2024.10.10
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田川欣哉氏(以下、田川):こんにちは、takramの田川です。よろしくお願いします。今日は、デジタルファブリケーションの未来図ということで、この御三方に来ていただいております。
IAMASの小林茂さん、こちらは慶應義塾大学の田中浩也さんです。一番奥は、ジャーナリストの林信行さんです。よろしくお願いします。デジタルファブリケーションの話をするときに、この御三方に集まっていただいて話をするのは非常に豪華なので、今日は僕も楽しみにしています。1時間15分ということで、まず今日は、こんな流れで話をしていきたいと思います。
まず僕のほうから「デジタルファブリケーション」について、内容の方向性を簡単な紹介と合わせて、させていただきます。その後に、こちらにいらっしゃる御三方に、それぞれ、ご自身でやってらっしゃる活動の内容をお話いただきたいと思います。その後、せっかくなので、僕のほうからも、質問をいくつか準備しています。未来図というテーマも入っているので、過去現在未来で並べていったときに、今後何が起こっていくのか、というところに話を発展させていければと思っています。
まず、デジタルファブリケーションとは、ということで。今日ここにいらっしゃっているみなさん、関心をお持ちなんだと思いますけれども、まず最初簡単に定義から入っていきたいと思いますが。
デジタルファブリケーション、これはネット等で定義を探すと、大体このような説明が出てきます。狭義の意味と広義の意味と2つあるんですけど。
狭義の意味は、デジタルファブリケーションとは、CNC、これはコンピューターで制御された切削加工機のことですが。CNCのマシンや3Dプリンタ、レーザーカッター等、これら加工機がコンピューターと接続され、デジタル加工できる、というようなことを、狭い意味でデジタルファブリケーションと呼んでいます。
ファブリケーションというのは、基本的に、製造業のなかでどういう加工技術でものを作っていくのか、という狭い話なのですが、それがここにきてちょっと大きなムーブメントになってきている。それはなぜなのだろうか、というところのほうがよりポイントになるかと思います。
今日の話をする前に、歴史の俯瞰(ふかん)をしておきたいと思います。一番上から、Hardware。Hardware+ Electronics。一番下が現在で、Hardware + Electronics + Software + Network + Service、と書いてあります。これは時代ごとに、どういうタイプの企業や国が、業界の中でドミナントでありえたか、ということをまとめた図です。
1900年くらいまでは、Hardwareというのは、石器時代の石とか、土器とか、そういう時代に始まって、たとえば船を造る国が海洋国家として栄えたとか、鉄砲大砲を作れた国が強かったとか、そういう話です。
次の時代、Electronicsが入ってきて、大砲にフィードバック制御がついて、誰が打っても目標に当たるようになった。
それがどんどん進んで、途中で日本の時代があるのですけれども、それを踏み越え、今現在、世界のなかで大きく進化を遂げている分野が、一番下のHardware + Electronics + Software + Network + Service。この5要素を、ひとつの企業、ひとつの国で実現できれば、非常に強い競争力を保つことになる、という俯瞰になります。
重要なのは、4、5年くらい前は、SoftwareとNetworkとServiceがあれば、世界はどんどん動いていくのだ、という話でしたが、ここにきて、Google、 Amazon、 Appleがハードウェアとエレクトロニクスを自社で抱え込むことになってきています。それを全部あわせてプロダクトなり、サービスにしていく、という時代に入りました。これが時代認識です。
これを踏まえて、僕のほうからのポイントは、この3つにしたいと思います。ひとつは「身体」に近づくコンピュータ、2つめは製造業を飲み込む「新しい経済」の文脈、3つめは「コミュニティの存在と教育の役割」です。この3つが同時に起こっているから、デジタルファブリケーションが面白くなっているのでは、ということです。
まず、ポイントの1です。「身体」に近づくコンピュータ。ちょうど1年半前に、このIVSのなかでフィジカルコンピュータをテーマに司会をさせていただいたんですが、それと同じような文脈で、昔のコンピュータはこのような感じで、文字ベースの、記号を扱うコンピュータでした。ここにきて、コンピュータとネットワークがどんどん「身体」のほうに近づいてきている。
