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マーク・パンサー氏インタビュー(全7記事)

芸能界で最初に覚えたのは「笑いたくなくても笑うこと」 2歳で芸能界デビューしたglobe・マークパンサーが波乱の人生を語る

globe結成20年を機に行われた、ミュージシャンでモデルのマーク・パンサー(Marc Panther)氏への インタビュー。マーク氏誕生のルーツや、2歳にして芸能界デビューに至った経緯まで、自らの信念と半生を語ります。このパートでは、「金髪外人」「人形」と言われ、常にいじめの標的にされていた少年時代について振り返ります。

「父親が旅に出なかったら、俺は誕生しなかった」

マーク・パンサー氏(以下、マーク):これ、親父の漫画なんですけど、親父って世界一周したんですよ。

――はい。

マーク:1965年に出発して、おふくろに出会って僕が産まれるんですけど、そのたび全部、こう漫画になってるんですよ。

――おおー。おもしろーい!

マーク:そのたび全部漫画になって、でも出版させてくれないんですよ。全部。

――これもすごいですね。

マーク:これもそうだし。こっちは「出発するぞ」って。これ親父なんですけど、若い頃は周りがかわいい女の子ばっかりで、これは新聞とかに載って、これはもう全部白黒の写真なんですよ。

――すごい。これ全部残ってるんですね。

マーク:全部残ってるの。しょっちゅう2馬力で走ってるから。

――演奏とかして?

マーク:演奏とかして、これで世界中を旅して。

――もう車にすら時代を感じますね。

マーク:すごいよね、これね。昨日誕生日だったからこれをインスタにアップして、1965年のこの日に、世界一周の旅に出たから俺が産まれたんだ。

――なるほど。

マーク:この時フランスをこいつが出なかったら、日本でおふくろに出会ってないですよ。

――つまりそのフランスを出て、日本に来た時にそこで出会って……。

マーク:そうそうそう。駆け落ちってやつですね。

――何かドラマみたいですね。

マーク:すごいんですよ。

旅のキッカケは戦争からの逃避

――うわ、これもすごいですよ。

マーク:おもしろいよね。こんな車で旅したんですよ。

――これはでも、車もずっと同じ車ではないですよね?

マーク:ずっと同じなんですよ。

――ずっと同じ車ですか?

マーク:はい。この2馬力、今シトロエンの博物館に飾ってあるんですよ。

――2CVですか?

マーク:2CV。

――すごいですね。同じものが今、飾ってあるんですか? ルーブル美術館に?

マーク:ルーブルじゃないよ。シトロエンの。

――シトロエンの。あるんですか? 世界一周周ったシトロエンの車って事で。すごい。

マーク:おもしろいね。だって自分達でモーターとかを分解しないと走らないくらいの世界なんだもん。お金がないから全部自分達で分解して。だからこういう家も作ろうってなるんじゃないですか? 何でも自分で出来ちゃうんですよ。

――なるほど。

マーク:とにかく戦争が嫌で。当時アルジェリア戦争中だから、1回戦争へ行って、イスラエルもやって、そしたら全部やって戻ってきて徴兵制じゃないですか、向こうは。逃げたんだけど捕まっちゃって。

刑務所のかわりにそのまま戦争に連れてかれて、アルジェリア、イスラエル解放をやって。それで戻ってきた時には、もう学校にもアラビア人もいっぱいいたのに、それをやっつけなきゃいけないことにもう嫌気がさして旅に出る。こんな国捨ててやるみたいな。

世界中で絵を売って旅を続けた

――でもその車で当時世界一周といっても。

マーク:いなかったんですよ、多分。

――許可の問題とかも色々あって、あれですよね? 普通に国境をそのまま車で越えちゃってたって事ですよね。

マーク:いやもちろんビザは取って。そのビザを取るお金は絵を描いて稼いでるわけですよ。街中にこういうようなこれ全部そういう絵なんだけど、こういう絵を描いてそれをポストカードにしたりとかして売ってるわけですよね。

――すごいですよね。

マーク:それで日本に到着するところもあるんですよね、きっと。

――まさしくマークさん誕生の瞬間というか。

マーク:僕は出会ってそこから何日かかかるんですけど、これ日本があるじゃないですか?

――ありますね。浮世絵が。

マーク:侍みたいな。ばんざーいとかなんか。

――ほんとだ。

マーク:日本のタクシーの運転手は頭おかしいとか書いてあるんです。日本人柔道家、ツーリスト、野球選手、剣道、お風呂。

――でもこれはコピーじゃないんですよね?

