんですか?
中野:そうですね、四季は日本固有のものというよりも、世界中どこにでもあるものですので、人間に備わった感覚であるということが前提なんですけれども。
四季の変化をより鋭敏に感じられるという点では、日本独特というのもありまして、例えば繊細な味の変化とか、味とは離れてしまうんですが、音ですね。例えば虫の声ですね。
こういうものを外国の方はあまりきれいにお聞きにならないんですね。ちょっとノイズのように聞くという…。
日本人とは聞こえ方がちょっと違うということがあります。日本の方は美しい音楽として聞くというような感覚の繊細なところがあります、という生理的な基盤なんかも含めて、実験が行なわれたりしています。
司会者:そうなんですね。小林さん、今回のこの新・伊右衛門いろいろな工夫、取り組みがあったかと思いますが、なかでも心地よいと感じる香りが過去に嗅いだことのある香りの記憶、経験の積み重ねであるといったお話が先ほどありましたよね。こちらいかがですか?
小林真一氏(以下、小林):そうですね。今回の商品なんですけれども、香りに非常にこだわって設計をしております。
今日のような日なんですけれども、緑が青々しく茂った香りを嗅いでさわやかな気分、リフレッシュした気分になることって多いと思うんですけれども、そういったことを活かして春・夏はさわやかな香りを感じられるように。
逆に秋・冬は香ばしい香りを嗅いでほっこりとした気分になるということもありますので、寝かせ茶葉とか炙り茶葉を使って、香ばしい香りを感じられるようにしているんですけれども。
やっぱり季節によっておいしいと感じる香りですとか、心地いいと感じる感じ方が違うと思うんですが、中野先生いかがでしょうか?
中野:そうですね。人間の五感のうち、脳に直接アクセスできるものは香りだけなんですね。ほかの視覚ですとか、聴覚とかに関して言うと、一度感覚受容器で電気信号に変換されて脳に入るんですね。
でも香りは化学受容なので、そのまま脳から出ているある部分にくっついて脳に直接信号が入る、その信号は記憶にすごく密接に関わっている海馬の近くに神経が投射しますので、記憶と香りというのは非常に関係が深いのものなんですね。
特に感情をともなった記憶、エピソード記憶っていうんですけど「ある時こういうことがありました」とか「この時こういう悲しいことがあった時に、お母さんがお茶を淹れてくれました」とか。
その時気持ちがほっとしたとか、そういう記憶と結びつきやすいものですので、香りにこだわって商品開発されたということは、すごくいいポイントだなというふうに思っています。
小林:ありがとうございます。
司会者:沖中さんはいかがですか? 香りの記憶ということで中野先生のお話は。
沖中直人氏(以下、沖中):そうですね。やはり我々飲み物を作っておりますが、鼻をふさいでしまうと味ってかなりわからなくなってしまいますので、サントリーっていう会社はもともとウィスキーとワインで始まった会社でございますので、非常に鼻の効く研究者が多いというか。
ウチの社長なんかも伊右衛門の試作品を持っていった時には、だいたいワイングラスに入れてかき混ぜながら…(笑)。
司会者:そうなんですね(笑)。
沖中:そうなんですよ。そのワイングラスの中に鼻をググッと入れて、まずは香りをっていうのが、会社の風土というか文化的にも、香りへのこだわりが非常に強い会社であるということがあるかなと思います。
司会者:そうなんですね。ありがとうございます。この香りの原体験の記憶によって、四季によって心地いいと感じる香りが変わるということもあるんでしょうけども、このおいしさは視覚によっても感じ方は変わってくるんでしょうか? いかがですか?
中野:そうですね、視覚が味そのものの大きな味覚に占める割合は15%程度なんですね。沖中さんがおっしゃったように、鼻をとじて味わうとほとんど味を感じない。だいたい15%くらいです、その時感じる味というのは。
その残りの85%の内の多くは香りなんですけれども、残りの15%程度は視覚に影響を受けます。あとはグラスの触感とかですね。
この視覚の部分というのは、味にどのくらい影響があるのかというのは、ちょっと実験と異なるんですけど、大きな脇役、重要な脇役であるということは言えると思います。
司会者:なるほど。日本でも料理は目で楽しむという習慣もありますから、またそれによっても感じ方が変わる、季節によってお料理も変わりますから、感じ方が変わってくるのではないかと思います。
沖中さん、この新・伊右衛門は四季でパッケージを変えるということなんですが、そちらはいかがでしょうか?
沖中直人氏(以下、沖中):はい。皆さまのお手元にあるところで、パッケージが変わるという部分はここの「今だけ新茶入り」というところですね。
こちらが主に変わっているというところなんですけれども、2004年に(伊右衛門)が新発売した時に、我々が徹底的にこだわったポイントというのが、ペットボトルで竹筒をリアルに再現してみようじゃないかというところでした。
それはやはりお茶というのが、江戸時代からずっと飲まれているわけで、それを持ち歩く器として何が一番適切だろうかという議論の中で、竹筒っていうものじゃないかなと。
そのほうが視覚的に見ても日本の伝統的なよさと、ペットボトルというものが相まってですね、よりおいしく召し上がっていただけるんじゃないかなというところがこの開発の原点でございましたので、それをベースにしていきながら、季節によって味わいが変わったという訴求をやっていくというふうに考えております。
司会者:ありがとうございます。そろそろお時間となってきました。最後に中野先生、新・伊右衛門について一言ご感想をいただけますか?
中野:皆さまに先だって4つの味を試飲させていただいたんですけど、やっぱり私自身も春の体になっているのか、春の味が一番おいしく感じましたね。
2004年に初めて古いバージョンの伊右衛門を飲んだ時のことを思い出したんですけど、あの時ほかの緑茶はあまり好きじゃなくてですね、ちょっと宣伝みたいですけど…(笑)。
伊右衛門の味を「ああ、本当にこれはお茶の味がするんだなぁ」って驚いた記憶があるんですね。その時のことをすごく思い出しまして、とても香りがさわやかな香りがしますし、パッケージを触った時のサラサラ感があるんですね。
きっとこだわって作られたと思うんですけど、この感じっていうのもすごく好ましくて、お茶の繊細さをすごく再現している気がして、すごくいいと思いましたね。味によって記憶が呼び覚まされた例ですね。
司会者:ありがとうございました。本日は中野先生をお招きして「おいしさが、四季で変わる」というコンセプトについて感想をうかがってきました。中野先生、沖中さん、小林さん、本日はありがとうございました。
一同:ありがとうございました。
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