それは、このグーグルグラスもそうです。人間の身体データを採ったり、人間との接続の仕方も、ウェアラブルであったり。どんどんビット側からアトムのほうにコンピュータが浸透してきている、そういう潮流があります。
これはネスト、という機器です。シリコンバレーのスタートアップで、これは家庭内の気温とかエネルギー消費を、非常に簡単なユーザーインターフェイスで効率化していく、という発想です。
こういったものがどんどん出てくることによって、すべての機器であり、部品というのは、どれもアルゴリズムを搭載していって、ネットに接続されていきます。そこらへんにある電球とか、僕らが身につけるすべてのものは多分そうなっていくだろう、ということが、大きな流れとしてあります。これが、ポイントその1です。
なぜかというと、コンピュータのリソース、発揮のしどころが、画面のなかの世界だけで終わるのであれば、ファブリケーションで3Dにして持っていく、というのは、どちらかというと古い話になり、それが未来にはなかなか繋がっていかない。なぜ、ファブリケーションが未来のコンポネントのひとつとして認識されているか、というのが、「身体」に近づくコンピュータという文脈のなかのひとつ、技術論として出てくるだろうと思います。
その2、製造業を飲み込む「新しい経済」の文脈。製造業というのは非常に古い経済で、調達から販売、流通までのサプライチェーンというのは、非常に体系化、効率化されていますが、そのなかで大量にしか作れないとか、柔軟性がないとか。そういうことが、いわゆるネットワーク上の新しいサービスに比べると、非常に硬直的です。
この写真は、旋盤回している町工場のおじさんの写真なんですけれども、これはアナログファブリケーションですね。今でも、末端までいくと、こういった方がかなりたくさん存在しています。
より大きな話でいくと、これはベトナムの工場の写真なんですけれども、同じようなものを、同じような人が、同じように作って、誰がどう作っても同じものが出てくるというような作り方が、製造業の基本的なスタイル。これがオールドエコノミーの、20世紀型の完成の極地にあると思います。このあたりの問題を解決していくなかで、今現在このような形になってきています。
これは、MITが出しているデスクトップファブリケーションの、最近の作品のうちのひとつです。油があったりとか、職人の暗黙的知恵とかノウハウとか、たとえば、逆に大幅に規格化して、誰がやっても作れるように、歩留まりが高く、というようなところから、ここにきています。これからどんどん未来が発展していく、今それが始まった最初の1、2年の状況になっています。ここで起こってきているのは、製品の多様性、複雑さとか、途中で製品の設計を変える柔軟性とか、前の構造では非常に難しかった。
たとえば、部品を1個変えようとすると、ラインを大幅にいじる必要があるので、その更新サイクルにはお金もかかるし、時間もかかる。それが起こしているものというのは、イノベーションサイクルの長期化です。そこがネット系のサービスに比べると、非常にイノベーションサイクルが遅い。これが大きな問題となっています。
この部分に対する、ひとつのソリューションという形で、こういったタイプのものが出てきている。たとえば、製造業のビジネス規模というのは、今のコンピュータテクノロジーで実現されている経済のボリュームに対して、1桁上だと思います。今まで世界で広く実現されている、非常に大きなビジネス。この部分をコンピュータ、ネットワーク、ソフトウェアが飲み込み始めました。
これはたとえば、購買体験がネットのほうに移ってくる、本を読むことがそちらに飲み込まれる、というように。ひとつひとつ、詰め将棋のように、1個1個ひっくり返っていくわけですけれども、とうとうそれが本丸である製造業に入ってきた、と考えるのがよいのでは、と思っています。
この写真は、「Pebble」というアメリカのKickstarterで、約10億円($10Million)をマイクロ・ファンディングで集めたプロジェクトです。これも同じ文脈に乗っている。特にデジタルファブリケーションがメインのテーマのプロジェクトではありませんが、小さな規模の会社が作って、ネット上で提案をして、それに共鳴する人たちがお金をマイクロに投資をして、それで製造が起こって。しかも、キックススターターが商流の役割も果たして、中に出ていく。そういうことが今、起こっています。
資金調達から販売、流通、サポートが、これまでの「小売店で売る」だとかとは違ったところで出てきている。これを実現する「ひとつの弾」としてのデジタルファブリケーションが、文脈として非常に大きいと思います。