マーク:これはどうなんだろう? 1回何部かに印刷したんじゃないですか? 「10時過ぎの日本人」とか。

――なるほど、酔っぱらってるんですね? これはきっと駅のホームかなんかで寝てるんですね。

マーク:学生とかいって爆弾持ってたりとか。

――当時だからですね。

マーク:おもしろいですよねこの考え。外人から見た考えなんですよね、自宅って。

――当時、何というか着物を着て。

マーク:おもしろいですよね。こういうのを全部、文字と一緒にこういう風にやってたんですよね。

――これって当時の世界が全部ここに描かれてるわけですよね。それはすごい。

マーク:おもしろいですよね。こういう旅人の子どもなわけですよ。

世界一周の旅は、愛の逃避行へ…

――なるほど。お父様が日本に来られてお母様と出会われて、そこからもうすぐ結婚につながっていくんですか?

マーク:いや最初は大反対ですよね。ヒッピーな外人。ヒッピーじゃないですか? 要は1969年。フラワームーブメント、ビートルズ来日みたいな頃で、こっちは高度成長期みたいな。オリンピック前みたいな感じで。うちの四男の1番下の女の子だったのかな? 皆に愛されてみたいな。

――末っ子の女の子。

マーク:渡すもんかみたいな。

――そうですよね。

マーク:大喧嘩ですよね。反対を振り切ってフランス行っちゃうのかな2人で。

――もうそのまま車に乗って。

マーク:車はもう1人に渡して、俺はこいつと結婚するからお前勝手に残りやがれみたい感じで友達捨てちゃうんですよ。

――世界一周の旅が終わっちゃうんですね。

マーク:そうそう。親友と女って言ったら女選んじゃったんですよね。

――それだけ奥様が魅力的だったんでしょうね。世界一周の旅よりも。そこで世界一周の旅は途中で終わるんですけども。

マーク:そう、日本で終わる。半周なんだよね。

――今度また愛の旅が始まるんですよね。

マーク:もう1人はそのままロスまでは行くのかな? ロスのベニスビーチにクレープ屋さんを作って、それがのちのち全てピザ屋になって大儲けするんですけど。

――そうなんですか。すごい、やっぱり行動力が違いますね。

マーク:おもしろいですね。

――お父様はそこで日本に残られて……?

マーク:残る。それでどうにか結婚しようとしたけどダメで、2人でフランスに逃げて。一種の駆け落ちっぽいんじゃないんですか?

――もうダメなら行っちゃうみたいな?

マーク:そうそう。で、向こうで俺産まれちゃって。そして結婚するんじゃないんですか? 結婚式は挙げてないと思うんですよ。

――マークさんが日本に来られたのはいつになるんですか?

マーク:2歳。それまでの2年間は、やっぱりどうしようもなくてルノーの4エルの後ろにハンモックを付けて、そこに俺を入れて何かずっとフランスとかギリシャとか、ヨーロッパを旅してたんですよ。

――それも結局旅をしてるんですか?

マーク:旅してるんですよ。ちっちゃい頃。

――ノマドではないんですけど。

マーク:ノマドです。まさしくノマド。当時は白黒のカメラ持ってたから学校とかに行って、学生の集合写真を撮るのを考えて、それで金を稼ぎながら1日1日を過ごして。

――ビジネスマンですよね。何かその辺アーティスティックに。

マーク:ちゃんと起業を考えていたんでしょうね。他にもいたんだけれども、個人だから他より安く出来ちゃったという事じゃないですかね。

2歳のマーク、芸能界デビュー秘話

――そこで車に揺られながら、徐々に徐々に日本にやってくると。

マーク:2歳の時に船で来るのかな? 何かで来るんですよ。

――事前に調べさせて頂いて、2歳の時にはマークさん、芸能界デビューされてるんですよね?

マーク:そうそう。こっちに来てその時は実家と仲直りしてるのかな? 南千住に住んで。やっぱり当時親父みたいな外人、ヒッピーは珍しいから。モデルさんになるんですよ、親父が。

――まずお父様がモデルになる。

マーク:イヴ・サンローランのモデルとか。あそこにあるような、あんな顔なんですよ。スーパーニッカのCMとか、サンローランのファッションショーとかそういうようなのを、ああいう髭みたいなのでやってて。

その時に撮影現場のおふくろも仕事してたから、じゃあ今日は俺が連れてくわという事で俺を連れてってあやしてたところをこうやってカメラマンが撮ったのがリプトン紅茶のポスターに使われたんですよ。

――それはたまたま撮ったら「この絵いいじゃないか」とたまたま使われて?

マーク:そうそう。全国のリプトン紅茶の珈琲店みたいな喫茶店に、ずらーっとポスターが出て、そっからおふくろが芸能ママみたいになって、オーディションを受けさせたら、どんどん全て受かっていっちゃって色々やってましたね。

――マークさんの記憶の中で1番覚えている幼少期、芸能の仕事してるなというイメージがあったのはどの辺ですか?

マーク:結構全部覚えてる。ミノルタのポスターとかは大きな白い犬と一緒に撮ってたりとか、ブルボンの何かチョコレートのCMとか、ああいうのを女の子と2人でやってたり、一時期日本でフリスビーが流行ったんですよ、その時ペプシでフリスビーを投げる少年が僕だったりだとか、結構そういう大きなのをいっぱいやってて。

1番最初に覚えたのは「スマイルイズマネー」、笑いたくなくても笑うこと

――周りの反応とかはどうでした?

マーク:まあそうですよね。ちっちゃい頃は学校で、外人という事で常にいじめられてるから。「金髪外人」「人形」「女とばっかり一緒にいる」って。だから女の子にはすごいウケるんだけど。

――モテますよね?

マーク:そう。「お人形さんみたい」という事で、先輩の女の子たちに囲まれてるんだけど、男はおもしろくないから。でもなんかそういうの乗り越えたんでしょうね。幼稚園とか小1まで日本の学校だったんですけど、その時から剣道をやっていて、負けちゃいけねーみたいなのがあったんだと思うんですけれども。

――確かにそういう意味ではヨーロッパ系のハーフの方というのは珍しかったんですよね。

マーク:アメリカ系もいるはいるんだけど、そんなにいないじゃないですか。今もいるっていってもそんなにいないじゃないですか。

――そうですね。そんないっぱい見かけるわけではないですね。

マーク:東京駅でも多分1分に何人いるかくらいの感じじゃないですか。観光客ですらそんなにいないかな? という感じなくらい、しまってる部分はあるんだけれど。それで親父が、小1でフランスの学校に入れてくれたんですよ。すぐ飯田橋に行って。親父は仕事がフランス語の先生になるんですけど、ベルリッツっていう学校の。

フランスの学校が日本の中に。暁星って九段にあるんですけど、その暁星の日仏というのが大使館員とかが行くというようなところがあって、学費が高いからその間ずっとおふくろはずっと大変だったと思うんですけど、仕事をいっぱいして。

――その時以降も芸能のお仕事は続けられたんですか?

マーク:ずっと続いてましたね。学校が終わるとオーディション受ける、とかそういうのは日課になってましたよね。だからもう嘘でも笑う事は、もうそれが1番最初に覚えた手じゃないですか? 笑いたくなくても笑える。笑うとみんな喜ぶし、お金にもなるんだ。スマイルイズマネーだねみたいな感じというの。子どもの時はありましたよね。

教養のあるやつが仕事を取るし、だまされないために勉強するんだ

――後はもうずっとそのまま、将来も芸能のお仕事をしていくんだっていうの思われましたか?

マーク:思ってました。もう小学校後半くらいでは、もう先生より稼いでた。

――そうですよね、恐らく。

マーク:普通に。わからない事があると、そういう事言ってたような気がします。何でこんな事やる必要あるの? みたいな。それよく僕も娘に言われるんだけど、僕がそれを言ってたから逆に説明の仕方が違うんだけど、当時の先生は「やらなきゃ、みんなやってるからやるんだよ」みたいな説明だったんですよ。

そうすると「じゃあいいよ。だって別にみんなと同じ事やってて先生みたいになるなら俺やだもん」って。

――なるほど。でも

マーク:先生よりも儲けてるもん。

――大人からしたらおもしろくない話しですね。

マーク:全くおもしろくない話しですね。でもそこを光らせようという考えは、当時その先生もなくて。僕は娘に「何になりたい?」と聞いたら、「ロックスターになりたい」と言われて。

だから娘が社会とかそういう歴史とかの勉強をやっていても、意味がないからと点数が落ちていった時に、僕は言ったのは「スーパーモデルもどんなにすごいロックスターも、上にいるやつは下と話す時に色んなネタを持ってるんだよ」

「別に歴史でローマがどうのこうのというのを大きくなった時に誰かに教えたり、それがビジネスにつながるとは思わないけれども、もしスーパーモデルになった時に、そのネタというのを今覚えているだけで、その話が夕食の時に出た時に語れるやつがそのオーディションに受かるんだぜ」っていうふうに教えてるんですよ。

――なるほど、それは素晴らしいですね。

マーク:だから覚えておいたほうがいいんじゃないの? 数学だって同じ事で、これが何かを作るために役に立つわけじゃない。「だって私何か作りたくないもん」って何かを作るために覚えてるんじゃなくて、お金を稼いだ時に人にだまされないために数学をやっているだけなんだから。

――そういわれるとだまされたくないんで、勉強しますよね。

マーク:と思うんですよ。それを当時もっとその先生にそこを教えてもらっていれば、後々だまされてないと思うんですよ、俺の人生。

取材協力:シネマズ by 松竹

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