最後、コミュニティの存在と教育の役割。今日いらっしゃっていただいている小林さんと田中さんは、それぞれ、このあたりを主にやっていらっしゃいます。1980年代後半から90年代初頭くらいに、デジタルパブリッシングというところで、似たような2D革命が起こったと思います。
それと今回の違いは、たとえばメディア、「Make:」という雑誌があって、それがコミュニティに貢献した。「ファブラボ」という活動が、市民レベルで広がっていっている。2Dの革命、イノベーションが起こったときというのは、どちらかというと、プロフェッショナルな人たちの間でだけの話でしたが、今回はそれが一段降りてきている、というところが新しいと思います。
イノベーター、プロデューサーとカスタマー。3つに分けると、イノベーターというのは教育機関で仕事をしている方、プロデューサーは商品を大量に作って流している人、カスタマーがその先にいる。イノベーター、プロデューサーの間だけで革新が起こって、カスタマーは受動的にそれを享受している、というのが今までのパターンでしたが、メーカーという存在は、この3つをつなぎ合わせるような存在になってきています。
作る人と使う人の一致感、近接感。たとえば、子どもが身近に「モノを作る」という環境を持つことにおける、クリエイティビティの新しい形。それが将来のものづくりの新しさを醸し出していく、というところに繋がっていくだろうと思います。
ラップアップです。なぜ今、デジタルファブリケーションなのか、というのを、今日3つ、簡単に紹介させていただきました。
まとめると、「身体」に近づくコンピュータというのはソフトウェア、ネットワーク、ファブリケーション、技術的な話で見たときも、非常に破壊的進化をもたらすテクノロジーである、ということがポイント1。
2つ目は、それが技術論にとどまらず、製造業という、大きなビジネスモデルをぶっ壊してしまう、という可能性を秘めているということを、皆が感じている。ビジネス上のディスラプティブ(破壊的)な進化を促す⼀因になっている、というのがポイントの2です。
3番目は、その背景として、人材、教育、社会、人の生活スタイル、そういったものに対する強力な変化の促しになっている。この3つがそろっているので、デジタルファブリケーションが大きなムーブメントになってきているのだと思います。
今日の大きなテーマは、「デジタルファブリケーションの未来図」です。現在何が起きているかを踏まえつつ、それが拓いていく未来。その未来のなかには、当然、ビジネス的ポテンシャルがあるので、そのあたりを中心に話をしていければと思います。それでは、ショートプレゼンテーション。
今日はここにいらっしゃる御三方に、「ミライ」というキーワードを散りばめながら、お話をしていただきたいと思います。それではまず小林さん、よろしくお願い致します。
小林茂氏(以下、小林):よろしくお願いします。情報科学芸術大学院大学「IAMAS」の小林です。では、未来について話したいと思います。
最初に、ごく簡単に自己紹介をします。画面の中と外の物理的な世界を繋いで、新しいインタラクションをデザインしよう、というフィジカル・コンピューティングのツールキットとして「Gainer」っていうのを作ったり、さっき田川さんからも紹介があった「Arduino」のバリエーションで、無線のデバイスを簡単に作れる「Arduino Fio」を、コラボレーターと共に作ったり。
メーカームーブメントのきっかけを作ったメディアで「Make:」というのがあるのですれども、これの日本語版に記事を書いたり、ハードウェアで、スケッチするようにプロトタイピングをしていこう、そういった手法を紹介した本なんかを書いています。
今いるところは、岐阜県にある情報科学芸術大学院大学。長いので「IAMAS」と皆呼びますけれども、おそらく日本で最初の公立大学院大学です。
この学校には、デザインとかアート、社会的な文脈へのインターフェィスといった、様々なスキルを持った教員がいて、様々な年齢、国籍、経歴を持つ学生たちとコラボレーションをしながら、現在の社会の課題に取り組む、ということをやっています。
その中のひとつの事業として、2012年からデジタル工作機械を備えた市民工房「f.Labo」、現在は「IAMASイノベーション工房」という名前に拡張しています。これを開設しました。建物の1階の1室にスタッフがいまして、中に様々なデジタル工作機械があって、ワークショップを行うスペースもあります。
そこに入っているデジタル工作機械は、レーザー光線で切ったり、彫刻をしたりするレーザーカッター。それから、溶かした樹脂を積層するタイプなのですけれども、3Dプリンター。それから、高速に回転する刃物で材料を切磋加工する、3Dの切磋加工機なんかがあります。
こうしたデジタル工作機械があると、大きな工場ではなくても、2Dや3Dのデータを作ることで、正確に早く、モノを作ることができます。こういったものを使える人を増やすために、データの作り方とか、機械の操作方法を理解してもらうワークショップを用意しています。
たとえば、これはその様子です。一番右に出てくる写真は、ワークショップの受講証です。レーザーカッターでカットと彫刻をして、これを作ります。これが作れるということは、データを作って、それをもとに加工するまでを、ひととおり体験できる、ということになります。
しかし、実際にスタートしてみると、今の導入ワークショップを受講して皆どんどん作るようになるかといったら、なかなかそうではないんです。つまり、「言われたとおりに操作できる」という段階と、「自由にそこから発想して、どんなものをどういう風に作ろう」と考えてやることには、大きなギャップがあります。
なのでその2つの間をジャンプできるように、たとえば跳び箱でいうと、踏み切り板があります。あんな感じでジャンプするときの踏み切り板になるようなものとして、ワークショップを用意していきました。
これがその一例なんですけれども、3Dプリンターを使って、自分の顔のついた3Dペットボトルキャップを作る、というものです。
対象物の種類から数十枚の写真を撮ることで、3Dのモデルを生成できるスマートフォンとか、PCのアプリでオートディスクの「123D Catch」というものがあります。これで撮影して、モデルを生成して。
そこにはどうしてもノイズが含まれているので、それを取り除き、そこにボトルのキャップ部分を加えて、3Dプリンターで出力する。
これをただ単に「サービス」として提供するのではなく、ソフトウェアのセットアップも含めて、ひと通りの流れを実際にやってもらう、ということで、スキャンから出力まで一連のプロセスを理解して、それを応用していくことができるようになるのでは、と期待して開催しました。
こんなようなものを、20数個、去年は開催してきました。そういうことを通じて、いろんな利用者が表れました。自分や身近な人に向けて自分のほしいものを作る、いわゆるパーソナルファブリケーションを実践する主婦の方だったり、コンペティションに参加する作品を作るという方や、福祉団体の方が自助具を作る、ということもありました。
ペットボトルのオープナーなのですが、誰しも年を取ってくると握力が弱くなって、ボトルのキャップが開けにくくなると思います。レーザーカッターでこういうものを作れば、それが簡単にできる。さらに近くの中小企業の方で、プロトタイプを実際にここで作る、という方も現れました。
今までだったら、たとえば10個アイデアがあったとして、その中から1個を吟味して、それをどこか外部にお願いして作ることしかできなかったのが、自身でレーザーカッターを動かして10個全部試してみる、という風にすると、そのなかからイノベイティブな方法が見つかってくる、ということが起こりました。
デジタルファブリケーションには、いろいろな特徴がありますが、私が一番着目しているのは、多様性が「フリー」になる、ということ。同じものを1万個作っても、バラバラなもの、ひとつひとつ違うものを1万個作っても、コストがほぼ同じ、ということがあります。大量生産では非常識でしたが、それが可能になってきます。
だからと言って、金型を作って射出成形(しゃしゅつせいけい)で作る、という従来の製造方法がなくなるとか、それに敵対するものだとか、それはまたすごく早計な議論です。たぶん、従来の方法とデジタルファブリケーションというのは、排他的な関係ではなく、ハイブリッドで用いたときに、作り方のイノベーション、既存の要素の新しい結合を生み出す可能性があると思います。
そこに着目した例として、当時学生だった人が、自助具のプロジェクトをやりました。自助具というのは、たとえば左半身が動かないとか、右手の指を事故で失ったという人が、残された身体機能を最大限に生かして、日々の生活を送れるようにするものです。
同じものを誰でも使えるように、という「ユニバーサルデザイン」という考え方もあるのですけれども、そうではなく、多様な特性を持つ人々それぞれに合わせて、ひとつひとつ違うものを作る、ということが、昔だったらコストの関係でできなかったかもしれないですけど、今、可能になっているはずなんです。これは、左半身麻痺の方に向けて作った、爪切りです。
ご自身も事故で右手の指を失って、職人として自助具を作っていらっしゃる加藤源重さんという方の自助具の設計指導を、実際に作られたもののリバースエンジニアリングをすることを通じて学び、片手で切れる爪切りというのをレーザーカッターで製造できるように再設計しました。
その後、ヒアリングを通じて、この方は片手で爪が切れるというよりも、リハビリということも考えて、あえて現時点では思うように動かせない、左手も使うように両手用の爪切りが欲しい、ということがわかってきたので、それとしてアレンジしました。スタイリングや色にも本人の趣向を反映させ、実際に使っていただいています。
デジタルデータを共有できるウェブサービスがあるんです。その上で、設計データを公開することで、同じものとか、その派生物をつくれるようにしました。これは一見、自助具の話だけに見えるかもしれないですけど、さらに進めていくと、固定した設計データでこれはできているので、アルゴリズムが埋め込まれて、パラメーターで可変できるデータとして公開していくと、たとえば、手の大きさとか好みに応じて、自在にこれを変更するとか、それを目的に合ったデジタルファブリケーションで製造する、ということが可能になります。
さらに、服や靴、あるいは身体にぴったり張り付くイヤホンのような、パーソナルなオーディオ製品等にこの考え方を応用していくと、確実に新しい産業分野を作っていく、と思うのです。個人の身体の形状、たとえば、耳の穴とか足とかの「個人情報」というのは、今言われている名前とか住所とかは、どうでもいいレベルの話になってしまうくらい、非常に重要なデータで。そのデータの種類のビジネスチャンスも、かなり大きくあると思います。このあたりに、僕はデジタルファブリケーションをきっかけにするビジネスの未来を感じます。
日本は高品質、高性能と言われますけど、それをずっとやっていても、それは単なる持続的なイノベーションです。破壊的なイノベーションを創出するにはどうしたらいいのか、を大きなテーマとして取り組みたいと思っています。ハードウェアだけではなく、そのなかに入ってくるソフトウェアやエレクトロニクスも全部含めて考えていく、ということが必要だと思います。
そうした可能性を探求するために、これはロフトワークが運営する「OpenCU」というところで来月やるんですけど、チームラボハンガーや、ネコミミとかで知られているユカイ工学と一緒にやる、ハッカソンならぬメーカソンというものです。
これは技術的には、Bluetooth Low Energyなんですけれど、Bluetooth Low Energyで何ができるか、そういう技術オリエンテッドな話ではなく、生活者が欲しいものを作れるようになった、ということを実感した上で、スマートフォンのアプリとの組み合わせを作ってみよう、そしてそれをデジタルファブリケーションとも組み合わせてみよう、ということです。
このときには、ユカイ工学が開発したツールキットの「Konashi」というのと、中国のSeeed Studioというところが開発した「Grove」というのを組み合わせ、さらにそれを組み合わせる部品を作ってもらっています。容易に既存の要素の新しい組み合わせ、つまりはイノベーションの可能性を試せるようにしています。
未来のものづくりを考えていく上で、どうやって作るかという話ばかりをつい、されるんですけれども、何を作るのか、そして、なぜ作るのか。こういうことをデジタルファブリケーションに取り組むことで考えていく、というフレームを持つことが、未来を考えていく上で、大きな考え方ではないのかな、と思います。以上です。
田川:ありがとうございます。小林さんは、テレビでご覧になった方もいらっしゃると思うのですけれども、NHKの「クローズアップ現代」で、自分のお面をかぶって出ていらっしゃったというので、ツイッターなんかで有名になられていましたけれども(笑)。小林さんは、「デジタルファブリケーション」というのが出てきている流れのなかにいらっしゃると思いますが、いつ頃から、デジタルファブリケーションを意識され始めましたか?
小林:今世紀に入ってからくらいですかね。たぶん、5、6年くらい前です。それまでレーザーカッターとか3Dプリンターとか、身近にはなかったので。それまでメーカーに勤めていたので、工場でどう作っているか、というのは実感があったんですけど。「これってどうなのかな」と思っていたのが、実際使い始めると、今までできなかったことができるようになり、これは大きな意味でのビジネスも可能になるよね、というのが実感できるようになりました。
田川:なるほど。聞きたいことはたくさんあるのですが、まずは次に行きましょう。田中さん、お願いします。
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